「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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BLUE ODYSSEY
木人形の兵隊
木人形の兵隊 [act.1]
これは”かかし”の木人形のお話。
”ヘイウッド”は木こりだった。そして木工職人でもあった。
木を切れない冬の間は、作業小屋で”木人形”を作って生計を立てていた。
その木人形は”かかし”として、田畑の周りにいくつも立てられていた。
この国の農家は皆ヘイウッドのかかしを好んで使っていた。
ところで、ヘイウッドの住む「カンナ」国はこのところ戦争続きだった。
ヘイウッドの作業小屋からは、よく幅広い野道を行軍する兵士の姿が見えた。
それはススキのような白い草が生い茂った中に、鉄製の重い鎧を着けた男達が行軍している様子だった。
この軍はカンナ国の軍隊だった。
まあ、どの国の兵士もそうだが、この兵士達も歩く時は疲れた感じを見せていた。
だるくてやる気が無さそうだ。武器を肩にかついだ者がいるが、その武器の持ち方は常にだらんとしていた。
馬にまたがる指揮官らしき男も、馬の上に置かれた人形のような感じで揺られていた。手綱を持つ手には力が入ってないようにも見える。
実際、彼らはたび重なる実戦で疲れている事もあろう。
しかし、一見そうは見えるが、戦に慣れた軍人というのはたいていそういうものなのだ。
だが、ひとたび戦闘となれば、己の内に秘めたる力を全て絞り出し、相手の軍人を斬りつける。
彼らはそういう者達だった。
ヘイウッド「私は彼らみたいな事はできないなあ。
それに私は木人形職人に過ぎないから、彼らみたいに実際に剣を取って戦う事は出来ない。」
ヘイウッドはいつも彼らの姿を見てそう思った。
しかしこの国に住む者は、自国の軍隊に守られている事を強く感じていた。
このカンナは平和だった。国はそう広くも無く、格別豊かな土地でも無かった。
だが、国民のほとんどが努力家で、良くなる工夫を常にしていた。
畑は水の無い所へ用水路を作って水を引いた。
また畑の穀物を狙う鳥や動物達には”かかし”を立てて対向していた。
また国の周りを城壁で囲み、防御力を高めていた。
さらに軍隊はよく訓練され、敵国からの攻撃を防いだ。
だが、このところ、言われ無き侵略行為を受ける事が多くなってきた。
カンナは比較的小さな国なので、穀物等の生産量には魅力が無かったが、工芸などの技術には秀でていた。
それで他国から国力が弱いと錯覚され、”落としやすい国”だと思われたのか、よく他国からの侵略目標にされた。
カンナは小さいながら軍隊には正規軍があった。
それと敵から攻められた時にだけ臨時に徴収する予備役の兵員があった。
この兵員とは”普段は農作業をする者達”が剣を取った姿である。
この国の国民は、国王の政治が良かったので愛国心が高く、兵はいつも大勢集まった。
この時代の戦闘では、兵士の数と訓練が物を言う。
訓練も行き届いたこのカンナ国軍は、一見それほど強そうに見えないのだが、他国の侵略の手を幾度と無くはね返してきた。
そのカンナを何度か攻めた隣国「ソン」のマルゴー将軍。
最近その他の国へも侵略行為を重ね、自国の領土を一代で広げた男。
ソン国内では英雄扱いだが、一歩外へ出ればただの戦争犯罪者でしかなかった。
彼は傲慢で、野心家で、他の国の者の涙を見ても心が痛む事などまったく無かった。
今日もマルゴー将軍は自室で怒っていた。
マルゴー将軍「”カンナ”はなぜ落ちないんだ!クソッ!やつらめ!ワシの名を落としおって!」
マルゴー将軍は怒りではらわたが煮えくり返っていた。
マルゴー将軍「あんな小国、併合しても何の役にも立たん!
我々の軍が、ただあのルートを通ってその先の国に侵攻したいだけなのだ!
