BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

マッチ売りの少女達 


マッチ売りの少女達 [act.1]




 それは雪の降りしきる寒い夜の事でした。















 あるお家に、オバさんと小さな少女が2人で住んでいました。
少女の名は”イチゴちゃん”と言いました。




今日はクリスマス。
テーブルの上には所狭しとたくさんのお料理が並べられていきました。
どれも、普段と違ってとても美味しそうな手の込んだ料理でした。

七面鳥の丸焼き。やわらかいレーズンパン。温かいシチュー。大きな卵の目玉焼き。デザートには真っ赤なリンゴとプラム。

イチゴちゃんは食事の用意を手伝わされていました。
でも、朝から何も食べさてもらってないので、もうお腹が空いてたまりませんでした。ですが、今日は普段の質素で量の少ない食事と違って豪華な料理がいくつも用意されていましたので、頑張って食事の準備を続けていました。
ご馳走を食べさせてもらえると思って。


そしてお皿を並べて終えて、すっかり食事の準備が整った時……、
オバさんは家の玄関の所にイチゴちゃんを呼び付けました。
そして玄関の扉を開けました。

たちまち、外の寒い空気が中に入って来ました。
外には雪が積もっていました。
もう夕方頃で、まだまだこれから夜にかけて寒さが厳しくなりそうでした。








ドカッ!







いきなりイチゴちゃんはオバさんから”蹴り”を入れられました。
イチゴちゃんの小さな身体は宙を舞い、降り積もった雪の上に落下しました。







ドサッ!







その冷たい雪がイチゴちゃんの頬にくっ付きました。

イチゴ「ううっ、冷たい……。」

可哀想にイチゴちゃんはお家から外へ放り出されたのです。
家の玄関先でイチゴちゃんのオバさんが仁王立ちしていました。
そして、大きな手さげのカゴをイチゴちゃんの前に投げてよこしました。








ドサッ!








オバさん「いいかい!そのカゴの中の物を全部売って来るんだよ!
そうしないと家には入れないよ!」

カゴの中には大量の”箱入りマッチ”が入っていました。

イチゴ「でもオバさん。私、寒くて風邪をひきそう。それにお腹が空いてもう動けません。」

オバさん「なにを甘い事言ってるんだい!その辺で野たれ死にたく無ければ、マッチを全部売ってきな!
そうしないと飯を食わせないよ!誰のおかげでこれまで生きて来られたと思ってるんだい?
もっと態度でその感謝の気持ちを示しておくれ!

ああそれから……、売り上げ金をチョロまかそうなんて思うんじゃないよ!
そんな事したら……、警察に”泥棒”として突き出すよ!!」

イチゴ「そっ、そんな……。」








オバさん「 わかったら、さっさとおいき!







バタン!



そう言ってオバさんは家の扉を閉めてしまいました。

カシャ。

それから、家の内側から鍵がかけられる音がしました。







 ……なんて酷いオバさんでしょう。

一応遠縁の親戚に当るのですが、いつもイチゴちゃんには冷たくするのです。これまでも満足な食事を与えてくれませんでした。




 イチゴちゃんは起き上がって、服に付いた雪を掃いました。
見ると、オバさんの家の窓からは温かい光がこぼれています。

イチゴ「うう、ぐすっ、ぐすっ……。」

イチゴちゃんは思わずその家の窓に寄り添って、中の様子を覗きました。
家の中は温かく、暖炉の火で満たされていました。
そしてオバさんが1人でテーブルの上の料理を食べていました。
ワインを片手に、七面鳥の丸焼きをかじっていました。
テーブルに置いてある温かそうなスープからはまだ湯気が立ち登っていました。おいしそうです。



しばらくイチゴちゃんは家の中を眺めていましたが……、
そこでどんなに待っていようとオバさんが中に入れてくれる筈はありません。それで仕方なく、マッチを売りに行く事にしました。

