倫理を理由に完全菜食主義である場合は、エシカル・ビーガン(Ethical Vegan)と呼ばれる[11]。美容や健康に良いと考えているために菜食主義を行う「健康のためにプラントベース」(plant-based for health)の中には、ダイエタリー・ビーガン(dietary vegan)がいる。彼らの場合は食事は完全菜食主義であるものの革製品などは用いる者もいる[11][12][注 1]。環境保全を理由に菜食主義を行う「環境のためにプラントベース」(plant-based for the environment[13])等があるが、各種を混同すべきではないという批判が強い[14][15][16]。
1886年、イングランドの運動家ヘンリー・ソルト(英語版)が執筆した A Plea for Vegetarianism (菜食主義の請願)が出版され、道徳上、菜食主義は必須だと説いた。のちにソルトは動物福祉から動物の権利へパラダイム・シフトした最初の一人として知られるようになった[43]。彼の著作はマハトマ・ガンジーにも影響を与え、二人は親しくなった[41]。1910年には、英国史上初のヴィーガン向け料理本となるNo Animal Food: Two Essays and 100 Recipes(Rupert H. Wheldon著)が出版された[44]。歴史学者のリア・レネンマン (Leah Leneman、1944-1999) は、1901年から1912年の間、協会の大多数が卵や乳製品に対する見解を同じくしていたと記している。[矛盾 ⇔ #ヴィーガニズムへの移行][45]。協会内での見解は統一されないままだったが[矛盾 ⇔ #ヴィーガニズムへの移行]、1923年の会誌に「動物製品を断つことは菜食主義者として理想的な立場である」という内容の記事が掲載された[46]。
1931年11月には、ロンドンでベジタリアン協会の会議が開催され、ソルトを含む会員約500人が参加し、マハトマ・ガンジーが The Moral Basis of Vegetarianism (菜食主義の道徳的基礎)という題で、健康のためだけではなく、道徳の問題として肉のない食事を勧めるのが、協会の使命であることを語った[47]。ガンジーはロンドン留学当時のベジタリアンが食と病のことばかりを話題にしていたとし、次のように語った。
アメリカ合衆国の哲学者。1967年から2001年まで、ノースカロライナ州立大学で教鞭をとった。英国ヴィーガン協会が「屈強なヴィーガン」と評している[85]。著書、「The Case for Animal Rights(英語版)」は、現在の動物の権利運動における重要なテキストと認識されている[86]。
ゲイリー・フランシオン
アメリカ合衆国の法律学者。Rutgers School of Law-Newark大学の法律教授[87]。で動物の権利の理論の草分け的存在として知られており、動物の権利をアメリカの法律大学で初めて学術的に教義した[88]。非人間種=動物に必要な権利とは、人間の所有物やモノにならない権利のことで[89]、その道徳のベースラインであるヴィーガニズムの実践と教育で達成できると主張している[90]。
2018年にはマクドナルドがヴィーガン対応のバーガーをアメリカ本国でも発売することを決定した[116]。またAndroid P Beta 2でGoogleの絵文字がアップデートされた際には、サラダの絵文字から卵が除かれヴィーガン対応のサラダの絵文字になる[117] など、ヴィーガンの人々に配慮する企業が増えつつある。
2022年1月、中東初のビーガンフードフェスティバルがドバイで開催された[120]。投資家で起業家でもある、サウジアラビアの王子Khaled bin Alwaleed(英語版)はビーガンで、昔はトロフィーハンティングをやっていたが、現在は動物園にも反対、植物ベースの食料システムに投資し、ソーシャルネットワークで動物擁護団体PETAをリツイートするなどして、積極的に動物の権利を発信している[121][122]。
アニマルライツ活動家で、ホロコースト生存者であり、1976年に動物の権利運動のNPO団体、「Farm Animal Rights Movement」の共同創設者アレックス・ハーシャフトは、「私は、自分の家族全員が約35万人の他のポーランド系ユダヤ人と共に殺害されたワルシャワ・ゲットーで幼少時代を過ごしました。その経験が、私が動物たちのために取り組んでいることと何か関係があるのかと聞かれることがあります。それが私の動物たちのための取り組みに与えた影響は些細なものではありません。それこそ、私の動物のための取り組みの全てなのです」と述べている[155]。
昆虫を加工した品も避けるべきだという考えに賛同しない菜食主義者もいるが、ヴィーガンは、絹等のカイコ由来の製品を避けている[167]。現代の養蜂方法は残酷で搾取的であるという見解は多くのヴィーガンの間で一致している。蜂たちの食料の貯蔵物であるはちみつを搾取する代わりにコーンシロップや砂糖を摂取という方法がとられており[168]、リュウゼツランを原料とするアガベシロップもヴィーガンの間で愛用されている[169]。Vegan Society と American Vegan Societyは蜂蜜や絹など昆虫由来の製品の使用はヴィーガンにはふさわしくないとする一方、Vegan Actionと Vegan Outreachは個人の自由という見解を示している [170]。
こうした肉屋や魚屋を狙ったヴィーガンによる攻撃が、主としてイギリス、スイス、フランスで報告されており、菜食主義者団体内でも強硬な主張を抱く組織による襲撃行為へ賛否が割れている。特にフランスでは、肉屋や魚屋に対して、窓ガラス破壊、店頭にスプレーで肉反対のスローガンの落書き、血液に似た液体による汚損などが起きるなど[244]、急進的なヴィーガンによる肉屋襲撃や脅迫がより過激化してきている。フランス食肉専門店・食肉ハムソーセージ専門店・総菜店連盟(La Confédération française de la boucherie, boucherie-charcuterie, traiteur、CFBCT)は、一連の言動を「一種のテロ」と批判し、2018年6月に政府への精肉店の保護とテロ対策を求めた[244][245]。ブシェリー・アボリシオン(仏語:肉屋廃止)と269ライフ・フランスは、同年9月22日にフランス全土で精肉店前デモを実施し、子豚の死骸を使った急進的な菜食主義者活動家の一人は、精肉店の窓ガラス破壊行為を非難せず、「いざとなったら刑務所に入る覚悟はできている」「われわれの活動で制限されているのは対人暴力のみだ」などと主張している[245]。このように、家畜飼養や食肉処理など畜産業界や食肉業界で生計を立てているフランス人や伝統的に肉食を好むフランス人と、急進的完全菜食主義者(急進的ヴィーガン)」グループの人々の間で、衝突や対立しているケースがみられる。ポールバレリー・モンペリエ第3大学教授は、和解の可能性は「ない」と語っている[245]。