あんだんて

あんだんて

煙草(ハボエド)



少年がつっぷしている机は、大佐用の物。その机の上には本が開かれていて、読んでいる途中に寝てしまったのだろうと容易に想像できる。

 まるで時が止まってしまった様な錯覚さえ、感じてしまう。 だが、今ここでそれを感じることの出来る唯一の少年は健やかな寝息をたてていた。

「マスタング大佐、書類に目を通してほしいんスけど・・・」

 ノックの後、用件を言いながら入ってきた青年はそこに目当ての人物が居ない事に気付いて口を閉ざした。 代わりにいるのは

「・・・エド?」

 一際目立つ金髪が光を受けて眩しく光る。

 ハボックは扉を閉じて、ゆっくりとエドの眠る机の前に立った。

じっと、少年の横顔を見つめる。

やわらかそうな金髪。子供らしさを残す、額から鼻にかけての曲線。長い、金色の睫。その影がかかる、薄桃色をした頬。小さくて、形の良い唇。

「・・・女みてェだな・・・・・・」

 小さく言って、ハボックは口に銜えた煙草から煙を吐き出した。

 視線をもう一度エドにやって、その首筋。

出来れば見たくなかったモノを、見つけてしまった。

生々しい、赤い鬱血の痕。それも、つい先刻付けられたような。

 少年をよく観察してみると、それ以外にもいつもはきちんと結われている筈の三つ編みが解けかけていて、上着留めも外れている。閉ざされた瞼に、疲労の色があった。

「オイオイ、マジかよ・・・・・・」

 ここは大佐用の執務室で、大佐しか使わない。つまり。

「大将と大佐、デキてんのかよ・・・・・・」

 否定したくても、否定出来ない事実が目の前にあった。

もう一度、所有の証を見つめる。 暫くの間、そうして。

 気付いた時には、体が動いていた。

上着留めが外れているのをいいことに、襟元を指で軽く引っ張って。

煙草を投げ捨てて、首筋に唇を寄せる。

証の上に、自分の証を付けた。

「ン・・・、」

 もぞ、と少年がり身動きする。

ハボックは素早く体を動かしてエドから離れた。

起きてしまったか、と思ったが、少年はそれ以上動かない。

 ほッと息を吐くのと同時に。

 少年の寝言が、耳に入った。

「・・・・・・大、佐・・・・・・」

 小さな小さな、声。

だが、その顔は今まで見たどんな顔よりも、幸せそうで。

それを見たら、もう何も出来なかった。

「めちゃくちゃ、悪いコトしたみてー・・・・・・」

 まるで、大罪を犯してしまった様な気分だ。

 ハボックは溜息をつき、新しい煙草に火をつける。



 何故、もっと早くこの少年を手に入れなかったのだろうと。

後悔の念ばかりが、頭の中を駆け巡っていた。

 エドに背を向けて、ドアノブに手をかける。

最後に少しだけ振り返り、少年の顔を見つめた後。 ハボックはパタン、と扉を閉じた。

 煙草の煙を吸いながら歩き出す。

 手に、入れることは出来ない。でも。

走り出す、この溢れる気持ちは止まりそうにない。



 思い切り煙を肺の中に吸い込み、ハボックは煙草を窓の外へ投げ捨てた。







あとがき。

 ハボさん煙草捨てすぎー!! 最後とかめっちゃポイ捨てやし! これでいいのか軍人!!

 ハボックさんを出すと、どうしてもロイエド前提で書いてしまうのです・・・。横恋慕とか結構好きなので。
うーん、幸せにしてやりたいなあ・・・。ごめんよ、ハボさん。

 次は・・・またまたロイエドだと思われます。やっぱ王道好きだなぁ・・・。



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