「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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廃墟島 ~瓦礫地区~
シエルさん【カレー】ですよ
「先輩、どうしたんですか?」
「至高のカレーを作ったんで、一緒に食べませんか?」
「・・・・・・・・・え?」
《シエルさん【カレー】ですよ》
「すぐに持ってくるので、待っててくださいね」
放課後、先輩に誘われて俺は先輩のアパートに向った
秋葉たちには、電話で
「今日は有彦と夕食を食べる」
と、いつもの言い訳を使った
電話に出たのが琥珀さんだったから、上手くやり過ごしてくれるだろう
・・・後が最高に怖いけど
「それにしても、急だなぁ・・・」
先輩が「至高のカレー」なんて単語を口にした時は、一体何の事だか見当もつか
な
かった
一体何がどんな感じで至高なのだろうか?
変な期待と不安、得体の知れない恐怖と未知への期待
―――そして何より、悪い予感・・・
そんなものを感じながら、俺は先輩がカレーを持ってくるのを待っていた
「お待たせしました」
数分も経たずに、先輩がカレーを持ってきた
見た目はいたって普通のカレー、どのあたりが至高なんだろう?
「先輩、普通のカレーにしか見えないんですけど・・・」
至高のカレーというのは一体?
「フフ・・・よくぞ聞いてくれました、遠野くん」
何も説明されてないんだから、聞くのは当然だと思うんだけど・・・
とりあえず、無駄な横槍は入れずに先輩の話を聞く事にする
カレーの話をさせると、これまた長いのだが・・・冷めないうちに終わるといい
な
「このカレーはですね、普通では手に入らない材料ばかりで作ったカレーなんで
す」
「普通では手に入らない材料?」
「はい、まず基本のルーはメシアンの店長に頼み込んでレシピを頂きました
普通では絶対に手に入らない代物です、これだけでも凄いカレーなんですよー!!
」
先輩が熱く語っている、メシアンのルーは確かに普通は手に入らない
でも、これではまだメシアンのカレーだ、至高のカレーじゃない
「確かに凄いのはわかるけど、至高のカレーって言わないんじゃない?」
「ええわかってます、まだまだこれだけじゃありません
この人参なんですけど、秘薬とまで言われている高麗人参なんです」
「高麗人参って・・・漢方薬の、あの干乾びた人参?」
「そうです、でもこれは漢方薬にする前の高麗人参を蒸した
紅参って言う人参なんです、体に良いだけでなく甘くて美味しいんですよ」
「へぇ・・・でも、これはまだ手に入るんじゃ・・・」
ガタンゴトン、ガタガタッ
「えっ!?」
「確かにそうですね、でもまだまだこれだけじゃないんですよ
―――ちょっと、待っててくださいね・・・」
人参と言う単語が出ると、隣の部屋から物音がした
先輩が隣の部屋に行くと、物音は収まり
すぐに隣の部屋から先輩が出てきた、良い笑顔してますね先輩
「ガムテープで押さえてたモノが倒れたみたいだったんで
針(黒鍵)で縫い付けておきました」
モノってのは、あの守護精霊なんだろうか・・・
まぁ仮にも精霊だから、大丈夫だと思うけど・・・
もちろん、自分の身が可愛いのであえて口は出さない
「話の続きですけど、このジャガイモは裏社会で伝説とも言われる・・・」
「あぁ~先輩ストップ、裏社会ってのは魔術師関係?」
「いいえ、世間で言う裏社会、つまりマフィア関係ですけど」
「・・・どうやって手に入れたの?」
「ミスター陳と名乗る、親切な中国人が売ってくれました」
やっぱりかぁっ!!
ええい、電話の時にあっさり許してくれたのは
今日、先輩がカレーを振舞う事を知ってたからじゃないだろうな・・・
「へっ、くしゅん」
「姉さん、風邪ですか?」
「大丈夫よ翡翠ちゃん、この通り元気だから」
「そうですか」
「もうちょっと心配してくれても良いんじゃないかなぁ・・・」
「遠野くんは彼の事を知ってるんですか?」
「・・・先輩、気づかなかったんですか?」
「何をですか?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
そうだ、この件に関して首を突っ込んではいけない
何があっても!!特に今日みたいな日は!!
