コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

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風とケーナ

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jun さん @ Re:コンドルの系譜 第十話(150) 遥かなる虹の民(06/04) New! 今日は11:00から父(96才)定期内科検診を…
紅子08 @ Re:コンドルの系譜 第十話(150) 遥かなる虹の民(06/04) New! おはようございます! いつもありがとうご…
ロゼff @ Re:コンドルの系譜 第十話(150) 遥かなる虹の民(06/04) New! こんばんは 関西は梅雨らしくすっきりし…

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これまでの主な登場人物


登場人物イメージイラスト


物 語 目 次


頂き物のイメージイラスト


これまでのストーリー


第一話 ビラコチャの神殿


第二話 邂逅(1)


第二話 邂逅(2)


第三話 反乱前夜(1)


第三話 反乱前夜(2)


第三話 反乱前夜(3)


第三話 反乱前夜(4)


第三話 反乱前夜(5)


第三話 反乱前夜(6)


第四話 皇帝光臨(1)


第四話 皇帝光臨(2)


第四話 皇帝光臨(3)


第四話 皇帝光臨(4)


第五話 サンガララの戦(1)


第五話 サンガララの戦(2)


第五話 サンガララの戦(3)


第五話 サンガララの戦(4)


第六話 牙城クスコ(1)


第六話 牙城クスコ(2)


第六話 牙城クスコ(3)


第六話 牙城クスコ(4)


第六話 牙城クスコ(5)


第六話 牙城クスコ(6)


第六話 牙城クスコ(7)


第六話 牙城クスコ(8)


第六話 牙城クスコ(9)


第六話 牙城クスコ(10)


第六話 牙城クスコ(11)


第六話 牙城クスコ(12)


第六話 牙城クスコ(13)


第七話 黄金の雷(1)


第七話 黄金の雷(2)


第七話 黄金の雷(3)


第七話 黄金の雷(4)


第七話 黄金の雷(5)


第七話 黄金の雷(6)


第七話 黄金の雷(7)


第七話 黄金の雷(8)


第七話 黄金の雷(9)


第七話 黄金の雷(10)


第七話 黄金の雷(11)


第七話 黄金の雷(12)


第七話 黄金の雷(13)


第七話 黄金の雷(14)


第八話 青年インカ(1)


第八話 青年インカ(2)


第八話 青年インカ(3)


第八話 青年インカ(4)


第八話 青年インカ(5)


第八話 青年インカ(6)


第八話 青年インカ(7)


第八話 青年インカ(8)


第八話 青年インカ(9)


第八話 青年インカ(10)


第八話 青年インカ(11)


第八話 青年インカ(12)


第八話 青年インカ(13)


第八話 青年インカ(14)


第八話 青年インカ(15)


第八話 青年インカ(16)


第八話 青年インカ(17)


第八話 青年インカ(18)


第八話 青年インカ(19)


第八話 青年インカ(20)


第八話 青年インカ(21)


第九話 碧海の彼方(1)


第九話 碧海の彼方(2)


第九話 碧海の彼方(3)


第九話 碧海の彼方(4)


第九話 碧海の彼方(5)


第九話 碧海の彼方(6)


第九話 碧海の彼方(7)


第九話 碧海の彼方(8)


第九話 碧海の彼方(9)


第九話 碧海の彼方(10)


第九話 碧海の彼方(11)


第九話 碧海の彼方(12)


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2006.01.23
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カテゴリ: 第2話 邂逅


「そうだったの。」
コイユールは納得した。
「それで…明日、何かあるのね。」
アンドレスは少し間を置いてから、短く答えた。
「時々、親族が集まっていろいろと話をするのさ。」
「親戚の人たちの集まりなの?」
「まあ、そんなもんかな。」
と言うアンドレスの横顔はやや紅潮しており、興奮と緊張の色が見えた。

それ以上アンドレスが何も言いそうにないのを確かめてから、コイユールは窓の外に目をやって、すっかり薄暗くなっているのに気がついた。
「いけない、そろそろ帰らないと。」
「送っていくよ。」
「ううん、いいの。私なら大丈夫だから。」
彼女は首を振って、アンドレスを制した。
しかし、アンドレスはコイユールに付き添って、薄暗くなった帰路を共にした。
「大丈夫なのに…。」

コイユールはフェリパ夫人からもらった高級そうな野菜を見下ろした。
「本当は、こんな…、いただくつもりで来たんじゃないのに。」
「お金じゃないんだし、それくらいもらってくれたっていいだろう。」
「それは…とてもありがたいけど。」
普段は、お金ではなくても一切ものを受け取ることはしなかった。
が、フェリパ夫人とアンドレスの前では、つい気持ちが緩んでしまうようだった。
そして、コイユールは、つと立ち止まった。
そろそろ民家もまばらになり、これ以上先まで送ってもらうのは逆に高貴な身なりをしたアンドレスの身の方が案じられる。

「ここまでで大丈夫よ。どうもありがとう。それに、本まで…どうもありがとう!」
そう言って、彼女はアンドレスに微笑んだ。
(また会えるのは、いつになるかしら…。)
かすかに胸の奥が痛む。
コイユールは、アンドレスからもらった本を握り締めた。
やはりアンドレスと長期間離れるのは寂しいことだった。
でも、仕方のないことである。

しばらく物思いに耽ったように黙っていたアンドレスが、ふいに口を開いた。
「コイユール、明日の今頃、またうちに来てみないか。」
「え?」
突然のことに、コイユールは目を見開いた。
「君は、さっき言ったよね。もし皇帝陛下が生きていたら、この国を俺たちインカの手に取り戻せるのか、って。」
アンドレスの表情はこれまで見たこともないほど、真剣だった。
「コイユール、君は何を考えてる?なぜ、あんなことを聞いたんだ?」
アンドレスの眼差しの鋭さに、一瞬、コイユールは、自分が睨みつけられているのではないかと思ったほどだった。
彼女は、かすかに身を縮めた。
しかし、視線をそらすことはしなかった。
アンドレスの瞳を見つめ返すコイユールの瞳は、清く、澄んでいた。
自分の心の奥底で、何かがはじけたような強い感覚を彼女は覚えた。
二人はしばし無言で見つめ合った。

「私、このままでいいとは思わない…!」
言葉を発したのは、コイユールの方だった。
彼女の瞳が、強い意志を秘めて、揺れていた。
それ以上は言葉にならなかったが、アンドレスはその瞳に強く頷き返した。
「そうだ。このままでいいはずがない!」
アンドレスの瞳の奥に、激しく燃え上がる炎を見た思いがした。
一つ一つの言葉をかみ締めるように、アンドレスは再び言った。
「明日、待っているよ。もし、君が、本気でこの国を変えたいと思うなら、きっと意味があると思う。」
そう言い残して、アンドレスは踵を返した。
その後ろ姿が夜の闇に消えても、コイユールはしばし動くことができなかった。

彼女は自らの心の奥底を、ふいに覗いてしまった気がした。
それは、どこかで蓋をして見ないようにしていたかもしれない、自分の心の叫びだった。
そうだ…私、この国のこと、このままでいいなんて思っていない…――!!





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Last updated  2010.05.20 21:06:10
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