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【007 / NO TIME TO DIE】先月末に緊急事態宣言も解除され、世間は少しだけ明るさを取り戻したような気がする。もちろん、いろんな分野でコロナ禍以前の状態にまで持ち直すのは、まだまだ途上にあり難題ではあるが・・・一人でも多くの人が、一刻も早く新型コロナウィルスに対する免疫がつくことを願ってやまない。とは言え、これまでの感染症をひもとくと、新型コロナウィルスから始まったわけではなく、ご存知のとおり結核・ジフテリア・コレラ・赤痢・腸チフス・日本脳炎など、それはもう人類と感染症との壮絶なる闘いの歴史は古いのである。そこで素人考えでは、これだけ科学が進歩した時代ならば、遺伝子レベルで様々な病原体に強い「組み換え」をおこなってしまえば良いのではーーというもの。あるいはゲノム編集して遺伝子を改変してみたらどうだろうか、と。そうすることで人類を脅かす感染症に対する強力な耐性がつくのではなどと浅はかにも考えてしまう。だが、この安易な考えは非常に危険である。なぜか。それは言葉にしてつらつらと科学的根拠を書きつらねるまでもなく、皆が一様に感じている神の領域を侵すことへの恐怖心とだけ言っておこう。時代はここまで来てしまった。今やアクション映画の題材として取り上げられるのは、麻薬や金塊、稀少な宝石類などではない。遺伝子情報なのだ。そんな折、私は『007/NO TIME TO DIE』を観た。会場で購入したパンフによれば、ボンド役であるダニエル・クレイグ版の集大成とのこと。要はダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドが本作で幕を閉じると言うわけだ。ショーン・コネリーをはじめとする歴代のボンドとは明らかに一線を画すダニエル・クレイグという役者の抜擢は、結果として素晴らしい成功を収めた。クールでスタイリッシュ、ムダな動きがなく、どこもかしこも洗練された演技。ダニエル・クレイグの魅力はそこに存在するだけで何らかのドラマが生まれ、アクションが正義の代行として相応しいものへと昇格されるところにある。もちろん歴代のボンド役を演じた役者らを否定するものではない。これは私個人の意見だが、時代に即したストーリー展開と、絶対的正義と溢れ出るセンシティブな感情の狭間に苦悩する人間ジェームズ・ボンドを掘り下げた作品は、過去にはなかったように思える。ストーリーはこうだ。ジェームズ・ボンドはMI6を勇退し、恋人であるマドレーヌとともにジャマイカで平穏な日々を過ごしていた。そんな折、旧友であるCIA諜報部員フェリックスが同僚のアッシュとともに現れる。彼らの依頼は、誘拐された科学者の救出というものだった。ジェームズは、いったんはその要請を断る。一方、マドレーヌはジェームズの過去の恋人である亡きヴェスパーのことを気にしていた。ジェームズはマドレーヌとのこれからを完璧なものにするため、ヴェスパーの墓前にケジメとして一人訪れる。ところがそこに供えられた花には、スペクターのマークが描かれたカードが添えられていて、それに気付いた直後、爆発する。一瞬気を失い、傷を負いながらもジェームズは犯人を追いかける。犯人とその仲間に取り囲まれながらもどうにかマドレーヌのいるホテルまでたどり着くが、ジェームズは彼女が自分を裏切ったのではと疑う。その疑念が晴れないままジェームズは一方的に別れを告げ、彼女を強引に列車へ乗せるのだった。作中、驚きの余り息を呑んだのは、これまで数々のアクション映画に取り上げられて来た核兵器モノとは異なり、遺伝子組み換えによりある特定の人物を狙った生物兵器の開発・濫用というものである。ターゲットには猛毒になり得るものでも、その他大勢には効果がない。(体内に蓄積はされるようだが)髪の毛一本から個人の情報を解析し、その人物の遺伝子にのみ反応する毒を放つという脅威。そら恐ろしく、絶望的な気分になる。こんな必殺の生物兵器、実は現実にも開発に成功しているのでは?と疑いたくなってしまう。これが映画の中の話で良かったと、つくづく思う。本作では日系人の監督がメガホンを取ったこともあり、かなり和のテイストが感じられる。悪役サフィン扮するラミ・マレックが身につけた能面は、文化の違う外国人にとってはかなり不気味な代物で、インパクトが強かったに違いない。また、ジェームズ・ボンドが畳の上で土下座して謝罪するシーンなどは、日本人として切なかった。しかし何より衝撃的だったのは、ジェームズ・ボンドとマドレーヌとの間に子どもが誕生していたことだ。ジェームズが鉄の感情の持ち主ではないことの証明であり、愛を渇望する一人の孤高な男であることの表現なのだ。国家のために自らを犠牲にするという愛国心を打ち立てるものではなく、愛する恋人、愛する我が子を救うために命を懸けるという人間ドラマがここに完結する。主役を見事に演じ切ったダニエル・クレイグは役作りにたっぷりと一年間かけるらしい。ストイックでプロフェッショナルな彼は、誰よりもジェームズ・ボンドという役を愛し、彼オリジナルの人物像を作り上げて来た。007シリーズはこれまでも時代を反映した脚本作りに定評があり、いつも新しい風を吹き込んでくれる目の覚めるような作品だった。そこに通算5作となるボンドの足あとを残したダニエル・クレイグは、私たちに人間として苦悩する新しい姿を披露してくれた。超人ボンドではなく、人間ボンドの誕生である。感動の嵐が吹き荒れる私には、言葉としての表現を自由に操れない自分がもどかしく、悔しい気持ちでいっぱいだ。だが、これだけは言っておきたい。こんなにも素晴らしい作品を届けてくれたスタッフ・キャスト並びに関係者の方々に厚く感謝の気持ちを捧げたい。ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・ああ、やっぱり映画って素晴らしい!!2021年10月公開【監督】キャリー・ジョージ・フクナガ【出演】ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、レイフ・ファインズ
2021.10.10
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【エアフォース・ワン】「アメリカ合衆国は姿勢を変えます。これからは政治的利益よりも、人道上、正しい道を取ることを優先させます。暴力は政治の武器ではない。それを用いる者を、我々は決して許しはしない」『エアフォース・ワン』は1997年の作品だが、今見てみるとつくづく「時代は変わったな」と感じてしまう。19年前なのだから当たり前だと言ってしまえばそれまでだが、今なら保守派のクリント・イーストウッドでさえここまでの愛国精神は前面に押し出さないであろう。とにかく「強いアメリカ」をアピールするのみならず、合衆国のためなら命をも惜しみはしないという自己犠牲精神がそこかしこからプンプンにおう。キャスティングも大統領役にハリソン・フォードを持って来るのだから、完全に不死身で負け知らずのイメージをねらってる感がアリアリだ。(ちょうどブルース・ウィリスのキャラが「不死身の男」というイメージで定着しているのと似ている。)作品は「空飛ぶホワイトハウス」の異名を取る合衆国大統領専用機(エアフォース・ワン)が舞台となっている。 ストーリーはこうだ。カザフスタンに非合法なテロ政権を誕生させた独裁者であるラデクを、アメリカはロシアの協力のもと、逮捕するのに成功した。アメリカの大統領であるジェームズ・マーシャルは、モスクワで開かれた祝賀会におけるスピーチで、「テロには決して屈しない」と断言する。その後、大統領らはエアフォース・ワンに乗り込んで帰国の途につく。搭乗したのは大統領を始め、その妻と娘、政府高官や警護官、さらにはロシアのテレビ・クルーなどであった。ところがこのロシアのテレビ・クルーは、全員テロリストだった。エアフォース・ワンが離陸してまもなく、特別警護室の職員3人を射殺したのを皮切りに、テロリストらは銃器を入手し、コックピットを占領。テロリストらの要求はラデクの釈放で、実現するまでは30分ごとに1人ずつ処刑すると突き付けた。警護官らは必死に大統領を守り、命と引き換えにパラシュート付き脱出艇に乗せようとするものの、大統領はみなを見捨て一人だけ脱出するなどということはできなかった。そこで、脱出したと見せかけて、密かに機内に潜伏するのであった。 『エアフォース・ワン』の見どころは、航空機という、いわば密室の中でくり広げられるアクション、そしてパニックである。テロリストからいかにして大統領を救出するのか。人の命と引き換えにテロに屈してしまうのか。オーソドックスだが手に汗握る、見ごたえのあるテーマとなっている。 主人公に扮するハリソン・フォードは、このときまだまだ若々しい。素手で敵にパンチを喰らわせるシーンなどキレキレで、アクションとしてはお見事である。テロリスト役ゲイリー・オールドマンも、このキャスティングは完璧なハマリ役だった!名悪役として申しぶんない。作中、BGMとして勇ましく流れている音楽はとても良かった!だれもが様々な機会に、必ず一度は耳にしたことがある勇壮な曲である。 作品は全体を通して「強いアメリカ」を意識した完全無欠のハリウッド映画である。多少、時代性を感じさせるところもあるけれど、それもご愛嬌。アクション好きの方にはおすすめだ。 1997年公開 【監督】ウォルフガング・ペーターゼン【出演】ハリソン・フォード、ゲイリー・オールドマン
2016.08.22
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【ホワイトハウス・ダウン】「我々がホワイトハウスを占拠した。はっきり言おう。私は大統領警護隊隊長マーティン・ウォーカーだ。人質は61人」「一体どういうこと?」「せっかく君をここから外へ出してやったのに、まぁいい。プロらしく話そう」「プロって? あなたは部下を殺したくせに!」「テッドのことか? 彼を殺したのは、私の人生で2番目に辛かった」昨年公開された映画のタイトルに、“ホワイトハウス”と付く作品がもう一つあったような気がする。単なる偶然に過ぎないとは思うが、視聴者としてはいろんな思惑を推理せずにはいられない。幸いにも私はもう一つの“ホワイトハウス”の方は、まだ見ていないため、比較することもなく『ホワイトハウス・ダウン』を楽しむことができた。監督はローランド・エメリッヒで、代表作に『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』『2012』などがあり、SFパニックに定評のある人物だ。なのでCGを駆使した、ヘリコプターが吹っ飛んだりホワイトハウスが炎上したりなどの見せ場は、得意中の得意として披露してくれる。さらには、出演者の顔ぶれもなかなかのものだ。どこかで見た感のある役者さんばかりなのに、ちょっとすぐに過去の出演作品のタイトルが出て来ない。やっと思い出したのは、大統領役のジェイミー・フォックス。この人は『コラテラル』にも出演していて、圧倒的な存在感を示した黒人俳優である。 あらすじはこうだ。議会警察官であるジョン・ケイルは、離婚した妻のもとにいる娘のエミリーをつれて、ホワイトハウスの見学ツアーに参加することになった。というのも、エミリーはソイヤー大統領の大ファンであり、政治に関してオタク的なところがあるので、ツアーに連れて行くことでギクシャクした親子関係を改善したいと思ったのだ。ツアーガイドの説明を受けながらホワイトハウス内を見学していると、何やら修理業者のような身なりをした男たちとすれ違う。そして国会議事堂にさりげなくモップやらバケツなどの清掃用具を載せた荷台を放置し、それを警備員が注意するものの、男たちはどこへともなく立ち去ってしまった。結果、大爆発が起こる。ハモンド副大統領らは、大統領専用機に乗り避難。ラフェルソン下院議長らは地下司令室へ避難。その間、テロリストらは次々と警備員や警官を射殺し、ツアー客らを人質にしてしまった。元軍人であるジョンは、トイレに行ったきりはぐれてしまった娘のエミリーを探すため、またソイヤー大統領を守るため、単身、テロリストらに立ち向かうのだった。 この作品に限ったことではないけれど、アクション重視となるとどうしてもストーリーが粗っぽくなってしまうのが鼻に付く。もう少しキャラクターにしっかりとした背景を持たせても良かったような気がするのだが、、、とはいえ、11歳のエミリー役の女の子がとてもキュートで、涙を浮かべて訴えるシーンなどなかなか良かった。 『ホワイトハウス・ダウン』を見終わってから、ちょっとだけ他人様のレビューを読んだら、いやびっくり、酷評が多かった。そこまで悪しざまに言うことはないんじゃないかと、ちょっと気の毒にすらなった。おそらくもう一つの“ホワイトハウス”を扱った作品と比較しての感想だとは思うけれど、そんなにそちらの方が良かったのだろうか?ちょっと興味が湧く。いずれにしても『ホワイトハウス・ダウン』は、アクション・パニック映画として見たら、なかなかの出来映えだと思った。 2013年公開【監督】ローランド・エメリッヒ【出演】チャニング・テイタム、ジェイミー・フォックスコチラからコチラからコチラから
2014.07.27
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【ワールド・オブ・ライズ】「人間は実に愚かだ。拷問は意味がない。痛みを逃れるためならどんなことでも言う。・・・君も経験があるはずだ。イスラム原理主義者から私は敵視されている。最悪の敵の1人、“ユダヤ人やキリスト教徒を仲間にするな”。」単なるアクション映画ではない、サスペンス・アクションというカテゴリに入るかもしれない。久しぶりに目を背けたくなるような、エグイ作品に向き合うことになってしまった。もちろん、テロの攻防を扱った内容なので、ある程度の非情さ、残忍さは致し方がない。 だが、後味が・・・。グローバリゼーションが叫ばれる昨今、こういう類の作品を観て痛感するのは、異文化を受け入れ、共存することの難しさだ。誰もが戦争を望んでいるわけではなかろう。平和で安全な社会を切望しているはずだ。だが現実には様々な利害が伴い、願望とは裏腹に異文化を攻撃し、淘汰しようとする。 それがどうしようもない人間に科された宿命なのだろうか。CIA工作員のフェリスは、地球規模で起こっているテロ攻撃を阻止するため、テロリストのリーダーを捕まえようと奔走する。一方、フェリスの上司は、現場で命を張って働くフェリスとは対照的に、安穏とした本国アメリカからケータイ一本で命令を下す。内戦の激化する中近東地域を舞台に、正体を明かさないテロリストのリーダーを罠にかけるため、一世一代の“嘘”を展開する。“熱い男”を演じるレオナルド・ディカプリオに対し、“冷めた男”を演じるラッセル・クロウとの対比が、絶妙な効果をかもし出していた。内容は、リドリー・スコット監督お得意の、比較文化の研究・異文化間の軋轢など、見事に表現されていたと思う。監督が『エイリアン』で見せた、気持ちワルイほどのリアリティさはこの作品でも健在で、充実した演出・美術・小道具に脱帽なのだ。世界情勢を大局的に見る必要性からも、向学のためにぜひともおすすめしたい作品だ。 2008年公開【監督】リドリー・スコット【出演】レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ※リドリー・スコット監督の『エイリアン』はコチラから
2014.07.17
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【007スカイフォール】「なぜ死ななかったか、やがてそのわけが分かったんだ。それは、あんたにもう一度会うためだったのさ」「今、こうして会えたわ、、、ミスター・シルヴァ、身柄を王立刑務所に移します」この『007』シリーズが始まって、2012年にはなんと50周年を迎えたとな?!そしてこの50周年記念に公開された『スカイフォール』は、23作目となる。そういう節目の作品ということもあってか、何やら初期作品への回帰を計ったように見受けられた。これが見事に成功!「ジェームズ・ボンドのテーマ」が流れた時には体中がゾクゾクするような高揚感に見舞われたし、アシュトン・マーティンでブイブイ走らせていくところは、やっぱりコレだよと思った。前回の『慰めの報酬』が決して悪かったとは言わないけれど、完成度の点から言ったら、がぜん『スカイフォール』の方が優れている。 今回、ボンドの敵となったのは、元MI6の優秀なエージェントだったが、Mから見捨てられたことにより復讐の鬼と化したシルヴァである。このシルヴァに扮したのが、な、なんとスペイン人俳優のハビエル・バルデムである。ザ・悪役という役者さんだ。(笑)この役者さんの代表作に、『ノー・カントリー』があるが、この作品でも悪役だった。それもチョー悪役で、極悪非道という設定だった。 シルヴァのキャラは、とにかく濃い。元MI6ならもっとスタイリッシュでクールなイメージを描いてしまうところだが、このシルヴァという人物は、オカマなのだ。だから字幕スーパーは、オネエ言葉に直した方が良いのでは?(笑) 「伝説の007は消えちまったのか?!」→「伝説の007は消えちゃったの?!」 「あのバア様、まだくたばらねぇのか?」→「あのおばあさん、まだ健在なのね?」 という具合に。このキャスティングを、おそらくきっと二つ返事で引き受けたであろうハビエル・バルデムの、楽しそうな表情と言ったらない!「こんな役をやってみたかったのだ」と言わんばかりに生き生きと、しかも伸び伸び演じているではないか。目の輝き(?)が違うのだから。 ストーリーはこうだ。MI6エージェントのジェームズ・ボンドは、Mの指令に従い、トルコでテロの実行犯の一人を追跡していた。その途中、走る列車の上でボンドと犯人がもみ合いとなってしまった。車で追跡していた同僚エージェントのイヴは、道が行き止まりとなってしまったことで、これ以上ボンドが格闘する列車を追尾することができず、断念せざるを得ないでいた。ところがMは、イヴにその場から射撃をして逃すなと命令。イヴは銃を構えるものの、ボンドと犯人がもみ合っているため、誤ってボンドを撃ってしまうとMに伝え、ためらっているが、Mは構わずに狙撃せよと命令を下す。イヴは思い切って引き金をひいたところ、やはりボンドに的中。ボンドは走る列車から真っ逆さまに大河へ落下してしまう。その後、ボンドは死亡という処置がなされた。一方、Mは情報国防委員会のマロリーから引退をすすめられるものの、拒絶。仕事を中途半端なところで放棄するわけにはいかないという理由からだった。そんな中、Mのコンピュータが何者かにハッキングされてしまい、さらにはMI6のビルが爆破され、多くの職員が犠牲となった。そのニュースを、一命をとりとめたボンドが目にし、ロンドンに戻ることを決意する。こうして職務復帰を果たしたボンドは、犯人を再び追跡するため上海へ赴く。だがその間にも、盗まれた機密情報がネット上に公開され、事態は悪化していくのだった。 今回のキーワードはズバリ、「新旧のせめぎ合い」だろう。これまで司令塔であったMに代わり、マロリーが指揮を執り、ボンドとはへたをすれば親子ほど違いそうな、若い兵器開発のQが見事な新世代型の銃を開発し、コンピュータを操作する。その一方で、アシュトン・マーティンが登場したり、古めかしい猟銃やナイフを武器にして戦うシーンは、アナログの魅力を大いに引き出している。何事にもバランスの問題だと思うが、『スカイフォール』ではその新旧の使い分けを上手に解決できた作品だと思う。 ボンド役のダニエル・クレイグも、このシリーズでは3作目となり、いよいよ板について来た。深い味わいのあるジェームズ・ボンドに成長した。この『スカイフォール』がスパイ映画として優れたエンターテインメント作品に仕上げられていて、傑作であることは間違いない、おすすめの逸作だ。 2012年公開 【監督】サム・メンデス【出演】ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、ベン・ウィショー
