雫の水音

雫の水音

3章~レーヤルネイト~



  はしゃぎながらアーニーが言い終えたそのとき

  樹の影から複数の生き物が飛び出してきた。

 「う、うわぁ!!!」

  あまりに突然だったので思わず叫んでしまった。

 「さっそくおでましね。そこで見てて」

  アーニーから少し離れて
  飛び出してきた生き物を見てみた。

  そこには、ウサギに牙の生えた黒い
  動物が4匹いた。

  「これが魔物?」

  アーニーが笑いながら答えた。

  「こんな物は、雑魚ね。
   他の地方や山奥なんかじゃ
   私達の5倍の大きさの
   魔物とかもいるのよ。」

   と、言ってすぐに
   背中に有る。弓矢を取って
   目にも留まらぬ速さで
   魔物の一匹をしとめた。

   見方が殺されたからか
   魔物が一斉にアーニーに襲い掛かってきたが、
   簡単に攻撃をよけた後に
   3本の矢を同時に放って
   魔物を仕留めた。

  「す、すごいなぁ・・・」

  「そうでもないわよ。翔も頑張ればスグ私に追いつけるわよ。
   魔法も使えるように、この本で勉強しなさい!」

  といって、俺のおでこをペチッと叩いて
  進み始めた。

  俺はアーニーから渡された本を読みながら進み始めた。

  ‘魔法には8つの属性が存在する,

  ここら辺は難しそうだったので
  少しページをめくってみた

  ‘魔法を使うには、自分の内なる力。
   魔力を使う。
   基本的には、ほぼ全ての魔法は
   魔力によって使うことが出来る。
   例外的に、自分の命を削って使うものや
   悪魔に魂や、死後の全てを捧げる事によって
   使うことも出来るが、危険な行為なため
   禁止されている。

   〔魔法の使用〕

   心を集中させて、具現化させる。
   実戦によって培われて行くものなので
   自分の感覚に頼った方が良い,


   「・・・この本、難しいな。」

   「まぁ、魔法なんかそんあものよ。
    あっ、森で火の魔法は使っちゃ駄目よ
    火事になるから」


   アーニーから貰った剣を使いながら
   森の奥を進み
   日が沈みかけたころ。
   薄暗い森の奥に幾つかの灯りが見えた・・・

 ~ブルグ村~

 光の方に歩いてゆくと、真ん中に大きな宿屋らしき物を
 中心とした、小さな村にたどり着いた。

 「翔、ここはブルグ村よ。東西南北への道があるから
  宿屋が大きいのよ!」

 「へぇ~。そうなんだ」

 アーニーは話を終えると
 宿屋の中に入った。

 「こんばんは、小父さん居る?」

 アーニーの声を聞いて 
 優しそうな小父さんが部屋の奥から出てきた。

 「おや、こんばんは。アーニーちゃん。
  どうしたんだい?」

 「無の国の首都に行くの。だから今日泊めてもらえる?」

 「いいよ。今日は久しぶりに客が少ないし、
  いつもお世話になってるからね」

 小父さんは笑顔で答えていた。


 アーニーは振り返って俺に話し始めた。

 「翔、奥の部屋に行きましょ!」

 「まぁ、良いけど」

 アーニーは早歩きで奥の部屋に行った。



 「そうだ、この村は小さいけど
 結構人が着てるのよ。
 西には、ルッセフの滝。
 東には、無の国の首都。
 北には、カレルネイト。
 南は、風の国への関所に繋がってるから
 人が多く来るのよ。」

