DarkLily ~魂のページ~

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ドラゴン、街へ行く・第七話



 ドラゴンの少女の正体を隠し通すこと。

 行動を監視して不要なトラブルを避けること。

 その二つに関しての必要な手立ては、先ほど封書にして託した。

 あとは、情報収集、特に街に来た目的を探ること。

 この役目は、誰にも代わってもらえそうにないよなあ。

 門番は、ひとりこぼしたあと、気持ちを切り替えた。

 考えてみれば、街に入る際の質疑応答は、門番がいつもしている事と内容的には大差ない。

 うんうん、相手がドラゴンっていうだけだ。

 ・・・。

 門番は、気持ちの切り替えがとても下手だった。

 そもそもの考え方が若干、現実逃避じみていて、それに失敗しただけとも言える。

 重い足取りで憂鬱そうに向かう先に待っているのが、まだあどけない少女だと知る者がいたら・・・

 うっきうきで向かうよりはマシです、ってあまりフォローにならない幻聴が聞こえた気がしたので、不毛なことを考えるのはやめた。

 もう応接室についてしまったことでもある。

「さて、すみません、お待たせしました」

 コンコンコンと扉をノックして声をかける。

 あっ、ビクッてなった。

 警戒心があるんだか、無防備なんだか。

 ドラゴンの少女は、瞬間、目を丸くすると、次いで、手にしたパンに思い至り、どうしていいのかわからずに、わたわたし始めた。

 そのまま食べ続けるわけにもいかず、かといって、口をつけたものをバスケットに戻すのもためらわれ、一方で、門番に応えなければと強迫観念に迫られた挙句、結局どうすることもできずに、手に持ったままでなるべく見えないように手のひらで包んで会釈する、という結論に最終的には至った。

 その全てが手に取るようにトレースできてしまったせいで、門番まで気まずい思いに苛(さいな)まれるはめに陥(おちい)ってしまう。

 門番は、どうということはありませんよ、みたいな感じで、なるべく紳士的な笑顔を心掛けてパンをすすめる。

「どうぞ召し上がってください」

 ドラゴンの少女は、顔を真っ赤にして言葉に詰まってしまうが、重ねてすすめたことで、可能な限り身を縮めながらも、まぐまぐする。

 その様子をみて、ひょっとしてこれは・・・、と門番は思わずにいられなかった。

 警戒しろ!

 これは、見た目よりもずっと、精神年齢が高いぞ!

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