それなのに、あの小国の攻略戦でこうも足止めを食らうとは!」
部下 「将軍!国王より伝言が入っております。読み上げましょうか?」
マルゴー将軍「読まんでも内容はわかっとる!”どうしてカンナに手こずっておるか”だろう…?」
部下 「あっ、はい。それとこの間、王に申し込まれた増援の兵士の件ですが……………。」
マルゴー将軍「それも”断られた”のだろう?”あんな小国ごときを落とすのに、
なぜそんなにも兵員が必要なのかと?”と」
部下 「……………はい。」
マルゴー将軍「あのいまいましいカンナ!
ヤツラ、他国に攻め込む事もせぬのに、”守り”だけはめっぽう堅い。
じつに腹立たしい。
カンナを攻略するのに何か良い方法はないかな?」
木人形の兵隊 [act.2]
そんなある日、マルゴー将軍は”毒薬をカンナ国の井戸に放り込む作戦”を思い付いた。
こっそりと数名の者を忍び込ませ、カンナの井戸という井戸に毒を放り込むのだ。
そのアイデアをいつも自分の右腕としている”参謀長”に話してみた。
ソン国参謀長「”毒は”いけません。条約で禁止されております。」
マルゴー将軍「この際、カタい事言うな。どうせ、カンナは”跡形も無く滅ぼす”のだ。そうなりゃ、証拠は残らん。後でどう言われようと知った事ではない!」
ソン国参謀長「いいえ、その内わかります。
毒を投げ込んだ井戸はその周りの草が枯れて育たなくなります。
その事が大国ヨーデルの耳にでも入ったら…………。
彼らにいい戦争口実を与え、我々はヨーデルから攻められます。
それに…………、”毒は相手も使えます”。
こちらが毒を使えば、相手も我が国の井戸に毒を放り込むでしょう……。」
マルゴー将軍「くーーーーーーーーーーー!!
だがな、このままでは苦戦する!我が国王は増援もよこさない!
これまでヤツラとの幾多の戦いで兵士数も減った。この人数でヤツラと戦えというのか?!!」
ソン国参謀長「確かに………。
でも、そろそろ認めなくてはなりませんな。カンナの強さを」
マルゴー将軍「認めるだと?!仮にも俺達は名の知れたソン国の正規軍なのだ!
それがあんな田舎の国の軍隊に返り討ちに遭っていては…………、
我々の名声も今にがた落ちになるぞ!」
ソン国参謀長「その点につきましては……、”すでにがた落ちになって”います。
隣の”フォスター”国などは、我々を
”田舎の国を落としに出かけたが、落とせぬ内に帰って来た田舎者の国”
と言っておるそうです。」
マルゴー将軍「なんだと?!それは本当か?!」
ソン国参謀長「はい。
それに、フォスターも戦争の準備を始めました。
事のしだいでは我が国に攻め入ってくるかも知れません。
フォスターは我々の戦力を過小評価し始めました。
いえ、もうすぐフォスター以外の国もそう思い始めるでしょう……。」
マルゴー将軍「くーーーーーーーー!!!やはり”毒”だ!毒を混入するしかない!!」
ソン国参謀長「いけません!
先ほど言いましたように、それをすればこの大陸の一番の大国ヨーデルの調査ですぐに見つかります。そして我が国がヨーデルから攻め込まれるか……、それとも”毒の使用”の事を公表され、我が国の地位と名誉が地におとしめられる事でしょう!」
マルゴー将軍「くーーーーーーーーーーー!!!
ならば”良い毒”はないのか?!
そこらの”薬の調合師”どもにすぐにバレるようなものではなく、跡形も残らぬものは?」
ソン国参謀長「そんな毒が存在するなら、とっくに……」
マルゴー将軍「くそっ!」
マルゴー将軍は怒っていつもの部下呼んだ。
マルゴー将軍「ちょっと、休憩しよう!気分転換だ!
