BLUE ODYSSEY

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第2話 レッドノア act.31~33




完全に水の中に引き込まれた作業船と、半分海水に漬かりつつも、必死で逆噴射を続ける[レッドノア]の船体が暗い海中の中で見えた。
スポルティー・ファイブのコクピット正面モニターには赤外線での映像を画像処理した物が映し出され、そこには[レッドノア]の船体がはっきりと映っていた。

委員長「アンナ、”大きな船が沈む”って[レッドノア]の事だったの……。」

アンナ「……………………。」

アンナは悲しそうな目で2つの船を見つめていた。

クリス「……………………。」

神田 「ああ、なんて事や……。」

豪 「……。」






しかし、しばらくして突然アンナは気を取り直した。
見違えるような素早い動きでパネルを操作した。

ピッ!ピッ!

アンナ 「探索オン。」

クリス「アンナ、大丈夫か?頭痛は?」

アンナ「予知が現実の物となったとたん、頭痛が引いたみたいだわ。」

クリス「そうか……。」

しかし、アンナは悲しそうな目でまたモニタースクリーンに目をやった。

アンナ「見たくない光景だわ。」

アンナは予知が出来たのに現実の危機を止める事が出来なかったのを悔やんでいるようだった。

委員長「……………。」

アンナ「[ザーク]らしき影を見つけたわ!座標 X 280 Y -180 Z 340。近くよ。」

豪 「さすがアンナさん。よくそんな影から判断できますね。ソナーにもレーダーにも何も映って無いように見えますが。」

クリス「豪君、サブロック(潜水艦攻撃ミサイル)発射だ!」

豪 「了解!」

アンナが素早く目標の計算をして入力した。

ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!

豪の放ったミサイルは一度海面に出てから降下した。
そして相手を捕らえた。何発かは相手に命中した。

神田 「やった!!!さすが”俺の”アンナちゃんや!計算ぴったし!」

委員長「おっ、”俺の”????」







その時、敵の影らしき物が上昇していくのがモニター上に見えた。

委員長「はっ!いた!ザークみたい!まだ動いてるわよ。上昇して逃げるわ!」

クリス「よし、今度はライフルだ。海面に出られる前に撃つ!」

豪 「空間プログラム弾を使おう!
[レッドノア]!空間プログラム弾の発射許可を願います。」

郷田指令「よし!許可する!」

矢樹は思わずスポルティー・ファイブに通信を返した。

矢樹 「こんな時にいちいち許可を取って来るな!」

郷田指令「なんだと?!これだけは彼らに勝手に使わせるわけにはいかん!」

矢樹 「要らぬ手間をかけていると、その内死ぬぞ!」






スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.32]


[レイド]のザークは海面から離脱。ついにその姿を現した。
やはり白い機体で、いままで見た事も無いデザインだった。
流線型で舐めるようなふくらみを持つ手足。完全に装甲にカバーされている感じだった。

ザークは空中を高速で移動して[レッドノア]を襲った。
ミサイルが[レッドノア]の船体をえぐる。

ゴゴゴゴゴゴゴ!!!

ナターシャ「きゅあああーーーーーーーーーーーーーー!」




スポルティー・ファイブは海面から飛び立ちライフルを構えた。

クリス「ターゲットスコープに照準!」

素早くアンナが照準計算を始めた。

ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!

アンナ「補正計算終了!」

神田 「すげーーーーー!やっぱ違うな”俺の彼女”は!」

委員長「”彼女”?????……」



スポルティー・ファイブはライフルの射撃を行った。
空間プログラム弾は敵に向かって放たれた。上昇しながらの射撃だったが、初弾から敵に命中した。アンナの指定した数値は正確だったのだ。

その後、レイドのザークは動きを止め、逆さまになって海中に落ちた。そして海に飲み込まれるように消滅していった。そこには渦巻きが出来、水蒸気と共に真っ白い泡が海面浮かんだ。
それは不自然な波の動きで、何とも不気味が感じがした。




