第八話【ラブ様】

第八話【ラブ様】



思春期の中学生に定番の心霊ゲーム(コックリさんなど)に、私と友人達もはまってて
放課後はほぼ毎日やっていた。その時の話。

私達のやってたゲームは、通称『ラブ様』。コックリさんのように捧げ物や小道具を
用意しないでよかったので簡単だった。紙の中央に大きなハートマークとそれをかこむ
ように「あ」~「ん」、「はい」と「いいえ」という構図。参加者が手を重ねて鉛筆を
握り、ハートの中央からはじめる。肘はついてはいけなかったという記憶がある。

質問は大抵「○○ちゃんは××君と両思いですか」的な他愛ないものだったのだが、
ラブ様が突然暴走を始めたことがある。

きっかけは参加者のひとりの質問、「私の初体験はいつになるでしょうか」。
答え「ことし」。
質問「だれと」。
答え「●●●(実在の当時のクラスメート男子の名前)」。
質問「どこで」。
答え「がっこう」。
みんな、うっそ~ヤだ~~とか、質問した子を冷やかしてかなり盛り上がりました。

でもその瞬間、「おまえは おかされる」「おかされる」「おかされる」!!!
すごい速さで握った鉛筆が動き出したのです。やめてください、もう終了してください
ってお願いしても止まらない。どーしよーどーしよーってパニクって泣き出しそうに
なった時に、「お前ら何やってんだっ」って生活指導主任が入ってきたんです。
そしたら、ぴたっと鉛筆が止まりました。残された紙は摩擦でもうボロボロです。
助かったーって心底思いました。生活指導主任からは一人いっこづつ大きいゲンコツ&
説教をくらいましたが。 あれ以来このテの心霊ゲームはやらなくなりました。

集団ヒスが鉛筆/10円玉/板(ゲームで使用する意思の疎通ツール)を動かすんだ、とか
研究家は言うけど、あんな滑らかで激しい鉛筆の動きを見たら、それはきっと"違う何か"
だったんだと思わずにいられません。

ちなみに、私達にゲンコツをくれた主任は超現実主義者だったけれど、こういう心霊
ゲームをすることだけは厳しく禁じてました。というのも、彼がまだ若かりし頃、
同じように放課後の教室でこっくりさんをしてた彼の受け持ちの生徒が突然取り付かれた
ように叫びながら屋上へ駆け上り、おおかた身を投げるところだったという経験がある
からでした。あん時のゲンコツ、本当に痛かった~。






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