雫の水音

雫の水音

~第2章~出会い


   何処からか水の流れる音がする・・・
   遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる・・・

「ねぇ!起きなさいよ!!
 こんな所で寝てたら死ぬわよ!!」

「うぅー・・・。あれ・・・?
 此処は・・・?」

  俺は少し起き上がった。

「あんた、大丈夫?」

  周りには滝がある・・・
  目の前には、赤い髪をして
  弓矢を背負っている女の人がいる・・・

「お前は誰だ・・・?」

「名のる時は自分からよ!!
 まぁ、いいけど・・・
 私はアーニー。」

  起きたばかりだからか、声が頭にギンギンと響く・・・

「俺は、城崎 翔・・・」

  アーニーは何かに気づいたのか。
  少し考える様に話した。

「翔、ね・・・
 でも、何で此処で寝てたの?」

  俺は返事に困った、自分にもまだ
  状況が掴めていないからだ・・・
  しかし、俺は正直に言うことにした。

「えっと、俺は違う世界から来たんだ・・・たぶん」

  アーニーはブツブツと小さな声で話した

「たぶんって・・・
 服で何となく異界の人だと思ったけどね・・・
 けど、、、翻訳魔法が掛かってるみたいだけど・・・
 まぁ、いっか」

  最後のほうはよく聞き取れなかったが、
  あまり、驚いていない様子で
  逆にこっちが驚いた。

「異界の人は珍しくないのか?」

  アーニーは急に我に帰ったかのように
  話し始めた。

「そうね。珍しいけど・・・あんまり驚く事ではないわ!
 そうだ!異界の人なら行く場所もわかんないでしょ?
 私の家に来る?
 近くの山小屋にお姉さんと暮らしてるの。」

  いきなりの提案に少し驚いたが・・・
  素直に言うことを聞いたほうが良いみたいだ。

「そうするよ。」


「そろそろ、夜だし・・・早く行きましょっ!
 家に着いたら色々と説明してあげるから」

  説明って・・?この世界の事かな?

「わかった・・・」



  暫く山道を歩いて行き、夕日が地平線に沈み掛けた時に
  山小屋が見え始めた。



「見えてきたわよ。
 あそこが私達の家。
 忠告しておくけど、お姉ちゃんには
 触らないほうが良いわよ」

   触らないほうが良いって
   どういうことだ・・・?


   そして、ギギィーと樹の擦れる音がして
   ドア開いた。

「ただいま!お姉ちゃん居る?」

   家の置くから、背の高い女性が出てきた。
   体は黒尽くめで、体にフィットしている服を着ている。
   肌が出ている場所が殆ど無い・・・

「お帰り。アーニー。こちらの人は誰なの?」

「ルッセフの滝で寝てたの。
   異界の人みたい・・・
   名前は翔って言うんだって」

   アーニーのお姉さんは微笑みながら
   会釈をして

「始めまして。私はヘレナと言います。」

   と言い。手を出した。

「始めまして、翔と言います」

   と、此方も挨拶をして
   握手をしようとしたとき・・・

「駄目ぇ!!!」

   アーニーが急に家が壊れるほどの声で叫んで
   俺の手を叩いてきた。

「痛ぇ!!何するんだ」

   俺は赤くなった手に息を吹きかけながら言った。

「そうよ。お客様なんでしょ? 
 失礼よ。」

   ヘレナは、そう言ってテーブルに手を置いたとき。。。

   ジュシュワァ~と不気味な音を立てて
   崩れた。

「・・・」

   俺はポカーンとその場を見つめた・・・

「翔さん如何したんですか?」

   そして、アーニーが小さな声で
   俺に話した。

「お姉ちゃんは、から場に触れた物の時間を進める力があるの
 私が握手を止めなかったら、翔がああなってたのよ。」

   俺はこのとき、手が赤く腫れただけで良かったと思った。。。

「お姉ちゃん!手袋は如何したの?」

「ちょっと、暑かったから。」  

    ヘレナは何事も無かったかのように平然と話す。
    そして、また俺に囁いた。

「お姉ちゃんは、自分の能力に気づいてないのよ。
 能力のことを話しても分かんないみたいだし・・・
 身に着ける物だけは、能力が聴かない素材で出来ているから
 着けておくように言ってるんだけど・・・」

   こんな危険な事に気づかない
   ヘレナが怖い・・・

「そ、そう、なんだ・・・」

「そうだわ。お客様が来たことですし。
 お漬物でも作りましょう」

   と静かな口調で言って家の奥に行った。

「テーブルは無くなったけど、椅子に掛けて」

   と言って、アーニーは四角く腐敗した粉の周りにある
   4つの椅子の1つに腰を掛けた。

「わかった・・・」

   いったいこの世界は何なんだ・・・?

「分からないと思うから、説明するわね。
 この世界には魔力と言うものが有るの。
 魔力は自然の力って感じね・・・
 で、この世界の人々にはそれぞれ
 能力が備わっているの。
 例えばお姉ちゃんみたいな・・・わかる?」

   少しだけだけど頭の中が整理されていく。

「あぁ・・・何となく・・・」

「それと、この世界には魔物と呼ばれる
 物があるわ。貴方の世界にもあるかしら?」

   魔物・・・?RPGとかでよく居る?