2014.06.23
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【96時間/リベンジ】「こっち側がヨーロッパで、向こう側がアジアだよ。2500年に及ぶ征服の歴史の中で、西洋から東洋へ、東洋から西洋へ、誰もがこの海峡を通ったんだ」「なぜそんなこと知ってるの?」「歴史について? それはこっちに来る飛行機の中で読んだのさ。その本を貸してあげよう」「ええ、貸して」ああ、やっぱりリーアム・ニーソンはスゴイ!この役者さんは、ブルース・ウィリスやスタローンのような肉体美を誇るアクション・スターではないけれど、頭脳と精神面での強さに定評のあるアクションを披露してくれる。とはいえ、格闘シーンのキレキレの技を、ぜひ見て欲しい!あの年齢でまるでヨタつくことのない安定性のある足腰と、しなやかに動く手と腕。お見事!一作目の『96時間』がとても良かったので、もしも裏切られる内容だとイヤだなぁと心のどこかで不安を抱いていた。ところが今回の二作目(続編)『96時間/リベンジ』は、アクション・サスペンスとして申し分のない出来映えだと思った。 今回の舞台はイスタンブールとなっているのだが、この東洋と西洋をつなぐエキゾチックな街並みが、実に効果的に作用している。市場やら商店が所狭しと並ぶ路地を、まだ運転免許取得前のキムがハンドルを握り、敵の追跡を振り切ろうとするカーチェイスは、もうドキドキハラハラの連続だ。やっぱり本物のアクションはこうでなくちゃいけない。 ストーリーはいたってシンプル。だがこれこそアクション映画の醍醐味であろう。元妻のレノーアが、再婚相手との関係が悪化していることを知ったブライアン(元CIA諜報員)は、イスタンブールへの旅行に誘った。ちょうど要人警護の任務で、イスタンブールへ出張の予定だったからだ。イスタンブールでレノーアと娘のキムと合流したブライアンは、家族でのんびり過ごすつもりでいたのだが、レノーアと二人でバザール見物に出かけたところ、自分たちの乗ったタクシーを尾行する不審車に気付く。一方、キムは、両親に気を利かせたつもりで一人ホテルに残り、プールで泳いでいた。レノーアは、ブライアンの機転により、タクシーから先に降り、買い物するフリをして人ごみに紛れてホテルに戻る算段だったのだが、狭い路地を右往左往しているうちに行き止まりにぶつかってしまい、結局、何者かに捕えられてしまう。ブライアンもさんざん敵を倒し、振り切ったのだが、レノーアを人質に捕えられてしまったことで、万事休す。二人は、頭に黒い麻袋を被せられ、拉致されてしまう。二人を襲ったのは、以前ブライアンが殺害した男の父親である、アルバニア人ムラドたちの仕業だった。 『96時間』シリーズは、リュック・ベッソンが製作・脚本を担当し、スタンダードなストーリー展開ながらも、視聴者を飽きさせない構成に仕上げられている。代表作に『レオン』や『トランスポーター』シリーズがあり、フランスのアクション・サスペンスとしての品質は抜群のセンスを誇る人物だ。 見どころはいろいろあるが、ブライアンが頭から黒い麻袋を被せられ、拉致された際に、細かく秒数まで計りながら周囲の状況や物音を聴き取り、アジトまでの道のりや場所を推測するシーンがカッコイイ!元CIA諜報員の本領発揮みたいな場面だ。そして言うまでもなく、全編に渡って感じられる、娘を想う父の愛情が(時には過保護にも感じられるけれど)なみなみと溢れていて、微笑ましい。 『96時間/リベンジ』は、シンプルでオーソドックスだが、皆の期待を裏切らない、最高にして良質のアクション映画なのだ。 2012年(仏)、2013年(日)公開【監督】オリヴィエ・メガトン【出演】リーアム・ニーソン、マギー・グレイス前作『96時間』はコチラから
2014.06.15
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【REDリターンズ】「話しているうちに自分が誰か、何を作ってたか思い出して来た。まったく驚きだ。実にMI6の連中はよくやったものだ。だがしょせん我々は使い捨てだ。役に立たなくなると、功績など忘れられる、、、ふざけとるよ。ひどい話だ」「ナイトシェードはどこにあるの?」「え? 何だい?」「どこに隠したのか覚えてる?」「ああ」前作『RED/レッド』が思いのほか面白く(コチラ)、その続編ということで予告を見たらますます見てみたくなり、iTunesでレンタルしてみた。この必要以上のワクワクした期待感が反ってあだとなったのか、見終わった後は、フツーのおもしろさを感じたに過ぎない。(決してつまらなかったわけではない。そこそこおもしろかったという意である。)結局、何でも最後のところは好みの問題だと片付けてしまいがちだけれど、なぜ自分は思ったほどではなかったのかを考えてみた。 一つは、ストーリーに斬新さがなかったこと。これだけの豪華キャストを揃えたら、もっと意外な方向に話を膨らませるとか、あるいは徹底したコメディ路線に視聴者を笑いの渦に巻き込むぐらいの展開があっても良かったのでは?もう一つは、“史上最強の殺し屋”という触れ込みのハン役イ・ビョンホンなのに、最後はちゃっかり“いいひと”になってしまったこと。(韓流ファン、しかもイ・ビョンホンには興行収益を見込む日本人ファンが多数いることもあり、当然の帰結かもしれない。) あらすじはこうだ。元CIAエージェントのフランクは、リタイア後、恋人のサラとスーパーで買い物を楽しんでいた。そこに突然現れたのは、かつての仲間、マーヴィン。マーヴィンは「おまえの力が必要だ」と、声をかけて来た。それに対し、きっぱりと断るフランクだが、マーヴィンの車が去っていったと思った瞬間、マーヴィンの車が大爆発。教会で葬儀の際には棺に横たわるマーヴィンを前に、フランクはその死を疑いながらも、悲しみに暮れる。そんなフランクは帰り際、いきなりFBIに連行されてしまう。FBIが知りたがっている情報は、冷戦時代の極秘プロジェクトである「ナイトシェード」計画についてであったが、フランクはあくまでシラを切る。と、その時、フランクのいる取調室を、特殊部隊が襲撃し、フランクは命を狙われる。そこへ助けに来たのは、死んだはずのマーヴィンで、フランクの恋人であるサラも一緒だった。こうしてフランクはナイトシェード計画に関わる巨大な陰謀に立ち向かうため、再び戦いに挑むのだった。 物理学者ベイリー博士に扮するアンソニー・ホプキンスは、『羊たちの沈黙』におけるレクター博士(コチラ)へのオマージュ。さらには、精神病院でのヘレン・ミレンの女王様的演技は、『エリザベス1世』のエリザベス女王(コチラ)へのオマージュ。それぞれ楽しませてくれる演出である。こういう豪華出演者たちのお笑いへの潔い演技が自然体なのは、さすがにプロ中のプロなだけはある。 この作品はオールスターに支えられて、一場の娯楽としてはなかなかおもしろく、それなりに楽しめるものだと思う。アメリカにおける興行成績はイマイチだったようだが、少なくともiTunesでは上位にランキングされているので、日本の市場は侮れないものがある。結論として私個人の感想としては、繰り返し見て楽しむというよりは、たまの息抜きには持って来いの作品だと言っておこう。 2013年公開【監督】ディーン・パリソット【出演】ブルース・ウィリス、ジョン・マルコヴィッチ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ前作『RED/レッド』はコチラ
2014.05.18
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【ブリット】「あなたって人が分からなくなったわ。あなたには何か本当に心を動かす事があるの? もうすべてに麻痺したの? こんな酷い生活が毎日よくできるわね!」「生活の半分はそうだ。仕事だからな」「見ている私がたまらないわ! 酷さでいっぱい! あなたの生活と言ったら暴力と死よ。あなたはすべてに無感覚になったのよ・・・私とは遠い世界ね」何ぶん古い作品なので、名作なのは知っていたが、なかなか食指が動かなかった。そんな中、ストレス性の神経症に罹ってしまった友人から電話があり、「何か映画の話をして欲しい」と言うので、「いつものネタバレでいいの?」と訊くと、「それでいい」と言うので、『ダイ・ハード』につてい全てしゃべり尽くしてやった。DVDを見る手間が省けるとは言っても、所詮、私の「それからジョンが怒ってワーッとわめき散らしてテロリストがガンガン撃って来て・・・」というネタバレ解説じゃ面白さが半減してしまうので、いっそのことDVDを貸してあげるよと言ったところ、見るのが面倒とのこと。結局、私の解説で『ダイ・ハード』って面白い! と、友人が喜んでくれて(私のネタバレ解説で映画を見た気分になったようだ)、スティーブ・マックイーンの『ブリット』を思い出すと言い出した。前置きが長くなってしまったが、そこでやっと私も『ブリット』とやらを見てみようという気持ちになったわけだ。実際、見てみると『ブリット』のアクションは主にカーアクションで、それこそが見どころとなっている。おそらく友人は、私のネタバレ映画解説を耳で聴きながら、この格好良い『ブリット』のカー・アクションに置き換えて想像していたに違いない。舞台はサンフランシスコ。ある日、サンフランシスコ市警のブリット警部補は、チャルマース上院議員から呼び出される。それは、ジョニー・ロスというマフィアの一員で、200万ドルを横領し、暗殺者から命を狙われている者の保護を依頼するものだった。というのも、チャルマースがロスに、裁判所の証言台に立ってくれることを条件に、その身柄を保護するという取り引きをしてのことだった。ブリットは、自分が指名されたことを不審に思いながらも、ロスの宿泊するホテルに他の刑事らと共に交代で張り込みをする。ところが部下の刑事がほんのわずか目を離した隙に、ロスは自ら部屋のドアの鍵を開けてしまい、同時に二人組の暗殺者に射殺されてしまうのだった。重傷を負った部下のスタントン刑事からロスの不審な行動を知らされ、ブリットは疑問を抱く。病院で手を尽くしたものの、ロスは絶命する。だがブリットは、まだロスが生きていると見せかけ、背後にある巨大なからくりを暴くため、捜査し始めるのだった。スティーブ・マックイーンのムダのない演技に思わず惚れ惚れする。とにかくスタイリッシュでクールなのだ。しかも、カーチェイスではスタントマンを使わず、スティーブ・マックイーン本人があの危険なドライブ・テクニックを披露してくれる。途中、黄色のポルシェに乗ってブリットが登場。スティーブ・マックイーンが乗っていると、なんだか普段は縁のない黄色というカラーが、優雅で華麗に見えるから不思議だ。私もできることなら、こんなふうに近所のファミレスまで(作中では、ブリットが恋人の運転でファミレスに出かけるシーンがある)、ポルシェで出かけてみたいものだ(笑)監督はピーター・イェーツで、元レーサーという経歴の持ち主。当時、スティーブ・マックイーンのハイレベルの運転技術を引き出し、映画史上に残る名作に仕上げた監督でもある。一方、スティーブ・マックイーンは50歳という若さで病没しており、残念でならない。 これだけデジタルが普及した今見ても、このアナログの世界観は色褪せず、見事な出来映えだ。未見の方はぜひともご覧いただきたい。必見の逸品だ。1968年公開【監督】ピーター・イェーツ【出演】スティーブ・マックイーン
2014.05.14
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【RED/レッド】「これを見せてやる。生涯の恋人に撃たれた傷だ。許されざる恋だった。その彼女が今、この家の外で・・・ウォッカを飲んでいる・・・胸に3発だ。生きて目覚めた時、再び彼女の愛を知った。頭を撃てば死んでたのに。危険を冒して私を助けた。恋は人にバカなことをさせる」四の五の言う前に、ハッキリさせておこう。本作「レッド」は、最高のエンターテインメント映画であり傑作だ。このおもしろさはDVDレンタルでは久しぶりかもしれない。オール・スターズだから良いというわけじゃない。比較するのも憚られるが、最近注目された「エクスペンダブルズ」を思い出してみるがいい。オール・スターズを銘打ったわりに、なんとなく今一つに感じた視聴者もいるはずだ。 ところが本作「レッド」は、役者らが個人的にむやみやたらと目立つような場面がなく、とてもバランスの取れた演出に仕上がっているではないか!無論、役者自身の個性が潰されることなく、互いに相殺し合い、実に見事な連携プレーなのだ。吟遊映人が特に気に入ったシーンは二つ。一つは、CIAのオフィスに侵入したフランクとサラのシーンだが、一方でフランクがCIAのエージェントと密室で格闘している最中(ちなみにBGMはエアロスミスだ!)、サラは喫茶室(休憩室?)で心細く待っているのだ。とりあえず開いているフォーブス誌がさかさまというのも、彼女の不安げな気持ちを表している。この両者のシーンが交互に映されるのがおもしろいと思った。そしてもう一つ。それはイヴァンが、恋する男フランクに自らの恋を語るシーンだ。わざわざ自分の胸元をはだけ、古傷を見せて慰める場面なのだが、やっぱり英国人俳優は違う。ブライアン・コックスの詩的な言い回しに思わず酔いしれる。フランク・モーゼズはCIA退役者で、今や年金生活の暮らしをしていた。役所の年金課に勤務するサラとは電話友達で、何かと用事を作っては電話をかけていた。 そんなある晩、フランクの家に狙撃部隊が侵入。だがフランクは難なくこれを片付け、その足でサラのアパートへと向かうのだった。フランクの命が狙われている以上、フランクとつながりのある者は皆危険なため、サラを一人にしておくわけにはいかなかったのだ。その後、フランクはかつての仲間であるジョー、マーヴィン、それにヴィクトリアらと合流するのだった。ほんのチョイ役だがリチャード・ドレイファスが出演しているのも見逃せない。80年代、青春映画として大ヒットした「スタンド・バイ・ミー」の主人公ゴードン(大人になってからの)役である。介護施設で世話になっているジョー役モーガン・フリーマンも、キャスティングとしては申し分ない。肝臓ガンを患い、余命いくばくもないという役柄なのだ。どの出演者が欠けても成功し得なかったであろう本作は、近年まれに見る素晴らしいアクション・コメディなのだ。2010年(米)、2011年(日)公開【監督】ロベルト・シュヴェンケ【出演】ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレンパワーアップかなった続編『REDリターンズ』はコチラ
2014.04.27
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【ミッション:8ミニッツ】「あなたの助言、役に立ったわ」「それはよかった」「次はインドで自分探しかも。いい導師いる? ・・・路線変更して正解だったと思う?」「同じ列車だが違う」「深いわね。私も違う道が待っていると思うの」 この作品を観る前の印象としては、パニックモノかな?というぐらいの軽い気持ちだった。だがすぐにそれは打ち消された。観客を楽しませるためだけのエンターテインメントなら、もっとサスペンス色を強くしても良かったはずだからだ。いろんな捉え方があるが、とりわけ強く感じたのは“自分探し”というキーワードだ。 実体のない自分が、死者の最後の8分間の意識に同化して任務を遂行するという行為。 実在していない自分が、プログラムの中でのみリアルな自分を感じるのだから。果たして自分って一体何者なんだ?という疑問にぶつかってしまうのも当然だ。監督はダンカン・ジョーンズで、『MOON月に囚われた男』を手掛けた俊英の監督だ。 この監督の命題には、半永久的な哲学を感じるし、並々ならぬ映画人としての才能を感じてしまう。陸軍大尉のコルター・スティーヴンスは、アフガンの前衛で戦っていたはずだった。だが目覚めたのは、シカゴ行きの列車の中だった。向かい合った座席に座る女性が、親しげに話しかけて来るが、コルターには見覚えがないし、自分がなぜここにいるのかも分からない。慌てて洗面所で自分の顔を鏡に映し出すと、自分は自分でなくなっている。ポケットの身分証明には、ショーン・フェントレスとあり、自分が別人になっているではないか。それもそのはず、コルターの任務は、破テロの起きたシカゴ行きの列車に乗っていたショーンの絶命までの8分間の意識と同化して、テロを起こした犯人を見つけることだったのだ。何がスゴイかと言えば、SFを超えたSFであることだ。実体のない自分が、脳の意識下の中だけで、誰かを愛し愛されることで自分を認めていく。リアルには存在し得ない自己存在の意義を、わずかでも感じ始めて行くという展開が胸を熱くさせる。ストーリーの流れはあくまで犯人探しのための8分間のミッションを繰り返すわけだが、本当のところ、犯人が誰かということにあまり重点は置いていない。それは、“自分とは何ぞや?”という命題を抱えた孤独な人間の、一筋の光を頼りに生きていく、新たな旅立ちの物語だからだ。非の打ちどころのない素晴らしい映画だ。2011年公開【監督】ダンカン・ジョーンズ【出演】ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン
2014.04.20
