臆病


怪我をしないために付いていた
安全バーが邪魔だった。

「臆病」は、剃刀でも鋭い物を選ばせなかった。
『実際は痛くてつらいことに我慢はできないのだ』と。

「臆病」は、腕の中でも手首を選ばせなかった。
『結局は怖くて死ねないのだ』と。

「臆病」は「自分の弱み」

「臆病」は、本物の剃刀を握らせなかった。

一番ほっとするとき。
ゆっくりと、自分の持っている剃刀の中で
一番小さく、安全な眉用の剃刀を
人間のやわらかい肌に当てた。
一番急所と思われる血管の浮かぶ手首をよけて。
4cm下の白く血管のわかりにくいところに。
力をこめて・・・・ぐっと・・・・。

(痛い)

でも、手は止めなかった。
そのまま、引いて引いて引いて・・・・
何回も繰り返した。血は少しづつにじみ始めていた。
血を見ておもった。

(何で生きてるんだろう。)

嫌われて貶されて
好いてくれる人もいるかもしれない。けれど・・・
汚い世の中を見ながら生きていくことは
良いとは思わないでしょう。

「臆病」は、肌に数十本も薄い紅い筋しか残さなかった。
『やるなら臆病という言葉を自分から消し去ってからにしろ』と。

あざ笑っていました。


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