愛 こ と ば・心 の 散 歩 路

愛 こ と ば・心 の 散 歩 路

2006/07/27
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カテゴリ: 実践ビジネス力
改◆『問題提起』という名の落とし穴[下]


唐知 「フム……、備前さん、

    よく知ってますね。

    航空宇宙研究所

    だったかどうかは

    覚えていませんが

    大体そんな所でしょう。

    それじゃ備前さん、当然、あの気の遠くなるような、

    膨大な予算の事も知っていますね……。

    ……アメリカの例で良いですけど……」

備前 「いえ……。あのぅ……。多額とは認識していますが…」

唐知 「かって世界の大国が競って宇宙開発を国策として、

    膨大な予算を注ぎ込みましたが、幾度となく故障が

    発生した事、事故になって国民の税から拠出した

    天文学的に高価な機材類と……、

    ……なによりも貴重な人命が損なわれた事も忘れては

    いけないと思います……。

    決して、ZDは達成されていません」

備前 「……」

大多 「それじゃ……、唐知さんが先ほどから言われている

    『問題提起』のおかしさというのは……?」

唐知 「だから『全国事故ゼロ』等と、できもしない理想論を

    掲げるのではなく、例えば費用をある一定額準備して、

    その金を有効に使って踏切事故を『減らす』と

    いうような現実的な、テーマの出し方に変えれば、

    少しは良かったのかもしれませんね……」

大多 「うーん……」

唐知 「あくまでもこれは『例えば……』の話ですよ。

    このテーマはそんなに単純ではありません」

大多 「……テーマの設定が変わる事によって、検討内容が

    どういう風に変わってくると言われるんですか……?

    唐知さん……」

唐知 「大多さん…『目指すは事故ゼロだ!』と言ったら論議は

    進みませんよ。……だって、そうでしょう?

    つまり踏切そのものを無くしてしまう案以外の、

    何がしかの案を提起する度にですよ……、

    さほど責任も感じていないリーダー達から、

    『完全に事故は防げますねっ!』って念を押されたら、

    引っ込めるしかしょうがないでしょう……。

    だって『完全』は無理だから…………」

大多 「それは……そうですね。絶対!!と言われても

    ……ですねぇ」

唐知 「……ここでテーマを『減らす』と変える事によって、

    それでは一体、事故をどの位まで減らすのか……。

    これから先、全国で何件までは『無念だが…仕方ない』

    と判断するのか。…………といった観点から……、

    これはもう喧喧諤諤の論議を生みます。

    ……人命に関わる事ですから、人の命の重さに変わりは

    無いし…『仕方ない』という言葉は禁句である筈です。

    しかし、現実論としてはどこまで救えるかを真剣に

    具体的に、詰めていく必要があります。

    ……理想論だけでなく…………」

大多 「都市圏と郊外区、又、中央と地方では見解が違い、

    全国一律の考え方に馴染まないという事になるかも

    しれませんね…………」

唐知 「ええ、なるかもしれない…………、

    ……ならないかもしれませんが……。

    いずれにせよ、テーマそのものが、段々と具体的に

    なっていくにつれて、より具現性のある答えしか

    考えようが無い様になってくるわけですね………。

    実は、それが極めて大切な事なんですよ」

大多 「………実行可能ということか…………」

唐知 「………何か、思い出すままに話しているので、

    まとまった話になって無いかもしれませんが

    勘弁して下さい。……これが唐知流です……」

大多 「うーん。何となくおっしゃりたい事が分かるような。

    ……分からない様な…………」

備前 「もう……、はっきり言って私には分かりませんよ。

    大多さん…!今日は一体何なんですか?

    ……良い話が聞けるから来いと言われたんで、

    飛んで来たんですけど……」

大多 「備前、子供みたいな事を言うな!

