毎年恒例になってますが、4月からは生ハムが始まります。これはイタリアのパルマのピオ・トジーニ社の生ハムです。これが美味い!
生ハムは、塩漬けにした豚の後ろ脚(骨付きもも肉)を少なくとも1年くらい乾燥熟成させたものなんですが、最近はエアコンや冷蔵庫を使用するのが主流になってきていて、伝統的味わいが失われつつあります。実は生ハムは夏を越すことによってある程度の高温にさらされて独特の旨味が出ます。常に低温を保ち過ぎるとただの干し肉になってしまって、ハムらしい風味が出ないんですね。
夏でも腐らないのは、塩分と蔵付きの乳酸菌の作用があるからなんです。ぬか漬けやクサヤや鮒寿司などの発酵食品の主役は様々な乳酸菌の仲間たちです。乳酸菌が作る弱酸性の環境とある種の抗生物質が、雑菌の繁殖を抑えて、同時に乳酸発酵による独特の旨味ができるわけです。
ところが生ハムの熟成庫でエアコンや冷蔵庫を使うと、乳酸菌が活動できませんし、エアコンのフィルターに乳酸菌が引っ掛かって死んでしまうんですね。そうやってできた、生ハムはただの干し肉みたいで、美味しくありません。
このピオ・トジーニ社の生ハムは、80余りあるというパルマの生ハム会社の中でもわずか数社しかないという一切エアコンを使わない会社で作られています。ですから、蔵付きの乳酸菌が豊富で、旨味も風味もとても豊かです。数年前に、輸入元の会社が店までプレゼンに来てくれたんです。生ハムのブロックを持ってきてくれて、自分で切って試食したんですが、、、「乳酸発酵の旨味がきいてますね!」と言うと、「一口食べてすかさずそうコメントした方は中村シェフが初めてですよ。さすがよく分かっていらっしゃる。」といってました。「私は、こういう生ハムを待っていたんですよ!」と、思わず言ってしまったくらい美味しいハムです。
パルマの中でも聖地と言われるランギラーノ村は、アペニン山脈より降りてくる山おろしの冷風を熟成庫の大きな窓の開閉によって熟成に利用しているそうです。
この生ハムは秋までやってます。ぜひ召し上がってください!
で、サンク・オ・ピエの4月5月のコースはこれも恒例となったイタリアンテイストの春のコースです。
Menu Avril et Mai 2013 Cinq au pied.
サンク・オ・ピエ4月5月のコース
¥6000
(ご予約限定メニュー、2名様より承ります)
Proscuitto di PARMA Pio Tosini ,
LOMBATELLO di Cinta-senese et
Bresaola fumé du chef avec salade
パルマ、ピオ・トジーニ社の生ハムと
トスカーナ産チンタセネーゼ豚のロース生ハム"ロンバテーロ"と
自家製ブレザオラ風甲州ワイン牛のスモークハムのサラダ添え
Foie gras chaud avec purée de pommes de terre nouvelles
フォアグラのソテー、新じゃがいものピュレ添え
Risotto sepia aux boutargue Sardegna
avec calmar de HOTARU
美味!イカ墨のリゾット、サルディニア島産ボッタルガ風味
富山湾産ホタルイカ添え
Tagliata de Boeuf de KOHSHU de vin
A la vieille Bqlsamico et parmigiqno
甲州ワイン牛のタリアータ仕立て
熟成バルサミコとパルミジャーノチーズ風味
Soupe aux fraises avec granite au vinaigre de coing et miel
花梨のヴィネガーと蜂蜜のグラニテを添えたフランス産イチゴのスープ
Cafe de SAKAMOTO ou the ,2pains
さかもとこーひー又は紅茶、2種のパン
前菜は美味しいハムの盛り合わせです。特にすごいのがチンタセネーゼ豚のロンバテーロ!チンタセネーゼとは、チンタが帯という意味で、セネーゼがシエナ産のという意味なんですが、前足から肩にかけて白い帯をまとったような黒豚で、トスカーナのシエナ地区特産なんですね。12周年コースに使ったバスク産キントア豚と並び称される希少な幻の豚なんです。飼育頭数も少ないですし、大変高価です。ピオ・トジーニの生ハムが並みのパルマの生ハムの倍くらいの値段なんですが、チンタセネーゼのロンバテーロはそのさらに倍近くします。もちろんフォアグラより高いんですよ!
