「悲恋の王妃グィネビア」
時は中世 イングランド
輝く瞳のグィネビア
婚礼の為
キャメロツトへと旅立ちました
深い森を抜け緑の野原
突然現われた大男
姫をさらって
高い塔ヘ閉じ込めました
大男の城主は迫ります
麗しの乙女よ
我が妻になり給え
グィネビアは誇らかに
無礼者 寄るでない
通りかかった旅の騎士は
湖の騎士ランスロット
向かうところ敵無しのつわもの
大男を一撃のもとに打ち倒す
塔の窓から見つめるグィネビア
ありがとう旅の騎士
一瞬目と目が合いました
高鳴ったグィネビアの胸
燃えたランスロットの憧れ
どうぞご無事で
名前も告げあわず別れました
アーサー王の婚礼の日
それとは知らずランスロット
キャメロットにお祝いに
喜びにわく民たち
にこやかに微笑んで
並んで立った王と王妃
グィネビアの額に輝く冠
ランスロツトとグィネビア
運命の再会
哀しい恋のはじまりでした
偉大な王アーサーの
平和の都キャメロットには
厳しい掟が有りました
王妃の不倫は火あぶりの刑
グィネビアの恋は許されません
愛深きアーサーの腕の中
グィネビアの心は憂えます
ああ ランスロツト
黒き瞳のランスロット
君が我が胸に宿りしは
いかなる宿命の仕業かと
胸も破れん王妃グィネビア
宴の席
美しい乙女とランスロツト
微笑み交わし踊ります
王妃の胸は波立って
黒き嫉妬が逆巻きました
輝く瞳は曇ります
夜更けてひとりグィネビア
マントに身を隠し
石の階(きざはし)昇ります
想ってはならない人の部屋
ランスロツト ランスロツト
人目を忍んで呼びかけます
宿敵モードレッドの耳と目は
すぐ傍に有りました
ふたりの様子を伺います
帳(とばり)を開けたランスロット
お戻りなさい王のもとヘ
人目に触れれば身の破滅
王妃への熱い心を隠します
痛む胸 溢れる思いを甲冑に隠し
荒野をさまようランスロット
王妃の名誉を損なわぬため
アーサー王のお許しのもと
修行の旅へと出かけたのでした
求めて闘った試合は数知れず
心は虚ろに満たされません
ある時 傷つき
夜が更けました
ともし火に惹かれて
アストラットの城へ
白百合の精かエレイン姫
優しい笑顔 手厚い看護
ランスロットの傷は癒えました
エレインは
秀でた額に黒き目の
ランスロットに魅せられました
思いつめた一途な初恋
エレインの瞼に眠りは訪れません
乙女の誇りも恥じらいも捨て
ランスロットに申します
君恋うる我が愛を受け入れたまえ
胸を打つ切ない言葉
ランスロットは肯わず
我が胸には住まうひと有り
エレインの幸せ祈りつつ
立ち去りました
望みを無くしたエレインは
食を断ちました
日毎 哀しく衰えていき
思うはランスロットの事ばかり
いまわの際に申します
命絶えたる我が身をば
花敷き詰めた小舟に乗せ
キャメロットへと流したまえ
父と兄は川に小舟を浮かべ
別れを告げて泣きました
エレインの清らかな白き手に
一通の手紙が握られていました
エレインはキャメロットへ
流れ着きます
ランスロットは未だ帰らず
白き手の手紙を
王妃グィネビアが受取りました
報われぬ恋のため
乙女のままに死すわれを
哀れみたまえランスロット
もはや語らぬエレインの頬を
王妃の涙が濡らしました