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【新少林寺】「人生とは縁だ。縁に従えば安らかになれる。これを持っていってくれ。ショウダン(のお骨)は君と一緒に・・・」「あなたはどうするの?」「ソウバンが来る。あいつを改心させるのは、私の務めだ」さすがは香港映画だと思うのは、単に優れたカンフーアクションを観たせいだけではない。中国という歴史の背景、宗教的、思想的な重みを、今さらのように感じたからだ。ハリウッドの作品と比べると、その相違点がハッキリして来るのだが、例えば、殺人や窃盗など様々な過ちを犯して来た男が悔い改めて、ラストでは大成功を収めて終わったりするハリウッド映画に対し、香港映画ではそうはいかない。この作品のラストを観ていただければ、因果応報、諸行無常の東洋思想がスクリーンいっぱいに映し出されている。どちらのパターンが良いかは、各人の好みにもよるが、同じ東洋人として“もののあわれ”を感じながら鑑賞できるのは、やはり後者の方であろう。さて、『新少林寺』では、ほんのチョイ役だがジャッキー・チェンが出演している。この役者さんはやっぱり大スターだ。風変わりな厨房係というキャラだが、ジャッキーが登場したとたん画面が明るくコミカルになるのだから不思議だ。ムードメイカーというのは、ジャッキーのような役者さんを指して言うのかもしれない。 舞台は辛亥革命時代の中国。国内は内乱状態にあり、西欧諸国につけ入る隙を与えていた。そんな中、登封市にある少林寺の僧侶たちは、食料の配給や負傷した人々の救助などに追われていた。一方、少林寺に逃げ込んだ敗軍の将を追って、敵対するコウケツ軍がなだれ込んで来た。 独裁的で血も涙もないコウケツは、許しを請う敵の将軍を背後から射殺すると、少林寺をあざ笑い去って行く。だが、そんなコウケツも腹心のソウバンに裏切られ、愛娘を失うことになる。※人命は、漢字ではなくカタカナ表記とする。この作品のテーマは、中華人民共和国としての国家的なプロパガンダが含まれている(?)。 それは、内々で揉めたり争ったりしていると、外国勢力に漁夫の利をさらわれてしまうぞ、大切なのは人民の一致団結だ、という明確な主義主張である。大衆の娯楽を通して発信する、この防衛意識の強さは、ある意味、見習わなくてはならない国防精神だと思う。それにつけても、徹頭徹尾、視聴者の感情を揺さぶり、琴線に触れ、涙なくしては観られない作品に仕上げられている。2011年公開【監督】ベニー・チャン【出演】アンディ・ラウ、ニコラス・ツェー、ジャッキー・チェン
2014.03.21
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【シャーロック・ホームズ シャドウゲーム】「本気で私と戦うつもりなのかね?」「負けを覚悟しておくんだな」「忠告しておこう。私を破滅させる気ならば、破滅するのは君だ。君は尊敬に値する。だから生かしておいただけだ」「私への賛辞のお返しをさせて頂こう。あなたを破滅させられるのなら・・・命など惜しくない!」2009年公開の『シャーロック・ホームズ』の大ヒット御礼に気を良くしてか、2年後にその続編が公開された。何でもそうだが、2作目というのはいろんな意味で難しいというジンクスがある。特に、1作目のウケが良ければ、その分、2作目の期待度は増し、ハードルも高くなるわけだ。その点、『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』は、見事にそのジンクスをクリアしてくれた!ただし、これを従来のミステリー作品と捉えてはいけない。あくまでアクション映画として楽しむのをおすすめしたい。私は元々、イギリスのグラナダテレビ製作番組『名探偵シャーロック・ホームズ』を欠かさず見ていたので、ジェレミー・ブレット扮するホームズの大ファンである。だがそんな私も、ロバート・ダウニー・jrの演じるホームズに、心動かさずにはいられない。原作からは逸脱した演出だが、情熱的でストレートでいつだって自分に正直なホームズ、というキャラクター。これはワトソン役のジュード・ロウの、冷静で客観的なキャラクターがいい案配に相乗効果を上げ、納得せずにはいられないゴールデン・コンビネーションに仕上げられている。今回ネタ元となったストーリーは、アーサー・コナン・ドイルの原作にもある、『最後の事件』の章である。ここに登場するモリアーティ教授という人物が、今までにないインテリな敵で、さすがのホームズも覚悟を決めた好敵手なのだ。言ってみれば、孔明と仲達のような宿命のライバルであるわけだ。(『三国志』吉川英治・著を参考にして下さい)あらすじはこうだ。ワトソンは翌日に結婚を控え、ホームズ宅を訪れた。ホームズの部屋は植物が生い茂り、とんでもない状態にあった。本来、親友が結婚するとなれば、その前夜は新郎の付添い人が友人を多く誘ってお祝いを催すはずなのだが、ホームズは新郎の付添い人であるにもかかわらず、誰も誘っていなかった。ふてくされたワトソンは、クラブでカード賭博に興じる。その間、ホームズはこっそり二階のジプシー占い師のもとへ向かい、ホフマンスタール医師の持っていた手紙を占い師に手渡す。その手紙の宛名は占い師であるマダム・シムザで、差出人はその兄レネイからであった。 ところがそのシムザやホームズを暗殺するため、何者かが天井に隠れていた。ホームズは、自分なりの格闘をあれこれイメージし、必殺の技で敵を倒すことを戦法としていた。どうにか事無きを得た後、馬車で、酔い潰れたワトソンを教会へと送り届けると、ホームズのもとにモリアーティ教授から使いが届く。いよいよ黒幕であるモリアーティ教授と正式に対面することになったのだ。というのも、そのころロンドンの各地で連続爆破事件が発生し、人々を恐怖に陥れていた。実はそれが、世界戦争を起こさせようとする頭の切れる人物の企みであることを、ホームズはすでに知り得ていたのである。戦争によって、一部の者がばく大な利益を得る。その首謀者が、モリアーティ教授だったのだ。この作品の進行は展開が速く、ストーリーを理解するのに時間がかかる。だが、推理という一点においては、全く必要がない。犯人(敵)はモリアーティ教授であると、冒頭から告知されるからだ。では何を楽しめば良いのだろう?それはズバリ、アクションである。ホームズとワトソンの息の合った演技もさることながら、走る列車内の銃撃シーンなどゾクゾクする。カメラ・アングルもカッコ良く、技術面でのレベルの高さを感じさせる。また、意味深なホームズのワトソンに対する微妙な感情表現など、同性愛的なものを漂わせていて、思わず顔がほころぶ。銃弾の飛び交う中、林の中を無我夢中で走り抜けてゆくシーンも良かった!この場面は臨場感に溢れ、視聴者も思わずハァハァと息切れしそうな勢いである。何はともあれ、ロバート・ダウニー・jrとジュード・ロウのキャスティングは、この2作目によって完全に成功したと言っても過言ではない。二人が、まるで漫才師(?)のようにテンポ良く、息の合った掛け合いを見せてくれる。 「これは一度は見てみる価値があるよ!」と、私は言いたい。アクション大好きのあなたにおすすめだ。2011年(米)(英)、2012年(日)公開【監督】ガイ・リッチー【出演】ロバート・ダウニー・jr、ジュード・ロウ
2014.01.05
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平成26年の始動です。今年も吟遊映人スタッフ一同(と言っても2名ですが)張り切って参ります。さて、元旦を飾りますのは、やはり、映画案内です。2011年12月の公開作品である『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』ですが、すでに丸2年も前のことになるのですね。ついこないだまで話題沸騰だと思っていたのですがーーー今さらだとは思いますが、案内させて下さい!【ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル】「長官は・・・死んだ。“ゴースト・プロトコル”が発令され、IMFは活動を停止。いかなるサポートも得られない。我々4人と、ここにある物が我々に残されたすべてだ。“容認されない行動は降りる”という者は、申し出ろ・・・ミッションは、ヘンドリクスの計画の阻止だ!」『ミッション:インポッシブル』シリーズは、何と言ってもエンターテイナーであるトム・クルーズの一人舞台のようなものなので、どうだろう、邦題は“トム・クルーズの”を付加して、『トム・クルーズのミッション:インポッシブル』てな具合にするのは?この際、“ムツゴロウとゆかいな仲間たち”とか“前川清とクールファイブ”など、そういうネーミングに対抗する(?)のだ。いきなりなぜそんなことを言い出すのか?と問われたら、私は迷わず言いたい。「だってトム・クルーズなんだもの」と。もうトム・クルーズワールドが炸裂なのだから!!前作と比較するわけではないが、本作は数段グレード・アップしている。やっぱりこうでなくちゃいけない。おもしろすぎるのだ!高層ビルの壁面を、ハイテクの手袋を装着して上ったところ、片方の手袋が故障してハラハラさせられたり、ドバイの砂嵐が吹き荒れる中、走って敵を追跡したり、カーチェイスでメチャクチャスピードを上げて敵に追いついたものの、あと一歩のところで取り逃がしてしまうなど、お約束とはいえ、このド迫力には脱帽だ。ストーリーはこうだ。IMFエージェントのハナウェイは、ブダペストで秘密ファイルを奪う任務に就いていた。 守備良くファイルを手に入れたはずだったが、一瞬の隙を狙われ、美女の殺し屋にさりげなく撃たれ、ファイルを横取りされてしまう。一方、モスクワの刑務所に服役中のイーサン・ハントは、ジェーン・カーターとベンジー・ダンの手助けによって脱出する。その後、IMFのミッションにより、“コバルト”というコードネームを持つ人物の正体を探るため、クレムリンに侵入するが、何者かによって先を越され爆破テロに巻き込まれてしまう。負傷して気を失い、病院のベッドで手錠につながれたイーサンは、ロシアの諜報員にテロの首謀者だと決めつけられてしまった。イーサンは関与を否定するため、病院を抜け出し、IMFに救助を求めるのだった。今回は、クレムリンを爆破した“コバルト”が、人類の次なる進化のためには核兵器による浄化が必要だとするテロリストで、この組織をあの手この手を使って追跡するのが見どころであろう。この展開はベタと言えばベタだけど、これがまた盛り上がる。視聴者は、どっぷりとトム・クルーズワールドに浸れるというしくみに出来上がっているのだ。「あら?」と目を見張ったのは、ブラント役のジェレミー・レナーだ。そう、『ハート・ロッカー』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた役者さんである。なんだろう、このスター然とした輝きは?! スタイリッシュでクールな出で立ち。憂いを含んだ表情がたまらない。こういう次世代を担う役者さんを起用した点も、この作品の成功の鍵となったかもしれない。CG重視のアクション映画が主流の中、もちろんそういう処理は施してはいるけれど、体を張ったアナログ的演出はお見事である。やっぱりトム・クルーズは、世界のトップ・スターなのだ!2011年公開 【監督】ブラッド・バード【出演】トム・クルーズ、ポーラ・パットン、サイモン・ペグ、ジェレミー・レナー
2014.01.01
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【ヒート】「俺はムショへは戻らん」「じゃ、もうヤマを踏むな」「俺はヤマを踏むプロ、あんたはそれを阻止するプロ」正統派のハード・ボイルド、それこそが本作「ヒート」である。日本のハード・ボイルドがどうやっても敵わないのは、こういうハリウッドの正統派を突きつけられた時だ。アル・パチーノとロバート・デ・ニーロのハリウッドの二大スターが、同じスクリーンに映っているのを目の当たりにしたら、それはもう否が応でも釘付けにされてしまう。役者の演技の良し悪しなんか語るのは、無粋だ。往年のスターというものは、ただもうそこにいるだけでインパクトがあるのだから。いわば、圧倒的な存在感、それがアル・パチーノであり、ロバート・デ・ニーロなのである。メガホンを取ったのはマイケル・マン監督で、代表作に「コラテラル」がある。思ったとおり、この監督は、ハード・ボイルド作品を得意とする傾向があるらしい。「コラテラル」などは、正に、ハリウッドにおける模範的映画で、正統派ハード・ボイルドの代名詞になっているとか。ニール率いる強盗団は、巧みなチームワークで現金輸送車を狙った。その際、新参者のウェイングローが警備員を射殺してしまう。ニールは、無用の血を流したことに怒りを隠せないが、その場はいったん引き上げることで成功した。だがその後、ニールはウェイングローを危険視して殺害を試みるが、わずかな隙に逃げられてしまう。一方、凶悪事件を担当するロス市警のヴィンセント・ハナは、現場に残された手掛かりや目撃者の証言から、執拗にニールたちを追跡するのだった。脇役だが強盗団のメンバーであるクリス役に扮するヴィル・キルマー。この役者さんは、調べたところ、名門ジュリアード音楽院演劇科卒のエリートで、本来ならハリウッドに通じる役者を育てる先生的存在なのだ。また、「レオン」のマルチダ役で名子役として一世を風靡したナタリー・ポートマンも、チョイ役で出演しているが、これまたいい味を出している。薄幸な少女役は、彼女の十八番と言っても差し支えない。そんなナタリー・ポートマンも、今は立派なハリウッドのドル箱スターだ。一昨年には「ブラック・スワン」で、アカデミー賞主演女優賞を受賞し、飛ぶ鳥を落とす勢いなのだ。「ヒート」は、そんな名優たちに支えられた、男の美学を体現した作品なのかもしれない。1995年(米)、1996年(日)公開【監督】マイケル・マン【出演】アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ヴィル・キルマー
2013.05.14
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【ファイヤーフォックス】「いいか、おれが死んでもその間に君が逃げるんだ」「・・・ユダヤ人は理解できん。飽きず権力に刃向かう」「おれたちに刃向かうほどの自由があると思うのか?」出演している役者さんたちの顔ぶれが、皆若いこともあって、かなり前に製作された作品だろうと見当はつく。さらには、アメリカとソ連の緊張感のある雰囲気からして、冷戦時代を象徴する内容だなと判断できる。公開されたのは1982年で、今から30年も前だ。メガホンを取ったのは、かのクリント・イーストウッドだが、やっぱりこの人は凄い。 大衆向けが基本である映画のポジションを、とてもよくわきまえているのだ。時代の流れもちゃんと汲み取っていて、それなのに自分が目指すものを明確にしている。 クリント・イーストウッドは自己分析に傑出しているため、自分という役者がアメリカン・ヒーロー像として求められているのを、よく知っている。『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』では西部劇のヒーロー。『ダーティハリー』シリーズでは現代劇のヒーロー。そして『ファイヤーフォックス』では、冷戦時下でのヒーローというわけだ。『ファイヤーフォックス』は、1976年のベレンコ中尉亡命事件をモチーフにして書き上げられた小説を映画化したものらしい。(ウィキペディア参照)ストーリーはこうだ。ソ連が最新鋭の戦闘機ミグ31(ファイヤーフォックス)を完成させたという情報がNATOにもたらされる。NATO側は脅威を抱き、ソ連からミグ31を盗み出す計画を企てる。その任務を受けたのは、元空軍パイロット、ミッチェル・ガントで、ベトナム戦争での経験とロシア語を流暢に話せることが買われたのだった。ガントは、麻薬密輸業者になりすましてモスクワに入るが、さすがに不審に思ったソ連側により、ガントにKGBがピタリと尾行をつける。ガントはソ連にいる協力者の尊い犠牲のもとに、どうにか目的地までたどりつくことができたが、そのころにはKGBもガントの本来の目的に気づき始め、総力をあげて追跡するのだった。見どころは何と言ってもファイヤーフォックスを盗み出すまでのプロセスだろう。ソ連側の協力者である科学者や設計者、運搬役などの尊い犠牲を経て、ミグ31に乗り込むガントを見た時、思わず目頭が熱くなる。また後半では、ミグ31に追いついて来た2号機との空中戦も、手に汗握る緊張感だ。 当時はCGなんて使わないから、おそらく特撮だろう。だがこの何とも言えないアナログ感は、SFチックで心が躍る。スパイ映画のようでもあり、ドキドキハラハラ感満載の、正統派アクション映画だ。1982年公開 【監督・出演】クリント・イーストウッド
2013.02.24
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【96時間】「お前が誰だか知らん。お前の狙いも。身代金が目的ならカネなどない。だが俺には非常に特殊な能力がある。長年の仕事で身につけたお前らを震え上がらせる能力だ。娘を解放するなら見逃そう。お前を捜すことも追跡もしない。だが解放しないなら、お前を捜し、必ず見つけ出す。・・・そしてお前を殺す」「幸運を祈る」まさか本作がフランス映画とは知らなかった。言われてみれば納得出来る節もあるが、それでも若干、グローバリゼーションの流れを感じないではいられない。主役のリーアム・ニーソンは、年を経て、益々枯れて、渋みと深みを感じさせる役者さんになった。「スター・ウォーズ~エピソード1~」では、ジェダイマスターの役で出演したが、その圧倒的な存在感で視聴者を魅了した。少し前の作品になるが、「死にゆく者への祈り」では、ミッキー・ロークと共演。実に見事な演技、演出であった。元CIAのブライアンは、すでに仕事を勇退し、カリフォルニアの自宅で細々と暮らしている。孤独な生活の中で唯一の楽しみは、別れて暮らす愛娘と電話をしたり、会うことであった。ある日、娘のキムから久しぶりにランチの誘いを受け、ブライアンは大喜び。だが、待ち合わせのレストランに現れたのはキムだけでなく、元妻のレノーアもいっしょであった。実は、キムは未成年で、パリ旅行に出かけるため実父の許可するサインが欲しかったのである。本作「96時間」の見どころは、何と言っても、キムがベッドの下に隠れて父ブライアンとケータイのやりとりをする場面であろう。パリに着いたキムとその友人アマンダは、空港からホテルまで見知らぬ男に送ってもらい、結局そのことがきっかけでホテルから拉致されてしまう。先にアマンダが囚われ、その様子をベッドの下から父に逐一報告しながらも、やがてキムも犯人に捕まってしまう。この緊迫した瞬間は、サスペンス映画として大成功である。また、通常ありがちな身代金目的の誘拐などではなく、人身売買目的というのも、アンダーグラウンド的暗さをかもし出していた。本作は、父親の娘を想う深い愛情と勇気を表現する一方で、若さゆえの向こう見ずな行動に注意を促す役割を果たしている。社会派サスペンスとして、実に見事な作品なのだ。2008年(仏)、2009年(日)公開【監督】ピエール・モレル【出演】リーアム・ニーソンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)~追記~やっぱり私はCIAが好きだ。親がCIA諜報員だったら、もうこの上もない(笑)リーアム・ニーソンが再びブライアン役で登場!主人公に何があっても大丈夫。なんてったってCIAだもんね!(笑)1月11日公開、大絶賛放映中です。