イチゴ「はぁ~~~~~。」

マッチのたくさん入ったカゴを下げようとしましたが、重すぎて下げられません。それでソリのように引いて雪の中を歩いて行きました。



ズルズルズルズルズル………。



辺りには大粒の雪が降って来ました。
雪は本当に美しいのですが、頬に当ると冷たいです。
でも、イチゴちゃんの頬も指先もだんだん感覚が無くなっていくのでした。


イチゴ「うう……、うう……。
どうして、私のお母さんとお父さんは私を残して死んでしまったのかしら……。」


イチゴちゃんの頬を涙が伝って流れ落ちました。
それは凍ると痛くなるので、イチゴちゃんはサッと涙を拭きました。






 イチゴちゃんは重いカゴを引いて、何とか人通りの多い街までやって来ましたが……、そこでもマッチはほとんど売れませんでした。

イチゴ「すいません。マッチを買ってください」

「もう持ってるよ」

イチゴ「すいません。マッチを買ってください」

「いつもの店で買うからいらない」




マッチはいろんなお店で買えるので、特にイチゴちゃんの所から買っていこうという人はほとんどいませんでした。
この調子では、一晩かかってもほとんど売れないと思えました。

イチゴ「……もう、お家へ帰れないのね。ぐすん……。」

イチゴちゃんは悲しくなりました。そして泣きました。
でも、道行く人は皆忙しそうに歩いて行きます。誰もイチゴちゃんの事を気にとめませんでした。


やがて、イチゴちゃんはお腹が空いてどうにも歩く事が出来なくなりました。
それで、街の大通りの中心にある大きな噴水の縁に座り込んでしまいました。
そこに追い討ちをかけるようにまた雪が降り出し、イチゴちゃんの身体にかかりました。







マッチ売りの少女達 [act.2]


 別の家にイチゴちゃんと同じく、遠縁のオバさんと2人で暮らしている年端も行かぬ少女がいました。
名前を”ピーチちゃん”と言います。

ピーチちゃんもイチゴちゃんと同じ街に住んでいました。

ピーチちゃんの家でもクリスマスの準備がされ、テーブルの上にはたくさんの料理が用意されました。
それでピーチちゃんは食事の用意を手伝わされていました。
朝から何も食べさてもらってないので、もうお腹が空いてたまりませんが、ご馳走を食べさせてもらえると思って、我慢してお手伝いをしていました。

その食事の準備が終わった頃……、
オバさんは家の玄関にピーチちゃんを呼び付けました。
そして玄関の扉を開けました。







ドカッ!






いきなりピーチちゃんはオバさんから”突き”をくらいました。
ピーチちゃんの小さな身体は宙を舞い、降り積もった雪の上に落下しました。






ドサッ!






ピーチちゃんはお家から外へ放り出されたのです。
その後、オバさんは大きな手さげのカゴをピーチちゃんの前に投げてよこしました。




ドサッ!




オバさん「いいかい!その中の”木炭”を全部売ってお金に変えておいで!
そうしないと家の中には入れないよ!」

その大きなカゴの中には、これでもかというほど大量の木炭が入っていました。

オバさん「さっさとおいき!」



バタン!



そう言ってオバさんは家の扉を閉めてしまいました。
なんて酷いオバさんでしょう!





 ピーチちゃんは起き上がって、服に付いた雪を掃いました。
ここで、どんなに待っていようとオバさんが中に入れてくれる筈はありません。それで仕方なく木炭を売りに行く事にしました。

木炭のたくさん入ったカゴを下げようとしましたが…、重すぎるのでソリのように引いて雪の中を歩いて行きました。





ズルズルズルズルズル……。





そして何とか人通りの多い街までやって来ましたが、木炭はほとんど売れませんでした。
木炭は自宅前まで売りに来る業者がいたので、わざわざピーチちゃんの所から買っていく人はほとんどいませんでした。
この調子では一晩かかっても、まったく売れないと思えました。

ピーチ「……もう、お家へ帰れないのね。」

でも、道行く人は誰もピーチちゃんの事を気にとめませんでした。





やがて、ピーチちゃんはお腹が空いてどうにも歩く事が出来なくなりました。
それで、街の大通りの中心にある噴水の縁に座り込んでしまいました。







マッチ売りの少女達 [act.3]


 また別の家にイチゴちゃんやピーチちゃんと同じく、遠縁のオバさんと2人で暮らしている幼い少女がいました。
名前を”チェリーちゃん”と言いました。

チェリーちゃんも、イチゴちゃんやピーチちゃんと同じ街に住んでいました。


チェリーちゃんの家でもクリスマスの準備がされ、テーブルの上にはたくさんの料理が用意されました。
チェリーちゃんは朝から何も食べさてもらってないので、もうお腹が空いていましたが、我慢してお手伝いをしていました。
そして、その食事の準備が終わった頃……。







ドカッ!