神田 「やったーーーーーーーーーーーー!!
やったぜーーーーーーーーーーー!」




神田は大いにはしゃいでコクピットの中で飛び跳ねた。

委員長「ふうーーーー。そうね。
でもまだ終わりじゃないわ![レッドノア]を助けなきゃ!」

[レッドノア]は大きく傾いていた。船体の半分はすでに水面下にあった。
まだ水没していない後部から行われている逆噴射が痛々しい。

委員長「ああ……。」






クリス「[レッドノア]、聞こえますか?
スポルティー・ファイブで[レッドノア]を牽引できませんか?」

矢樹 「その必要は無い!」

矢樹からの通信が入った。彼は落ち着いた口調で応答して来た。

急に[レッドノア]は底部で行っていた全ての噴射を止めた。

神田 「は?どうしたんや?燃料切れか?」

そのまま[レッドノア]の降下は停止した。沈んで行かない。
そして……、ゆっくりと傾斜を復元し始めた。

委員長「ああああ!」

郷田指令「擬装していのだ。[レッドノア]はこれぐらいではビクともしない。」

矢樹 「[レッドノア]は反重力システムで浮上している。そのシステムは船の外装甲から1つ内側に入った位置に存在し、攻撃を受けてもすぐには破壊されない構造になっている。それが機能停止しない限り[レッドノア]は落ちないのだ。」


郷田指令「先ほど噴射していたのは緊急用のブースターだ。敵を欺く為にハデに噴射していただけだ。
黒煙も大型煙幕弾からの煙に過ぎない。船のダメージは装甲版の損傷だけだ。内部には異常は無い。[レッドノア]は問題なく運行できる。」

クリス「そうだったんですか。」

郷田指令「君達には悪いと思ったが……、こうすれば[レイド]は目標を破壊したと勘違いして油断すると思ったのだ。そうすれば、我々にも勝機が見える。」

神田 「なんやーーー!随分と人騒がせやな!心配したで!」

委員長はホッとしていた。
アンナも潤んだ目でモニターを見つめていた。
豪も穏やかな表情になっていた。






スポルティー・ファイブ 第2話 レッドノア [act.33]


また1つの戦闘が終了した。

スポルティー・ファイブは[レッドノア]に帰還した。
メンバーは飛行中の[レッドノア]の甲板に着艦するのは始めての経験だったが、なんとか全員無事タッチダウンした。



[レッドノア]は修理の為に一度ドッグに入る事になった。
そこへ向かう途中、まだ夜だったがアンナは1人展望室に入り、そこから下を流れる夜景を見つめていた。
アンナはいつも無言だ。
眼下の景色を見つめるその表情には喜怒哀楽がまったく感じられなかった。






そこへ……、クリスが展望室に入って来た。

アンナは背中に人の気配を感じて素早く振り返ったが、それがクリスだとわかると動作が穏やかになった。
そして、無表情な顔にさっと生気が差した。

クリス「君のおかげだね、今回は。君は僕達より予知能力が高い。」

アンナ「……でも予知は出来ても、実際には何の役にも立たなかったわ。」

アンナはクリスとならスラスラ喋れるようである。

クリス「そんな事はない。
君に先にその事を聞いていたから、[レッドノア]が傾いた時慌てなかった。僕らは心の準備が出来ていたんだ。それだけで十分だ。
戦場で沈着冷静に行動する事が出来た。それが一番大きい。」

アンナ「……。」





しばらく黙っていた後に、アンナは自分から喋り始めた。アンナが自分から話題を切り出す事は珍しい。

アンナ「私、自分自身の事は何も予言できないみたいなの。自分自身の事が知りたいのに。」

クリス「本当だね。自分の未来を予知してみたいよね。
僕もそうだよ。自分の未来は予知夢に出て来ない。
でも、未来を知りすぎる事も良くないと思う。知らないからこそ未来に希望が持てるんだ。」

アンナ「でも、知りたい事もあるの。」

クリス「…じゃあ、こうしよう。お互い相手の未来を予知する事にしよう。
自分のなら見えなくとも、他の人のなら見えるかも知れない。」

アンナ「…そうね。いい考えだわ。じゃあ、私の未来を予知して。」

クリス「ああ、いいよ。じゃあ、僕のも頼む。」

アンナ「私にとって有益な物が見えたら教えるわ。それ以外なら教えない。」

クリス「え???」

アンナはそう言ってわずかに微笑んだかのように見えた。











THE END





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