クリームな日々

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普天間移設調査:海自参加 


 沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に普天間飛行場(同県宜野湾市)に代わる新たな米軍施設を建設するための本格的な現況調査が18日始まった。安倍政権は地元の反発をよそに海上自衛隊の掃海母艦を近海に派遣、海自のダイバーを調査に参加させるなど、米軍と自衛隊の一体化を進めようとする姿勢を内外に印象づけた。【田所柳子、三森輝久、反田昌平】

 ◇「次官に首相指示」初関与でアピール

 「反対派が力ずくで調査をさせないというのは異常だ。何か起きた場合は万全の対策を講じる」。久間章生防衛相は記者会見で語気を強めた。日米両政府が「普天間返還」に合意したのは橋本政権時代の96年4月。移設計画が停滞することへのいら立ちがにじむ。

 だが、米軍の基地建設への自衛隊関与は72年の沖縄本土復帰後、一度もなかった。「地元の理解を得ながら進める」を前提にしてきた政府にとって、自衛隊投入は異例。防衛省の守屋武昌事務次官の判断とされるが、同省幹部は「安倍(晋三)首相から次官に調査を急ぐよう指示があったようだ。日米同盟強化をうたう首相にとり、米軍再編はどうしてもやらなければならない」と話した。

 移設計画が進まない現状に米側のいら立ちは強い。ゲーツ国防長官は4月末の日米防衛首脳会談で「(計画の)一部を変えたりせず、そのままの形で実現することが重要だ」と、滑走路建設案の修正を口にしたことのある久間氏をけん制した。今月1日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書にも「2014年までの代替施設完成」が盛り込まれた。

 安倍首相は18日夜、「知識と技術を持つ自衛隊が協力したということではないか」と記者団に語った。ただ、この日実施された調査機器の設置は「比較的簡単な作業」(海自関係者)とされ、説明は説得力に欠ける。

 現況調査は通常、国の委託を受けた民間業者が行う。今回、政府は国家行政組織法に基づく「官庁間協力」という根拠を編み出してまで掃海母艦を派遣し、自衛隊を調査に参加させた。調査への自衛隊派遣には政府の取り組み姿勢を米国にアピールする側面もある。

 ◇「沖縄の自衛隊にとってもマイナス」

 沖縄には住民が旧日本軍に壕(ごう)から追い出されたり、スパイ容疑をかけられて殺害された記憶が残る。復帰後に移駐した自衛隊はこの35年、急患搬送や不発弾処理などを通じて県民の信頼回復に努めてきた。沖縄で勤務する50代の自衛官は「移設が進まないからといって自衛隊を運用するのは納得できない。沖縄の自衛隊にとってもマイナスだ」と表情を曇らせた。

 沿岸案を容認せず、沖合に約100メートルずらすよう政府に要求している沖縄県の仲井真弘多知事は18日、東京都内で記者団に「自衛隊の船まで行ってやるのは県民感情を考えると荒っぽい」と不快感をあらわにした。だが、「現況調査は防衛省の仕事。県としては『どうぞ』ということだ」とも述べ、政府との対立を避ける考えを示唆した。

 【ことば】普天間移設計画 米国から沖縄県の普天間飛行場(宜野湾市)の返還を受ける代替措置として、同県内の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)にオーバーランを入れて1800メートルの滑走路2本(V字形)を建設する計画。世界規模での米軍再編の一環に位置づけられ、06年5月に日米両政府が合意。その後、日本政府が実施方針を閣議決定した。3年間で環境影響評価(アセスメント)を実施する予定で、最初の1年はサンゴの産卵状況などを調べる現況調査(112カ所)に充てられることになっている。

毎日新聞 2007年5月19日 1時14分 (最終更新時間 5月19日 1時16分)


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