いきなりチェリーちゃんはオバさんから”飛び蹴り”をくらいました。
チェリーちゃんはお家から外の雪の上へ放り出されたのです。
その後、オバさんは大きな手さげのカゴをチェリーちゃんの前に投げてよこしました。






ドサッ!






オバさん「いいかい!その中の”野菜”を全部売ってお金に変えておいで!
そうしないと家には入れないよ!」

カゴの中にはこぼれんばかりの大量の野菜が入っていました。
チェリーちゃんは仕方なく、野菜を売りに行く事にしました。





ズルズルズルズルズル……。





そして重いカゴを引いて、何とか人通りの多い街までやって来ました。
ですが、野菜はほとんど売れませんでした。


やがて、チェリーちゃんはお腹が空いてどうにも歩く事が出来なくなりました。
それで、街の大通りの中心にある噴水の縁に座り込んでしまいました。







マッチ売りの少女達 [act.4]


 マッチ売りの少女イチゴちゃん。
街の大通りの中心にある噴水の縁に座り込んでいましたが……、身体が凍えて、いよいよ我慢出来なくなって来ました。


イチゴ「寒くて、寒くて、仕方がないわ。」





それでイチゴちゃんは売り物のマッチを擦る事にしました。
本当はオバさんから固く禁じられていたのですが……。


シュ!


マッチの火は小さなものでしたが、それでも、その火に凍った両手をかざすと温かく感じられました。
なにより、その炎の揺らめきを見ていると、少し心が温かくなりました。
イチゴちゃんの目にはなんだかまた涙があふれて来ました。








 すると、卒然イチゴちゃんのすぐ横から声がかけられました。

「いいわねぇ、その火。温かそう。」

驚いたイチゴちゃんが振り向くと……、そこには同じ歳くらいの小さな少女が座っていました。

今までそんな近くに座っていたのに、その少女の存在に気付かなかったのです。
よく見ると、その少女は頭と肩には雪が積もっていました。イチゴちゃんと同じく寒さの為に身動きをしていなかったようです。



イチゴちゃんはその少女に付いた雪を掃ってあげました。

「ありがとう。私は”バニラ”。もう寒くて寒くて動けなくなったの……。」

イチゴ「まあ、バニラちゃん。あなた、どうしてお家に帰らないの?」

バニラ「ぐすっ!オバさんがお家に入れてくれないの。
”商品を全部売って来るまで家には入れない!”って言われたの。
でも商品は全然売れないし……、朝から何も食べて無くて……、もう売る力も出ないのでここで座り込んでしまったの。」

イチゴ「かわいそうに……」

イチゴちゃんは彼女の為にマッチを擦ってあげました。
バニラちゃんはその小さな火に凍えた両手をかざしました。

バニラ「ありがとう。温かいわ。
でもそれって”商品”でしょう?あまり使うと駄目よね?」

イチゴ「もう、いいわ……。
どうせこのマッチは全然売れなかったもの。
私もオバさんにお家から追い出されたの。
”マッチを全部売って来るまで家には入れない!”って言われて。
だから私、もう行く所が無い。ここで凍え死ぬしかないんだわ。」




2人とも同じ境遇でした。それでなんだかとっても悲しくなりました。

バニラ「……マッチを擦ってくれてありがとう。
でも、そのマッチは売り物だから……、私の商品と代えてあげる。」

バニラちゃんはそう言って、自分のカゴの中からなにやら重そうな物を取り出しました。

それは”鉄鍋”でした。

バニラ「遠慮しないで受け取って。まだいっぱいあるから。」

カゴの中にはまだ山のように鉄鍋が入っていました。

バニラ「あまり売れないのよ。鍋なんてどこの家にも1つはあるから」

一応マッチを擦ってしまったイチゴちゃんはそれをもらいました。






 それからもこの2人はまたマッチを擦り続けました。
心は温かくなりましたが……、この小さな火では身体までは温かくなりません。
夜になって寒さは厳しさを増して来ました。
辺りは、街の小さな街灯の光と擦ったマッチの灯りだけになってしまいました。







マッチ売りの少女達 [act.5]


