私の沼

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黒頭巾ちゃんは白頭巾さんが苦手


「緑頭巾さん、おはようございます」
 隣のおうちのお庭で、草むしりをしていたらしい白頭巾さんが声をかけてきました。
 白頭巾さんは、お隣の女の子のママなのです。
「あ、おはようございます」
 黒頭巾ちゃんも挨拶します。
 挨拶しながら、黒頭巾ちゃんは、さりげなく薔薇の手入れをやめて、おうちに入る準備をはじめました。
 黒頭巾ちゃんは白頭巾さんが苦手です。
 長く話していると頭が痛くなってくるからです。
 白頭巾さんはなんでも「正しいこと」が好きで、それを人に言わずにいられない性格みたいです。おまけに暇なので、わざわざ黒頭巾ちゃんを捕まえて、ひとこと言ってやろうと、毎日待ち構えているようなのです。
「緑頭巾さん、あら、もうお庭のお手入れ、おしまいですか?こちらの方がまだみたい」
「あ、いいんです、もうお昼ごはんの準備をしなくちゃならないので」
「あら、まだ10時半よ、ずいぶん凝ったお昼ごはんになさるんですのね、緑頭巾さんはお料理がすごくお上手なんですって?」
「いえいえとんでもない。白頭巾さんにはとてもとても・・・」
「いいえー、うちはもう、宅配していただいているお野菜の自然の味を大事にしたいので、調味料はほとんど使わないの。最近は、外で食事をすると、塩分があまりにも高いので眩暈がしちゃって」
(今日はそういう話題かぁ)
 黒頭巾ちゃんはめんどくさくなりましたが、顔はずっと笑顔です。
「そうでしたね、いつかいただいた煮物も素材の味がすごく出ていて、おいしかったです」
「そうでしょ?あれはね、肥料を全く使わない土でしかできませんのよ。そうするとお野菜が特別においしくなるんですって。そういえば、緑頭巾さんは薔薇にずいぶんと肥料を与えているようですけど、そういうのって土が弱るそうですわ」
「はぁ・・・・」
「それでね、これ、その宅配の野菜のパンフレット。いつかお渡ししようと思ってましたのよ、ほほほ」
「ありがとうございます・・・」
 仕方なく黒頭巾ちゃんはそのパンフレットに目を落としました。
 すると、びっくり仰天!その値段の高いこと。
 コストがかかってるのかもしれないが、高すぎる。
 こういうものの平均値から言っても破格の値段です。
「ねえ、理念のところを読んでくださる?すばらしいでしょ?これは、わざわざこの農場を経営なさっている方のために、○○様がお書きになったものなのよ。世のため人のため、わたしたちは尽くすのよ。ねえ、緑頭巾さん、家に閉じこもって育児ばかりしていたら、世の中のことがわからなくなるわ!これを機会に、今度集会にいらっしゃらない?」
(うわぁ・・・出た)
 黒頭巾ちゃんは一拍置くと、
「あらぁ!ごめんなさい白頭巾さん!わたしったら上の子の歯医者の予約を忘れてましたわ!これから急いで行かなくちゃ!それではまた、ごきげんよう!」
 黒頭巾ちゃんは走っておうちの中へ戻りました。
 白頭巾さんは悪い人ではありませんが、黒頭巾ちゃんはやっぱり苦手です。



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