続ひこうき雲3



あの赤ちゃん犬がいるのは、
母さんが昔から知っているペットショップだった。
早く、この子を母さん達に逢わせてあげたい。
ボクは毎日ペットショップと家の間をバイクで往復した。
でも、空の上を飛んでるんじゃないから、
みんなには、ひこうき雲が見えてないようだった。
ある日、とうとう母さんは店にやって来た。
この時はまだ、わんこを飼おうという気持ちじゃなく、
ボクの小さい頃を思い出しながら、
子犬を見たいと思ったに過ぎなかったようだ。
この時は、2頭いたきょうだいはもう、
新しい人のところに引き取られ、
ボクにそっくりな子犬だけが、残っていた。
母さんが子犬のケージの前にやって来た。
「犬太?あなた犬太なの?」
そう言っている。寝ている子犬をじっと見ている。
「母さん、そうだよ、連れて帰ってやんなよ」
母さんは、とっても愛おしそうに子犬を見て、
お店の人と話をした後、帰っていった。

帰る母さんの後ろ姿をみて本当にびっくりした。
何と、母さんの後ろ姿から短いけれどひこうき雲が出てるんだ。
ボクは何度も目をこすってみたけど、確かに短い雲が尾を引いていた。
(生きている者も、自分では気付かなくても、
人生が変わるほどの人と逢ったりした時などは、
後からその場所に戻ってこれるようにひこうき雲が出るんだと、
後から光さんに教えてもらいました)

母さんは、家に帰ってからもすぐには家族に子犬のことを言わなかった。
それは、このボクに気を遣ってのことのようだった。
母さん、余計な気を遣わなくっていいってば。
だって、こちらの世界に住む者は、
ひたすら元の家族の幸せを祈っているし、
次のわんこを飼うことになったとしても、喜びこそすれ、
ヤキモチなんて妬くはずはないんだよ。

もしお兄ちゃんが、あの子犬を見たら、
すぐに気に入ることは分かっている。
でも母さんはなかなか言い出せない。
そんなことをしているうちに数日が過ぎた。
ボクは何とかしてお兄ちゃんをあの子犬に逢わせたかった。

ボクは、その晩もリビングのソファの上に寝そべって、
母さんとお兄ちゃんを見ながら、うっかり居眠りをしてしまった。
「母さん、犬太が!犬太がソファの所で母さん見てるぞ!」
っていう、お兄ちゃんの大きな声で目が覚めた。



<続く>



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