Supica's room

Supica's room

旅立つ少女に一輪の向日葵を



それがさらに休暇と言う連続性を持つ現実の中で繰り返し行なわれることだとしたら、もはや生きている感覚は消えうせてしまう。

何も持たず、「眠れる森の美女」に出てくるような深い森に迷い込んだ哀れな人間。



先日、僕は茨城にある「ひまわりパーク」というところにいた。

「ひまわりパーク」と言うだけあって、辺り一面に向日葵が埋め尽くされていた。

爽やかな風が僕を柔らかく撫でていく。

木の葉の影は僕の身体を這っていく。

向日葵がさざ波を打つ。

どこかで蜩が鳴く。

僕の影が千切れるくらい引き伸ばされる。

そして、季節遅れの向日葵は、沈む夕陽に溶けていった。


縁側に座って僕はお茶を飲んだ。

空も雲もオレンジ色に染まっていく。

もう少しすれば僕だってオレンジ色に染まる。

無機質な空間はもう散々だ。

明日なんて来なければいい。

明後日なんてもっと来なければいい。

時間を進めることは正しいことだろうか。

時間を進めたことで何か変わったことはあったのだろうか。

ああ、恐ろしい。

時計は五時を告げる。


僕がいなくなっても、世界は歌い続ける。

僕がいなくなっても、空は青いまま。

僕がいなくなっても、同じように太陽はオレンジ色に世界を染め。

僕がいなくなっても、縁側にはお茶が出される。


電柱の灯りがポツポツと点き始めた。

灯りは闇を排除して道を照らす。

その下にはいつも女が立っていて、子供を生んでいく。

子供はみるみる間に育っていき、いつかは光から離れていく。

そこに居続けたとしても、体がいつかその空間からはみ出す。

大人だって本当は知っている。

彼らだって子供だったんだから。



美しい少女は僕らを飽きさせない。

美しい少女は僕らを優しく包んでいく。

美しい少女は僕らから旅立つ。

美しい少女はやがて僕らを裏切っていく。


そんな彼女達に僕らが出来ることといえば、儚くとも、儚くとも、一輪の向日葵を渡すだけではないか。










空よ、歌おう。

雲よ、笑おう。

風よ、踊ろう。

月よ、照らそう。

木よ、囁こう。

陽よ、世界を染めよう。






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