「じゃあ良いですけど・・・で、この玉葱なんですが
そのミスター陳さんに、凄い玉葱が無いかと訊ねたら
『良い人知ってるアル、紹介してあげるネ』と言って
家庭菜園で、凄い玉葱を栽培している人を紹介してくれたんですよ
親切な人でした、遠野くんが知り合いなら是非お礼を言いたかったんですが」
「その・・・家庭菜園の人って」
「会った時はローブを着て、素顔とかはわかりませんでしたけど
まじかるアンバーと名乗っていました、やっぱり何か知ってるんですか」
「知りません知りません、ソンナヒトハシリマセン」
やっぱり、やっぱりそうか・・・
魔法少女もとい、ほうき少女まじかるアンバー
サイコガーデン謹製の玉葱なんて、ある意味究極じゃないか!!
「その玉葱って、家庭菜園だったら普通なんじゃないですか?」
絶対に普通じゃないけど、一応聞いておかねば・・・
「それがですねぇ~、品種改良を重ねに重ねて
食べた人を、天国に連れて行ってくれるほどの味だそうです」
それって実際に天国に連れて逝かれるか、幻覚を見るんじゃ・・・
琥珀さん、あなたは裏で何をやっちゃってくれちゃってるんですか!!
「へっ、くしゅん」
「あら琥珀、風邪でもひいたの?」
「いえいえ~、そんなことはありませんよ」
「そう、薬剤師が風邪なんて困るわよ」
「あは~、秋葉さまも冷たいです・・・」
「先輩、それ本当に大丈夫なんですか?」
「もう、遠野くんったら人の好意になんて事言うんですか!!
その人も『毎日家の人に食べさせてますから、味は保障しますよ~』って言っ
てま
したよ」
「そうですか、あはははは」
もはや、何も言うまい
「確かに凄いカレーですけど、至高のカレーって言うには・・・」
もう一押し必要だと思う
「フフ・・・最後の食材、お肉を忘れています」
「お肉ですか・・・」
「はい、ドラゴンのお肉です」
「ドラゴンのお肉ですか・・・」
「そうです」
「へぇ~・・・そりゃ確かに至高・・・
って、ええぇぇぇぇっっっっーーーー!!!!」
「驚いたでしょう、ドラゴンの肉は古来より霊薬とされ
かの英雄、ジークフリードもドラゴンの肉を食べて不死になったとか
まぁ、実際には不死になんてなれませんけどね」
「先輩、そこじゃないでしょう・・・
ドラゴンの肉なんて、何処でどうやって手に入れるんですか!!」
「いやですよ遠野くん、埋葬機関をなめちゃいけません
教会に退治された幻想種の体の一部を、分けて貰う事ぐらいわけないです」
「・・・・・・」
もはや言葉にもならない・・・全てはカレー、カレー愛ですか!!
「じゃあ、とりあえず遠野くんから食べてくれませんか?」
「えっ・・・」
マジですか・・・
これ、食べても大丈夫なんだろうか?
琥珀さんの実験に付き合ったり、翡翠の料理を食べさせられたりしてる俺でも
これは食べても大丈夫なんだろうか・・・
「「へっ、くしゅん」」
「二人揃って風邪なの?
まったく、しっかりして欲しいわ」
「すみません、姉さんにうつされてしまったようです」
「そ、そんなこと・・・」
「どの道、みんなの健康管理はあなたの仕事です
真面目に仕事してない証拠じゃないかしら?」
「あぅ~、今日はいつにもまして扱いが酷いです」
「姉さん、普段の言動を省みたらどうですか?」
「自業自得よ、琥珀」
「そんなぁ~・・・(今日はみんな、志貴さんがいないから不機嫌なんですねぇ)
」
「さぁ、遠野くん」
先輩、そんな顔で迫ってこないでください
極上の笑顔で寄って来るのは反則です・・・
「わかったよ、先輩・・・いただきます」
えぇい、ままよ
恐る恐るスプーンでカレーをすくい、一気に口の中に放り込む
「・・・・・・」
「どうですか、遠野くん?」
「・・・・・・美味しい」
何だろう、食べた表現が『美味しい』とか『旨い』とかしか言えない
辛いとか他にも細かい表現があるはずだが、言えない
ただ純粋に美味しい思えてしまった、これぞまさに
「至高のカレー・・・」
「本当ですか!!」
顔をキラキラと輝かせて先輩が聞いてくる
と言うか、何で先に俺に食べさせたんだろう
・・・・・・毒見?
