Female Garden

YMO再再生!






 毎年、スペイン・バルセロナで行われている次世代ミュージックとマルチメディア・アートの国際フェスティバル<sonar(ソナー)>をご存知だろうか。新しい音楽の予感にあふれた「前進的なイベント」と評されるこの祭典が、今年、日本に初上陸。<sonarsound tokyo 2004>として10月9~10日の2日間、東京・恵比寿のガーデンプレイスで開催された。なかでも目玉は元YMOの3人による「Human Audio Sponge」のライブだろう。そのステージの詳細とともに、イベントの様子をお伝えしよう。

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■■バルセロナ発の次世代フェス<sonar(ソナー)>とは■■

 1994年から毎年6月中旬、スペインのバルセロナで昼夜3日間に渡って開催されているアドヴァンスド・ミュージック(テクノ、ハウス、ヒップホップ、ポスト・ロック、エレクトロニカなど、次世代エレクトロニック・ミュージックの呼称)とマルチメディア・アートを複合させた国際的フェスティバルが<sonar>。
 バルセロナ現代文化センターにおける昼の部では、アーティストのシンポジウムやレーベルのブース展開、アート作品の展示や上映、テクノロジー機器やソフトのレクチャーなどを。夜の部では、数万人を収容可能な3会場で、世界中から参加したDJ/アーティストによるパフォーマンスが行われる。ちなみに2004年度の開催では、3日間の総動員数およそ8万5000人と公表されている。
 日本人アーティストとしては過去、1997年に石野卓球(電気グルーヴ)がDJとして登場して以降、2002年にヒロシ・ワタナベ、2003年に高木正勝、同じく高橋幸宏と細野晴臣によるスケッチショウがライブ参加。2004年には、スケッチショウ+坂本龍一による“Human Audio Sponge”が登場した。

■■<sonarsound tokyo 2004>とは■■

 日本で開催された<sonarsound tokyo 2004>は、9月に行われたブラジル・サンパウロに続いて企画された“東京版”の衛星イベントとなる。
 2日間の期間中、恵比寿ガーデンプレイスの施設をフルに使ったプログラムを用意。主会場となるガーデンホール内の2フロア(メインのサウンドホール&サブのサウンドラボ)では、国内外23組のアーティストが出演。初日は、隣接するガーデンシネマで映像作品を上映する<SonarSound Cinema>を開催。
 また、ガーデンプレイス中央に位置する広場では、アートや映像、音楽のセッションによる“空間”を一般客にも開放する<SonarSound Extra>のステージを設置……と、本場スペインにならった複合コンベンションが準備されていた。

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■■ライブ・レポート■■

<初日・10月9日(土)>

●台風22号が直撃! プログラムにも影響が……

 台風22号が日本列島を直撃という、最悪のタイミングと重なってしまった初日。残念ながら、プログラムの変更はまぬがれなかった。屋外で予定されていた<SonarSound Extra>のプログラムは中止され、ホールのスケジュールも出演者の到着遅れで変更が生じていた。

●DJアクトが多くダンスよりだった「サウンドホール」

 開幕は22時。サウンドホールでは、田中フミヤの別名プロジェクト・カラフト、レイ・ハラカミ、アクフェン、テイ・トウワ×アトム、チックス・オン・スピードらによるDJ/ライブ/VJショーが行われる。DJアクトが多く“ダンス”寄りの初日は、オールナイト開催のトリとして出演のホワン・アトキンス×カール・クレイグによるDJセッションに照準を合わせたオーディエンスも多かった。

 2人は、70~80年代のニューウェイブ、シカゴ・ハウスを経由しながら、デトロイトで花を咲かせたテクノ・ヒストリーをひもとくようなスペシャル・セットを披露。往年を知る古参ファンから現在進行形のクラブ好きまでを満足させた内容のはず……だが、アドヴァンスド(=前進的な)を標榜するフェスティバルにとって、そうした復習プレイが果たして的を得ていたかといえばいささかの疑問も残る。

 懐古的とまではいわないし、過去から現在までの音楽から未来を紡ごうとするデトロイト・テクノのオリジネイターと後継者の姿勢はいまだ揺るぎない。しかし、彼らをメイン・アクトとして招く側と、彼らの登場を“主戦場”として待ち受けてしまうフロアの対応は、百歩譲っても“前進的”とは思えない。
 たとえば2002年の本国<Sonar>に出演し、それまで積み上げたハウスDJとしてのキャリアを逸脱してテクノ・セットを披露したフランソワ・Kのような“挑戦”でもあれば納得もいくのだが……。時を前後して、来日中だったフランソワがよそのパーティでプレイしていたことを思うと、複雑な気持ちにもなる。

●先がよめないプレイ続出の「サウンドラボ」

 一方、サウンドラボでは並行して、アイム・ノット・ア・ガン、ハイファナら、ジャンルを無尽に横断した新進アクトによるライブが進行。屋外の<SonarSound Extra>中止にともない、急遽タッカーの出演も決まった。メイン・フロアの“お約束”よりも、先が読めないプレイが続出したサブ・フロアの“エクスペリメント”のほうが性に合う来場者も多かったのでは?

