「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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あすなろ日記
青の祓魔師小説『碧い泉』
青の祓魔師「碧い泉」
樹海の中に眠る滔々と流れる川の源に碧い泉があるという。
その泉のほとりには万病に効く薬草が生えている。
雪男は燐と共に碧い泉を探して歩いた。蝉がうるさいほどに
鳴く山里に比べて、樹海の中は静かだった。
人の通らぬ山道を1時間ほど歩くと、道が左右二つに
枝分かれしていた。すると、
「二手に分かれて探そう。兄さんは右の道を行って。
僕は左の道を行くから。」
と雪男は言った。左の道は緩やかな山道で右の道は
険しい獣道だった。雪男は自分が楽な方を選んで、
困難な道を燐に押し付けたのは明らかだった。
「一緒に探そうぜ。」
「時間がないんだ。日が暮れるまでに見つけて、山里に
帰らなくちゃならない。夜になると魔物が出るからね。
じゃ、兄さん、頑張って。」
雪男はそう言うと、さっさと行ってしまった。
燐はため息をつくと、仕方なく、獣道を登り始めた。
山登りはきつかったが、峠まで登りきると、あとは楽だった。
道のない緩やかな坂を下って行って、しばらく歩くと、
マツタケのような良い香りがしてきた。燐が匂いのするほうに
視線をやると、大きな木の根元にマツタケのようなキノコが
赤や黄色の色とりどりのキノコと一緒にたくさん生えていた。
「うわ~!!美味そうだなぁ~」
燐が駆け寄って、キノコを食べようとすると、
「食べちゃダメ!!」
と、何処からか声がした。
「それは毒キノコだよ。食べたら死ぬよ。」
木陰から現れた少年は燐を咎めるように言った。
「マツタケじゃねぇのかよ!てっきりマツタケかと思った。」
「マツタケが赤いキノコと一緒に生えてるわけないじゃん。
兄ちゃん、村の人間と違うね。何処から来たの?」
「遠い学園から薬草を探しに来たんだ。」
「へぇ。おいら、万病に効く薬草なら知ってるよ。
泉の近くに生えてるんだ。」
「薬草を知ってるのか?!何処にあるんだ?教えてくれ。」
「あっちにあるよ。おいらと遊んでくれるんなら、
案内してやろうか?」
「本当か?!ありがとな。」
燐は嬉しそうに礼を言うと、少年の後をついて行った。
「名前、何て言うんだ?」
燐が少年に聞いた。
「リュウジン。兄ちゃんは?」
「奥村燐。よろしくな。」
「うん。」
少年は大きな目を輝かせて、ニコッと笑ってうなずいた。
透けるような真っ白な肌に漆黒の髪と瞳を持つ少年は
浴衣に草履といった山登りには不向きな恰好だった。
「リュウジンは一人で山に来たのか?家はこの近くなのか?」
「うん。すぐ近くに住んでるよ。母ちゃんはいないんだ。
村人に殺されたんだ。」
「えっ?そうなのか。悪いこと聞いちゃったな。ごめんな。」
「うん。いいよ。兄ちゃんには親はいるの?」
「・・・。いない。」
「へぇ。そっか。じゃ、仲間だね。燐兄ちゃんって呼んでいい?」
「ああ。いいよ。」
燐は少し照れたように返事をした。すると、リュウジンは
「泉はあっちだよ。」
と、深い森の中を指さした。薄暗い木々の向こうに
樹海の彼方に泉はあった。
緑に覆われた泉は太陽の光を浴びてエメラルドグリーンに
輝いていた。
「わぁー!!綺麗な泉だな~。」
燐は泉を見つけたとたん、走り寄った。近くで見ると、
泉の水は澄んでいて透明だった。
「泉の底に生えている水草のせいで緑色に見えるんだ。
ほら、よく見てごらん。所々に碧い水草が生えているだろ?
あれが万病に効く薬草だよ。」
緑色の水草に混じって、疎らに碧い水草が生えていた。
燐は目を輝かせて、
「採っていい?」
と、リュウジンに聞いた。
「いいよ。でも、5本だけね。この薬草はとても貴重なんだ。
全部摘み取ってしまうと、100年は生えてこないから。」
「わかった。じゃ、5本だけな。」
燐は服を着たまま泉の中に入って、薬草を採った。
泉は意外と深かった。燐は足を滑らせて、深みに嵌り、
転んで、肩まで水に浸かってしまった。
「泉の底は急に深くなっているから、浅瀬の所だけに
しとかないと、危ないよ。」
リュウジンが岸部から手を伸ばして、燐に言った。
「そういうことはもっと早く言えよ。ま、いいさ。
このままこの辺に生えてるやつを採ってから出るよ。
それにしても、随分、長い草だな。」
燐は1メートル以上ある碧い水草を手に持って呟いた。
「服、濡れちゃったね。脱いであの木に干して乾かしたら?」
泉から出て、薬草を鞄に詰めている燐にリュウジンは言った。
「えっ?!いいよ。すぐ乾くから。それに、日が暮れるまでに
帰らないといけないし・・・」
「遊んでくれる約束は?」
リュウジンは拗ねたような大きな瞳で燐をじっと見た。
「あ、そういえば、遊んでって言ってたな。何して遊ぶ?」
「泳ごう。」
リュウジンは自分の帯をほどいて浴衣を脱いだ。
リュウジンの身体は肋骨がくっきりと見えるほど痩せていて、
透き通るような肌にスラッと伸びたしなやかな肢体は
子供なのに艶めかしかった。リュウジンは下着を脱ぐと、
全裸で泉に入った。
「燐兄ちゃんも早く脱いで。」
リュウジンはまるで誘うように燐に言った。燐は一瞬、
ドキッとしたが、慌てて服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿で
リュウジンの元に走り寄った。
「向こう岸まで競争しようぜ。」
「うん。いいよ。」
リュウジンと燐は速さを競って泳いだ。数十メートルを
リュウジンはあっという間に泳いで燐に勝った。
後から泳ぎついた燐は
「子供のくせにすげぇ速いな。」
と言った。燐は5歳くらい年下に見えるリュウジンに負けて、
少しショックだった。
「燐兄ちゃんも1分足らずで泳げるなんて、すごいよ。」
「よし。じゃ、もう1回だ!」
燐はフライングして泳ぎ出した。
「あっ、ずるい。燐兄ちゃん、待ってよ~。」
リュウジンは笑顔で追いかけた。
何回泳いで競争しても燐はリュウジンに勝てなかった。
燐はヘトヘトになって、岸辺に寝転んだ。リュウジンは
息も乱さずケロっとしていたが、一緒に寝転んで、
燐の胸に寄り添った。水辺には綺麗な花がたくさん
咲いていて、照りつける夏の太陽が幻想的な泉の風景を
蜃気楼のように不確かなものにしていた。燐は花に
囲まれて、お花畑で眠るお姫様のように目を閉じた。
燐がウトウトと眠っていると、何かが身体中を這いまわり、
四肢の自由を奪われ、夢の中でこの世のものではない
生物に抱かれているような気がした。ハッとして、燐が
目覚めると、傍らに寝そべっていたはずのリュウジンが
燐の上に乗っていた。
「目が覚めたの?」
リュウジンが燐の顔を覗き込むようにして、聞いてきた。
「なっ!何してやがる!」
「何って、交尾してるんだよ。」
リュウジンはうっすらと笑った。燐は暴れようとしたが、
手足を水草に縛られて、動けなかった。驚いたことに
燐は泉の上にいた。泉の底から生えている水草が
生き物のようにグルグルとまとわりつき、燐の身体を
水面に持ち上げていた。水草たちは燐の身体の自由を
奪うと共に身体を撫でまわして、交尾に協力していた。
リュウジンが燐の身体の中で動くたびに胸や腹を
水草たちにいやらしく撫でまわされ、燐は声をあげた。
「あ、ああ、あっ、いやだっ、あああ~」
恐怖と快楽の狭間で啼く燐にリュウジンはこう言った。
「燐兄ちゃん、おいらのお嫁さんになって。」
リュウジンは燐を抱きながら、優しくキスをした。しかし、
「俺は女じゃねぇぞ!」
と、燐は言った。
「雄同士でも交尾できるって聞いたことあるよ。現に
交尾してるし・・・おいら、交尾するの初めてなんだ。
ずっと待ってたんだ。おいらの嫁さんにふさわしい
魔物が現れるのを・・・」
「えっ?!」
「おいら、知ってたよ。燐兄ちゃんが人間じゃないって。
匂いで分かるんだ。」
リュウジンはにっこりと微笑んだ。
「愛しているよ。燐兄ちゃん。」
リュウジンは激しく腰を突き動かした。
「あ、ああ~、あああ~」
燐は身体の最も感じる部分を水草に扱かれながら、
リュウジンに激しく突かれて、絶頂に達してしまった。