    確かに俺は誘った……。しかしだな、君だって、

    それなりに意味を考えて来たんじゃないのか?」

備前 「冗談じゃないですよ。先輩から来いと言われたから

    来たんですよ。色々と仕事もあったんだけど……、

    空けて……」

大多 「そうか……、じゃー、戻っていいよ。ついでに会社も

    辞めたらどうだ……」

備前 「そんなぁ……、なんで、僕が会社辞めなきゃ

    いかんのですか……?」

大多 「ほうー、今度は俺の言う通りにはしない訳だ。

    何でも、言う通りかと思ったが……、

    ……ということは少しは自分で考えてる訳だ……」

備前 「そりゃーバカじゃないんですから……考えて

    行動してますよ。

    あっ………………、

    …………すみません。

    ………そういう事でした」

大多 「ふぅぅ~…………」

備前 「……先輩のお誘いは、いつも為になりますから……。

    …………ただ今日は、さき程からあんまりにも

    突拍子もない話だったんで、つい………。

    ……すみません」

大多 「大体、お前はいつも戦闘的すぎるから……」

備前 「この平和な時代に……戦闘的なんて人聞きの悪い事

    言わないで下さいよ。まぁ、言うなら厳しい生き方

    くらいにしてください……」

大多 「わかった、わかった。厳しさか………。

    ふぅぅぅ…………。

    優れるという字は、優しいと書くんだけどな……」

備前 「………?」

大多 「唐知さん、どうもすみませんねぇ。雑音ばかりで……」

唐知 「いやいや、……まぁ、私の話は、いつもそんなもん

    でしょう。独断と偏見ですからね。……じゃー、

    話のついでに、もう一つ例を出して話して

    おきましょうかね」

大多 「……よろしくお願いします」

唐知 「『北九州市街区域の道路混雑緩和』の問題。

    これも先程話した踏切の話と似たようなもんで

    答は簡単です」

備前 「……簡単ですかぁ?」

唐知 「ええ、簡単です。混雑を解決すれば良いのであれば、

    東西南北、市街地区に入って来る方の信号機の、

    青の点灯時間を短く、赤を長くして…………、

    一方、出て行く方の信号機は、その逆で、

    青の点灯時間を長く、赤を短くすりゃ、その内に

    自然と市街地の車の台数は確実に減りますよ。

    ………勿論、入って来る方の道路には、延々と

    車の列が出来るのは当然ですがね。ハッハッハ。

    混雑させたくないという事だけを命題にするんなら

    車を減らせば良いんです。……極めて明快です」

大多 「おもしろい発想ですね。上りと下りと別々に

    信号表示する訳だ……」

唐知 「これは、ひとつの正しい答である訳です。

    しかし、とてもじゃないが採用は出来ません。

    なぜか?……人や、物資の輸送という課題との

    絡みがあるからです。……車は、輸送機器ですからね」

備前 「輸送機器…………ナルホド」

唐知 「近年は車がレジャー用品だったり、装飾用品だったり、

    またスポーツ用品だったり、生活のステイタス主張の

    手段だったりと、面白いほど様々ですが……、

    車の基本は輸送機器ですよ。

    ……ねっ」

備前 「それに恋人ハントの道具だったり、

    交際部屋だったりと多種多彩ですよ」

唐知 「でも、基本は輸送機器ですね。だったらこの問題も

    当然の事ですが『混雑緩和』のみの問題ではなくなる

    訳です…………」

大多 「……確かにそうです」

唐知 「車を市街地に沢山呼び込む物、つまり、人や物資が

    大量に集まる施設やエリアの場所を動かすといった、

    市民の利便性と深く関わってくる問題や、

    公共輸送と一般車両との関係、道路政策との絡み等、

    総合的な解決をしなきゃならないわけでしょう。

    取組みの方法、検討メンバーの構成は全然違って

    きますよ」

大多 「つまり道路混雑は『現象』であって『問題』ではなく、

    本当の問題は道路混雑によって発生してくる、不都合の

    方にあるというわけか。……考えてみりゃ当たり前だ」

備前 「逆に混雑を生み出している違法駐車の問題等も

    ありますよ。これは市民が利便性だけ追いかけるから、

    起こっている現象です」

唐知 「そう、そう、ご明察。不都合については、そういった

    市民の便利な生活という側面も大きいかもしれませんが、

    消防車や救急車、パトカーなどの緊急出動の際の問題

    なども見逃せませんね」

備前 「大問題ですよ……」

唐知 「こんな例はいくらでもあります。ここで私が

    言いたいのは、問題解決に取り組む時に、

    提起されている問題そのものを、解析する事が非常に

    重要になる場合が多いという事です。

    解決すべきテーマの具体化…とでも言いましょうかね」

大多 「……………具体化。……フム」

唐知 「ところがですよ、ところが…………。

    えーと……………………、

    ちょっと人の話に移っていって良いですか?」

大多 「どうぞ、どうぞ。今日は色々な角度からの、

    お話を聞かせて頂きましょう」

備前 「……人の話って?」

唐知 「さっきから言っております抽象的なテーマは具体化

    しなければならないといった、大切な事に気付かずに、

    逆に、抽象的問題提起と抽象的解決策の間で、

    いわば評論家的に腕を振るおうとする人達が、

    企業内に存在するのも事実です…………。

    心当たりありますね?」

大多 「ウッ……」

唐知 「いえいえ、あなたの事を言ってるんじゃありませんよ。

    ……大多さん」

備前 「それじゃー、僕のことですか?」

唐知 「ハッハッハッハ。どうですかね。自分で決めて下さい。

    どうですか……、身近に問題解決なんて簡単な事と

    考えてる人達がいませんか。……実は簡単なものは、

    通常『問題』とは呼ばないんですけどね…………」

大多 「やや、耳の痛い面もありますなぁ。会社でも、よく、

    見掛けますね。しかし、そういう人達は大体において、

    上層部からの評価は良い様なんだな」

唐知 「さぁー、本当に良いんでしょうかね。便利に利用されて

    いるだけかもしれませんよ」

備前 「便利に? 利用? 何ですか? それは」

     <完>


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Last updated  2006/07/27 12:40:29 PM
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