2013.01.13
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【ワイルド・スピードMEGA MAX】「レースやろうぜ」「本気か?」「ああ、賭けなしで、俺たちの最後の対決だ」「負けて泣くなよ」「お前こそ」公開されたのは2011年で、つい一年前の作品なのに、どういうわけかバブリーな雰囲気が作品全体からムンムン漂って来る。というのも、ドンパチ派出にやらかすのも然ることながら、名だたる車が次々と登場し、カーマニアを唸らせるしくみになっているからかもしれない。走る列車から盗み出したのが、シルバーのシボレーだったり、水色のポルシェがでーんと登場したり、日本人という設定らしい(?)ハンが、クールにレクサスを運転していたりする。また作中、アメ車の何年式だかクライスラーダッジが見事に潰され、こっぱみじんになったりするのを惜しげもなく披露しているのを見ると、いやはや世の中まだまだ捨てたもんじゃない、もしかして今って好景気? などと錯覚してしまうほどだ。生物学的なことから言えば、オスの本能を目覚めさせる仕上がりになっているとでも表現したら良いのか。例えば、クジャクのオスが、自分の羽を存分に広げて「おれってクールでしょ? イカすでしょ?」と、虚勢を張るのに似ているかもしれない(笑)そう考えると、カッコイイ車をスマートに乗りこなす、ちょっとやんちゃな男子は、実はオスとして本来あるべき姿なのかも。懲役25年の刑を言い渡されたドミニクは、護送中、元FBIのブライアンと妹ミアの手引きにより逃亡に成功。ブラジルのリオデジャネイロで、昔の仲間の宅に身を寄せることになった。今後、何かと金が必要となることから、急ぎの窃盗ではあったが、走る列車から伝説の名車三台を奪うことを計画し、実行。ところがその途中、仲間の裏切りにより、襲撃を受けるはめに。それはドミニクたちが盗んだ車の内部に隠された、マイクロチップにあった。チップには、リオの闇組織の帝王であるレイエスの秘密が記録されていたのだ。作品は、スピード狂にはたまらない仕上がりとなっている。どこを切り取ってもカーチェイスだし、猛スピードでくり広げられる世界観だ。ストーリーうんぬんの映画ではない。「わ、もう見てられない」と思ったら、視聴者の負け。日ごろの溜まった鬱憤を一気に晴らしてくれるような、ドキドキハラハラ感満載だ。アメリカならではのエンターテインメント性に溢れている、カーアクション映画だ。2011年公開【監督】ジャスティン・リン【出演】ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.11.04
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【レオン】「スタンフィールド?」「(ああ)何かご用は?」「(これは)お前への贈り物だ・・・マチルダからの」「・・・チッ!!」(爆発、炎上する)フランス人の感性は、どこか日本人のそれと似たものを感じる。おそらくこの作品が、アメリカ人監督によるものならば、ラストはかなり違っていたのではと思われる。北野武が描くバイオレンスの世界観(たとえばアウトレイジ)も、どうかするとこのリュック・ベッソン監督の感性に近いのではなかろうか。プロの殺し屋とかスナイパーなど、スマートでカッコイイものとして表現してしまうアメリカ映画とはまるで視点が異なり、孤独でしかも文盲のような、教育を受けていない者が、明日食べるパンと牛乳のために就く仕事である・・・的な設定になっているところに、思わずリアリティを感じるのだ。本作は大都会のニューヨークが舞台となっていて、騒々しく猥雑なイメージが付きまとうところなのに、一体どうしたことか、スタイリッシュでクールなムードさえ漂うから不思議だ。舞台はニューヨーク。イタリアレストランのオーナーであるトニーから、殺しの依頼を受けたレオンは、わずかな時間で完璧に仕事をこなすプロの殺し屋だった。レオンは酒を飲まないため、いつも牛乳を2パックも買って帰るのが習慣で、この日も買い物を済ませてアパートに帰った。すると、隣りの部屋の少女マチルダが、一人寂しそうにタバコをふかしていた。見れば顔に虐待の痕跡もある。マチルダは、弟を別として、継母と異母姉、それに実父から疎外され、辛く苦しい日々を送っていた。レオンは同情しつつも、深入りをせず、様子を見ていた。ところがある日、マチルダの家族のところへ、麻薬取締局の捜査員らが踏み込んで来たのだ。吟遊映人は、リュック・ベッソン監督の作品が大好きなので、少し語らせていただく。 この監督の代表作に、「ジャンヌ・ダルク」や「TAXi」シリーズ(TAXi1・TAXi2・TAXi3・TAXi4)、「トランスポーター」シリーズ(トランスポーター1・トランスポーター2・トランスポーター3)などがあるが、どれも優れた映画である。ほとんどがハード・ボイルド・アクションかと思いきや、「ジャンヌ・ダルク」のような歴史大作もあり、あるいはコメディ・タッチの笑いのエッセンスを盛り込んだ作品もあり、変幻自在の演出に脱帽なのだ。本作「レオン」において注目すべきシーンは、2点ある。一つは、レオンがあと一歩のところまで来てスタンフィールドに撃たれてしまうシーンだ。実際に撃たれるところは映像としては映っていない。カメラがレオン本人の視線になり、倒れて目の前の光景が徐々に下がって行くことで、レオンが背後から撃たれたことを視聴者に知らせる。さらに、レオンが虫の息の下で手榴弾のピンを抜き、スタンフィールドを道連れに爆発するのだ。この時のレオンの決死の想いが、視聴者の琴線に触れる。一人残してゆくマチルダを想うと、どうにも悲哀が先行するところだが、スタンフィールドを生かしておけば、やがてはマチルダの命も危険にさらされる。愛する人を守り抜くため、己もろとも爆死する、という場面だ。そしてもう一つ、生き延びたマチルダが施設に戻り、レオンの育てていた観葉植物の鉢植えを、校庭の隅に植えるシーンも素晴らしい。いつまでも根無し草ではなく、ちゃんと大地に根を張って枝葉を茂らせることが、レオンへの鎮魂なのだと表現している。そして、マチルダ自身が、人生と正面から向き合って生きて行こうとする強さを垣間見るのだ。一筋縄ではいかない、生きることの辛辣さを描いた作品であった。1994年(仏)、1995年(日)公開【監督】リュック・ベッソン【出演】ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン
2012.09.27
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本日はブルース・リーの命日だそうです。京都新聞のコラム「凡語」で知りました。もちろん、怪鳥音はリアルタイムで存じ上げております。謹んでブルース・リーに哀悼の意を表します、合掌(-人-)なお、吟遊映人では2009年10月24日に記事(燃えよドラゴン)を掲載しております。ブルース・リーをお偲びいただき、ついでに再見いただけましたら幸いです。『燃えよドラゴン』はコチラまで。本日の京都新聞 凡語を載せさせていただきました。弊記事のお口直しに上質なコラムをご堪能ください♪【伝説の男】 怪鳥音。この言葉だけで、あの男の顔が浮かぶのは40代以上の男性だろうか。その誰もが研ぎ澄まされた肉体に憧れ、1度や2度はヌンチャクを振り回したに違いない▼男の名は、ブルース・リー。18歳で香港から単身渡米し、大学で哲学を学びながら、独自の武術を創始した。門下には、スティーブ・マックイーンをはじめ映画スターも名を連ねる▼米テレビドラマのアクションで注目され、香港に戻ってカンフー映画3本に主演した。これらが興行記録を塗り替えるヒットとなり、ついに念願のハリウッドから声が掛かる。今も色あせない傑作映画「燃えよドラゴン」の誕生だ▼「アチョー」という怪鳥音を発する格闘シーンが目玉だが、実は、弟子に「考えるな、感じろ!」と教えを説く冒頭のシーンにこだわり、自ら監督もしたと聞く。この台詞(せりふ)は、彼の哲学を表す名言として語り継がれる▼神髄は奥深く、凡人はその境地にないが、表面的な言葉遣いは何事にも言い得て妙だ。日本の政治家に引くなら「政局ばかり考えるな、国民の声を感じろ!」といったところだろうか▼映画は世界中で公開され、空前のブームが沸き起こる。しかし、アメリカンドリームともいえる大成功を本人が知ることはなかった。公開を目前に控えた1973年のきょう、銀幕の「龍の化身」は伝説になった。32歳だった。
2012.07.20
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「君に頼みがある。それは・・・それは・・・僕を信じてくれ。」「もちろん信じてる。いつか(わけを)話してくれる?」「いや・・・ただ信じてくれ。」「いいわ。あなたを信じる。・・・でも、本当よね? (私を)愛してるって・・・本当よね?」「(僕を)信じてくれ。」アクション映画のおもしろいところは、作品の冒頭から「これから何かが起こる」的な期待感を持たせてくれることだ。この作品においても、夢の中の出来事としてイーサンの婚約者が敵に捕らえられ、成す術もなく銃で頭を撃ち抜かれるというショッキングなシーンから展開する。こういう導入があってこそ、これからとんでもないトラブルが発生するのだと視聴者を釘付けにするのだ。本作は、前2作以上にドラマチックな仕上がりになっている。まず主人公のイーサンは、その危険な任務に着きながらも結婚して人並みにあたたかい家庭を築こうとする。愛する女性に「出張に行く」と嘘をつきながらスパイ活動に専念することは、さすがに良心が傷みながらも、IMFのエージェントとして看板を背負っているため仕方がない。イーサン・ハントの男の美学とも言えるかもしれない。IMFのエージェント、イーサン・ハントはすでに現場を退き、スパイを育てる教官として働いていた。ある日、イーサンの元にかつての教え子リンジーが敵に捕らえられたとの知らせが届く。 一線を退いていたイーサンは、リンジー救出のため現場復帰を果たす。見事にリンジーを救出したものの、ヘリコプターに乗って逃げる途中、リンジーが「頭が割れそうに痛い!」と悲痛な叫びを上げる。調べてみると、なんとリンジーの脳内に爆弾の時限装置チップが埋め込まれていたのだった。本作はアクション映画と言いつつも、人と人とのドラマを強調した内容になっていると感じた。それは例えば、イーサンと教え子リンジーとの兄妹のような絆であり、イーサンとIMFチームとの和であり、イーサンとその恋人との愛である。そういう一つ一つのドラマチックなストーリーが重なり合い、アクションシーンが絡み合うことで最高の作品になったと考えられる。やはり、アクション映画にはこの作品からも分かるように、無条件に前のめりになって楽しめるドキドキ感が必須なのだ。また、あらためてM:I-3を見て、現行の「ゴースト・プロトコル」に思いを馳せた次第である。2006年公開【監督】J・J・エイブラムス【出演】トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン~掲載紹介~Mission:ImpossibleはコチラM:I-2はコチラ また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.02.16
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【ダイ・ハード4】「英雄とは何か。撃たれるだけさ。“よくやった、偉い”と背中をポン。女房とは離婚。名字も忘れられる。子供は口を利かず、飯はいつも独り。そんな奴になりたいか?」「でもやってる。」「他にやる奴がいない。やる奴がいりゃ喜んで代わるが、誰もいない。」「そうか、そこが英雄なんだ。」映画を観賞する上でいつも思うのは、それこそが基本的に大衆向けの娯楽であるから、話題となる作品には自然とその時代の有り様が反映されているということだ。例えば「ロッキー・ザ・ファイナル」では、頂点に登り詰めた男ロッキーでさえ息子との確執に苦悩し、エイドリアン亡きあと孤独感に苛まれ、それは何を持ってしても埋められるものではなかった。しかし、再びリングに上がることで過去の栄光にすがりつく老兵で終わることを拒絶したのだ。「ダイ・ハード4.0」でも類似性が見られる。それは現代社会が再び家族関係の見直し、もっとストレートに言うと親子関係のあり方を真剣に問う時期にさしかかっている証拠でもある。「そんな問題は古今東西、今さらのテーマだ」と、我々は目を背けて来た。「しかたがないのだ」と。この作品は独立記念日の前夜、FBIのサイバー犯罪部が何者かにハッキングされたことから物語が展開する。その恐るべき行為はサイバーテロで、全米の都市機能が壊滅状態となってしまう。NY市警のジョン・マクレーンの元に、近くに住むハッカーのファレルの身柄を確保し、ワシントンD.C.にあるFBI本部まで連行するよう無線が入る。ジョンがファレルのアパートまで出向き、連行しようとした矢先、何者かによって突然銃撃を受ける。作中、大型トレーラーとF-35戦闘機の対決シーンが出て来るのだが、見事な描写力。美術効果である。また、マクレーン刑事の愛娘ルーシーに「ジョン」と呼び捨てにされるシーンで、「その呼び方はやめろ」と応じるセリフは「アルマゲドン」のパロディらしく、興味深い。ジョン・マクレーンが愛娘のために捨て身でがんばっている姿を目にした時、無償の愛を感じないではいられない。ギブ・アンド・テイク主流の男女間の愛に終わりがあっても、親と子の絆は永遠である。 スイッチ一つでデータの消えていくデジタル社会の中で、愛という灯は決して絶やしてはならない崇高な魂なのだ。2007年公開【監督】レイ・ワイズマン【撮影】サイモン・ダガン【出演】ブルース・ウィリス、ジャスティン・ロング、クリフ・カーティス、マギー・Q 、ティモシー・オリファント~掲載紹介~ ダイ・ハード1はコチラダイ・ハード2はコチラ ダイ・ハード3はコチラ
2012.01.25
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「私の靴を見ろ。20年前、ロンドンで買った“エドワード・グリーン”だ。良質でよく手入れされた物は、半永久的に長持ちする」「ご心配は分かります」「まさか。君を信じてるよ。君は正直だからな」冒頭からフランスのニースを舞台に、海沿いを猛スピードで走り抜ける真っ赤な高級車が登場する。空中にはヘリコプター、海上にはクルーザーと、ずいぶん製作費がかかったに違いないと思いつつストーリー展開を楽しんでいると、場面はあっさりとアメリカに移る。格闘シーンやカーチェイスなど、アクション映画にはお約束の場面もあって盛り上がりも充分なのだが、今どき珍しくCGには頼っていないようだ。だが侮るなかれ、シナリオがしっかりしているせいなのか、決してつまらない作品ではない。むしろおもしろかった。主役の二人、アシュトン・カッチャーもキャサリン・ハイグルも、正直なところ二流の役者であり、どうしてもパンチには欠けてしまうが、それを考慮しても充分に楽しめる作品に仕上げられている。失恋直後のジェンは、両親と南仏にバカンスに来た。宿泊予定のホテルのエレベーターで、ハンサムなたくましい肉体を持つスペンサーと出会う。スペンサーは成り行きでジェンをデートに誘い、ジェンは二つ返事で了承する。世間知らずのお嬢様で、屈託のないジェンにスペンサーは急速に惹かれていき、やがて結婚。それから3年後。スペンサーの様子がどことなく落ち着かず、そわそわしているため、ジェンは倦怠期なのではと不安になる。だが原因は夫婦間の問題ではなく、元CIAのエージェントであるスペンサーが命を狙われているという状況にあったのだ。アクション・コメディというジャンルからすると、全体的にベタな内容に思えるが、重くならず爽やかで陽気な印象に好感が持てる。明るく賑やかなジェンと、肉体派で頼もしいスペンサーのコンビネーションが、無理なくマッチしていて良い。最後まであっさりサクサクッと展開していくストーリーも、意外におもしろかった。『ミッション:インポッシブル』的なアクションを求めている方には物足りないかもしれないが、家族や友人とゆるーく楽しむ分には持って来いの作品だと思う。2010年公開【監督】ロバート・ルケティック【出演】アシュトン・カッチャー、キャサリン・ハイグルまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.12.17
