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スマホは見る道具から、AIに仕事をさせる操作盤へ変わるのか。サムスンが発表した「Galaxy Z Fold8」シリーズは、横長画面と用途別の設計でその答えを示そうとしている。アップル参入が現実味を帯びる今、競争軸は薄さやカメラ性能だけではない。議事録と要約、現場映像とマニュアルを並べ、AIの処理を人が監督する。折りたたみならではの価値と、普及を左右する条件を探ってみた。
韓国サムスン電子は2026年7月22日、横開き型の折りたたみスマートフォン「Samsung Galaxy Z Fold8」と上位機種の「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」を発表した。日本では7月23日に予約を始め、8月7日に発売する。今回の新機種で目を引くのは、処理性能やカメラだけではない。端末のサイズと画面比率を変え、折りたたみスマートフォンの役割そのものを再設計した点である。
Fold8はメイン画面が約7.6インチ、カバー画面が約5.5インチで、重さは201g。閉じた状態では一般的なスマートフォンに近く、開けばタブレットのような横長画面になる。上位のFold8 Ultraは約8.0インチ、215gで、開いた状態の厚さは4.1mmだ。Fold8 Ultraは資料作成やコンテンツ制作、Fold8は動画や読書など、同じ横開き型でも利用目的を分けた格好である。
しかし、横長のブック型はサムスンだけの発想ではない。米モトローラ・モビリティの「motorola razr fold」も、閉じた状態では6.6インチ、開けば8.1インチになる。各社が似た形へ向かうのは、単なる流行ではないだろう。画面を広げるだけでなく、AIの回答、元資料、操作画面を同時に表示するには、細長い画面より横方向の広さが必要になるからだ。
サムスンのTM・ロー社長は、AIが利用者の意図を理解して自律的に行動するエージェントへ進化する中、モバイル端末は「最もパーソナルな入口」になるとの見方を示した。つまり今回の横長化は、動画を大きく見るためだけの改良ではない。AIに指示を出し、その結果を確認しながら次の作業へ移るための“操作盤”を、ポケットに入るサイズで作ろうとしているのである。スマートフォン競争の新しい主戦場だ。
では、折りたたみ端末でなければ成立しにくいAI作業とは何か。第1は、複数の情報を見比べながら進める仕事である。たとえば、画面の左側にオンライン会議の議事録、右側に生成AIの要約を表示し、内容を確認しながらメールを作成する。通常のスマートフォンでもアプリの切り替えは可能だが、情報を頭の中に保持しながら往復するため、操作回数が増えやすい。
これに対し、横長画面では原文とAIの回答を同時に確認できる。見積書と過去の契約条件を比較する、Web会議を見ながら社内チャットへ指示を出す、外国語の資料と翻訳結果を並べるといった作業で強みが出る。サムスンもFold8シリーズについて、大画面に最適化したGalaxy AIやGeminiとの連携により、複数の作業を少ない手順で進められると説明している。
第2は、画像や現実の風景をAIに見せながら進める作業だ。カメラで機械や商品を映し、故障箇所や型番を調べながら、別の画面でマニュアルを開く。店舗では棚の写真から欠品を確認し、発注画面へ移る。営業担当者なら名刺や資料を読み取らせ、その場で面談記録を作成する使い方も考えられる。端末を半開きにすれば、机に置いたまま撮影と入力を並行できる。
もっとも、画面が大きいだけで仕事が自動化されるわけではない。AIが別のアプリを操作できること、企業データへ安全に接続できること、回答の根拠を確認できることが欠かせない。折りたたみ端末の価値は「表示領域の広さ」ではなく、AIが実行した処理を人が監督しやすい点にある。AIにすべてを任せるのではなく、途中経過を見ながら承認する。ここに、パソコンとも通常型スマートフォンとも異なる可能性がある。
折りたたみ市場を大きく変えるとみられているのが、米アップルの参入である。アップルは2026年7月23日時点で折りたたみiPhoneを正式発表していない。ただ、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどは、同社が2026年秋に最初の折りたたみ端末を投入するとの観測を伝えている。予想される価格は約2,500ドルで、安価な普及機ではなく、最上位のプレミアム端末になる可能性が高い。
調査会社カウンターポイントリサーチは、世界の折りたたみスマートフォン出荷台数が2026年に前年比21%増えると予測する。特に成長が見込まれるのは、縦に折るフリップ型ではなく、横に開くブック型だという。アップルの参入は、既存メーカーの利用者を奪うだけでなく、これまで折りたたみ端末を様子見していた消費者を市場へ呼び込む可能性がある。
本当の競争は端末の薄さではなく、AIと個人データをどこまで結びつけられるかで決まる。サムスンはGalaxy AIに加え、グーグルのGeminiや各種アプリを横断する仕組みを強めている。一方、アップルはメール、写真、予定表、メッセージなど、利用者が日常的に使うサービスを自社の基本ソフト上で統合できる。利用者の文脈を理解する上では、大きな優位性だ。
ただし、アップルの参入はサムスンにとって必ずしも悪材料ではない。iPhone向けに折りたたみ画面へ対応するアプリが増えれば、開発者はAndroid版も最適化しやすくなる。これまで折りたたみ端末は、開いても通常のスマートフォン画面が引き伸ばされるだけのアプリが少なくなかった。アップルが市場へ入ることで、端末ではなくアプリ側の対応が一気に進む可能性。競争相手の参入が、市場全体を育てる構図である。
それでも、折りたたみ端末が仕事道具として一般化するには、3つの壁が残る。最大の壁は価格だ。サムスンの公式教育機関向け価格でも、Fold8は25万6,385円から、Fold8 Ultraは28万1,941円からとなる。一般向けには下取りや分割払いが用意されるものの、通常型の高性能スマートフォンとタブレットを別々に買えるほどの負担である。
第2の壁は耐久性と修理費だ。折りたたみ端末には通常型にはないヒンジや柔軟なディスプレイがあり、落下や画面損傷への不安が残る。サムスンは水没、画面割れ、盗難などを対象にした「Galaxy Care」を最長2年間提供するが、保険への加入を前提に購入価格を考える必要がある。企業が従業員へ支給する場合も、本体価格だけでなく、故障時の交換時間や予備機の確保まで含めた総保有コストが問われる。
第3の壁は、折りたたむ必然性である。メールを読む、動画を見る、写真を撮るだけなら、通常型スマートフォンでも困らない。端末を開く手間に見合うほど作業時間が短縮されなければ、利用者はやがて開かなくなる。生成AIを載せただけでは不十分で、会議、営業、保守、店舗運営など、職種ごとに「この作業なら開いたほうが速い」という用途を作る必要がある。
折りたたみ端末がパソコンを完全に置き換える日は、まだ遠いだろう。ただ、移動中はスマートフォン、机では小型タブレット、半開きにすれば撮影端末というように、1台で役割を変えられる点は大きく、高価格を納得させるほど頻繁に「開く理由」を提供し、AIを日常の作業へ溶け込ませた企業になる。折りたたみスマートフォンの勝負は、形状競争から仕事体験の競争へ移ったのである。
「Samsung Galaxy Z Fold8」「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」、そして「Samsung Galaxy Z Flip8」、通信キャリアでは 楽天モバイル
で予約受付が可能。
発売日: 8月7日(金)9:00

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