BLUE ODYSSEY

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『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.42














『アリスの大豪邸』

第2部








これはワンダーランドでのお話です。









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アリスは目が覚めました。
ウサギさんは今日はお休みです。なのでウサギさんはまだ寝ていました。昨日はお屋敷の件で一日ほんろうされましたから。




ニセアリス「 ぐわああああああああああああああああああああ!!!


ぐわああああああああああああああああああああ!!!






ニセアリスの大きなイビキが聞こえています。それはまさに”地をはう”ような感じです。
ミルキーとモグモグは”ミルキーのお家”の中で寝ていました。だからそのイビキの影響を受けません。睡眠を妨害されることもありません。ウサギさんとタッキーが作ったお家は”子供用ハウス”とはいえ、防音対策も実に見事に出来ていたからです。

ところでニセアリスは今日も「お金をかせぎに」出かけるのでしょうか?
アリスは目を開けました。時計を見ますと午前10時頃でした。
どうやらニセアリスは諦めたようでした。なのでまだ寝ています。

なんだか昨日の一件でアリスは気持ちが沈んでいました。
そしてミルキーも同じように昨日は気持ちが沈んでいましたのでアリスはミルキーの様子を見に行きました。

”ミルキーのお家”のドアを開けるとすぐに脇に”黄色いデッカイ物体”が見えました。アリスはそれを少し押しのけながら中に入ります。そうしないと中に入れません。その黄色い物体はフカフカですごく温かいです。

モグモグ「ピピッ?」

そして奥まで進みます。このハウスの内側の「高さ」はだいたい1メートルぐらいです。ミルキーなら立ったまま移動出来ますが、アリスは立ったままでは移動出来ません。
奥にはミルキーが寝ているベッドがあります。照明器具なども完備されており、いたれりつくせりの造りでした。

アリスがミルキーを見ますと、ミルキーはふとんから顔を出していました。そして大きな枕で寝ていました。その枕は涙で濡れていました。

アリス「……………………。」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.43


アリスはみんなの食事を作るため、”ミルキーのお家”をいったん出て、キッチンへと向かいました。そしてみんなの分の食事を作ります。大人数なのでいつも大変です。

午前11時、テーブルに食事を並べ始めるとさっそくニセアリスが起きて来ました。
そして半分寝ぼけつつもテーブルに座りました。



ニセアリス「食うぞおおおーーーーー!!!」



まだ全ての食事を運びきらない内からニセアリスがガツガツやり始めました。

ニセアリス「ガツ!ガツ!ガツ!」

アリス「ニセアリスさん!」

いつもの事でした。






その後、ウサギさん、由美、そしてモグモグが起きて来ました。
そして席に座って食べ始めました。
ウサギさんは今日は珍しくコーヒーを飲んでいました。

ウサギ「ふう。コーヒーもいいな。目が覚める。」

それからゆったりと新聞に目を通していました。
由美はいつも通り無言でマイペースに食べ始め、モグモグは元気いっぱいエサをついばみ始めました。

モグモグ「コツコツコツ!

ピピィーーーーー!!!」






ニセアリス「 ガツ!ガツ!ガツ!






平和です。いつもと変わりない光景でした。

……………いえ、ミルキーが起きてきていません!
アリスはミルキーを呼びに行きました。また”ミルキーのお家”の中に入りました。

アリス「ミルキーさん!さあ、お食事の時間ですよ。」

ミルキー「…………いらないモン。」

アリス「ミルキーさんの大好きな”ドーナツ”もありますよ。」

ミルキー「後で食べる。ミルキータンの分は”ゾーキン”にはわたさないで。」

アリス 「……………………。」

そう言って”ミルキーのお家”から出て来ませんでした。
アリスはとても心配になりました。






一方テーブル席のニセアリスはいつになくイライラしている様子でした。

ニセアリス「あーーーーーー!くそう!くそう!

