DarkLily ~魂のページ~

DarkLily ~魂のページ~

ドラゴン、街へ行く・第十四話



 颯爽と駆けつけて、恫喝する男たちに敢然と立ちはだかり、女性を背にかばうパフッフール。

「いや、女の子を一人残して逃げるって、けっこうな人でなしよ」

 唐突な闖入者(ちんにゅうしゃ)にも、キレのあるツッコミをみせるお姉さん。

 しかも、ごもっとものような、そこじゃないような。

 あっ、これは。

 門番なら、敏感に、パフッフールと同種のにおいを嗅ぎ取っていたかもしれない。

 微妙にずれている。

 うん、関わっちゃダメなやつ。

 二人が揃った時点で、そう思っただろう。

 だが、男たちにその判断を下せようはずもない。

 ただ、この場で最も的確な言葉をかけたのは彼らだった。

「子供は下がっていなさい」

 おおっ、ポン。

 内心で、手のひらにこぶしを当てるお姉さん。

 自分が言うべきだったのはこれだ。

 男たちのセリフに不意の得心をする。

 単に拒絶した男たちと、とりあえず許容するお姉さんが、妙なところで噛み合った結果といえた。

 一方、言われたパフッフールの反応は。

「こど、ち、ちがいま、さ、りま、ま」

 うん、頑張った。

 咄嗟に言葉が出ないパフッフール。

 パッ!

 両手を広げて、通せんぼ、せめてものポーズで意思表示をする。

 意図せず、健気な姿を披露していた。

 まあ!

 もはや、お姉さんの心を鷲掴みである。

 この子は、なんとしても守る!

 決意を秘めて、現状の確認を始めた。

 お姉さんの心を震わすほどに、パフッフールが頑張ったところで、事態は沈静化することはなかった。

 けれど、状況に変化が生まれている。

 人が立ち止まり、遠巻きにではあっても、次第に集まっていた。

 これは、紛れもなく、パフッフールの影響だ。

 この状況は利用できる。

 こちらは、子供とうら若き可憐な乙女なのだから、周囲に、いかにも被害者然として見えるよう振舞いに気をつける。

 あとは、ひたすら時間をかせぐ。

 パフッフールを守ると決めた時、暴力には発展させないということ、それだけを落とし所と決めた。

 これは賭けだ。

 結果によっては、自分の立場が致命的に悪くなる可能性も、実は多分にあるけれど、だとしても、この場での暴力だけは、何としても防ぐ。

 そう腹をくくれば、目指すべきことは、解決ではなく、現状維持。

 どこかに連れて行かれたり、激高させるのが一番マズイ。

 とにかく今は、このまま推移を待つ。

 こんな風に、考える心の余裕を持てたのも、この子のおかげだ。

 この子が飛び込んできた時、子供相手であることへの躊躇(ちゅうちょ)が男たちに見て取れたこと、それが大きかった。

 よしっ、きっと大丈夫。

 でも、お願い、早く、早く。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: