ねこねここねこ

冬にむかう

     冬にむかう

 1
 けたたましい電子音
 頭痛 こめかみで血が
 ゆっくり乾いてきたような

 要約すると
 以上が
 ほぼ私の目覚めの瞬間だといっていいだろう

 年をとるって
 もっと
 円満なことだと思っていたのに


 2
 朝の食卓に
 私のマグカップがつめたく光って立っている
 今年の六月
 モジズリの鉢が
 そこにあった
 指で
 食卓を軽くたたいただけで
 モジズリは
 過敏に反応
 揺れは花穂からはじまり
 むかし
 垂直と水平が
 同じ言葉であらわされていたことを
 思い出させてくれた
 花は
 天心をめざし
 可憐なピンクのネジをさかんに中空にまいていた

 部屋の
 小さな世界樹だった


 3
 「長方形の食台
 そして
 天幕」
 イザヤ書で
 中世のコスモグラフィの部分をよんだ
 ほんの
 数行だったが
 よんだあと
 なぜか
 地下道の階段で
 すれちがった
 青年のジーパンを思いだした
 そのとき
 鼻が
 ツンとしみた


 4
 いただきの光る雪が
 遠くにくずれ
 南京ハゼが
 紅葉の葉繁みにかわってゆく窓をみていた

 サースティ・クロウとよばれるネコは
 そのしたを
 よたよた歩いてきて
 わが家に
 住みつき
 冬になった


 5
 食台をたたく
 指のしてきたことを考えていた



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