「Me and Bobby McGee」を書いたクリス・クリストファソンの作品で、あるウェッブサイトによると史上もっともカバーされた曲ということになっている。なんと320ものバージョンがあるそうだ。ちょっと目に付くだけでも、元奥さんのリタ・クーリッジ、アニマルズ、アン・マレー、ボブ・ディラン、エルビス・プレスリー、グラディス・ナイト・アンド・ザ・ピップスなどが歌っている。
別のウエッブサイトに拠れば、サミ・スミスの歌ったバージョンはなんとラジオで400万回以上流れたそうだ。ラジオで流れた回数で言うと、これはもっとも人気のある100曲の一曲ぐらいになる。ちなみにトップ5はライチャス・ブラザーズの「ふられた気持ち(You've Lost That Lovin' Feelin')」、ビートルズの「イエスタディ」、アソシエーションの「ネバー・マイ・ラブ」、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」、そしてベン・キングの「スタンド・バイ・ミイ」。
さて、このクリス・クリストファソンのCDを一枚手に入れたが、この男非常に変わっている。ローズ奨学金を受けオックスフォード大学で英文学を学んだ(ということはかなり頭がいいということだ)。West Point というアメリカ陸軍士官学校の英文学の教職を蹴って、カントリー・ウエスタンのメッカ、ナッシュビルにやってきたのが1965年、29歳のときだ。一匹狼フレッド・フォスターという男が立ち上げた、Monument というレコードレーベルに自作の曲を持ち込んだ。フレッド・フォスターはその場でクリスの才能に惚れ、雇うことを決めた。
ブドゥロー「なんだい、今日はずいぶん受付の前を行ったり来たりするね。Bobbie(Barbraの愛称)に気があるのかい?」 フレッド「ボビー?知らなかったの、僕とボビー・マキーのことを?(Me and Bobbie McKee)」
こうして「Me and Bobbie McGee」のアイデアが生まれたというわけだ。この後一週間の内に「Help me make it through the night」「Sunday morning coming down」という名曲が立て続けに誕生した。作詞・作曲はクリス・クリストファソン、「Me and Bobbie McGee」だけはフレッド・フォスターとの合作になっている。
クリスの書いた噛んでも噛んでも味わいの尽きない言葉の中から、二節ほど紹介。
Sunday Morning Coming Down (二日酔いのひどい頭痛を抱えて歩く日曜の朝の光景)
On the Sunday morning sidewalks Wishing Lord that I was stoned 'Cause there's something in a Sunday Makes a body feel alone And there's nothing short of dying Half as lonesome as the sound On the sleeping city side walk Sunday morning coming down
Take the ribbon from your hair Shake it loose and let it fall Laying soft upon my skin Like the shadows on the wall All I'm asking is your time Help me make it through the night
恋人と二人で過ごしながらもどうしても消し去ることの出来ない、孤独感。ボニー・レイットの秀作「I can't make you love me」のイメージは、クリスのこの曲から来てると思うのだが。
Turn down the lights, turn down the bed Turn down these voices inside my head Lay down with me, tell me no lies Just hold me close, don't patronize Cause I can't make you love me if you don't You can't make your heart feel Something it won't here in the dark these final hours