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「才能ある監督なら独創的なことをやれよ! “エクソシスト”の盗用でなく!」「盗用じゃない。敬意を示してるんだ。・・・なんてこった。(おまえ)やってるな・・・ヤクを」「それがどうした?」「撮影中はやらない約束だ」「大丈夫だよ。迷惑はかけねぇ」シリーズ5作目のこのあたりになると、吟遊映人もリアルタイムで観ているから感想が言い易くなる。挿入されている曲は、当時ヘヴィ・メタル・バンドとして一世を風靡したガンズ&ローゼズの大ヒット曲である“welcome to jungle”だ。何度、喉のポリープ手術を受けたか知れない、アクセル・ローズのヴォーカルは、バブルに沸くアメリカや日本の経済をお祭り騒ぎにして盛り上げる一躍を担ったものだ。犯人のイメージもこれまでとは打って変わり、精神的に疾患のある30代の男性が、猟奇的に殺人を重ねてゆくという設定になっている。過去にストーカー行為で法的にも罰せられた前歴のある持ち主という、メンタル面に異常のある犯人キャラは、この「ダーティハリー5」以降、続々とサスペンスモノの要として取り入れられてゆくことになる。無論、過去にはヒッチコック監督の「サイコ」などがあるが、90年代以降は「羊たちの沈黙」や「氷の微笑」などで、サイコ・サスペンスが全盛期を迎えるのだ。サンフランシスコ市警の殺人課に勤めるハリー・キャラハンの新しい相棒に、中国系のクワンが選ばれた。ハリーは上司らの浅はかな考えにうんざりしていたが、クワンを連れてさっそく事件現場に駆けつける。殺されたのはB級ホラー映画に出演中の、ヘヴィ・メタル・バンドの歌手だった。そこへテレビ・レポーターのサマンサが逸早くやって来て、ハリーや被害者の恋人などにマイクを向ける。だがマスコミ嫌いのハリーは不愉快極まりなく、テレビ・クルーのカメラを投げ飛ばしてしまうのだった。前作に比べるとよけいに感じるのだが、「ダーティハリー」としてはずいぶんライトなストーリー展開になった。それもこれも80年代後半という時代のなせる業なのであろうか。驚いたのは、あのリーアム・ニーソンが出演しているではないか。B級ホラー映画監督の、ピーター・スワンというチョイ役での出演だが、なかなかどうして存在感のある演技を見せてくれている。(意識してそんなふうに見てしまったかもしれないが)クリント・イーストウッドも、衰えることのない役者魂とも呼ぶべきか、スレンダーな体型と鮮やかな身のこなし。マグナム銃を手にした時の、最もスマートに見える立ち居振る舞いも健在。一分の狂いもない。「ダーティハリー」シリーズ最後の締めくくりとしても申し分のない、アクション映画であった。1988年公開【監督】バディ・ヴァン・ホーン【出演】クリント・イーストウッド、パトリシア・クラークソンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.05.08
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「(私を)どうする?」「やっぱり君を・・・」「逮捕する? 人権って何なの? 私が暴行された時の人権は? 妹が暴行された時の人権は? 正義は言葉だけ? 暴行犯を見逃すのが正義? 私の気持ちが分かる?」吟遊映人の個人的な好みで恐縮だが、「ダーティハリー」シリーズ中、この4作目が秀逸に感じられるのはなぜだろう?これまでアクション性の強かった「ダーティハリー」が、この4作目に来てにわかにテーマ性の強い作品に様変わりしたことは、長年のハリー・ファンにとっては一目瞭然の事実である。本作「ダーティハリー4」のメガホンを取ったのは、なんとクリント・イーストウッド本人で、彼の表現したかった底知れぬ人間の暗い闇の部分が、遺憾なく発揮されているのだ。このイーストウッド・カラーが鮮やかに表現されることになったのは、「マディソン郡の橋」や「ミスティック・リバー」をご覧いただければ納得するはずで、前者は不倫を、後者は性犯罪の絡む重厚なサスペンスを手掛けている。「ダーティハリー4」は、正に「ミスティック・リバー」を予感させるような、暗く陰鬱で、人間の倒錯した性愛の一面に、真っ向からメスを入れているのだ。この問題は実に根の深い、どうしようもなく人間的な悪性の強いもので、一筋縄では解決できない犯罪なのだ。ある日、車の中で股間を撃たれて死亡している男が発見された。サンフランシスコ市警のハリー・キャラハン刑事は、さっそく事件を解明するべく捜査を始めた。ところがハリーは、強引な検挙や、現場での多額な損失損害を出すことから、半ば左遷的な意味合いも兼ね、田舎のサンポーロへと出張を命じられる。そこで、サンフランシスコの怪事件に似た手口の事件が発生する。そんな中、ハリーはひょんなことから画家のジェニファーというミステリアスな女性と出会うのだった。こういうテーマ性の強い作品を手掛けることで、必ず突き当たるのがラストのオチだ。 一体どういう結論を出すことで視聴者を納得させるのか。本作「ダーティハリー4」は、必ずしも視聴者が納得のいくラストではなかったかもしれない。あるいは、ラストに来ていきなりドラマ性が打ち出された感も否めない。しかし、刑事でありながらその警察組織でさえ心底から信じていない、ハリー・キャラハンという一匹狼的キャラクターなら、こういう結果を出すことも許されるのかもしれないと、妙に理解を示してしまう自分もいる。「ダーティハリー」シリーズ中、唯一、ファンにとっては踏み絵ともなる重厚なサスペンス作品となっている。1983年(米)公開【監督】クリント・イーストウッド【出演】クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロックまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.05.04
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「ハリー、聞いてくれ。主犯のチンピラに見覚えがある」「どこで?」「名前が思い出せない・・・あの殺人事件だ。フィルモア街の淫売だ。あの’71年の夏さ」「ああ・・・それで?」「尋問したヒモの一人だ。・・・あいつはクサかった。何かあると思ったが、やっぱりだ」なぜ映画という娯楽が、これほどまでに大衆に影響力があるのかと言えば、ヒットする作品ほど時代の世相が色濃く反映されているからかもしれない。社会性を帯びた映画か否かは、最終的に視聴者が判断するものであって、作り手としてはさほど意識していないのではなかろうか。その証拠に、本作「ダーティハリー3」も政治性や社会性を取り入れた内容とは思えないが、結果として当時の世相を絡ませたような仕上がりとなっている。「ダーティハリー」シリーズにおいて、3作目となる本作が公開された70年代のこの頃、ちょうどアメリカでは“ウーマン・リヴ”なる運動が活発化し、女性の社会進出や人権が大きく取り上げられた。「ダーティハリー3」においても、ハリー・キャラハンの相棒役として初の女性警官が登場するのだ。製作者サイドとしては、あえて流行を全面に打ち出したわけではなく、だが時代の流れを何となく汲み取って脚本に挿入してみた、というのが本音であろう。吟遊映人が映画を愛する理由の一つには、そういう時代性、つまり現代に至るプロセスを客観的に捉えることができるという有効な娯楽であるからだ。サンフランシスコ市警のハリー・キャラハン刑事は、リキュール・ショップを占拠した強盗に対し、愛用のマグナム銃を惜しみなく発砲した。ところが事件解決後、店側から多額の損害賠償請求を突きつけられ、殺人課から人事課へと異動の辞令が降りる。一方、過激派テロリストらが陸軍の兵器庫に押し入り、爆弾やバズーカ砲などを持ち出した。パトロール中だったフランクは、兵器庫の異常に気付き、テロリストらを検挙しようとするが、反対に重傷を負わせられてしまう。瀕死のフランクと対面した相棒のハリーは、犯人逮捕を心に誓うのだった。本作の見どころは、やはりハリー・キャラハンの相棒役である初の女性警官との絡みであろう。殺人事件の前線で働くハリーに対し、もともと資料課のデスクワークしかやったことのない女性警官ムーアとのキャラクター的ギャップ。また、そんなムーアがハリーの足手まといになるまいと、必死になって働く姿に好感が持てる。最初はハリーも女性蔑視的で、ムーアをお荷物扱いしていたところ、少しずつ、真面目で度胸のあるムーアに一目置くようになっていくプロセスが、またいい。ラストは陰鬱さを残すものだが、これもまた70年代的で申し分ない。女性が少しずつ社会進出してゆく世相を、厭味なく反映した、70年代的刑事ドラマなのだ。1976年(米)公開【監督】ジェームズ・ファーゴ【出演】クリント・イーストウッドまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.05.01
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「俺も警官だし、君より古顔だ。だが拳銃を使わないのが俺の主義だ」「偉いよブリッグス。(君は)身の程を知っている」昨今では監督として定評のあるクリント・イーストウッドの出世作となった、「ダーティハリー」シリーズだが、見ての通り彼のスリムな体型は今も昔も変わらない。それならばさぞかし機敏な動きでキレのあるアクションを披露してくれるのかと思いきや、そうではないのだ。実に余裕のある、しかも紳士的な動作で、決して粗野ではないから不思議だ。クリント・イーストウッドという役者さんは、西部劇畑で鍛えられて来た人なだけに、マグナム銃を持った時のポーズや身のこなし方をとても研究し、スマートに敵を撃つスタイルを確立しているように思える。あくせく動いて走り回ってガンガン撃つ、という野暮ったさはなく、額に汗をかくこともなく、射程距離に入った敵をミスなく命中させるというムダのないガン・アクションを披露してくれる。こういうスマートな演技のできるハリウッド・スターは、最近ではそれほど見かけないので、残念でならない。本作「ダーティハリー2」は、前作の大ヒットを受けて第二弾として製作されたものだが、興行的にこちらも大成功を収めた。警察官による間違った正義を振りかざす犯罪を描いたものだ。サンフランシスコでは、マフィアの幹部を乗せた車の同乗者が皆殺しに遭うという事件が起きた。サンフランシスコ市警のハリー・キャラハン刑事は、手口から見てプロの殺し屋ではないかと見当をつける。数日後、資産家の別荘のプールで戯れる男女数人が皆殺しに遭う。だが被害者らは、前回同様、法の網を掻い潜る悪質な組織の一家であった。ハリーは、目撃者による情報などから、パトロール警官である友人のチャーリー・マッコイではないかと疑惑を持つ。というのも、チャーリーは言動からして精神を病んでいるような、限りなく怪しい人物に思えたからだ。本作において、見事なストーリー展開だと思ったのは、やはり思いがけない人物が犯人であり、黒幕だったということだ。ガン・アクションとしても申し分ないが、サスペンスとしても完璧に成功した作品であると言えよう。前作、ドン・シーゲル監督がメガホンを取った「ダーティハリー」が、あまりにも影響力の大きい、素晴らしい作品であっただけに、2作目に挑戦した監督の重圧たるや、想像をはるかに超えたものであったに違いない。しかし、そのプレッシャーにも打ち克ち、実に完成度の高い作品に仕上げたのは見事である。こうして「ダーティハリー2」の大成功によって、次の「ダーティハリー3」へと続いて行くことになるのだ。1973年(米)公開【監督】テッド・ポスト【出演】クリント・イーストウッド、ハル・ホルブルックまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.04.29
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「(おまえは)効率のいい時間の使い方を知ってるか? 休めたか? 幸せか?」「やめろっ! やめてくれっ!」「イエスかノーかで答えろ。人類やその運命について考えるか? 答えろ・・・! 俺は誰なんだ!?」何やら世の中が混沌としているせいか、映画の世界も血生臭く残酷な作品が評価されているところがある。興行的にも成功しているのだから、それだけに需要もあるということなのだろう。「ユニバーサル・ソルジャー」はシリーズ化されていて、本作はすでに5作目で、息の長い作品だ。出演者の中にドルフ・ラングレンがいるが、「ロッキー4」でロッキーの敵役を演じた役者さんである。最近では「エクスペンダブルズ」にも出演していて、やはりスタローンと共演している。 筋肉ムキムキの屈強なキャラクターを演じることの多い役者さんだが、侮るなかれ。彼は、マサチューセッツ工科大学在学中に数学と物理学を学んだインテリジェンスなのだ。そういう予備知識を持って本作を鑑賞すると、何やらドルフ・ラングレンの演じるキャラクターが刹那的で、ものの憐れを感じるから不思議だ。悪役なのに。チェチェン民族主義のテロリストであるトポフは、チェルノブイリ原子力発電所を占拠した。テロリストたちは、ロシア首相の娘と息子を誘拐し、これまで逮捕された政治思想犯らの釈放とパサラン地区の独立を要求して来た。もしも受け入れられなければ、人質を殺害し、原子炉を爆破するとのことだった。困惑したロシア首相は、アメリカの攻撃型再生兵士開発プロジェクト“ユニソル”の科学者たちに協力を求めた。一昔前は、何かと言うと米ソ冷戦時代を彷彿とさせるアメリカ対ロシアの構図が出来上がっていたものだが、時代は確実に変わった。今や米ソではなく、対テロリストと言った構図だ。あるいは人間の傲慢さが生み出した、兵器への恐怖、警戒か。科学の力でどこまでも神に近付こうとする人間たちへ、警鐘を鳴らしているのだろう。 近未来、科学者たちはクローン技術を駆使して、殺しても死なない人間兵器を造り出してしまうかもしれない。エイリアンやゾンビを恐怖の対象として来た我々は、意識の変革を求められる時が来てしまった。本作は、現実に起こりつつある科学の副産物を、壮絶な戦闘アクションに織り交ぜて描いた、近未来映画なのだ。2009年(米)、2010年(日)公開【監督】ジョン・ハイアムズ【出演】ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.04.17
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【エクスペンダブルズ】「おい、メシでも食おう」「いつ?」「1000年後」「(それは)急なことだな」本作は一言で表現すると、“豪華アクションスター・オンパレード”と言ったところだろうか。なにしろ主役級の役者さんたちが一堂に会したのだから、それだけでも嬉しくなってしまう作品なのだ。メガホンを取ったのは天下のスタローンだが、様々なシーンにおいて、過去の作品との類似性を感じさせてくれる。例えば「ランボー怒りの脱出」では、ベトナム人女性の協力者が登場するのだが、本作でもヴィレーナ島で女性手引者がお約束の登場だ。また、アーノルド・シュワルツェネッガーの登場は、思わず「ターミネーター」のBGMを流してもらいたくなるような演出だった。(なんと、逆光で登場する)スタローン本人のカーチェイス・シーンなどは「コブラ」を彷彿とさせるし、それはもう、何でもありの設定となっている。唯一、CIA諜報員役として出演したブルース・ウィリスは、至ってまともな登場だったので、できれば「ダイ・ハード」的な豪快さがあってもおもしろかったかもしれない(笑)ソマリアでの仕事を終え、本国に戻ったエクスペンダブルズらは、皆のたまり場であるバーで飲んでいた。仲間の一人であるガンナーは、薬物中毒に陥り、作戦から逸脱した行動を取ったため追放。そのためリーダー格であるバーニー、元英国特殊部隊のメンバーであるクリスマス、さらには少林拳の達人ヤンなどが集合した。その後、新たな依頼を受けるため、バーニーは街の教会に呼び出される。そこにはライバルであるトレンチも現れたが、仕事の内容を聞くなりトレンチはあっさりと依頼を断る。というのも、南米のヴィレーナ島にのさばる、軍事独裁者ガルザ将軍の殺害という史上最大の難題だったからだ。“百聞は一見に如かず”という格言もあることなので、観ていただければ分かることだが、とにかくストーリーを期待せずに観て欲しい。むしろ、次々と登場する往年のスターたちを、とっくり拝んでいただきたい。だがそうは言っても作品のあらましぐらいは知りたい、と思う方々のために、あえて例えてみると、日本の「必殺仕事人」を思い浮かべてもらえれば分かり易いかもしれない。「必殺仕事人」で重要なのはストーリーではなく、金で雇われた仕事人らが確実に悪役の息の根を止める行為(アクション)にあるのだ。つまり、本作にも同様のことが言える。とにかく他ではありえない豪華キャスティングと、次から次へと展開していくアクションで、お腹いっぱいになってもらいたい。ツッコミどころ満載の、アクション映画であった。2010年公開【監督】シルヴェスター・スタローン【出演】シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー
2011.03.21
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「私のせいなんです」「何が?」「彼の辞職のことです・・・私がくじけたからなんです」「違うよ。自分を責めるな」「でも・・・警官の妻になる資格はありません」ちまたに溢れる刑事ドラマのどれも、何やらどこかで見たようなシーン、聞いたようなセリフ、知っている筋書きで、半ばうんざりしてしまうことも少なくない。本作「ダーティーハリー」は、そんな刑事ドラマの本家本元、全てはここから始まったのだと言っても過言ではない。この作品に出て来る様々なシーンが、その後の刑事ドラマで度々模倣されることになるのだ。「ダーティーハリー」は言わずと知れたクリント・イーストウッドの出世作であり、この作品に出演したことにより一躍有名となった、言わばクリント・イーストウッドの当たり役である。第一作目の「ダーティーハリー」は、当時アメリカ社会を震撼させたゾディアック事件(※)をモデルにした内容となっている。※サンフランシスコで起きた連続殺人事件のこと。“星座”と名乗る人物が、警察や新聞社に自らの行為を電話するなど、愉快犯による猟奇的殺人事件。いまだ未解決事件である。【ウィキペディア参照】一方で、ピーター・フォーク主演による「刑事コロンボ」が大ヒットしたのもこの頃だ。(しかし「刑事コロンボ」はTVドラマである)吟遊映人の好みは断然「刑事コロンボ」であるが、本来のアメリカ映画を愛する通の方々は、やっぱり「ダーティーハリー」に軍配を揚げるのではなかろうか。なにしろ「ダーティーハリー」は現代の西部劇と言っても差し支えないほど、銃を乱射するガン・アクション・ドラマとなっているからだ。事件の発端は、プールで泳ぐ若い女性が撃たれたことであった。サンフランシスコ市警のハリー・キャラハン以下警察官らは、手掛かりを求めて捜査に当たるが、犯人から10万ドルを要求する脅迫状に騒然となる。犯人は殺人予告として、次は黒人か教会の牧師を狙うとのことだった。その後、警察の必死の捜査にもかかわらず、第二の事件が起きてしまう。犯人の予告どおり、次に狙われたのは10歳の黒人少年で、顔を銃撃され即死であった。 ハリーは、新人警官であるチコとともに、“さそり座の男”と名乗る犯人の行方を必死で追うのだった。この作品に関する記事を閲覧していて初めて知ったのだが、アメリカには“ダーティーハリー症候群”というものが存在するらしい。それは一体どういうものかと言うと、警察官が現行犯を前に、その場で正義の下に射殺してしまう行為に及ぶ精神状態のことだとか。本来なら令状を取って逮捕し、入念な取調べの後は正当な裁判を受けさせるのが法治国家としてのあるべき体制なのだが、言わば一警官の独断と偏見による処刑行為のことなのだろう。本作「ダーティーハリー」の影響力というのは、現職警官らの精神状態にも及んだのかと思うと、映画とは何て訴求力の高い、社会性を帯びた娯楽なのだろう。本作が公開されて、すでに40年の月日が経過したが、今も変わらず楽しめて、若きクリント・イーストウッドを堪能できる、古き良き刑事ドラマなのだ。1971年(米)、1972年(日)公開【監督】ドン・シーゲル【出演】クリント・イーストウッドまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.03.01