ガツ!ガツ!ガツ!!」

「ヤケ食い」している感じでした。

ニセアリス「くそう!くそくそ!」

ニセアリスはそんなでしたがウサギさんは涼しい顔で新聞を読んでいました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.44


ニセアリスはそんなウサギさんに食ってかかりました。

ニセアリス「”デカイ家”を買おうとするといくらぐらいだ?」

ウサギ「そーーーですねえ。
まあ物にもよるでしょうけど。
普通よりデカイお屋敷ですか?まあ新築だと3500万ゴールドもあればいいでしょうね。」

ウサギさんはひじょーーに軽くニセアリスの相手をしました。

ニセアリス「3500万ゴールドだと?」

ウサギ「そーーーーですねえ。
まあ、平均的な大きさの家だと新築で1800万ゴールドぐらいからですか?
最近は”オール電化”などいろんな仕様のお家がありますから、それにするともう少し高くなります。
まあ”ソーラーシステム”なんかいいですね。
昼間電気を電力会社に売って、夜は電気を買います。でもまだ”ソーラーシステム”自体が高い。」

ニセアリス「おい!」

ウサギ「はい?」

ニセアリス「ファンタジー世界に”オール電化”や”ソーラーシステム”があるのか?」

ウサギ「さあ~~~~~?
ここは何でも”ごった煮”のファンタジーワールドですから。
”インターネットカフェ”あり、電気製品あり、100ゴールドショップあり。自動車あり。」

ニセアリスはテーブルをドンとたたき、

ニセアリス「”あの屋敷”の大きさはどのくらいだ?」

ウサギ「は?”あのお屋敷”と言いますと?」

ニセアリス「”あの屋敷”の事に決まっているだろう?!!」

ウサギ「まあ、かなり広いですよ。」

ニセアリス「だからアタシが言ったんだ!
買っておけばよかった!ああ、くそう!
もう2度と手に入らん!」

ウサギ「でもまあ”広すぎる”というのも考え物ですよ。
だいいち”暖房”はどうしますか?」

今は冬でした。ウサギさんのお家には大きな薪ストーブがひとつ置いてありました。
そしていつも庭で大きな丸太を割って薪にしていました。薪ストーブは大変手間がかかります。それに温かくなるまで時間が必要なのです。

ニセアリス「暖房だと?”石油ストーブ”を買えばいいだろう?」

ウサギ「”石油ストーブ”ですって?
お言葉ですが”石油ストーブ”はファンタジー世界ではタブーです。
ファンタジー世界では”暖炉”や”薪ストーブ”でなくてはいけません。」

ニセアリス「電気ストーブのセラミックヒーターでもいいぞ!」

ウサギ「あああ………!」

ニセアリス「とにかく暖房なんてどうでもいい!」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.45


ウサギ「そうはいきません。大きなお屋敷は維持費がかかります。
広い空間を温めるには大きなストーブがいりますよ。それも数が必要でしょうね。
昔のお城やお屋敷を想像して見てください。きっと寒かったと思います。
”お城に住みたい”と言う女性はけっこういますが、本物のお城は実に住みにくいです。
あまり窓がなく、城内はいつも薄暗いです。」

ニセアリス「”蛍光灯”があろう?」

ウサギ「それに換気が悪い。」

ニセアリス「”換気扇”を回せ!」

ウサギ「湿気も多い!」

ニセアリス「エアコン!」

ウサギ「そして何より…………、夜は真っ暗で薄気味悪いです。」

ニセアリス「城内にBGMをかけろ!ネオンをつけろ!」

ウサギ「とおにかく!
大きなお屋敷に住むのは想像以上に大変なのです。
最近はインドアネット(ワンダーランドのインターネットの呼び名)の普及にともない、そういった大きなお屋敷に憧れを抱く人が特に増えたのです。しかし、インドアネットなどの情報はしょせん幻想に過ぎません。ええ、あれはただの”イメージ”なんです。
現実の大きなお屋敷はそれなりに大変なのです。」

ニセアリス「アタシは大きな屋敷に住みたいんだよ!
女なら当然の憧れだ!」

ウサギ「……………………。」

ニセアリス「アタシは”有名人”になるんだ!有名人は大きな屋敷に住むものと決まっている!」

ウサギ「(また始まった)
では”お笑い芸人の○ードリー春○”さんはどうですか?
家賃の安い下宿に住んでいます。」

ニセアリス「ファンタジー世界に”○ードリー”がいるのか?
それにアイツは”家を買いたい”そうじゃないか?
どうせ今や売れっ子の芸能人だ!”豪邸”を買うに決まっている!豪邸を買うから今の下宿でガマンしていられるんだ!」

ウサギ「さあーー?それはどうですかね?
でも立派ですね。家を買うために”節約”しているとは。」

ニセアリス「チッ!
本日よりただちに”別の物件狙い”に入る!
情報を集めろ!」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.46