 するとそこへ……。

「その火を貸していただけませんか?」

と言って来る少女がいました。
この少女も、飢えと寒さの為に噴水に縁にじっと座っていたのでした。

「私は”ピーチ”。私はオバさんの家から追い出されたの。
”商品をみんな売って来るまで家には入れない!”って。

私、売れ残りの商品の”木炭”があるから、それに火を点けて皆で温まりませんか?」

イチゴ「いいのですか?”商品”でしょ?」

ピーチ「ええ。でも、全然売れないので……、もういいんです。」

イチゴちゃんとバニラちゃんは身体が冷え切っていたので、そのご好意に甘えさせてもらう事にしました。
それでイチゴちゃんが、ピーチちゃんの持っていた木炭にマッチで火を点けました。

するとどうでしょう!




温かい炎が灯りました。





イチゴ「温かい!温かいわ!」

バニラ「ホント!身体が温まるわ!」

イチゴちゃんもバニラちゃんもうれしくて泣き出しました。
そして、もちろんピーチちゃんも。







 3人でその火を囲んで冷えた身体を温めていると……、

「私も火に当たらせてください」

と言ってくる少女がいました。
”チェリーちゃん”です。

まったく気付きませんでしたが、実はチェリーちゃんも飢えと寒さの為に噴水に縁にさっきからじっと座っていたのでした。

チェリーちゃんは手に何か持っていました。

「その代わり、これをあげますから。」

それは商品の”野菜”でした。

「私はオバさんの家から追い出されたの。
”この野菜をみんな売ってしまわないと家には入れない!”って。
でもお野菜は全然売れなくて……。」

朝から何も食べていないイチゴちゃん・バニラちゃん・ピーチちゃんはその”食べ物”に目を輝かせました。


しかし……、


その野菜はカチコチに凍ってて、そのままでは食べられませんでした。

イチゴ「これじゃ、売れない筈だわ……。」

チェリー「私、家のオバさんから今日は何も食べさせてもらって無いんです……、でも商品のお野菜もこの通り凍っていて……、”盗み食い”できなかったんです。」

ガックリくる少女達。




でも……、




イチゴ「そうだわ!このお鍋でその野菜を炊きましょう!」




いい思い付きでした。
少女達は残りの力を振り絞ってその辺りの石を集めて来て、小さな”かまど”を作りました。その上にイチゴちゃんがバニラちゃんからもらったお鍋を掛けました。
そして下に木炭を置き、マッチで火を点けました。
お鍋に雪を入れると、やがて溶けてお湯になりました。
そこにお野菜を入れました。



グツグツグツ……。



ほどなくして、そこからはいい匂いが漂い始めました。








 その匂いに釣られて声をかけてくる少女がいました。

メロン「私は”メロン”。
私もお仲間に入れてくれませんか?朝から何も食べて無いんです。
オバさんの家から追い出されたの。
”商品を全部売って来るまでお家に入れ無い!”って。
でも、商品が全然売れなくて……。」

その少女は見るからに元気が無さそうでした。
肩と頭には雪が残っていました。
彼女もまた寒さと飢えにやられているようでした。
イチゴちゃんはその雪を掃いながら言いました。

イチゴ「いいわ。お野菜が炊き上がったらいっしょに食べましょう!」

メロン「私、商品の売れ残りの”牛肉”があるの。それをお鍋に入れましょう。」

メロンちゃんはそう言って自分の持ってきたカゴの中の凍った牛肉をお鍋の中に入れました。

メロン「私、家のオバさんから今日は何も食べさせてもらって無いんですけど……、でも商品のお肉もこの通り凍っていて……、”盗み食い”できなかったんです。」

皆、喜びました。また食べ物が増えたからです。





グツグツグツグツグツグツ……。





お肉を入れると、お鍋からはさらにいい匂いがして来ました。








マッチ売りの少女達 [act.6]


 少女達は近くに生えている木の小枝を折って来て、箸の代わりにしました。さらに大きな葉っぱをちぎって来て、それを小皿の代わりにしました。






 そこへ……、

アンズ「私もお仲間に入れてくれませんか?朝から何も食べて無いんです。
オバさんの家から追い出されたの。
”商品を全部売って来るまでお家に入れ無い”って。
でも、商品があまり売れなくて……。」