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「“いつか”は危険な言葉だ」「危険?」「“永遠に実現しない”と同じだから。・・・僕も夢はたくさんある。グレート・バリア・リーフで潜り、オリエント急行に乗る。リュックだけ背負い、バイクでアマルフィへ行くんだ。ホテル・デュ・キャップで知らない女性にキスする」「それ、どこ?」「南仏だよ」すっかりCIAの役が板に付いたトム・クルーズは、むしろこういう役柄こそ自分に相応しいとでも気付いたように、生き生きと演じている。演技の幅を広げようとして、様々なキャラクターに挑戦する役者魂には脱帽だが、ビジネス的にも成功を収められる作品でなければ、トム・クルーズという役者さんは納得しない。ハリウッド・スターとしての風格を絶対に忘れない人物なのだ。本作は、ヒロイン役のキャメロン・ディアスと、実に息の合った演技を披露してくれた。 テンポの速い場面展開や、息切れしてしまいそうなアクションも、この2大俳優の共演のおかげで、視聴者は安心して観ることができたに違いない。この作品は、コメディ・タッチのアクション映画なので、ヒロイン役はむしろジュリア・ロバーツに演じてもらいたかったような気もする。ヒロインが自虐的に笑うシーンなど、ジュリア・ロバーツが大きな口を開けて笑う「プリティ・ウーマン」を思い出させるからだ。あるいは「プリティ・ウーマン」で、しがないコールガールが大金持ちのハンサムと知り合うことで、それまでの生活が一変するというストーリー展開と、平凡な女性がCIA諜報員の男と知り合うことで、様々なトラブルに巻き込まれ、変化していくという流れに共通性を感じたからかもしれない。いずれにしても、一人の男性との出会いによって、女性が魅力的に変化していくプロセスを楽しむストーリーになっている。ジューンは、妹の結婚式に出席するため、ボストン行きの飛行機に乗ろうとしていた。 空港で、予定していた便が満席のために乗れず、苛立ちを隠せないジューンだったが、思いがけず乗れることになった。機内では、今しがたぶつかったハンサムな男性ロイと座席が近くなり、会話を交わす。 ロイは、やさしさと男らしさに溢れたジューン好みの男性で、思わずときめいてしまう。 一方、ジューンがトイレに立った後、ロイはいきなり機内の乗客と格闘を始める。なんとロイは、CIAの諜報員だったのだ。サスペンス色の強いスパイ映画ならば、人によっては見飽きた感もあるかもしれない。 だが本作は、ラブ・エッセンスを濃厚にし、ストーリーそのものにドラマ性を強めている。アクションも目まぐるしく躍動感のあるものとは違い、意図的に抑制の効いた仕上がりだった。ロマンチック・ラブ・コメディとして、見事なストーリー展開。特に女性からは支持されそうな出来栄えである。本作でメガホンを取ったジェームズ・マンゴールド監督の代表作として、「3時10分、決断のとき」などがあるが、「ナイト&デイ」でまた新たな側面を披露したかに思える。全体を通して、明るく痛快なアクション映画に仕上げられていた。2010年公開【監督】ジェームズ・マンゴールド【出演】トム・クルーズ、キャメロン・ディアスまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.02.17
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「あなたの望みは?」「汚名をそそぐと皆に誓ったんだ。名誉へのこだわりだ。・・・聞いてくれ。望みは完全な復職と名誉の回復。私自身とチーム全員のだ」「釈放はムリです。少なくとも合法的には」本作は、もうずい分前にアメリカのテレビドラマで高視聴率を獲得した「特攻野郎Aチーム」の劇場版である。テレビシリーズとは若干舞台設定を変えているが、明るく陽気で愉快な筋書きにはほとんど変更もなく、懐かしさから目を細めて喜んだファンも多いのではなかろうか。とかくアナログを支持する映画通の方々にはどう映ったか分からないが、本作は現代らしく、CGを駆使しているようだ。リーダー格のジョン・ハンニバル・スミス大佐役を、リーアム・ニーソンが演じたのだが、これは大成功!存在感も去ることながら、チームをまとめていくカリスマ性が演技の端々に感じられて申し分ない。さらに注目なのは、「第9地区」で一躍有名になったシャールト・コプリーが、スゴ腕パイロットのマードック大尉に扮しているのだが、この狂人ぶりが見事!キャラクターとしては、精神に多少の(?)疾患があり、何かとトラブルを引き起こす役柄なのだが、実は頭脳明晰でインテリジェンスに溢れ、空港でスワヒリ語をペラペラと話すシーンは普段とのギャップに驚いた。これはお世辞でも何でもなく、シャールト・コプリーという「第9地区」しか映画出演経験のない役者を抜擢した監督かあるいはプロデューサー、実に見事な配役をしたと思う。特殊部隊Aチームのメンバーであるジョン・ハンニバル・スミス大佐、フェイスことテンプルトン・ペック中尉、B.A.バラカス軍曹、そしてスゴ腕パイロットのマードック大尉ら4人は、イラクの前線で活躍していた。ある時、CIAのリンチと名乗る人物から、アメリカドル紙幣の原版がバグダッドから盗み出されようとしているという情報を得る。手強いゲリラ集団から巨額の札束と原版を取り戻そうと、Aチームのメンバーは見事に作戦を成功させるはずだった。だが、そう上手くはいかなかったのだ。アメリカというお国柄なのだろうか。とにかくどこまでもサービス精神に溢れた逸品で、根っからのエンターテインメント映画なのだ。つくづくそう感じたのは、終盤。そう、エンディング・クレジットが流れてからのオマケ(?)のシーンだ。作品はもちろんおもしろかった、だがこの最後のオマケを観ただけでなんだか物凄く得した気分だし、実は一番この場面が楽しかったような気もする(笑)新旧含めて「特攻野郎Aチーム」は、最高のアクション・コメディなのだ。2010年公開【監督】ジョー・カーナハン【出演】リーアム・ニーソン、ブラッドレイ・クーパー、シャールト・コプリーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.02.09
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「おい、話し合おう」「あんまりだ、殺すなんて」「どうせ(あのままなら)死んだ」「いいや!」「あの傷じゃ無理だ」「それに、生かせば俺たち刑務所行きだぞ」久しぶりのカーアクションは、定石ながら、充分に楽しめるドキドキハラハラ感があった。そもそも本作の製作に携わったサム・ライミという人物は、金という何にも増して強い武器を手に入れた時の人間を、実に見事な作風で表現するのを得意とする。サム・ライミの代表作として「スパイダーマン」や「死霊のはらわた」などがあり、いずれも監督としてメガホンを取っている。これまでの彼の作品における、細かい内容は忘れてしまったが、とにかく金によって人々が狂わされていくシーンとか、札束が燃えるシーンなどが多々出て来たような記憶がある。本作「アーマード武装地帯」においても、その名の通り、現金輸送車を取り巻く犯罪アクションに仕上がっているのだ。タイは、両親をすでに亡くしており、ひきこもりの弟と二人暮らしであった。生活を少しでも楽にするため、元軍人であることを活かして警備会社に勤務し、現金輸送の警備にあたっていた。そんな折、同僚のマイクが高額現金輸送の際に、4200万ドルという大金を横領してしまおうと持ちかけた。タイは激しく拒絶したが、すでに抵当に入っている家を手放す寸前まで来ていて、どうしても現金が必要だった。決して乗り気ではなかったものの、渋々計画犯罪の片棒を担ぐことになったのだ。この作品は、決してB級というわけではないのだが、それにしても一流ではないことは認める。だが、出演している役者陣の顔ぶれを見て欲しい!主役のマット・ディロンを筆頭に、ジャン・レノやローレンス・フィッシュバーンなど、錚々たる人物なのだ。なぜ一流のハリウッド・スターらがこの作品を選んだのか、不思議なくらいだ。ジャン・レノなどは、言わずと知れたフランス人俳優で、代表作に「レオン」「ダ・ヴィンチ・コード」などがあり、ヒーロー役から悪役まで幅広いキャラクターを演じ分けている。いわゆる一流どころなのだ。ローレンス・フィッシュバーンにおいては、「マトリックス」シリーズで不動の人気を得ている。マット・ディロンなど、登場しただけで何やら犯罪のニオイがプンプン漂って来そうな演技で、視聴者を惑わせるから不思議だ。そんな一流どころの役者らが勢揃いして演じているのだから、つまらないわけがない。 製作のサム・ライミの存在感がキラリと光る作品であった。2009年(米)、2010年(日)公開【監督】ニムロッド・アーントル【出演】マット・ディロン、コロンバス・ショート、ジャン・レノまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2011.01.13
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「俺とエルヴィスの違いを知ってるか!?」「ええ、あんたはバカ」「俺は生きてて奴は死人」「あんたが死んだ後、誰がお墓参りに来てくれる? 母親でも来ないわ。でもグレースランドには100年後も・・・」「イカれた女だぜ!」ジョン・マッデン監督がメガホンを取り、しかもミッキー・ロークにダイアン・レインという出演者の顔ぶれからして、作品が不出来なわけがない。とは言え、ジョン・マッデン監督のこれまでの作品からすると、かなり毛色が違うことは確かである。代表作である「恋におちたシェイクスピア」などを念頭に置いたファンからすれば、ちょっと残念な演出かもしれない。本作「キルショット」は、マフィアの殺し屋アーマンドが、ひょんなことから知り合ったチンピラのリッチーと係わることで、様々なトラブルに遭遇する。冷酷非情であるはずのアーマンドが、ささいな情と感傷に囚われ、ラストを迎えるまでのプロセスを追ったものだが、犯罪・アクションモノとしては甘めの気がしないでもない。吟遊映人が一箇所、納得がいかなかったのは、リッチーの女のアパートでアーマンドも世話になった後、アーマンドとリッチーは出て行くことになった場面だ。さて二人が車に乗り込み出発しようとしたところ、リッチーが忘れ物を取りに再び女のところへ戻る。実はこれは、女を殺害するためなのだが、アーマンドの表情からしてリッチーがこれからしようとしている行為に気付きながらも止めないのだ。エルヴィス・プレスリーが大好きで、根は悪気のない女だった。だがリッチーは、自分が懇意にしていた女であるにもかかわらず、顔を見られていることから殺害してしまう。また、アーマンドもそれを暗黙のうちに実行させてしまう。この演出は、他の監督ならいざ知らず、これまでのジョン・マッデン監督的に果たしていかがなものだろう、と考えさせられてしまった。組織の依頼で、ある男の殺しを引き受けたアーマンド(ブラック・バード)は、殺しの手引きをした女も殺害してしまう。アーマンドが相応の報酬の催促をしたところ、マフィアのボスの女を殺したことで、逆に追われる身となってしまう。ある日、アーマンドが飲み屋から出て来たところ、チンピラのリッチーに絡まれる。リッチーの目的は、アーマンドの乗っているキャデラックにあったのだが、アーマンドがプロの殺し屋であることを知ると、リッチーは「二人で組もう」と誘いをかけて来るのだった。もともとミッキー・ロークという人は、テロリストやマフィアなど、とにかく犯罪者の役が妙に似合ってしまう役者さんなのだ。本作のおいても、主人公アーマンド役はハマリ役で、カーメン役のダイアン・レイン共々、見事なキャスティングであった。演技に関しては無論申し分なく、非の打ちどころがなかった。暗く、陰鬱になりがちな犯罪モノであるが、最後の場面で別居中のカーメンとウェインが抱擁するところで救われる。乾いた描写の中に、一筋の光が射し込むような作品であった。2009年(米)公開 ※日本では劇場未公開 【監督】ジョン・マッデン【出演】ミッキー・ローク、ダイアン・レインまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.12.21
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「あのオルロフが現れたのは謎だった。誰かが仕掛けたの。・・・ウインターよ」「ウインターが?! 奴がミサイルを発射しかけたと? お前が世界を救ったと?」「そうよ、信じて」「たいした言い訳だ!」吟遊映人にこの作品を勧めてくれた友人は、「やっぱりこういうのはいいなー。ボクはつくづくアクションが大好きなんだ」と、大絶賛。何はともあれ、さっそく「ソルト」を観てみることにした。友人が絶賛するだけのことはあって、もう最初から最後まで一息に観てしまった。やっぱりアクションというのは、このぐらい臨場感があって、ドキドキハラハラさせられると、かえって爽快になるものなのだ。難解なストーリー展開に苛立つこともなければ、ありきたりなトリックにうんざりすることもない。ただひたすら、次から次へとふりかかって来るトラブルを回避するために戦い、防ぎ、逃げ出し、そしてまた戦う。これこそがスパイ・アクション映画としての醍醐味であろう。吟遊映人は単純なので、こういう作品を観た後は必ず自分もCIAエージェントになりきる(?)から不思議だし、笑える。(FBIが登場する場合は、FBIになりきる)もうそなると、吟遊映人にとっての映画の影響力は、相当なものなのだ。CIAエージェントであるイヴリン・ソルトは、結婚記念日のため帰宅を急いでいた。ところがロシアからの亡命者でオルロフという人物が捕らえられ、尋問を担当するよう頼まれる。オルロフはソルトを相手に、思いもかけない衝撃的な告白を始めるのだった。それは、大統領を暗殺するために、小さいころより特別な訓練を受けて来たロシア人スパイが行動を起こすと。その人物はなんと、オルロフを尋問しているソルトであると。本作「ソルト」の主人公イヴリン・ソルトに扮するのは、アンジェリーナ・ジョリーである。スタイルバツグンで、身のこなしがスピーディーで、しかも目力のある彼女にピッタリの役柄であった。走るトラックからトラックへと乗り移るアクションは、見事なものだった。どの程度スタントマンが介入したか知らないが、今にも転がり落ちそうなシーンなど、思わず目を覆いたくなってしまったほどだ。また、男性に変装して警備員の目を眩ませる場面など、スパイらしいスパイという感じで、素直にカッコイイと思った。ウインター役のリーヴ・シュレイバーは、とにかく声がいい!このクールな声質だけで、俄然CIAっぽいから不思議だ。この役者さんは、アニメの声優などをやらせたら、必ずや頭角を現すに違いない。ラストは、何やら続編を想像せずにはいられないところでエンディング・ロールが流れる。思いきり次回が楽しみな作品であった。2010年公開【監督】フィリップ・ノイル【出演】アンジェリーナ・ジョリー、リーヴ・シュレイバーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.12.05
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「こいつを俺から奪う気でいるなら・・・死ぬ覚悟をしろ」「俺の故郷では・・・“死”の定義は“虚”だ。そうなると・・・俺はずっと前から死んでる」「つまり、ここに死体は3つになるのか」映画とはビジネスである以上、視聴者が期待し、満足するものを作り上げなければならない。無論、それは映画だけではない。例えば伝統的歌舞伎の世界で言うなら、毎回飽きもせず涙を誘うシーンがあったり、観客のお目当ての役者さんが花道から登場しようものなら、「よっ、待ってました!」とか「よっ、成田屋!」などと掛け声が飛び交うのだ。これを世間では“お約束”と呼んでいるが、本作「沈黙の鉄拳」もその伝統的(?)お約束の延長線上にあるのだ。沈黙シリーズは、言わばスティーヴン・セガール独壇場の“お約束”映画と言っても過言ではない。この役者さんが登場して「よっ、セガール待ってました!」という掛け声とともに、バッサバッサと悪役を倒して行く格闘シーンで「よっ、大統領!」みたいな合いの手を入れたくなってしまうから、いよいよ“お約束”であることに間違いはないだろう。さらに、このセガールという役者さんのかもし出す庶民的なムードもあるのだろうが、何やら近所の知ってるオジさんみたいに親しみを感じてしまうのはなぜだろう?妻に絡んで来た二人組のギャングを殺害したという無実の罪で、シェーン・ダニエルズは6年間も刑務所に服役する。その後、冤罪が認められたものの、シェーンは愛する妻から別れの手紙を受け取り、一人身となってしまう。そんな折、パーキングエリアで一服していると、二人の中国人が警官から職務質問をされているところを目撃する。警官が中国人の乗っている車のトランクを開けて見ると、なんとそこには大金の入ったバッグと若い女性が縛られていた。中国人は警官にバレたと知ると発砲し、逃走を試みる。その一部始終を目撃していたシェーンは、元陸軍特殊部隊のメンバーであった腕力を活かし、捕らわれの身の女性ティアを救出するのだった。スティーヴン・セガールという役者さんは、最初の奥さんが日本人であったこともあり、大の親日家で知られている。あのゆったりとしたアクションは、実は本物で、彼は合気道7段の有段者なのだ。その影響で、古神道として名高い大本教の信者であったが、現在はどうやら仏教徒のようだ。【ウィキペディア参照】いずれにしても、セガールのイメージ戦略は大当たりなわけで、いつだって観客の期待を裏切ることなく、アクション・スターとして堂々たる地位に君臨している役者さんなのだ。世間がセガールをどう評価しようと、あのインパクト、存在感は、スターがスターである証拠に間違いはない。2010年公開【監督】キオニ・ワックスマン【出演】スティーヴン・セガールまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.24