するとその時、余韻に浸る間もなく、銃声がしたかと思うと、
リュウジンが血を吐いて燐の上に倒れこんだ。リュウジンの
身体から流れ出た血が泉の水を真っ赤に染めると、
水草たちが一斉に燐から離れて逃げて行った。燐は一瞬、
バランスを崩して泉に沈んだが、すぐに立ち上がって、
撃たれたリュウジンを抱きかかえ歩いて岸に上がった。
「兄さん!!」
銃を撃ったのは雪男だった。雪男は銃を構えたまま
泉の近くに立っていた。
「雪男!なんで撃った?!殺すことないじゃないか!」
と、燐が言うと、雪男は険しい表情を浮かべて、
「兄さん、今すぐ離れて!その化け物はまだ生きている。」
「えっ?」
死んだと思ったリュウジンの身体が碧く光り、瞬く間に
巨大な龍に変身した。燐は驚いて、手を放したが、逆に
龍の大きな足でがっしりと身体を掴まれてしまった。
「兄さんを放せ!化け物!」
雪男が服のポケットから聖水を取り出し、巨大な龍に
投げつけた。しかし、龍は聖水を浴びてもなんともなかった。
「何故だ?!」
雪男は驚いた。すると、リュウジンはこう言った。
「龍神は化け物なんかじゃないからだ!碧い泉の守り神だ!」
「守り神?」
「そうだ。おいらは悪い人間どもから泉を何百年も
守り続けてきた神だ。お前ら人間はみんな殺してやる!」
リュウジンが雪男に牙を剥いて襲いかかろうとした時、
「やめろ!雪男は俺の弟だ!」
と燐が言った。リュウジンはピタッと動きを止めて、
燐に問いかけた。
「何で燐兄ちゃんの弟が人間なんだ?燐兄ちゃんは
魔物じゃないのか?」
「俺は悪魔の子だ。人間の血が半分混じってる。」
「そんな・・・」
リュウジンは燐を掴んでいた前足を放した。
燐はドサッと地面に落ちた。
「酷いよ。やっとお嫁さんを見つけたと思ったのに・・・」
リュウジンは悲しそうな顔をして言った。
「おいらの母ちゃんは人間に殺されたんだ。母ちゃんが
生きてた時代はまだ人間が守り神を信仰してた。毎年、
村祭りの日に供物と引き換えに薬草を母ちゃんは村人に
与えてた。万病に効く薬草は一本だけでも家が建つくらい
高価な品だったから、村人は有難がってたよ。でも、
ある時、村人が欲を出して、泉に生えている薬草を勝手に
盗んだんだ。母ちゃんは怒って、その村人を殺した。
そうしたら、村人たちが弓矢を持って、集団で襲ってきて、
母ちゃんを殺したんだ。守り神のいなくなった泉は人間どもに
荒らされて、100年もの長い間、薬草は生えてこなかった。
だから、おいらは人間が嫌いなんだ。」
龍神は大粒の涙を流して泣いた。燐は手を伸ばして、
龍の顔を優しくそっと撫でた。
「ごめんな。人間は欲ばりで残酷で・・・
たった一人の大事な母ちゃんがいなくなってから、
ずっと独りぼっちで寂しかったんだな。ホントにごめんよ。」
燐はリュウジンに謝った。そして、こう言った。
「薬草を返すよ。俺が持って帰ったら、また他の人間が
採りに来るだろ?もし、そいつらが泉を荒らしたり、
リュウジンを殺したりするといけないから。」
「燐兄ちゃん。やっぱり、燐兄ちゃんは人間と違うね。
いいよ。薬草は返さなくて。この泉には普段は結界が
張ってあって、誰にも見えないようになってるんだ。
燐兄ちゃんを案内する時に結界を解いたけど、また
結界を張れば大丈夫だよ。おいらの母ちゃんも結界を
張っておけば良かったんだ。人間なんて信用するから
いけなかったんだ。」
リュウジンの言葉に燐は何も言えなかった。燐はけっして
尋問されても薬草のありかは言わないでいようと思った。
雪男に撃たれて傷ついた身体が痛々しくて、リュウジンに
燐は心からもう一度謝ると、雪男と共に山を下りた。
学園に戻ると、案の定、泉が何処にあったのかと
メフィストに一日中しつこく尋問された。
雪男は山の中で遭難しかかった時に偶然見つけて、
何時間も迷子になった挙句、山を下りることができたので、
場所を聞かれても答えられないと言い、生えている薬草は
全部採ってきたから、もう1本も生えていないと嘘をついた。
そして、万病に効く薬草を手に入れた功労者に対して
こんな扱いをするのなら、もう二度と学園長の依頼は
受けないと逆切れすると、ようやく解放された。
「兄さん、『知らない。覚えてない。』だけを繰り返して
言ったら、疑われて当然だよ。隠し通すって決めたのなら、
もう少しマシな嘘をつけよ。」
夜になって、寮の自室に戻ってから、雪男は燐に言った。
「だって、俺、嘘つくのが下手だから・・・」
「兄さんが正直者だったってこと忘れてたよ。特に兄さんの
身体は正直だよね。触れられれば誰にでも反応する。
人間以外の生物に撫でまわされて、感じてただろう?
