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2014.06.21
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カテゴリ: 読書案内
【本谷有希子/ぬるい毒】
20140621

◆一見、恋愛小説のようで、実は闘争ドラマ
こんなことを言ったら、歴代の女流作家と呼ばれる諸先生方に失礼かとは思うが、ここはあえて言ってしまおう。
最近の女性作家は、カワイイ!
ちょっと小説家にしておくのはもったいないような容姿である。
昔、女流作家と言ったら瀬戸内晴美(寂聴)とか、山崎豊子とか有吉佐和子あたりを思い浮かべてしまい、テレビでお顔を拝見した日には、何やら残念な(?)気持ちになったものだ。
それがどうだ、今どきの女性作家はオーラが出ているのだ。
例えば柳美里。
彼女はスタイルも良いし、美人である。
作家であり歌人でもある俵万智。
彼女も実にチャーミングだし。

いくら書くことが商売で、顔を出すことが仕事ではないとはいえ、多くの人々に夢を与えるライターという職業に就く者が、実はブスだったとなると、がっかり感は拭えない。
その点、本谷有希子も可愛い部類だ。
なんで作家なんかになったの? と聞きたくなってしまうところだ。

本谷有希子は石川県出身で今年35歳。
“劇団、本谷有希子”を主宰し、舞台の脚本なども手掛けている。
ラジオ番組『本谷有希子のオールナイトニッポン』のパーソナリティーを務めたりして、マルチな才能を誇る新鋭だ。
正直、こういう作家が世に出て来た時点で、その他大勢の作家志望者がその道をあきらめることになる。
どだい、こういう新鋭と争うこと自体、ムリな話ではあるけれど。

私がこの人物はスゴイと思う理由に、確固たる独自の世界観があることだ。
つまり、オリジナリティーだ。
二流、三流の作家にありがちなのは、どこかで聞いたような物語を、さも自分のオリジナルであるかのように、ちょこっとだけ作り直している器用さである。


その点、本谷有希子は表現方法を確実に我が物としている。
しかも、誰のマネでもない本谷有希子ワールドを小説という手法の中で、私たちにグイグイと主張して来るのだ。

『ぬるい毒』のあらすじはこうだ。
ある日、突然、熊田由理に向伊という男から電話がかかって来る。
向伊は、高校時代に借りたものを返したいと言うが、由理には全く身に覚えがない。

それでも向伊の魅力たっぷりの雰囲気に呑まれてしまいそうな気持ちになる。
結局、由理が再び向伊と再会するのは一年後。
待ち合わせに指定された居酒屋には、向伊の他に奥出と野村もいて、由理と同じ高校の同級生と言うが、全く覚えていなかった。
そこでは他愛もない会話を交わし、そうとう複雑な気持ちにさせられるものの、やはり向伊のことが気になった。
その一方で、由理は、好意の対象としていない原という男と付き合っていた。
初体験の相手として原を拒むことはしなかった。
キスが吐きそうなほど気持ちが悪かったけど、これは由理の自分自身への罰のようなものだった。

一見、恋愛小説のような体裁は取っているものの、これは主人公・熊田由理の闘争劇である。
優しげで社交的で、世界を味方につけたような、軽薄で薄汚い男の本性を上回る手段で、尋常ではない鬼気迫る信念を持った、女の復讐ドラマとでも言おうか。
こういう小説は何度も読む気はしないが、それでもけじめとして最後まで読まずにはいられない。
本谷の描く恋愛(?)があるのだとしたら、これまでの男女関係は音を立てて崩れるに違いない。
あえて独断と偏見で言わせてもらうと、可愛い女性の書いた、闘いの小説は、ジャンヌ・ダルクみたいで魅力的だ。
なんだか頼もしくて仕方ない。
本当の小説を読みたいと思ってる人におすすめだ。

『ぬるい毒』本谷有希子・著

20130124aisatsu


☆次回(読書案内No.131)は阿部和重の「グランド・フィナーレ」を予定しています。


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★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から





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最終更新日  2014.06.23 05:57:13
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