「いない・・・」

「そう・・・簡単に言うと生き物を殺す力を
 持っている人間以外の生き物・・・
 まぁ、私達の都合の良い様に言ってるだけだけど・・・
 美味しい魔物もいるわよ。
 魔物以外にも生物はいるけど、珍しいものが多いわね」

「そうなんだ・・・」

「まだ、ショックが抜けないみたいだけど・・・
 そうだ、貴方が此処に来た理由を聞いてなかったわね!
 何かの原因で来たのなら元の世界に帰れるかもしれないわよ」

   そうだ・・・俺が帰る方法を知ってるかも・・・

「そうだよ!!俺は、ルーマーとサーテンって言う
 双子に連れてこられたんだよ!何か、光の中に入れられて・・・」

   アーニーは静かに言った・・・

「双子・・・?光・・・?翔・・・
 落ち着いて・・・落ち着ーいーてー聞いてね!」

   お前が落ち着けと言いそうになったが
   堪えた・・・

「うん」

「この世界には、異界への穴が在るのそれを使えば
 異界に戻れることが可能よ・・・
 ただ・・・」

「ただ・・・?」

   話す言葉を見つけるのに困ったかのように
   ゆっくりと話し始めた

「その双子によって来た人は、帰れない・・・
 その双子に帰してもらえるまで・・・」

「けど、そんなこと知ってるなら
 双子の場所も知ってるんじゃぁないのか?」

「その双子は、伝説に語り継がれている
 双子なの・・・
 何百年も前から・・・ 
 そして、双子がいつ何処で現れるかは
 誰も知らない・・・
 けど、昔、双子に呼ばれてきた人が
 この世界を救った後帰れたという
 話は聴いたことがあるわよ・・・」

「・・・」

   家の奥からヘレナが出てきた・・・

「翔さん・・・聞いたわよ・・・
 私なら少しだけだけど
 力に慣れるかもしれないわ・・・
 この森から遠く東に行った所に
 この国の首都があるわ・・・
 そこのメルディアに話してみなさい・・・
 私が手紙に事情を書いておいてあげるから
 渡しておけば、何とかなるかもしれないわよ・・・
 アーニーも一緒に行ってあげなさい・・・」

「でも、お姉ちゃんは一人で大丈夫・・・?」

   俺はこの時、魔物が襲ってきても大丈夫だよっ!と思ったが・・・

「一人で家にいると家が全部無くなっちゃう・・・」

   アーニーがボソッと言った言葉が聞こえてきた。

「危ないよな・・・」

   ヘレナは笑みを浮かべて

「大丈夫。私のことは心配しないで・・・」

   今度は、アーニーはヘレナではなく
   家のことを心配してるのだと
   確信した・・・

「じゃぁ、手袋を絶対に外さないでね・・・
 約束するなら、一緒にいくわ」

   少し笑いそうになったが
   真面目なムードを壊さないように
   俺も言った。

「来てスグにこんな重大なことに
 なるとは思わなかったが。
 この国の首都に行ってみたい」

「約束は守るから・・・
 手紙と地図を描いておくから
 明日にでも出発するといいわ。
 メルディアは、古代の歴史や伝説に詳しいから・・・
 きっと、力になると思うわ」

「うん、わかったわ。
 今日はもう遅いし寝ることにするね。」

「じゃぁ、2回に空いている部屋があるから
  翔さんは今日、そこで寝てくださいね・・・」

「わかりました」


今日は、長い間、寝ていたにもかかわらず
すぐに寝息を立てた・・・



「起きなさい。起きなさい。」

 遠くのほうから声が聞こえる。
 だんだんと闇の中から引きずり出されるような感覚・・・

 「ふあぁ~」

 「翔さん、寝すぎですよ。アーニーはもう起きてるのに・・・」

 ヘレナが困ったような顔で言った。

 「そんなに寝てたのか?」

 「かなりの時間寝てましたよ」

 一回から大きな声が聞こえてきた。

 「翔~!!起きた~!!?」

 俺もアーニーに負けないぐらいの声で答えてやった

 「今起きた~!!」

 そして、急いで1階に降りて、朝ごはんを食べた。


 「翔はコレとコレが必要かな・・・」

 なにやらブツブツと準備をしていたが

 急に何かを思い出したかのように話し始めた。

 「翔は何か特技とかある?あと、
  魔法も使えないといけないから、魔術の本もだね・・・」

 やっぱり、俺も魔物と戦うのかと心の中で思ったが
 それも悪くないなと開き直った

 「えっと、剣道習ってるから、剣なら」

 アーニーは意味不明な顔をして話し始めた。

 「ケ・ン・ド・ウ??よく分かんないけど、剣が使えるのね。
  まぁ、分かってると思うけど、翔も戦ってね。
  弱い魔物しかいないけど、もしもの時があるし・・・」

  別の世界だから剣道は無いのか・・・
  しかし、どうにも
  今日のアーニーはテンパってる気がした・・・

  「そろそろ行こう!!準備は出来たし」

  「そうね、出発はなるべく早めの方が良いわね。」



  そして、俺たちは出発することになった。


  「いってらっしゃい」

  ヘレナが遠くの方で手を振りながら言ってくれた・・・


3章~レーヤルネイト~



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