私の手首くらいの太さです。
普通の豚は6カ月程度で出荷されますが、チンタセネーゼは18カ月もの飼育が必要で、しかも広大な野山で放牧されますから、コストがかかっているんですね。その上そんなに時間と手間をかけても、豚がたいして大きくならないんです。まあ、生ける豚のエッセンスとでもいいましょうか、、、。とても旨味が濃い味わいです。また脂肪酸の成分もオリーヴオイルに近いそうで、豊富なコラーゲンとともにヘルシーな肉なんです。
シェフ必殺のイカ墨リゾットです。これは私も大好きなんです。上にのっている黄色のものは、サルディニア島産のボッタルガ。ボラの卵のカラスミの粉です。
地中海地域でもカラスミを作る食文化があるんですね。ギリシャ料理で有名なタラモサラータ、あれは日本だと鱈子や明太子で代用しますが、本来はこのボッタルガで作るのが正式。日本風ではゆでたジャガイモをつぶして、鱈子とマヨネーズで作ることが多いようで、鱈子とイモだからタラモだと思っている方もいるようですがそれは間違いで、タラモサラータは、れっきとしたギリシャ語のメニューです。本来は、ギリシャの癖のあるオリーヴオイルとレモン汁で仕上げるようです。
このスメラルダ社のボッタルガは日本の商社が現地サルディニア島に赴いて、特にボラの卵巣の血管を綺麗に掃除することと、丁寧な血抜きをすることを要請して日本向けに作られた特上品です。血の気が残っていると、どうしても苦みや臭みの原因になりますからね。
黄金色のキャビアともいわれる高級珍味です。鯉やマグロの卵巣で作ったものもあります。魚卵を塩漬けにして、天日に干して作る保存食です。それの皮を剥いて、おろし金で粉に加工したものが、このボッタルガ・パウダーです。
メインは、甲州ワイン牛のタリアータ仕立て。タリアータはイタリア語で切ったものという意味で、文字通り肉を焼いて薄切りにして盛り付ける料理です。たいていは、サラダなんかと一緒に盛り付けることが多いのですが、このコースでは肉のメイン料理ですから温野菜を付け合せます。味付けは、熟成バルサミコソースとゲランドの塩(フルール・ド・セル)荒挽きコショウ、ガーリックオリーヴオイルと薄削りのパルミジャーノチーズです。リゾットの後なので、軽めのメインですね。
デザートは、花梨ヴィネガーと蜂蜜のグラニテを添えたイチゴのスープ仕立て。これにはもちろん、、、
さかもとこーひー、サンク・オ・ピエ4月5月コースの専用ブレンド!このデザートには、普通のこーひーでは絶対に合わないでしょうし、紅茶でも難しいかもしれません。それが、何とも見事な液体同士の究極マリアージュですよ!去年も同じデザートにコーヒーを合わせていただいたんですが、今年はまた違う感じのブレンドになっています。驚愕のマリアージュをお楽しみください!
花梨のヴィネガーと蜂蜜をミネラルウォーターでのばして、グラニテにします。グラニテというのは、直訳すれば御影石(花崗岩)という意味で、シャーベット(ソルベ)よりは糖分が低く少しざらついたくらいに仕上げたもので、その舌触りからきた名前だと思います。
イチゴのスープは、フランス産のイチゴのピュレに少し糖分を加えただけのシンプルなもの。そこに国産の生のイチゴを少しの粉糖とコアントローで和えて入れてあります。フランスのイチゴは味も香りも色も濃いので、しっかりとした味わいです。そこにほんのり花梨が香る酸味のきいたさわやかなグラニテが浮かんでいます。この花梨ヴィネガーは1リットルで¥6000もする高級品で、アミノ酸も豊富なオーガニックヴィネガーです。春らしくて、ちょっとヘルシーな感じのデザートになりました。
皆様のご来店をお待ちしております。
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