ええい、酒だ!酒だ!冷えた酒を持って来い!」
すると部下が、いつもの様に井戸で冷やした上等の酒を持って現れた。しかし、その部下の顔がいつもと少し違う。
マルゴー将軍「なんだ?お前は?」
部下 「はい。私はいつも貴方にお仕えしている者の”実弟”です。」
マルゴー将軍「なんだと?では”トーマソン”のヤツはどうした?」
部下 「はい、腹痛を起こしまして、自宅で寝ております。」
マルゴー将軍「なんだと?”腹痛”だと?」
部下 「はい。何でも”腐った物”を間違って食べてしまったとか……。」
マルゴー将軍「なんだそれは?!たるんでおるな!!」
将軍は部下から酒を受け取り、グイッと一気に飲み干した。
上等の酒は胃袋に染み渡り、マルゴー将軍の気持ちを穏やかにさせた。
すると、将軍の頭の中に何かがひらめいた。
マルゴー将軍「待てよ。”腹痛”か……………………。」
木人形の兵隊 [act.3]
ある日の夜、カンナ国軍の斥候(せっこう)がソン国軍の食料調達部隊を発見した。
カンナの兵士はすぐにその部隊を拿捕し、荷馬車を徴収した。
その荷馬車にはソン国の兵隊の為の酒と食料が山のように積み込まれていた。
特に酒は1級品の品だったので、カンナの兵士達は我先にとそれを飲んだ。
そして皆、ほろ酔い気分になった。
それから積まれている食料を食べた。
それは一度焼かれてから干された保存食みたいな料理だった。
おそらくこの辺りにやって来る渡り鳥を調理したものだ。
保存食なので、そのままでも食べられる。
特に皮の部分はうまく焼かれていて、パリパリとした独特の食感が心地良かった。
「絶品だな!」
その分捕った食料をたらふく食べる兵士達。
「うまい!うまい!」
ここの宿営地で飼っている子犬もそのおこぼれに預かった。
腹いっぱい食べて満足した後、子犬の様子が変な事に気付いた。
弱っている。水を飲ませようとしたが…………、飲まない。
そして、すぐに死んでしまった。
「まさか?この肉……。」
その部隊の隊長はすぐに兵士達に肉を食べる事を止めさせた。
残った肉をよく調べると、部分的に腐った物があった。
ある物は、内臓の部分がそっくり腐った物に入れ替えられていたようだった。
木こりのヘイウッドがカンナ国の王に呼ばれたのは翌日の早朝だった。
それはまだ夜の開け切らぬ内。
カンナ国の王「これからお前に話す事は極秘だ。他言してはならぬ。いいな。」
ヘイウッド「はい。」
カンナ国の王「昨夜、我が国の兵士達が国境付近でソン国の食料部隊を発見。その者達を捕らえて、食料を徴収した。そしてそれを食したが………、食べた者は全て腹痛を起こした。
これは後で分かった事だが、国境に展開する主な陣営で、複数同じような事件が同時に起こっている。
すなわちこれはソン国の策略だ。
動ける兵士の数が足りなくなった今、もうすぐ彼らの侵攻が始まると考えていいだろう。」
ヘイウッド「………………。」
カンナ国の王「そこで国中からさらなる臨時の兵を徴収したが、まだまだ数が足りん」
ヘイウッド「私などはなんの役にも立ちませんが、王がご必要と言われるなら、私も一兵士として戦いに加わります。」
カンナ国の王「それはすまぬ。
だが、呼んだのはその事ではない。
そなたは”生きたかかし”も作る事が出来ると噂で聞いた事があるが本当か?