ウサギさんはさっそく物件を出しました。それをノートパソコンに表示させました。

ウサギ「ではこちらなどはどうでしょうか?二階建て。平均的なお家よりははるかに大きいです。」

それはけっこうな大きさのお家でしたが、

ニセアリス「小さい!」

ウサギ「おやおや、これでもだいぶ大きなお屋敷ですが。
これでも”小さい”と言われますと………3階建てですか?」

ニセアリス「大きければいい!」

ウサギ「3階建ては大変ですよ。上り下りがその内、苦になって来ます。」

ニセアリス「大きければいいんだ!」

ウサギ「これ以上大きな物と言いますと………”ビル”?」

ニセアリス「アタシは”ノアの方舟”ぐらいある家に住みたいんだ!!」

ウサギさんは思わず「プッ!」と吹き出しました。
もちろんあの”お屋敷”はイメージ的にそれぐらいにも見えなくはありませんでしたが。

ウサギさんが吹き出したのでニセアリスは怒り、

ニセアリス「今に見ていろ!金を作ってやる!
そして、大きな屋敷を買ってやるぞ!」

そう言ってニセアリスはテーブル席を離れ、自宅に作っていたインターネットカフェをまねて作ったパソコンブースの中に引きこもりました。そしてドアを閉めました。インドアネットでなにやら調べ始めたようです。どうやら物件を探すようです。





そしてアリスの方はなんとかミルキーにご飯を食べさせようとして無理にテーブルにつれて来ました。

ミルキー「食べたくないモン。」

するとテーブルにいたウサギさんがミルキーの事を心配しました。
しかしミルキーが何も食べないのでウサギさんはパソコンをインドアネットに接続させました。そこには大きな家が映りました。

ミルキー「見たくないモン!」

ミルキーは見たくないようです。それでアリスが代わってノートパソコンを操作しました。
すると、けっこう大きな建物が売りに出ていました。
最初それは文字だけの表示が並んでいて、その中で気に入った物があればクリックしますと大きな画像が出るようなシステムになっていました。

アリス「まあミルキーさん!けっこう大きな”お家”がありますよ!」

そこには「広さがいくら」などと文字で書かれていました。
開けて見ますとお家の画像が出て来ました。

でもなんだか、イメージが。
どのお家もイメージ的にこれといった物がありません。
たとえ良い物があってもすごく値段が高いのです。

アリス「400万ゴールドぐらいまでだと……、」

ウサギ「そうですね、なかなか良いのはないですね。」

アリス「あ?これは?」

実に綺麗で新しいお屋敷がありました。
アリスはさっそくそれをミルキーに見せました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.47


アリス「ほらミルキーさん、見てください!とても綺麗なお家ですよ!」

それは白くて角ばっていて、とても綺麗に見えるお家でした。
ミルキーは最初チラッと見ようとしたのですが、その美しさに目をうばわれてしまいました。ミルキーはその建物の画像を見ました。ミルキーが急に元気になりました。

ミルキー「は?これが”よんひゃくまんゴールド”?」

それは横に広がった近代的なデザインの建築物でした。
そして夜のライトアップの画像もありました。中にオレンジ色の光が灯っており、とても綺麗でした。
アリスはあわててウサギさんに言いました。

