あーともままのお部屋

雨だれの前奏曲(プレリュード)



いつもなら
あざやかで
それでも どこか
もの悲しさを思わせる夕日が
窓いっぱいに紅を散らすのに...

いつもなら
窓いっぱいに広がる空の紅が
次第に薄れて 闇へと化していくのが
見えるはずなのに...

今日は
ただ 薄灰色の空が次第に
暗く..暗くなってゆくばかり...

暗くなったガラスにそっと
頬を寄せる
ガラスは冷たく
心につきささる

ポツリ...
水滴が1つ
ガラスを濡らす
2つ... 3つ...

やがてそれは
不規則なリズムから
次第に 淋しげな それでいて
心地よいしらべへと変わって
耳に響く...

ザーッ
激しく降りかかる雨は
ガラス越しに
俺を濡らす...

何がどうという理由(わけ)じゃない
ただ..
今日は いつもとちがうだけ..
何かが...
ちがう

あるはずのものが
なくって..
そこだけ ポッカリと
空間になっているようで...

バタン..

ー日向さん、あんた..今日は帰らないはずじゃ...ー

ーん..雨、ひどいからやめた..それに..ー

ーえ?ー

雨は また やわらかなしらべとなり
やがて
雨だれの音だけとなった

ポツリ ポツリと
ひびいて...

ひびいて...

S62.4.25


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