飛鳥京香「日本人の時代ージャップスデイズ」

飛鳥京香「日本人の時代ージャップスデイズ」

ジャップス=デイズ日本人の日々■第6回


作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
第6回

 画像は八二ック状態にはいっているウォール街にある日本人の会
93-
-社を映しだしている。
 「どういう事だ、これは」
 ケンは画面をくいいるように見つめる。
 「どうだね、本日をきして、世界各地で日本人抹殺プランがいよい
よ始動したんだ」
 「なぜなんだ。ブキャナン。これは悪い冗談だろう。こんな事あり
えるわけがない」
 「残念ながら、事実だ。まあ事実をうけいれるまで時間がかかるだ
ろうだがね」
 ケンは頭をかかえ、肩をいからせて、画面をみつめつづけている。
 「いいかね。アサガ。我々のプロポーザルを続ける。この日本人抹
殺までは時間がかかるだろう。そして何人かは逃げる奴らがでてく
る。さらにJVOに対するテロ活動を行なう奴らもでてくるだろう。
いいかそいつらを見つけだす要員を我々は、現在確保しておきたい
のだ。
 抹殺プランが終了すれば、君に手術を施し、白色人種にみえるよ
うにしてやろう」
 広い肩はば、おそらくはアメリカンフットボールを学生時代にや
っていただろう、そんな体つきをしたブキャナンはケンの肩に手を
おき、ケンの顔をのぞき込む。
 「いいかね。このスパイの候補者は何人もいる。それに我々情報ネ
。トワークサービスに泣きすがり、どうにか助けてくれと言ってく
る奴もいるだろう」
 涙ぐみながら、ケンはブヰャナンに叫ぶ。
 「なぜ、俺を選んだ」
匯ぽ隠けに’・に卜・ヽドに‥ドドド‘、にI.’ドレド・ドレドトト・レ

 それは君のポテンシャルをコンピューターがはじきだしたのだ。
最優秀だとね」
 「くそっ、こんな事、国連がゆるすものか」
 「ふふ、国連にもJVOは暗黙の了解を得ているよ。それに国連の
バックアップを、我々情報ネットワークサービスが受けているとす
れば、どうするね」
 ケンは答えるべき言葉もない。
 「それに、裏の国連と呼ばれる世界犯罪連合もGOサインを出して
いるのだ。彼らも日本ヤクザの海外流出をよく思ってはいないので
ね。つまり、世界の権力機構の意見は一致しているんだ。日本人を
抹殺せよ」
 ブキャナンは深いマリンブルーの眼でケンを見ていた。
 「ショックの連続で酷だね。少しは希望を与えてやろう。おい」
 ブヰャナンは情報サイボーグを呼んだ。情報サイボーグは右手の
手のひらをひろげる。そこは急に液晶のCRTとなる。
 このCRTにジュンの顔がうつっていた。
 「ケン、私がわかる。ジュンよ」
 「ジュンー」
 ケンは情報サイボーグの手のひらにむかって叫んでいた。
「君は死んだはずじゃなかったのか」
「いえ、爆発の直前、情報サイボーグに肋けられたの」
「今、どこにいるんだ」
「わからないわ、ケン肋けて」
「くそっ、博士はどうしたんだ」
「わからないの」

 「くそっ、君たち、ジュンを解放しろ。それにバルボア博士をどう
したんだ」
 ブキャナンはケンの質問に答えずに言った。
 『いいかね、ケン、君が気をうしなってい』る間に君の体に手術を施
した。小さな爆弾だが、体の非常に効果的な部位にしかけてある」
 「何だって」
 「いずれにしても、君は我々の言う事を聞かざるをえんのだよ」
 「意識を失なっていた間はそんなに長かったのか」    ’
 「我々はさらに予備処置として、君の恋人ジュンを確保している。
君が命令に従わなければ、君が死ぬだけではない。同時に君の恋人
ジュンも死ぬだろう。博士は我々の仕事に協力してもらっていると
いえばどうだね」
 「くそっ、何んて奴らだ」
 「いいかね。この日本人抹殺作業が終った後おこるのは権力闘争だ。
その権力闘争に我々は参加できる実力を持っている。悪い事はいわ
ん、我々を手伝うのだ」
 「という事は、このプランを考え出した奴を殺す事もできるのか」
 「可能性はある」
 ケンはしばらく考えていたが、首肯した。
 「わかった。君の命令にしたがおう」
 ブキャナンは軽く、ケンの肩をたたき、握手を求めてきた。
 「ありがとう、ケン」
 が、ブキャナンはケンの心の中におこりつつある狂気と殺意に気
づいていなかった。
 ケンの眼には地球がまっ赤にそまっているように見えた。
(続く)
1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

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