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2014.04.26
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カテゴリ: 読書案内
【吉川英治/新書太閤記 四巻】
20140426

◆銃が刀と槍に代わるとき、時代は変わる
長く愛用したウィンドウズXPのサポートサービスが終了した。
パソコンが普及してもうしばらく経つが、私などはついこないだケータイを持つようになった身なので、進化するデジタル操作にはとうてい追いつけるものではない。
息子は当たり前のようにスマホをいじくり回しているが、私はガラケーで十分。
簡単なメールと通話ができさえすれば事が足りる。
高校時代、タイプライタークラブというのがあって、ものすごく入りたくて仕方がなかったのに希望者が多く、ジャンケンに負けてしまい、入部できなかった。
短大に進学すると、今度はワープロの授業が必修科目としてカリキュラムに入っており、タイプライターということばは死語?になった。
レコードにしても、“およげたいやきくん”や“山口さんちのツトムくん”などを繰り返し聴いた世代なので、80年代に入ってCDなるものを買って初めて聴いた時、あまりのクリアな響きに衝撃を受けた。
新しいものが古いものを淘汰していくのは仕方のないことで、それこそが科学の発展、延いては人類の未来を構築していくのだろう。
だが、一抹の寂しさは拭えない。

しかし、一分一秒がものを言う時代にあって、タイム・ロスは致命的で、否が応でもデジタル化は避けられない。
もうその環境にどっぷりと浸かってしまっている私たちがいるのだから。

『太閤記(四)』では、長篠の戦により、甲斐の武田軍が尾張の織田と三河の徳川の連合軍に大敗してしまうところが山場となっている。
このころすでに武田は代替わりしており、信玄から息子の勝頼が遺封を継いでいた。
武田勝頼は、名門の出に多い、いわゆる“ぼんくら”ではなかった。
しかし、信玄はあまりに偉大すぎた。
戦の神様と畏れられた父を持つ子のプレッシャーたるや、いかばかりか。
武田の誇る士馬精鋭が「陣鼓を打ち鳴らし、旗幟をひらめかせ」体当たりで織田・徳川勢に立ち向かうものの、五千挺の銃(当時としては最新式)の前には無力であった。
武田の見事な陣構えと勇将に率いられた騎馬隊に、徳川勢は皆、身の毛をよだてた。
だが、ひとたび徳川家の守将が「撃てーっ!」と叫ぶやいなや、武田軍はかつて聞いたこともない銃の轟音に恐れをなす。
それはそうだ。甲州は内陸にあって、文化の移入にはあまりにも不利な地勢だった。

ここで、武田の名将勇将が最先端の武器を前に次々と倒れていく。
甲州流の兵法と、信玄仕込みの名将をもってしても、新兵器にはとうてい適うものではなかった。

「一馬啼かず、一兵叫ばず、曠野は急に寂寞の底へ、とっぷり暮れ沈んでいた。まだ片づけられないまま夜の露に横たわっている屍は、甲軍の者だけでも、一万余とかぞえられたのである。」

この長篠の戦を振り返った時、読者は今さらのように現代に照らし合わせてみるに違いない。
デジタルを駆使する者が世の中を席巻し、アナログに生きる老練はもはや成す術もないのだ。

回顧主義に陥ることなく、新しい文明の利器と上手に付き合っていこう。
スマホを持った現代人が、決して糸電話の生活に戻れるはずもないのだから。

『新書太閤記(四)』吉川英治・著

~ご参考~
・新書太閤記 一巻は コチラ
・新書太閤記 二巻は コチラ
・新書太閤記 三巻は コチラ

20130124aisatsu


☆次回(読書案内No.123)は吉川英治の「新書太閤記 五巻」を予定しています。


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から





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最終更新日  2014.04.26 06:01:18
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