それとも、リュウジンがそんなに良かった?」
雪男が恐い顔をして、燐に詰め寄った。燐は思わず
後退りして躓き、ベッドの上にひっくり返ってしまった。
雪男はすかさず、馬乗りになり、燐にこう言った。
「僕の許可なく勝手に交わって、感じてしまうような
悪い子にはお仕置きが必要だね。」
燐の尻尾をギュッと掴んで握りしめた。
「ぎゃんっ!!」
燐は思わず尻尾を踏まれた猫のような声を上げてしまった。
しかし、雪男は手を放してはくれなかった。それどころか
尻尾をグイッとひっぱって、燐の下半身に巻きつけた。
そして、立ち上がりかけたそこをギュッと縛ると、
尻尾の先で燐の胸を弄ぶように撫でた。
「あっ、あんっ、あ~」
胸の突起に自分の尻尾が当たる度に縛られた部分が
持ち上げられる。痛みを伴う快楽は燐を狂わせる。
大きくなった先端から蜜を滴らせ、無意識に腰を揺らす燐に
「兄さんは縛られるのも好きなんだ。今度は尻尾に
嫉妬しちゃうな。」
と、雪男は言って、尻尾を軽く噛んだ。
「ああああ~」
燐は叫びながら絶頂に達してしまった。ポタポタと燐の腹や
胸にかかった白濁色の液体を雪男は燐の尻尾で拭い取ると
「こんなに汚して悪い子だ。自分で舐めてきれいにしなよ。」
と言って、濡れてベタベタになった尻尾の先を燐の口の中に
無理やり押し込んだ。
「うっ、うう・・・」
口いっぱいに尻尾を詰め込まれて、燐は呻いた。
「苦しい?兄さん。ちゃんと舐めないと許してあげないよ。」
雪男は苦しむ顔を眺めながら、燐の身体の中心を縛っている
尻尾をペシッと叩いた。
「う、あぁぁ」
燐は叩かれた痛みに尻尾を口から吐き出して
悲鳴を上げてしまったが、
「もう許して。」
と、目を潤ませて、懇願した。
「やっと、謝る気になった?」
雪男は優しい声で燐に聞いた。
「ご、ごめんなさい。」
燐は雪男を見ないで、目をぎゅっと瞑って、自分が
雪男以外に抱かれたことを詫びた。すると、雪男は
「謝ったご褒美に入れてあげるね。」
と言って、燐の片足を持ち上げると、まだ慣らしていない
蕾を一気に貫いた。
「あっ、ああ~、ああああ~」
燐は嬌声をあげて雪男にしがみついた。
「兄さん、僕を見て。」
雪男は燐の中で動きながら、燐の尖った耳にキスをした。
「兄さんは僕だけを感じて、僕だけのものでいて。
僕が兄さんを守ってあげるから。僕以外の誰にも身体を
触らせないで。お願いだよ。兄さん。」
「わかった。約束する。」
「絶対だよ。もし、約束を破ったら、相手が誰だろうと殺すよ。
僕から兄さんを奪おうとする者はたとえ神だとしても
殺してやる!」
雪男の瞳から涙が溢れ出した。燐は雪男の頬を伝う涙を
ペロッと舐めて、こう言った。
「雪男は俺のたった一人の弟だ。俺は他の誰のものでもない。
雪男だけのものだ。だから、心配するな。」
「兄さん。」
雪男は再び激しく腰を動かして、燐の中で果てた。
「愛してる。愛してるよ。兄さん。」
まるで手からこぼれ落ちる愛を必死で拾い集めている
子供のように雪男は燐を抱きしめて、終わった後も
血のつながった兄に愛を呟き続けた。
(完)
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