愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

その1

○藤子・F・不二雄著『モジャ公』

 ここのところ、藤子不二雄がマイ・ブームである。小さい頃に読んでいたが、大人になって読み返してみるとそれはまたそれでなかなか楽しめる。
言わずと知れた『ドラえもん』『エスパー魔美』『パーマン』など読みやすくて面白い傑作ばかりだ。

 さて、そこでこの『モジャ公』であるが藤子不二雄作品のホンワカギャグ漫画群とは一線を画している。

 内容はモジャ公、空夫、ドンモが宇宙を放浪するストーリーである。
確かにモジャ公はかわいいし全体的にギャグを散りばめているが、行き着く先が「自殺フェスティバル」を開催する星だったり、肉体がなく魂だけが支配する星だったり、はたまた新興宗教がはびこる地球だったりとかなりブラックである。空夫が切腹するシーン(あくまでモジャ公が透視したイメージ)なんかは子供が読むにしてはグロすぎである。また宇宙を旅する流浪の映画監督・タコペッティなんかは、明らかに『世界残酷物語』の監督・ヤコペッティのパロディであろう。

 一見、子供向けの冒険漫画であるが、どことなく終末論的なイメージが漂う藤子・F・不二雄の違う一面が見える漫画である。

○羅川真里茂著『赤ちゃんと僕』

 いわゆる少女漫画を真剣に読んだのなんて何年ぶりだろう。『ベルバラ』か、はたまた『キャンディ・キャンディ』以来である。そんな私を、この漫画はドップリハマらせてくれた。

 突然母親を喪ってしまった小学5年生の少年・拓也が、幼い弟・実の世話をするという話であるが、これは単純に育児漫画ではない。もちろん、拓也と実が全体の軸にはなっているのだが、彼らを取り巻く人々のエピソードも盛り込まれていて、色々な層の人たちが楽しめるようになっている。

 親と子、友人同士、教師と生徒、人間同士であれば何を考えているのかわからないのが当たり前である。でもそんなことに人は一喜一憂している。人とのつながりに色々悩む拓也の姿に妙に共感してしまう。そして温かく人を見つめる視線がそこにある。

○浦沢直樹著『20世紀少年』

 浦沢直樹ってホント天才だな、と思う。「YAWARA!」や「HAPPY!」は解りやすいスポーツ漫画だけど、この「20世紀少年」の複雑に張り巡らされたストーリー構成には唸らせられる。

 とにかく伏線が張られまくっていて、謎が多い。そのぶん、続きが気になってしょうがない。12巻の段階で「ともだち」の正体は明らかになってしまったが、本当に彼が「ともだち」だったのだろうかと気になってしょうがない。そこは浦沢直樹のことだから何かやらかしてくれそうな気がする。

 彼の漫画は、線がすっきりしていてとても読みやすい。他の漫画だと、エキストラ的なキャラクターはアシスタントが描いているのか全く顔が違ったりするが、彼の漫画は細部まで絵のタッチが統一されている。おそらく、浦沢本人が描き込んでいるのだろう。脱帽である。

 また、ウィットに富んだユーモアセンスもすごい。「HAPPY!」に登場した3人組キャラの名前が「布田・国領・柴崎」だったのには笑った。京王線沿線に住んでる人じゃないとわからないだろうが。

 とにかく謎が謎を呼ぶこの漫画、何度も読み返さないとわからない点が沢山ある。浦沢直樹の頭の中はどうなっているのか、ぜひ1度お話を伺ってみたいものである。

○雁屋哲・花咲トオル著『美味しんぼ』

 『美味しんぼ』の、何でも食べ物で片付けようとする設定が嫌いである。食べ物で人を説得したり、別れた男女を復縁させたり。

 まあ漫画だから仕方ないのだが。

 山岡士郎が勤める東西新聞社、ホントに馬鹿ばっか。あんな奴らが実際にいたら倒産してるだろう。

 でも新刊が出るたびに読んでしまう自分が怖い。勉強になるっちゃなるからね。

 最近、海原雄山がいい人になってきた。始まった当初はホントに嫌なやつだったのに。

○鳥山明著『ドラゴンボール』

 私は『ドラゴンボール』にあまり興味がない。興味がないというよりは、『ドラゴンボール』初期の、まだ悟空が子供だったときが好きだったので、後期のほうはついていけなくなったというのが正直なところ。牛魔王やタオパイパイ、レッドリボンあたりは好きで読んでいたが、フリーザ以降の人造人間なんたらかんたらなどに関しては全くわからない。

 ちょっと前にコカコーラにドラゴンボールフィギュアがついてきた時期があった。買ってみたらべジータが出てきた。ちょっと嬉しかった。

 友達は車の中でヤムチャのテーマソングを聴いているらしい。「狼牙風風拳!」と叫んでいる。コミック自体が終了して久しいが、人々にこれだけの影響を与えた『ドラゴンボール』はきっと名作なんだろう。『スラムダンク』と並んでいま読んでみたい漫画の1つである。

クリリンって何回死んだの?

○しりあがり寿著『方舟』

 終末的な世界が描かれている漫画って面白い。望月峯太郎の『ドラゴンヘッド』とか、藤子不二雄の『流血鬼』とか。

 今を生きる人々は、この世界に終わりが来るなんてことは考えないだろう。だからこのような漫画や映画を観ると戦々恐々とする。

 この漫画に描かれているのは、「大雨による滅び」である。血みどろの戦いで訪れる「滅び」と違って、大雨で洗い流される「滅び」はどこか美しくもある。

 自然を前に人は無力である。
 地震によって崩れた家を目の当たりにして呆然とする人々。
 雪で交通がストップして右往左往する人々。
 大雨で川が増水して中州で助けを求める人々。

 仕方ないとわかっているからこそどうすることもできない。そんな人間はやっぱりちっぽけな存在なんだろう。

 「この期におよんで希望だと?」というコピーがいい。世界の滅びを目前にして希望を抱くことは果たして意味があることなのだろうか。答えなんか出ないけど、考えてしまう。

 「滅び」を思い浮かべずに明るい未来は来るのか?

○柏木ハルコ著『よいこの星!』

 これはヤングサンデーに掲載されていたコミックである。柏木ハルコという人のマンガは着眼点が面白い。『ブラブラバンバン』というマンガは、いい音楽を聴くと脳内物質が大量に分泌され性的に興奮してしまう少女が主人公で、『花園メリーゴーラウンド』は日本の土着的な性文化について描かれたものである。発想がちょっと他の人とは違うところが魅力である。

 この『よいこの星!』は小学校が舞台で、そこで起こる様々な事件を描いたものである。子供を天使のように描くマンガはたくさんあるが、子供の社会も大人同様ドロドロしてて込み入ったものとして描いたマンガは少ないのではないだろうか。

 ここに登場する子供たちは、相手のことを羨んだり妬んだり、策略を練って陥れようとしたりと、けっこうえげつない。子供はあまり言葉を選んだりしないから、派閥争いなどは大人よりも露骨かもしれない。子供の社会の中でうまくやっていくのも実は意外と難しいんだろう。

 子供は天使でも悪魔でもない、人間なんだという当たり前のようで当たり前じゃないことを実感させてくれるマンガである。

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