と声をかけてくる少女がいました。
この少女も元気が無く、大変お腹が減っているようでした。

イチゴ「ええ、いいわ!貴方もいっしょに食べましょう!」

アンズ「私、今日売らされていた商品があるの。”卵”よ。これもお鍋に入れましょう。」

卵は凍っているようでした。殻の周りが氷の粒で覆われていました。
これでは売れません。
お鍋にはその凍った卵がいくつも入りました。






 こうしてお鍋が出来上がりました。

少女達はその温かいお鍋を囲んで箸で突付きました。
それは今までに口にしたどんな食べ物よりも美味しい味がしました。

食べると空腹が満たされ、さらに身体も温まりました。
少女達には元気が戻って来ました。







 すると、街行く1人の大人がその匂いに釣られてイチゴちゃん達に声をかけて来ました。

「なにやら、おいしそうな匂いだね。私にも1つくれないか?」

そう言ってその男性は銀貨を一枚差し出しました。

イチゴちゃん達はもうお鍋はすっかりたいらげてしまっていたので、別のお鍋をこしらえる事にしました。
もう1つ鉄鍋をバニラちゃんから提供してもらい、そこに他の少女達から提供されたお野菜とお肉と卵を入れました。
そして出来上がった物を鍋ごと男性に渡しました。

「ありがとう。お腹が空いてたんだ。」

その男性は喜んでその場で食べていました。

「これは美味い!」







 そこにちょうど通りかかった恋人らしい2人が、「私達にも1ついただけますか?」と言って、銀貨を一枚差し出して来ました。
イチゴちゃん達はまた別のお鍋を作って2人に渡しました。

「これはおいしい!」

「本当だわ!」

その2人は喜んで食べていました。





 すると、その様子を遠くで見ていた5~6人の団体がこちらにやって来ました。そして銀貨を3枚差し出しました。

「3つだ!早くね!」

イチゴちゃん達はまた別のお鍋を作り始めましたが……、

「おおい!こっちもだ!」

と言ってその後に並ぶ人達がいました。

イチゴちゃん達はせっせとお鍋を作りました。
そしてそれを渡しました。

「うん!こいつはいける!」

「うん!身体も温まるし!」

「味も最高だな!」



 さらに次々と銀貨を差し出す人達が集まり始めました。
すると、瞬く間にお鍋に入れる材料が無くなってきましたので、メロンちゃんとチェリーちゃんとアンズちゃんが買出しに行く事なりました。
もちろん売り上げの銀貨を握り締めて。









 メロンちゃん達がしばらく行くと、大きな荷車を路肩に止めて、その上に腰掛けている元気の無い3人の少女達と出くわしました。
少女達の身体と荷台の上の荷物にはだいぶ雪が積もっていました。
この少女達にはもう雪を掃う元気も残っていないのでしょうか?

メロンちゃん達がその少女達の身体の雪を掃って上げると……、

「私は”パイン”。
私の家のオバさんから、”この荷台に乗っている物を全部売ってこい!”と言われたの。
”そうしないと家に入れない!”って。
でも、朝から何も食べさせてもらってないので、もう売る元気も無くて……。」

と1人の少女が言いました。

その荷台には野菜やお肉や卵がいっぱい乗せてありました!

すぐにメロンちゃん達がその荷台の商品をみんな買い取る事になりました。
そしてこの荷台を押していた3人の少女”パインちゃん・レーズンちゃん・リンゴちゃん”達にもお鍋をご馳走する事にしました。




 3人の少女を乗せたまま、メロンちゃん達が荷車を押して、噴水のある場所まで戻って来ました。そこでお鍋を食べさせてもらったパインちゃん達3人の少女はすっかり元気になりました。
お礼にこの3人もイチゴちゃん達のお鍋作りを手伝う事になりました。






 少女達が作ったお鍋は大人気でした。
荷台の材料は全て無くなり、一晩で大変なお金になりました。





 それでその少女達はもう誰もイジワルなオバさん達の家には帰りませんでした。その日は安い宿屋で部屋を一室だけ借りて皆で寝ました。

そして、次の日から……、
そのお鍋で得たお金を元手して、毎日そこで鍋料理を作って販売を続けました。

少女達が作ったお鍋はいつも人気で、ついに隣町からも食べに来る人が出始めました。それに伴ってメニューもドンドン増えていきました。













 そしてその少女達は……、今もそこで鍋料理屋を開いて、いっしょに暮らしているそうです。

















THE END








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