「いただきます♪」
先輩がカレーをその口へ・・・
パクッ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・先輩?」
「・・・・・・」
「・・・・・・あの・・・」
「・・・ク・・・」
「ク?」
「クケーーーーッッ!!!!!!」
「なぁっ!?」
「キシャーーーーッッ!!!!!!」
「先輩が壊れたー!!」
先輩は奇声を上げると
目の前のカレーを全て食べつくし、俺の皿のカレーも口の中に放り込み
台所にある巨大なカレー鍋を持ち上げ、グビグビと飲み干してしまった
「ガルルルルルルル」
「先輩、しっかり!!」
だめだ、完全に常軌を逸している
先輩がゆっくりと俺のほうに近づいてくる
「カ~レ~ェ~」
カレー!?
先輩はカレーが残ってないか探している
そして、俺のほうに近づいてくるって事は・・・
「俺の口にカレーがっ・・・ついてないな・・・真逆!!」
俺の腹の中にあるカレーを狙ってる!?
「フゥゥゥゥゥ・・・」
ヤバイ、このままじゃ確実に食われる
どうすれば・・・
1、先輩を気絶させる
「ハァァァァァァッッッッ!!!!」
「ダメだ、接近できる気さえしない・・・」
2、先輩を殺す
「却下!!」
3、逃げる
「フシュゥゥゥゥゥ・・・・・・」
「無理、無理!!」
4、助けを求める
「誰が来るってんだよ!!」
万事休す・・・そんな時
「あたたたた・・・マスター、ひどいですよぅ~」
救世主登場!!
「グォオオオッッ」
「ひぃっ!!マ、マスター!?
何があったんですか!?まるで怪獣ですよ!!」
「ななこちゃん」
「志貴さん、これはどういう・・・」
「事情は後で説明するから、今は暴走したシエル先輩を止めてくれ!!」
「止めるって言われても・・・」
「イーーーーーッッ!!」
「気絶させるなり何なりで良いから!!」
「えぇっとわかりました、たぶん今の状況も記憶にないでしょうし
・・・フフフフフ・・・さぁマスター、今まで募りに募った
―――コノウラミ、オ・モ・イ・シ・レ・・・えいっ!!」
パッコーン
「先輩、今日は一緒に夕食を食べましょう」
「えっ・・・はい、よろこんで」
あの後、俺の方しか見てなかった先輩を、ななこちゃんが後から襲撃し
昏倒させ、気絶させ、失神させて事なきを得た
先輩はその時の事を覚えてないらしく、非常に残念がっている
「はぁ・・・」
「先輩、まだ気にしてるんですか?」
「だってですねぇ、そんなに凄いカレーを食べたのに
その事を覚えてないなんて、丸損ですよ丸損
おまけにその騒動でレシピまでなくなるなんて、はぁ・・・」
「あはは、でも先輩が至高のカレーなんて食べちゃったら
その先どんなカレーを食べても、満足できなくなっちゃうじゃないか」
「確かに・・・」
「それに俺は、先輩が作るカレーならどんなものでも至高だと思うよ
作ってくれる時に、先輩の愛情を感じるからね」
「と、遠野君・・・」
なんだかんだで、メシアンに到着
ここで自分の財布を確認
屋敷に帰った後、琥珀さんを問い詰めて、貰ったお金がある
「さぁ先輩、今日は俺が奢るよ」
「えっ!?でも遠野くん、金欠なんじゃ・・・」
「先輩だって、材料を揃えるのでお金使い切っちゃったんでしょ」
「それは・・・」
「だから今日は俺の奢り、思いっきり食べてよ」
「あ、ありがとうございます
ふふ、遠野くんの愛情を感じます」
「じゃあ、とりあえず入ろうか」
「はい!!」
===(以下:Doooooooom)===
( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
_, ._
(;゚ Д゚) せ、先輩ぃぃぃぃ!?
先輩=カレーのイメージが半ば、世界共通項のように取り扱われているという儚い状況に憤慨しつつも、やっぱりこういうの見ると「あ、やっぱり先輩はカレーだなぁ」って(←ぅおい!)。
この作品は
BLOOD氏
にいただきました。感謝、感謝なのです!
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