いつまでも空を見上げていたい

いつまでも空を見上げていたい

祖父が教えてくれたこと



祖父が教えてくれたこと 



曾祖父と曾祖母の間に生まれた一人息子の祖父は

曾祖父に勝る厳しさを持ち合わせていた

剣道・日本刀・三味線を操る九州男

幼い私は当然怖かったので あまりなついていなかった

しかし ある日を境に 私は強烈な影響を受けてしまう



今の私の夢の原点は この祖父にある

その理由は 私が15歳の秋 他界した

この時 生まれて初めて人の死を目の当たりにした

そして 棺の前で人目を憚らず泣きじゃくる母の姿を見た

母が父親と最後に会ったのはいつだっただろうか

反対を押し切って出て行った母が 冷たくなった父と再会する姿は

本当に寂しそうだった

子供は休みごとに実家に預けるが 自分(母)が帰る事は殆どなかった

どんなに遠く離れても父は父 娘は娘なんだなと思った

大きいじいちゃん(祖父)は 病気で亡くなったけど

何回か入退院を繰り返していたので 数回お見舞いに行ったことがある

その時 あの怖い大きいじいちゃんが 大粒の涙を流して

静かな廊下で 私にこう言った


「 chanmphaよー お前は看護師さんにならんね
  看護師さんはよかばい 九州の看護学校にこんね
  お金ば出してやっけんが ここの娘にならんね
  看護師さんになったら お前がおじいちゃんの病気ば治してくれ 」


死を身近に感じる 重い言葉だった

「高校になんか行かない!一人で家をでる」

そう言って 親を泣かせていた私を知っての言葉だった

15歳の私にとって 祖父の死は 人生を変えるだけの力を放った

家庭の事情など詳しく知る由もなかった当時

自分のことを考えることが精一杯だっただけに

生きること 生まれてきたことの意味を 深く考えさせれた


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