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「悪い予感がする。どうやら終わりらしい」「(いや)助かるよ」「やっぱり神なんていない。神はいないよ・・・おい、どこへ行く?」「神がいることを証明するのさ」どういうわけか、ニコラス・ケイジという役者さんは、ちょっと一般的ではないセリフを臆面もなく言い、それがちゃんとサマになっているから不思議なのだ。ドラマチックを超えた劇場型の表現を、素晴らしく巧みに言い回す人物である。本作は、凶悪な囚人たちの中に唯一、仮釈放の身となる元軍人のポーがいて、その正義感の強さをこれでもかと言うほどに発揮し、披露してくれるアクション映画なのだ。見どころとしてはやはり、凶悪な囚人たちの個性強すぎるキャラクターぶりであろうか。 例えばそんな彼らのリーダー格とも言えるサイラスは、人生のほとんどを服役しているが、天才的頭脳の持ち主で、博士号を取得している。また、ガーランド・グリーンなる人物は、30人もの連続殺人を犯し、殺害した少女を助手席に乗せドライブしたというのは、もはや伝説となっていた。リーダー格のサイラスでさえグリーンには一目置き、「あんたのファンだ」と言わしめた、ほとんどVIP待遇(?)扱いであった。そんな狂人たちの中、ポーは一体どうやって脱出し、愛する家族のもとへと帰るのか、というストーリーなのだ。元軍人のキャメロン・ポーは、ショット・バーで妻と久しぶりに再会を果たしていた。 ところがチンピラ3人組にからまれ、取っ組み合いの喧嘩になる。そのうちの一人を過って殺害してしまい、このことが原因で過失致死罪で服役することになってしまう。その後、仮釈放が決まったのだが、アラバマ空港までコン・エアーで搬送される途中、サイラスという凶悪囚人たちの脱獄計画に巻き込まれてしまった。サイラス役に扮したのはやっぱりこの人、ジョン・マルコヴィッチである。この役者さんは政治的思想において強烈な鷹派として有名で、そのせいかどうかは分からないが、妙に悪役が多いし、似合っている。一方、グリーン役のスティーヴ・ブシュミ。この人は本作において、30人もの連続殺人犯の役で、厳重な拘束具で固定されてコン・エアーに乗り込んで来たスーパー凶悪囚人であるが、実際には敬虔なクリスチャンで、下積み生活が長く、元々消防士として働く労働者であった。9.11テロの際は、素性を隠し、瓦礫の山の中、黙々と作業をして救出活動を行なった。【ウィキペディア参照】そんな背景を知った上で本作「コン・エアー」を観ると、ラストで凶悪犯のグリーンがカジノで朗らかに笑っている姿に胸を打たれるのである。1997年公開【監督】サイモン・ウェスト【出演】ニコラス・ケイジ、ジョン・マルコヴィッチ、ジョン・キューザックまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.01
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「身を守る一番のすべは、予測することだ。身の回りの様子を頭に入れろ。・・・赤い服が見えるか?」「・・・赤い服?」「街は鏡であふれてる。店の窓ガラスや金属・・・後ろの目で見ろ」時代を代表するハリウッド・スターが主役にキャスティングされていながらも、なぜか冒頭からアジアンな雰囲気に包まれているのが本作である。それもそのはず、メガホンを取ったのは中国人の監督で、しかもご兄弟である。舞台がタイのバンコクということもあり、猥雑で混沌とした雰囲気が漂うのは否めないが、その分、一かけらの人情やさり気ない優しさが作品をよりドラマチックに盛り上げている。スタイリッシュなムードとはかけ離れているが、恐らく作品に求められたのはそういう代物ではなく、一握りの人間らしさとかピュアな精神を表現したかったのではなかろうか。孤独な暗殺者がバンコクで出会ったつまらないチンピラや、薬局の女性店員とのふれあいの中で変っていくプロセス。このストーリー展開を視聴者に楽しんでもらいたい。孤独な暗殺者ジョーは、自分の仕事をそろそろ潮時だと考えていた。最後の仕事の依頼に、タイのバンコクでルール通りに4件の暗殺を済ませたら足を洗うつもりであった。誤算だったのは、現地で運び屋として雇ったチンピラのコンを弟子にしてしまったこと。 そして、腕を負傷した際に立ち寄った薬局で、耳の不自由な店員フォンと出会ったことであった。主人公の暗殺者ジョーを演じたのはニコラス・ケイジであるが、いつもながらヒーロー(?)役が似合う役者さんである。だが同じヒーローでも、不死身のブルース・ウィリスタイプとは全く異質で、人間としての弱さを内包したヒーローなのだ。いわば、負け犬ゆえに反骨の精神から強くなった的な、より人間臭いイメージがニコラス・ケイジには付きまとう。そしてそれこそが、彼の甘いマスクに隠された本当の強さとして発揮されるのだ。そんなニコラス・ケイジが泣く子も黙る暗殺者として登場。人を人とも思わない冷酷非情の殺人鬼、かと思いきや・・・。そこにニコラス・ケイジがキャスティングされたことの意味が、隠されているのだ。2008年(米)、2009年(日)公開 【監督】彭順、彭発【出演】ニコラス・ケイジ、チャクリット・ヤムナムまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.07.14
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「あやうくハメられたぜ。俺もボケてたがバカじゃない。この株屋はスーツを着て株市場の閉じてる日曜日に経済新聞を読んでた。ヘンだがまぁいい、認めよう。警察支給のベレッタを持った強盗もいいだろう。何で気付いたと思う? ・・・彼女だ。(俺の)叔母がレストランをやってた。ウェイトレスはハイヒールを履かねぇ。足にマメができちまう。彼女がニセならすべてはウソだ。だからそのドジ野郎が俺を撃ちっこないと分かってた。中身は空砲だ」速さや高さを競い、過激な要素を多く取り入れたスポーツのことを、エクストリームスポーツと呼ぶのだそうだ。一つ間違えれば命に係わる過激なスポーツなだけに、やる側の度胸たるや、想像を絶するものがある。もちろん、本作「トリプルX」の主人公もアクションシーンにスタントマンを起用しているが、そのスタントを担当した人物が撮影中の事故で亡くなられたようで、そのアクション性と過激性は高い。「ダイ・ハード」シリーズでお馴染みのブルース・ウィリスが、不死身のヒーローとして定番になっているように、本作の主役を演じたヴィン・ディーゼルも“絶対死なないキャラ”として安心して観ることが出来る。それでも、手に汗握るアクションのおかげでドキドキハラハラ感を、十二分に堪能することが出来るのだ。ザンダー・ケイジは首の後ろにトリプルXのタトゥーがあるため、“エックス”と呼ばれている。エックスは筋金入りのワルで、法を犯すことに刺激を求め、快感を得ていた。ある時、違法ビデオゲームの撮影のため、上院議員の所有する高級車シボレーを盗み、鉄橋から川にダイブした後、自分はパラシュートで脱出するという過激ゲームをやり遂げた。アメリカ国家安全保障局のギボンズは、そんなエックスのムチャ振りを見て評価し、エージェントになることを要請する。エックスは、チェコのアナーキー99という無政府主義組織に潜入し、化学兵器の行方を追う。アクション映画の楽しいところは、サスペンスのような謎解きもなく、社会派ヒューマンドラマのように堅苦しくもなく、ただとにかく場面ごとの奇抜な展開や、心臓が口から飛び出してしまいそうなドキドキハラハラ感であろう。娯楽映画とは、正にこのアクションこそが王道で、陽気でスリリングな感覚を視聴者に提供してくれるのだ。本作「トリプルX」は、気分転換とストレス解消に持って来いの作品なのだ。2002年公開【監督】ロブ・コーエン【出演】ヴィン・ディーゼル、サミュエル・L・ジャクソンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.05.13
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「時代は変わるんだよ」「人も変わる」「・・・俺のことか? そいつは正確じゃない。車も同じなら家も同じだ」「車や家のことじゃない」決してバブルの頃を懐かしむつもりはない。だがどういうわけか、本作「トランスポーター」シリーズを観ると、あの浮かれ騒いだバブリーな時代を思い出させる。もちろん、吟遊映人は金も名誉もないしがない学生の身分だったのでバブルとは無縁であったが、同年齢の学生の中には真っ赤なポルシェに乗って大学まで通う輩もいたから、今思えばもう笑うしかない。本作「トランスポーター3」は、言わずと知れたカッコイイプロの運び屋が主人公のカー・アクション映画である。主人公フランク・マーティンに扮するジェイソン・ステイサムのスタイリッシュな着こなしが効果的なのかもしれないが、頭のてっぺんから足のつま先までブランドで固められている。ダンヒルのワイシャツにディオールのスーツ、それにネクタイ。さらにはパネライの腕時計。愛車はアウディ。申し分のないセレブ・ガイなのだ。こんなご時世だからこそ景気の良い衣装や小物にはご利益さえ感じられるから不思議だ。 どんな依頼品でも確実に届けるプロの運び屋フランク・マーティン。そのフランクの家にある夜、一台の車が突っ込んで来た。ドライバーは瀕死の重傷を負っていて、パスポートを確認すると、なんとフランクの運び屋仲間であることが判明。フランクは急いで救急車を呼んだものの、その男は何かを必死で訴えようとする。まもなく男は救急隊によって運び出され、フランクは何気なく残された車内を調べる。 すると、後部座席にロシア人(後にウクライナ人と判明)と思われる女性が同乗しているではないか。その女性に車から降りるように言うと、車からは離れられないと言う。なぜなら車から離れると、ブレスレットが爆発するしくみになっていると言うではないか。前作に続いて本作も、息もつかせぬほどのドキドキハラハラ感でアクションを堪能させてくれる。見どころは、ジェイソン・ステイサムが自転車に乗って盗まれた愛車を追いかける壮絶なシーンだ。市場の人ごみを突き抜け、工場の中をスイスイと横切り、漸くの思いで追いつくプロセスは観ているこちらまで息切れしてしまうド迫力なのだ。意外だったのはヒロイン・ヴァレンティーナ役に扮した女優さんがとても若く、主役のジェイソン・ステイサムと一回り近い年齢差を感じてしまった点だろうか。だが、愛に年の差はない。ハッピーで陽気なラストに、フランスの平和な国民性を観たような気がした。ファンを裏切らないカー・アクション映画なのだ。2008年(仏)、2009年(日)公開【監督】オリヴィエ・メガトン【出演】ジェイソン・ステイサム、フランソワ・ベルレアンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。 See you next time !(^^)
2010.02.19
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「クイズ“TVドラマと車”だ。’73年型ファイアバードに乗ってたのは? オットー」 「ロックフォード」「“刑事コロンボ”の車は?」「プジョー」「色は?」「グレー」いつもニコニコ、ニコラス・ケイジ。吟遊映人は、彼が登場する度にその甘いマスクとうっすらと優しげな微笑みを浮かべる口元を見て、癒されるのだ。それにしてもこのニコラス・ケイジが、巨匠フランシスコ・F・コッポラ監督の甥に当るのだから驚きだ。気難しげで堅いイメージの拭えないコッポラ監督とは両極端にあるニコラス・ケイジ。 七光りを微塵も感じさせず、彼独自の個性と実力で現在の立ち位置を見出したのは、実にお見事。やはりニコラス・ケイジという人物は、ただ者ではないのだ。本作はそれほどストーリー性を重視した内容ではなく、どちらかと言えばウィットに富んだ会話や臨場感の溢れるカー・アクション、そしてレアで超高級な車の登場によって楽しませてくれる作品に仕上がっている。窃盗団の一味であるキップは、仲間と高級車を盗む途中でドジを踏み、アジトに隠していた盗難車を警察に押収されてしまう。怒った組織のボスであるカリートリーは、キップを車ごとスクラップにして殺害しようとする。一方、キップの兄であるメンフィスは元窃盗のプロであったが、足を洗い地道な生活を送っていた。そんな中、昔の仲間から弟キップの窮地を知らされ、弟の命と引き替えに高級車50台を期限付きで盗む約束をするのだった。「60セカンズ」は、三度の食事より車が好きだという方々には持って来いの作品なのではなかろうか。吟遊映人は車に詳しくないので、とにかく見たこともないような形をした立派な車が次から次へと登場したことに驚いたり、息を呑むようなカー・アクションにドキドキハラハラさせられた(笑)シリアス映画に飽きた方や、スカッと爽快な気分になりたい方などにオススメである。 しかし何と言っても、いついかなる時も甘いマスクを外すことのない永遠のナイス・ガイ→ニコラス・ケイジに注目していただきたいのだ。2000年公開【監督】ドミニク・セナ【出演】ニコラス・ケイジまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。 See you next time !(^^)
2010.01.10
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「用心してください。冷静にね」「ワハハハ・・・燃えとるよ! 71年のトランポリン大会で決勝に出た私だぞ」「・・・大昔です」「一度やれば体が覚えてる」今回も大物ゲストがチョイ役で出演している。それは、フランス代表のサッカー選手であるジブリル・シセである。映画冒頭でのこのサービスは、これから作品を観て多いに楽しもうと心躍らせている視聴者にとっては、実に嬉しい導入部である。さすがフランス映画なのだ。さて、本作ではダニエルのタクシーであるプジョー・406がプジョー・407にモデルチェンジした。しかし、車に疎い吟遊映人には、どこがどのように変わったのかは具体的に説明できないのであしからず。コンゴに護送途中のヨーロッパ史上最強の凶悪犯グループ一味のリーダーが、いったんマルセイユ警察に移された。犯人の監視を任されていたエミリアンは、当の凶悪犯の口車に乗り、まんまと逃がしてしまう。一方、エミリアンの妻ペトラは、秘密捜査のため犯人グループと接触し、潜入を果たす。 なんと凶悪犯らは、フランス警察でも捜査の及ばないベルギー王立銀行を狙っていたのだった。「TAXi」シリーズは本作で4作目になるのだが、出演する役者さんたちのことをあまりよく知らない。せっかくなので、この機会に調べてみようと思い、主役のサミー・ナセリについてウィキペディアを参考。正直、その経歴に驚いた。なんと20代で刑務所に入った経験があり、その後は薬物所持や暴行、飲酒運転等で検挙されている。さらに、今年に入ってからは男性を刺して逮捕されているのだ。そんなサミー・ナセリではあるが、役者としての実力が認められフランスという芸術の都で世界観を広げた。ストレートにアクション・コメディとして楽しむ一方で、その作品の内側に秘められた裏事情などを知っておくのもなかなかどうして一興なのだ。映画にはその作品そのもののストーリーと、さらには役者たちの秘めるドラマがあり、そんな様々な事情が絡み合い、スケール豊かな作品に仕上げられるのかもしれない。そんな中、骨までしゃぶり尽くすほど映画を楽しみたいと痛感した吟遊映人なのであった。2007年公開【監督】ジェラール・クラヴジック【出演】サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタルまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.12.19
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「(もしもし)破水したの。生まれるわ・・・!」「今すぐ? 出産?」「早く来て!」「ペトラ、待ってろよ!」今回は冒頭部から驚かされた。なんと、ハリウッド・スターであるシルヴェスター・スタローンが、ゲストとしてチョイ役で登場しているのだ。フランス映画にスタローンが出演と言うのも、なかなかどうしてオツなものである。ダニエルの運転する最速のタクシーに乗車し、物凄い勢いで空港まで突っ走り、到着。 スタローンらしく(と言うよりランボーみたいに)ヘリから降ろされた一本のロープにつかまって、颯爽と去って行くのだ。このわずかなシーンであってもスタローンの存在感たるや、完全に主役のサミー・ナセリを食ってしまっている。やはり、ハリウッド・スターたる所以なのだ。おそらくスタローンファンならば、このシーンを観るためだけにわざわざ劇場に出向いて、黄色い声を上げるのではなかろうか。そんなサービス精神旺盛のフランス映画「TAXi3」は、今回も実に愉快で笑わせてくれた。エミリアンは夜ごと悪夢にうなされていた。と言うのも、8ヶ月間も逮捕できずにサンタ強盗団と呼ばれる謎の集団に振り回されていたからだ。そのせいもあり、ペトラが妊娠していることにも気付かずじまい。一方、エミリアンの上司ジベール署長は、キウと言う中国人女性記者にメロメロで、実はキウがサンタ強盗団のリーダーであることに全く気付かない。タクシードライバーであるダニエルは、今回もエミリアンを助け、サンタ強盗団を追う。 今回の見どころは、ダニエルの運転するプジョー・406の改造車が、世界最速列車TGV(新幹線的な列車)を悠々と追い抜くシーンであろうか(笑)あるいは、とうてい無理かと思われた雪山を走行するため、なんとキャタピラーまで装備されているという徹底ぶりなのだ。本作は、カテゴリとしてアクションに位置づけたものの、内容が実に愉快でおもしろおかしいため、コメディ作品としても充実している。この冬、ぜひとも家族揃って「TAXi」シリーズを鑑賞していただきたい。そして、お腹を抱えて笑い転げていただきたい。“笑うかどには福来る”とあるように、きっと幸多き年を迎えられるであろう。2003年公開【監督】ジェラール・クラヴジック【出演】サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、シルヴェスター・スタローン(カメオ出演)また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.12.16