何でも木人形に命を吹き込む事が出来るとか?」
ヘイウッド「はい、まあ、なぜかそのような技量を天から授かっております。」
カンナ国の王「そうか!ならば、かかし達に命を吹き込み”兵の代わり”をさせてもらえぬか?」
ヘイウッド「……………………。」
ヘイウッドは考えた。
そう言えばこの国の農業用の”かかし”は全てヘイウッドが作っていた。
それは丸太を削って作った頑丈な人形で、腕や足もちゃんと付けられていた。それには間接があって、肘や膝がキチンと曲がるようになっていた。
大きさも人間とほぼ同じであるから、兵士の鎧が着られる。
これに命を吹き込めば確かに兵士のようになる。
現在はまだ長い冬がようやく終わった頃。
ヘイウッドの倉庫には冬の間に作った真新しい木人形の”かかし”が約160体置かれていた。
ヘイウッド「しかし、もし仮に、ある程度の人数をそれで揃えられたとしても………、
かかしの木人形達はそんなに強い兵士にはなりません。”力の弱い女性”程度ぐらいの戦闘力かと思われます。それに訓練も受けておりませんし…………。」
カンナ国の王「”とりあえず”でいいのだ。とにかく頭数さえ揃えば。
腹痛を起こした兵士の状態を見た医者が言うには………、全快するまで4~5日はかかるそうだ。」
ヘイウッド「そうですか、そんなに。
わかりました。ではとにかく作業にかかります。
かかしに装備する兵隊用の剣と鎧をお貸しいただけますか?」
カンナ国の王「うむ、わかった。すぐに用意して馬車で運ばせよう。」
木人形の兵隊 [act.4]
こうして、城の防衛専門に当っていた衛兵が、お城の倉庫から武具を持ち出す準備を始めた。
時間が無いので、先にヘイウッドは城から自分の倉庫まで別の馬車で送ってもらった。
そこに着いて、木人形のかかし達に命を吹き込む作業を始めた。
まず、大きな広い倉庫の床に木人形達を順番に寝かせていった。
そして丁寧に魔法の特殊なパウダーを木人形の体に振りかける。
それから魔法の呪文を唱えるのだ。
ヘイウッド「トウテムエルケス。トウテムエルケス。
この木の塊に命を与えよ。
トウテムエルケス。トウテムエルケス……………。」
この呪文は長く、全部唱えるのにたっぷり1時間は有した。
そして呪文をちょうど唱え終わった頃、城から武具を運んで来た馬車がそこに到着した。
それは160人分の真新しい武具を積んでいた。その物量は大きな馬車4台分にもなっていた。
武具を運んできた兵士達がヘイウッドの倉庫へ入ると、
神経を集中させて呪文をかけ終わったヘイウッドが、疲れ果てて倉庫の床にヘタリ込んでいるのを見つけた。
兵士達はいったん”木人形”に目をやったが、広い倉庫に並べられた木人形達はまだ寝たままの状態だった。
兵士は慌ててヘイウッドを起こした。
兵士 「弓・剣・鎧・盾・兜を持ってきた!急いでくれ!これだけの物をかかしに着せるだけでもかなりの時間がかかる!!早くしないと!」
金属製の鎧は着込むのに時間がかかるのだ。
兵士達に手伝ってもらって、やっとヘイウッドは起き上がった。
ヘイウッド「心配無い。見ていてくれ。」
そして寝ている木人形達に言った。
ヘイウッド「さあ、我が子達よ。表の馬車の武具を各自受け取り、身に着けるのだ!」
そう言うと、木人形達はゆっくり起き上がり始めた。
それを見て兵士達は驚いた。
ソン国はカンナの国境付近に身を潜めて待機していた。
そして斥候の帰りを待っていた。
斥候は「カンナの兵士が本当に腹痛を起こして倒れているか」探らせる為に派遣していた。
木人形達は起き上がって、それぞれ規則正しく整列した。兵士はかなり驚いていたが、
ヘイウッドから、「武具を早く彼らに渡すように」と言われて、初めて我に返った。
そして馬車の荷台に飛び乗って、積んでいる武具を順番に木人形に手渡し始めた。
木人形達は一通りそれを受け取って、各自自分の体に着けた。
一方、ソン国ではカンナに攻め込む準備は整っていたが…………、
斥候はまだ戻って来なかった。
木人形の兵隊 [act.5]
鎧を着て、剣を腰に挿して弓矢を持つと、木人形達は立派な兵士に見えた。
そして武具を運んで来た4台の馬車と、ヘイウッドを乗せて来た馬車に分乗して乗り込んだ。
それから急いで国境の防壁に向かった。
この話はすぐに王に伝えられ、王は大変喜んだ。そして……、
「すでに田畑に取り付けられている”かかし”達もすぐに回収し、もう一度ヘイウッドに魔法をかけさせるのだ」
と言った。
すでに田畑に置かれていたかかし達は風雨にさらされて黒く変色していた。
それらは軽く水で洗われて、次々とヘイウッドの倉庫に運び込まれていった。
また”各農家の倉庫に眠っていた予備のかかしや”、
”壊れて子供の遊具になっていた庭に置かれたかかし”まで借り出された。
こうして国中から、”かかし”が集められた。
そして再び倉庫には320体程の中古のかかしが並べられた。
それはかなり古くて痛んだものもあり、中には手足が取れているものもあった。
それらのかかしに着ける武具もいろんなところからかき集められ、中古ではあるがとりあえず320名分が揃った。
そしてヘイウッドは壊れたかかしに応急処置を施してから、
再び魔法のパウダーをかけ、呪文を唱え始めた。
ヘイウッド「トウテムエルケス。トウテムエルケス。
この木の塊に命を与えよ。
トウテムエルケス。トウテムエルケス………………。」
ソン国の斥候が戻ってきた。
斥候 「カンナの防壁陣地内の兵士数は非常に少ないようです。
やはり大半が腹痛で引き上げたものと………。」
マルゴー将軍「よし!やったぞ!