<2日目・10月10日(日)>

●ライブアクト中心の2日目

 台風一過……とまではいかないグズついた空模様の2日目。
 17時から開演のプログラムは、サウンドホール一番手に登場したヒロシ・ワタナベのDJ以外は、サウンドラボを含めてすべてライブ・アクト。初日と比べると“聴く”というタイプのラインナップばかりだ。そして、この日のメイン・アクトは、国内初お目見えとなる“Human Audio Sponge”――。いわずもがな、かつてのYMOメンバーお三方による、国内11年ぶりとなるセッションとなる。

 今年の本家<Sonar>に出演し、当日直前にもTBSの「ニュース23」にゲスト出演していたスケッチショウ+坂本龍一。だが、本当に始まるまでは予断を許せない……という緊張感が会場のそこかしこに漂う。なにやら、かしこまった姿勢でフロアに立ち尽くすオーディエンスが、前アクト・RADIQ=半野喜弘×青木孝允のライブからフロアを埋め尽くし、身動きがまったくとれない満員電車のピーク状態が続いた。

 女性ボーカルをフィーチャーしたRADIQの途中、半野が突如ラップを挟んで一瞬場を凍りつかせながらも人波が収まることはなく、フロアは入場規制が始まる始末。半野×青木組のライブが終わり、ステージ機材の転換に30分ほどが費やされる間、ジッと我慢の時間がとてつもなく長く感じる。22時25分の出番予定が近づくと、四方から押し倒れによる小さな悲鳴も聞こえ、なにやら殺伐とした雰囲気も……。

●待望の「Human Audio Sponge」登場!

 やがて、約10分遅れで悠々とメンバーがステージに登場。上手に細野晴臣、中央に高橋幸宏、そして下手に坂本龍一。それぞれラップトップPCを前に、特別なアナウンスもなく準備完了。オーディエンスもお三方の姿が揃ったときに一瞬わいたが、以降は固唾(かたず)を飲んで見守る態勢だ。

 演奏はまず、スケッチショウの最新リミックス盤に収録された新曲「Kokuritsu」と、そのインスパイア・ベースになった「Attention Tokyo」を間断なくつなげて静かにスタート。その後、スケッチショウのセカンド・アルバム「LOOPHOLE」から3曲を演奏したところで、ゲスト・ミュージシャンとして小山田圭吾が合流。坂本龍一の「War & Peace」とスケッチショウの3曲においてギターを担うと、このあたりからお三方もラップトップPCをにらみつける態勢から本格的に楽器をプレイするセッション状態に突入。坂本龍一の手弾きキーボード、高橋幸宏のスティックさばき、細野晴臣の独特のベース・ライン……と往年のスタイルが見られ、YMOファンには至福のときが訪れる。

 なおも、その直後に飛び出たのは「Riot in Lagos」! イントロが流れただけで敏感に反応したオーディエンスの身体が、小刻みに揺れ始める。アレンジはまさに“現在”のものだが、その旋律には普遍的な“記憶”が宿されているようだ。ここからYMOセット……という期待もよぎるが、残り2曲はスケッチショウの楽曲に戻って本編終了。お三方、小さくお辞儀を交わしながら、何事もなかったかのように袖にはけていく。

 すぐさまアンコールの声がかかると、しばらくして再登場のメンバー。坂本龍一と高橋幸宏はフレンドリーな笑顔を見せるが、細野晴臣はムッツリ……とはいえ、そうした光景も昔からのこと。オーディエンスとのなれなれしさを介さず、ふたたび演奏を始めるお三方の姿には、プレイヤーに徹する“匠”のオーラがある。そして、なにより深い経験を積んだ男のオトナっぷりが無言のうちに伝わってくるようだ。

 アンコール演奏曲はスケッチショウの「Ekoto」と、これまたYMOファンが涙を流さずにいられない「Pure Jam」。2002年のライブ<WILD SKETCH SHOW>のときのように、そこから「Cue」「はらいそ」にでもなだれ込むのか? という気もしたが、残念ながらこの夜のステージはここで打ち止めであった。しかし、お三方もようやく緊張感がとけたのか、本編終了時のようなぎこちなさもなく、おだやかな表情でオーディエンスに向かって手を振る余裕を見せながら11年ぶりの集結は終了。
 そして、このステージを最後に<sonarsoundtokyo 2004>も閉幕となった。

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■取材を終えて ~総評~■■

 本家<Sonar>自体が、幅広い次世代音楽とアーティストの“ショウケース”として端を発し、享楽的なパーティやレイヴとは趣旨が違うことは理解している。いわば“アート性”の強いプログラムを交えた、複合フェスティバルとしての精神を日本に持ち込もうとする姿勢は素直に評価したい。

 だが、巨大な空間演出が望めない日本の会場には、無理があるのも事実。今回、会場となった恵比寿ガーデンホールという限られたキャパシティと導線の狭い会場で、これほどの参加アーティストを抱えたプログラムにするならば、それなりの予想と計算をしてもらいたかったのも本音だ。特に「Human Audio Sponge」に関しては、来場者の多くが詰め込み過ぎのスタンディングに居心地の悪さを感じたのは事実だろう。

 今回はYMOメンバーによる国内集結ライブという超目玉もあり、普段クラブ・パーティやレイヴに行き慣れてないオーディエンスも多く来場していたと思うが、そうした人たちに「これが今のテクノ・イベントなのか……」とウンザリするような気分を抱かせるのはよくないこと。日常的に夜遊びしている人々にとっても、本来ならば気持ちよく音楽に身をゆだねて踊り、疲れたらドリンクを飲みながらチルアウト……という“基礎”の部分が欠損してしまっていたのも残念だ。

 以上、細かい難点をほじくり出せばキリがない。何もせずに言うは易し。本国<Sonar>の一端を知ることで、新たな音楽への興味を広げられた来場者も数多いはず。だからこそ、もし来年以降の開催も視野に入れているならば、数々の改善とともに「アドヴァンス」してもらいたいと思うのだ。

★詳しい参加アーティストなどの情報はこちら
<sonarsound tokyo 2004>公式HP http://www.sonarsound.jp/

(取材・文/増渕俊之)



[ワイズ・スポーツ 2004年10月27日]


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