アリス「これが400万ゴールドだそうです!
これは”お買い得”ではありませんか?」

アリスはお買い得の物件を見つけたと思い、興奮してウサギさんに言いました。
しかしウサギさんは、

ウサギ「あーーーー、どれどれ。」

と言って少しもあわてていませんでした。

ウサギ「これはですね、”建物だけ”のお値段ですよ。」

アリス「え?」

ミルキー「え?」

ウサギ「これは土地は別の方が持っていますから、売ってくれるかどうかわかりません。
ここに”借地になる”と書かれています。土地を借りるとなると高いですよ。」

アリス「そうですか?」

ウサギ「やめておいた方がぶなんです。」

アリス「でもこの前のように土地を売ってくれる事でお話がまとまるかも?」

ウサギ「このような綺麗な建物が格安で出た場合、多くは土地は売ってもらえません。だから格安なのです。あのお屋敷の場合は”たまたま”でした。」

アリス「そうですか………。」






アリスはさらにインドアネットを見ました。
すると…………、

豪華な「ホテル」が映りました。
広さは元ホテルだけあってすごく広い物でした。

アリス「これは?お値段は800万ゴールドとお高いですが、良い感じです!」

建物は新しく、中のロビーなども綺麗でした。イメージは豪邸よりもはるかに良い物でした。

アリス「これは良いのではありませんか?」

アリスはまた興奮してウサギさんに言いました。
するとウサギさんは………、

ウサギ「ああ、それですか?
どれどれ、あーーーーー、これは”山奥”に建ってますね。」

アリス「山奥?」

ウサギ「標高の高い山の上です。景色を楽しんでもらうために山の上に建てられた”ホテル”です。」

アリス「これは”土地付き”で、しかもとても広いですが。」

ウサギ「汽車の駅から遠いです。ほら、”自動車で30分”と書かれています。
自動車でですよ。」

アリス「歩くとどのくらいになりますか?」

ウサギ「さあ?山を登りますからね。歩くと3時間はかかるんじゃないでしょうか?」

アリスはこの物件はとてもダメだと思いました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.48


アリス「なかなか良いのがありませんねえ。」

ウサギ「安くて良い物はなかなか出ません。」

アリス「ふう。」

?「ほらっ!やっぱり良いのはなかなか出ないんだよ!!」  

後ろで声がしました。

振り返るとそこにニセアリスが立っていました。そしていつの間にかアリスやミルキーが見ている画面をのぞきこんでいました。

ニセアリス「探しても探しても良いのは出ない!
ああ、損をした!しくじった!あれを買っておくべきだった!
失敗した!
アンタたちの責任だ!セールスマンを待たしておかなかったから!」

アリス「まあ!私たちの責任ではありません。
ニセアリスさんがお金を持っていなかったからキャンセルになったのです。
それに次の物件はまだ探し始めたばかりです!」

ニセアリス「なら探して見ろい!良いのがあるかどうか!」

ニセアリスがそう言うのでアリスは探してみることにしました。
アリスにしてもやはり良い物件を買い逃した気分でいましたので。またふたたび同じような物件が出ることをアリスも内心期待していました。




するとほどなくして広いお屋敷が見つかりました。

アリス「まあ!」

それはとても豪華で敷地が広々としていました。
元「旅館」のようです。これは大きな建物です。そして立派でした。「3階建て」です。
建物内部の写真が出ていましたがどこも傷んでません。それに広いロビーがあります。
それを見たミルキーが元気になりました。

ミルキー「アリスタン、これ!」

アリスは今度は念の為、場所をみようとしました。
”山の上”ではなく”街の中”にあるようです。

アリス「ウサギさん、これは良い物件ではありませんか?」

アリスはそれをウサギさんに見せました。するとウサギさんは解説者のように、

ウサギ「ああ、これですか?
どれどれ、”街の中”に建っていると。
でも”最寄り駅”は”バス停”しか書かれていません。汽車は通ってないようですね。

う~~~~~~ん。

あーー!これは”離れ島”です!」

アリス「え?離れ島?」

ウサギ「ええ、そうです。
これは離れ島に建っている物件です。
ここに行くには船で行くしかないです。比較的小さな島です。」

アリス「そうなのですか?船で……。不便ですね。」

ウサギ「それに気をつけないと離れ島は台風の影響をもろに受けたりもします。」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 第2部 ACT.49


アリス「台風ですか?」

するとウサギさんはインドアネットで台風被害を受けた建物の画像を探し出して来ました。そしてそれをアリスたちに見せました。それは離れ島に建っている建物でした。
大きなビルのような建物がありましたが、ガラスが全て割れていました。
そして建物の中が水びだしになっていました。

アリス「ひどいですね。」

ウサギ「離れ島は場所によってはこのように自然災害をモロに受けるのです。
気をつけなくてはなりません。」

アリス「だからお安いのですね。」

ウサギ「それに”大陸”と行き来するとなるとやはり大変ですから。
気象状況によっては船が出ずに島に帰れなくなる時があります。」

アリス「まあ、そうですか!するとこの物件は…………、」

ウサギ「止めておいた方がぶなんです。」

ニセアリス「ほら!良いのはないんだよ!」

ミルキー「アリスタン、後ろでだれか何か言ってるよ。」

ミルキーは元気が出たのか、いつのようにニセアリスに返しました。
アリスはミルキーが元気になり始めたのを見てホッとしました。それでさらに探し始めました。

すると………、

アリス「まあ!」

実に大きな建物が売りに出されていました。これは元「別荘」だった建物です。
すごく大きな建物でした。
おまけに値段が信じられないぐらい安いです。

アリス「まあ!これは!」

汽車の駅からも一応20分です。しかも”離れ島”でも”山の上”でもありません。

アリス「ウサギさん、見つけました!これはどうでしょうか?」

ウサギ「ふうん、どれどれ。
”街の中”に建ってますね。
”最寄り駅”は”鉄道”と”バス”。
離れ島でもありませんね。

う~~~~~~ん。」

アリスは今度こそお買い得を見つけたと思いました。






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