”腐った肉”の作戦が功を奏した!!
よし、ただちに総攻撃だ!カンナを攻略する!」
こうして、国境から少し離れた位置に身を隠していたソン国の兵士が、いっせいに国境目指して走り始めた。目の前にはカンナの防壁が見えた。
またもヘイウッドは全神経を集中して呪文を唱えたので、疲れ果てその場に座り込んでいた。
今度もまた兵士に手伝ってもらって、やっとヘイウッドは起き上がった。
そして寝ている木人形達に言った。
ヘイウッド「さあ、我が子達よ。表の馬車の武具を身に着けるのだ!」
そう言うと、かき集められた木人形達はゆっくり起き上がり始めた。
そして、馬車に積まれた”寄せ集めの武具”を身に着けた。
木人形の兵隊 [act.6]
ソン国の軍隊がカンナ国陣地の防壁に迫ると、その向こうから弓矢が飛んで来た。
撃っているのは、その日肉を食べなかったわずかな兵士達と
新たにかき集められた女子供による臨時の兵士達、
そして城の防衛を専門としていた予備の兵士達だった。
さらに、そこへ160名の木人形の兵士が加わった。
カンナの将軍「撃て撃て!もうすぐ320名の増援も到着する!!
勝利は我が国の元に輝く!」
カンナの将軍はわざと大声でそう言った。
これは突撃するソン国軍にも聞こえた。
すぐに伝令はこの事をマルゴー将軍に伝えた。
マルゴー将軍「そんなばかな?やつらの所にはもう予備役の兵はいないはず。女子供をかき集めてもそんな数にはならん。
あれは嘘を言っているのだ。はったりに過ぎん。ええい!かまわぬ突撃だ!」
そして突撃した時、ちょうど新たに320名の”木人形”の増援が到着した。
すぐに、これまたかき集めの弓を構えてソン国軍めがけて撃ち始めた。
ソン国の兵士達は大きく崩れた。
伝令 「形勢は不利です。カンナには増援が到着した模様です。
かなりの数です。
たとえ、あの弓の嵐の中を突破して防壁を越えたとしても………、防壁内の接近戦では”数”で負けてしまいます!!」
マルゴー将軍「くーーーーーーーーーーーー!!!」
それから参謀長にうながされて、やむなくマルゴー将軍は兵を引く事を決意した。
ソン国が引き上げるのを見て、カンナの陣営の全ての者は喜んだ。
5日後。
完全に回復したカンナの兵士達は、また国境の警備についた。
そして、
『捉えた敵の食料は食してはいけない』
という軍規が設けられた。
今回の「腐った食料」の一件は、一応大国ヨーデルの王にも伝えられたが………、
証拠不十分なので特別ソン国におとがめはなかった。
さて、魔法がかけられた”かかし”達。
その後、英雄として国民の手で大事にされた。
そして、手の取れていた者や、傷があった者らは、皆、ヘイウッドの手で修理された。
さらに、古いかかしは綺麗に表面を磨かれ、塗装された。
そして木人形達は「さらなる木人形を作る作業」に当てられた。
こうして日に日に、カンナの国境警備には木人形達がぞくぞくと配備されていった。
木人形には毒も腐った食料も効かない。
もはやどの国もカンナに攻め入って来ないようになった。
ヘイウッドは今回の功績を称えられ、「将軍」の地位と称号が与えられた。
いまや2500名近くの兵士を指揮する将軍であった。
……だが、その兵士達、今の所、ほとんどが木人形であるが。
とにかくカンナは、その後長く平和を保ったそうである。
THE END
まあ、おとぎ話ですね。
あまりひねってないので、こういうお話だと思って楽しんでください。
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