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「こうやってドア越しだと気楽に話せる。面と向かうとアガって話せない。君の瞳が・・・あまりにブルーで、君の瞳に吸い込まれそうでドキドキするんだ。こうして話していると安らぎを感じる。・・・迷惑に感じる?」前作の続編である「TAXi2」は、さらにテンポアップした感がある。スリリングなアクションはよりエクサイティングになり、内容は視聴者を飽きさせないためにコメディ色が強くなった。度肝を抜いたのは、なんと日本のニンジャが登場!監督が親日家なのか、おかしな衣装を纏った催眠術師やニンジャ部隊が颯爽と現れるのだ。天下のフランス映画に日本の文化(?)が紹介されるのは大変喜ばしいことながら、なにぶんペコペコ頭を下げ続ける防衛庁長官や、「こんにちは~」とメロディアスなあいさつにはちょっと赤面(笑)日本人のイメージって、一体・・・(汗)陣痛の始まった妊婦とその夫を乗せたダニエルは病院へ急行。しかしこの時ダニエルは恋人リリーの父親と会う約束をしていた。出産の始まった妊婦のために自分のタクシーでお産をさせると、急ぎリリー宅へ向かう。 緊張しながらもリリーの父親とあいさつを交わすと、なんと、フランス陸軍のベルティノー将軍であった。一方、サミットのため日本から防衛庁長官が来仏。マフィア対策のためマルセイユ警察を視察に訪れたのだ。ところが日本のヤクザに襲われ、防衛庁長官が誘拐されてしまうのだ。今回もお色気官能シーンは満載で、世の男性陣の目を釘付けにすること間違いなしだ。 また、エミリアンがトイレのドア越しにペトラを口説くシーンは、実におもしろかった。 内容が無線機で他の同僚たちに筒抜けというのも、なんともマヌケでそそっかしくて、そして痛快なのだ。さらには、ダニエルのプロ並みの運転捌き、これもカーアクションとしてドキドキワクワクさせる。一介のタクシードライバーがこれほどの運転技術を披露してくれるのだから、ストーリー的にも意外性があり、興奮度は高い。本作「TAXi2」は、アクションのみならずコメディ作品としても評価の高い映画なのだ。 2000年公開【監督】ジェラール・クラヴシック【出演】サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタルまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.12.13
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「女をモノにしたけりゃ力ずくで奪え。ペトラに必要なのは男だ。胸を張って男らしく攻めろ。シャンとしろ! ・・・いいぞ、行って来い。押し倒して一発カマせ。ビンタを食らうか彼女がなびくか半々だ。答えはその場で出る。のるかそるかだ」フランスのアクション映画と言うのは初めて観た。もちろん、ハリウッドとは質感がまるで違う。何と表現したら良いのか非常に言葉に迷うが、要するに一人一人が独立した立場にあって、プライドとプライドのぶつかり合い、そして官能・・・と言う優雅なまとまり方なのである。スピード感の追求に止まらず、コメディタッチの笑いあり、あるいはお色気官能シーンもあると言う具合だ。また題材もユニークで、ピザ屋からタクシードライバーに転職した男を主人公に扱うと言うプロットもお見事。視聴者の意表をついた内容となっている。舞台はフランスのマルセイユ。スピード狂のダニエルは、ピザ屋を辞め念願のタクシードライバーに転職する。ダニエルの愛車はプジョー・406の改造車で、街をごきげんに疾走する。一方、新米刑事のエミリエンは何度も仮免の試験に落ちるほどの運転オンチ。そんな中、ドイツの窃盗団メルセデスの連続銀行強盗事件を解決するため、エミリエンはダニエルの協力を求めるのだった。年末に向けて、正に忘年会のシーズン突入である。“飲んだら乗るな、乗るなら飲むな”とあるように、飲酒の際は必ず公共の交通を利用するか、あるいは代行運転を頼むなど、ゆめゆめマナーを忘れないで頂きたい。一方で、本作に登場するダニエルのようなタクシードライバーがいたら、ぜひともそのスリリングな運転を堪能してみたいものだ。日頃のストレス解消にもなるし、帰路を急ぐ時などは持って来いの交通手段であろう(笑) 「TAXi」は、官能ありアクションありの、実にユニークなフランス映画なのだ。1998年公開【監督】ジェラール・ピレス【出演】サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタルまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.12.10
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「お前は今や“体”の技を超えた“心”の洞察力も付いてきた。・・・(お前に)尋ねよう。どの技を極めたい?」「“無”の技を」「よろしい。敵に出会った時は?」「敵はありません」「なぜだ?」「(なぜなら)“己”を持たないからです」香港映画界の草分け的存在と言ったら、この人を置いて他にはいないだろう。もちろん、ブルース・リーのことである。ブルース・リーと言えば、カンフー映画。むやみやたらな武器などを持たず、使わず、己の身体そのものが武器なのだ。ブルース・リーは今でこそアクション・スターとして偉業を成し遂げた人物と敬われているが、「燃えよドラゴン」が公開されるまではさほどの知名度はなかったようだ。また皮肉なことに、ブルース・リーは32歳という若さで他界していて、爆発的な人気を呼んだのは本作「燃えよドラゴン」が公開後のことであった。(すでにその時は死亡していた)後に続くジャッキー・チェンなどの活躍は、正に、ブルース・リーがカンフー映画の土台を築いた故の賜物ではなかろうか。武術試合に招待を受けたリーは、主催するミスター・ハンの邸宅のある島に、船で渡る。 実はリーは、島に渡る前に、国際情報局のブレイストウェイトから犯罪の疑いのあるミスター・ハンの内偵を依頼されていたのだ。また、リーの妹は、ミスター・ハンの手下によって無念の死を遂げていたため、その復讐に燃えるのだった。「燃えよドラゴン」は、香港版の西部劇みたいなものかもしれない。体を張った男同士の決闘に至るまでの様々なプロセス。それは、失った肉親に対する復讐であったり、あるいは正義のための悪への制裁であるのだ。そこには、甘いロマンスやドラマチックなストーリー展開はないが、滴る汗と血の滲むような修行、そして高い精神哲学が垣間見られる。全体を通して感じられる勢いと、一人一人のかもし出す気迫。これは演技というより、生き様を見せられたような気がした。ブルース・リー渾身の一作なのである。1973年公開【監督】ロバート・クローズ【出演】ブルース・リーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.10.24
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「これで死者は安らぎを?」「死者は復讐など求めない」「あなたに自由をあげたい。でも地獄はこの中ね」同じアクション映画を観ても、英国のそれには格調高さを感じてしまうのはなぜだろう?泥まみれ、血まみれになろうとも、シャキッとスーツを着こなして、涼しげな表情で闊歩するそのスタイリッシュないでたちたるや!むやみやたらに発砲したりしないのだ。とにかく最低限のエネルギーで、できるだけ一発で敵を仕留める。もしもはずしたら二発目は必殺だからスゴイ。万が一の三発目は、念のため止めを刺すと言った具合なのだ。本作「007慰めの報酬」では、悪役にフランス人俳優のマチュー・アマルリックが抜擢されている。マチュー・アマルリックと言えば、「潜水服は蝶の夢を見る」で見事な演技を披露してくれた人物だ。英国人俳優のダニエル・クレイグと互角の演技で視聴者を釘付けにしてくれるのだ。舞台はイタリアの古都シエーナ。ボンドはあいかわらず謎の組織を追っていた。壮絶な追跡の末、一人の男の存在に辿り着く。それはNPO法人でエコを謳ったグリーン・プラネットの代表取締役ドミニク・グリーンであった。この男はボリビアの天然資源の利権を独占しようと企み、裏でCIAと駆引きに余念がなかった。007シリーズはずい分と息の長いアクション映画であるが、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグは、正にミスター・ボンドに相応しい役者さんだと思う。金髪にブルーの瞳はもちろんだが、インテリジェンスでスタイリッシュな身のこなしに世間のご婦人方は黄色い声をあげるに違いない。映画というのは、視覚的な分野を多いに触発される娯楽なので、手に汗握るカーチェイスや風光明媚な海外の古都、それに我々東洋人があこがれる彫りの深い顔立ち、バランスのとれたスタイルなど胸を躍らせる。それら全てをたった一つの作品から与えられるなんて、これほど贅沢なことはない。007シリーズは、我々一般人にスリルとセンチメンタルとそしてちょっぴりのお色気を提供してくれる、この上もなく優雅な英国映画なのである。2008年(英)、2009年(日)公開【監督】マーク・フォースター【出演】ダニエル・クレイグ、マチュー・アマルリックまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.07.16
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「奴はツイてなかった(笑)」「クソッ!」「時計で身元が割れたのか? ありがたい時計を使うのはやりすぎだとは思ったが、おれの家におびき出すにはいいエサだ」「貴様の背骨をヘシ折ってやる!」「命令するのはおれだ!」この作品は以前にも日曜洋画劇場で観た。プライベートでは心身ともに疲労のどん底にいる時で、ただ漠然と茶の間でぼんやり観ていたような気がする。だが映画というのはスゴイ。いつの間にか視聴者を作品の中に引きずり込み、現実を置き去りにしたパワフルで華やかな世界観に迷い込ませる。その時の吟遊映人は、「スピード」が展開するこれでもかこれでもかという畳み掛ける勢いにまんまと乗せられ、あっと言う間のスリリングで楽しいひと時を過ごすことができたのだ。「スピード」は、アカデミー賞受賞作品であり、内外ともに評価の高かったアクション映画である。犯人役のデニス・ホッパーは、いかにも知能犯らしく鼻でせせら笑うような冷酷極まりない悪役を、見事に我が物にしていた。主人公を演じたキアヌ・リーブスも、若さだけに頼ることのない見事な演技力で作品を盛り上げているのだ。舞台はロサンゼルスのオフィスビル。乗客たちがエレベーターに閉じ込められる事件が発生。ロス市警のジャックとハリーは、乗客たちを救出するためエレベーターに取り付けられた爆弾を死にもの狂いで排除する。一方、爆弾を仕掛けた犯人は、なんと元警察官で爆発物処理班に在籍していた人物だと判明。処理中の爆発事故により、手に障害を負ったことで警察を逆恨みしての犯行であった。 アクション映画は時代とともに進化しているため、正直なところ、90年代前半の作品に触れることで稚拙さやリアリティに欠けるところが目につくのも否めない。それはCG技術の急激な発達に頼ることが多いからだ。だが、役者のダイナミズムな動きや存在感は、今も昔も変わらぬ高度な演技力を必要とされる。我々がアクション映画から得られる娯楽性や悦びは、次世代でも先細りすることなく、連綿と受け継がれていくことだろう。1994年公開【監督】ヤン・デ・ボン【出演】キアヌ・リーブス、デニス・ホッパーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.06.22
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「“娘を幸せにできるのか?”と誰かが言った。ずっと悩んで出した答えがこれだ。この世に完璧な人間などいない。だが俺は誰よりも娘を愛してる。その気持ちに勝るものはない。娘がいれば俺は生まれ変われる。決してあきらめない」この作品は・・・そう、近未来版グラディエーターとでも表現しようか。人権とか更正とか、そんなキレイゴトは通用しない過激な世界観なのだ。端的に言ってしまうと、民間企業が掌握する刑務所内における囚人たちの、死闘のレースである。漠然と観ていると、ありえない世界観に気持ちが追いついていかないかもしれないが、娯楽という観点から作品を堪能すると、ドキドキハラハラ感に時間を忘れてしまうほどの勢いを感じる。2012年、近未来。アメリカでは民間企業が刑務所を運営している。凶悪犯を収容するターミナル・アイランドでは、利潤追求のため“デス・レース”と呼ばれる過酷なカーレースが行われていた。それらは世界中に中継され、所長のヘネシーは莫大な利益をあげているのだった。フツーに驚いたのは、どんな凶悪犯でもそのデス・レースで5回優勝すれば晴れて自由の身になれるということ。だが逆に負ければ死が待ち受けているという、生死を分けた博打なのだ。こういうことが実際にはありえないことでも、発想としては実におもしろい。国家の経済状態がパンク寸前ならば、刑務所を民間に委託するというのはあながち考えられないわけでもないからだ。主役を演じたジェイソン・ステイサムは、どんな役柄を与えられようと、いつも涼しげで洗練された身のこなしなのだ。全身タトゥーだらけにしようと、ピアスを開けようと、ジェイソン・ステイサムは最終的に、いつの間にか、洗練された英国紳士にちゃんと戻っている。そんなジェイソン・ステイサムの、危機迫るカー・アクションを手に汗握る思いで堪能していただきたい。2008年公開【監督】ポール・W・S・アンダーソン【出演】ジェイソン・ステイサムまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.06.16
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『6週間前、僕は平凡で惨めな存在だった。・・・君と同じ。では今の僕は? 顧客管理担当? 暗殺者? 自分の父親を殺すよう洗脳されたマヌケ? その全部であり、どれでもない。今の僕は何だ?』冒頭からこの作品の感触に、記憶の断片が残っていた。どこかで出会った感じがする・・・これってデ・ジャ・ヴ?映像なのかセリフなのか、はたまた演出なのか。とにかく全体からかもし出す雰囲気に心当たりがある。よくよく調べてみたら、監督がティムール・ベクマンベトフ。舌を噛みそうなこの名前は・・・そうだ、ロシアの監督で「ナイト・ウォッチ」を手掛けた人物!吟遊映人も伊達や酔狂でDVDを観てはいませんよ、ええ。(←ちょっと得意になってみた。)今さらだけど、自分の感性を信じて良かった!何と表現したら良いのか・・・SF的な要素の中にも、ふんだんに盛り込まれている人間くささとでも言おうか。こういう個性的な描写は、やっぱり目を引く。摂食障害の上司から度重なる小言を受け、プライベートでは恋人の浮気で過度のストレスを感じ、度々パニック障害を引き起こすウェスリー。発作を止める薬を買おうとドラッグストアーへ立ち寄った時、事件は起きる。貧乏でうだつのあがらないウェスリーが、何者かに命を狙われるのだ。そしてそのウェスリーを救出する謎の美女フォックス。彼女は、暗殺組織“フラタニティ”の一員であった。この作品のみどころは、やっぱりジェームズ・マカヴォイがボコボコに殴られ蹴られながらも敏腕の暗殺者になろうと頑張る姿、そしてアンジェリーナ・ジョリーのお色気ムンムンシーンであろう。ところでジェームズ・マカヴォイという役者さんは、こういう線の細いキャラが妙にしっくり合う。「つぐない」の時もそうだったが、今にも神経を病んでしまいそうな薄幸な雰囲気が漂っていて、しかもメンタルなところで爆弾のような扱いにくいものを引き摺っているのだ。何か訳ありの過去とか生い立ちを持つ役柄を、ジェームズ・マカヴォイの持つ、自分に対して軽薄になりきれない執着心が小気味良く演技に投影されているような気がする。アンジェリーナ・ジョリーは、ただそこにいるだけでクールな美貌に酔い痴らされる。 全体を通して、シュールレアリズム満点のアクション映画として堪能できるものであった。2008年公開【監督】ティムール・ベクマンベトフ【出演】ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.03.12
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「(ミャンマーへ)出発する日の朝、マイケルはここから発つと言った。」「事件か?」「(いや)分からない。予定では10日前に戻るはずだった。大使館に相談したが、ミャンマーでは埒があかない。」「(彼らは)生きてるのか?」「カレン族の戦士と連絡先を取ったら、連行先が分かった。そして大使館のツテで元軍人の米国人からこの種の事件に経験のある連中を紹介された。」「傭兵か?」「そうだ。」肩や肘に妙な力が入ってしまう映画がたまにある。おそらく「ランボー」シリーズがそれであろう。ベトナム戦争帰還兵という設定のランボーは、どんな血生臭い戦場においても、まるで闘う人間兵器のように無表情のまま突破していく。今回の舞台はミャンマー。北朝鮮にも似て、我が国と国交がないためか、その実情はベールに包まれている。シルヴェスター・スタローンはそんなミャンマーに注目し、我々に現実を直視することを促しているように思える。タイの北部でボートの運搬を営みながら、世捨て人のように暮らしていたランボーのもとに、キリスト教系のボランティア団体がミャンマーまでボートを出して欲しいと依頼して来る。一度は断わったランボーであったが、ボランティア団体紅一点のサラに熱望され、ミャンマーまでの案内を請け負うことにする。一方、ミャンマーの情勢は著しく悪く、人権弾圧が続き、軍部が少数民族を毎日大量虐殺しているのだった。この作品を観て思ったのは、“小さな親切、大きな迷惑”という言葉。弾圧されている少数民族の救済のために白人のボランティアグループが(ランボーの)制止を振り切って現地へ向かったところ、誰かを救うどころの話ではなく、たくさんの犠牲を払ってほうほうの体で救出される側になるのだ。要するに、戦場はキレイゴトで済まされない、もっと残酷で陰惨で恐怖を伴うものなのだ。R-指定になるほどの残酷極まりないシーンが露出されるのは、よりリアルな戦場を再現するために他ならない。「ランボー」シリーズ最終幕に相応しい、壮大なアクション映画に仕上がっていた。2008年公開【監督・脚本・出演】シルヴェスター・スタローンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2009.02.13
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