 アーニーは物知りそうに言った

 「カレルネイトって何だ?」

 「私も知らない・・・」

 その時、部屋の奥に居た
 女の人がこっちに来た。

 「私(わたくし)でよければ、お話しましょうか?」

 その女の人は、フードのあるローブを着ていて
 気品の感じられる姿をしていた。

 「あっ、お願いします。」

 アーニーは突然声を掛けられたので、
 驚きながら返事をした。

 「カレルネイトは、永久凍土と呼ばれる大地に
  1年中、花が咲く聖地なのです。」

 「す、すごいですね!そんな所があるなんて」

 「えぇ。この世界には、聖地と呼ばれる場所が
  沢山あるのですよ。ルッセフの滝も
  その一つですよ。」

 「私達、ルッセフの滝の方から来たんですよ!
  で、無の国の首都へ行くところなんです!」

  女の人は、何かを閃いた顔をした。

 「無の国の首都へ行かれるのですね。
  私も行く所なのですが、
  魔物が強くて、用心棒をしてくれる方を
  探してるのですが、
  お願いできますか?」

 アーニーは、あまり考えもせずに
 話した。

 「大丈夫ですよ!ねっ、翔?」


 女の人は、微笑みながら
 お礼を言った。

「ありがとうございます。私(わたくし)の名前は
 ミリアと言います。
 聖地を巡って旅をしてるのですよ。
 ただの観光みたいなものですが」

「私は、メルディア
 って人に会いに行くために
 無の国に行くの!」

 ミリアは驚いた顔をした。

「メルディアって、この国の女王様ですよ!」

「えっ!知らなかったぞ。アーニー知ってたか?」

と言って。アーニーの顔を見ると、
あまりの衝撃に、動かなくなっていた。

「知らなかったのですか?」

アーニーは体の中に魂が少し戻ってきた感じで、
コクリコクリと頷いていた。


「メルディア様は五英雄の一人で
 五英雄最強の魔力の持ち主ですよ。
 古代文字や古代魔法の研究の
 第一任者でもあるのですよ。」

「あの・・・五英雄とか、古代魔法って・・・何?」

ミリアは優しい顔で質問に答えてくれた。

「五英雄は8年前、世界を救ってくれた人なのです・・・
 無の国の女王『メルディア』様。
 アルテマ教の最高導師『サルマドス』様。
 他の3人は、名前は分かって無いそうです。

 古代魔法というのは、
 古の人が作り出した魔法で
 今は使われて無い魔法です。
 古の人に関する物が殆ど無いみたいなので
 私も、そのぐらいしか知りませんが・・・」

「へ~。知らなかった・・・」

「あっ、もう遅いので私は寝ますね」




     ~次の日~

「あ~!もう!何なのよ!
魔物が少ない!!」

ミリアは苦笑した。

「寧ろ、私にとっては嬉しいのですが・・・」

「そうだよ!アーニー!」

「だって、退屈なの!魔物も弱いし!
 歩くだけなんて・・・」

「じゃぁ、そろそろ暗くなるし、寝る準備しないか?」

そして、ミリアに旅の話を話してもらい
眠りについた。

   <ミリア>

ミリアは2人が寝たのを見て
薪の火を見つめていた。

「居るのは解っていますよ・・・」

何処までも続くような暗闇の奥から
男の人影が現れた。

「・・・」

男は、一瞬の間に
ミリアの喉に刃を当てた。
しかし、ミリアは動じる事も無く
話し始めた。

「私にそんな脅しは効きませんよ」

「駄目なのか・・・?」

ミリアは悲しそうな目で
男を見つめた。

「前から言ってるわ・・・
 私もヘレナも同じです。。。
 人間も魔族も精霊も植物も
 皆滅んでしまう。
 貴方も利用されてる中の一人
 と、いう事が判らないのですか?」

男は笑った。

「ふんっ!やはり協力は出来ないのか・・・?」

「えぇ。」

「ならば仕方が無い。ミリアの力は是非欲しかったのだが・・・」

男は手を上げた。周りの闇が吸い寄せられるか如くに
手の上に黒い球が出現した。

「力だけでは勝てない・・・
 貴方も昔はその事を知っていたのに・・・
 強い力を求めた結果・・・
 強大な力は最早、力ではないわ。」

男の手の上の球体がミリアを目掛けて
飛ばされた。

「考えも無しに、持て余してる力を
 使おうとするなんて・・・
 昔の貴方なら判ってたのに・・・」

ミリアは男の後ろに立っていた。

「いつか、後悔する時が、来、ま、す、よ」

男は闇の中に消え去った。

翔は静かに目を開いた。

「おはようございます。翔さん」

ミリアは、スグに起きた気配に気付いたようだ。
ミリアは死人のような顔をしている。

「顔色が悪いが大丈夫か?」

ミリアは照れ笑いをした

「焚き火の番をしてたからですよ。いつ魔物が襲ってくるか分からないですからね。
アーニーさんも先に起きて水浴びをしてますよ。
歩きながら食べれる物も作ったので、スグに出発できますよ」


その後、アーニーは水浴びから戻り出発した。

昨日と同じで、魔物はあまり出現せず。
日が最も高い位置になったとき
首都が見えた。

「あそこが無の国の首都【レーヤルネイト】ですよ」

ミリアは、一睡もしてないにも拘らず
微笑みながら言った。

煉瓦の城壁に囲まれていて
俺たちは、町の正面にある
大きな門を潜り抜けた。

「わぁ!人がいっぱい!私初めて!」

【レーヤルネイト】の町の中も煉瓦で造られた家や
道だった、中央には大きな建物があった。


「私はこれで失礼します。私からのお礼です。
神の御加護がありますように・・・」

ミリアは、アーニーにお金と小さな袋を渡した。


「あっ。」

お礼を言い掛けた時にはミリアは
人ごみの中に消えていた・・・

「いっちゃった・・・
どうする?」

「どうするって・・・城だろ?
女王なんだし・・・」

「じゃ!行こっ!」

見るからに城だと分かる
大きな建物の門まで行くと
兵士に止められた。

「ちょっと、まて!君達は何の用があるのだね?」

「メルディア様に用があるんだ。
紹介状もある・・・」

アーニーは小声で俺に話した

「ちょっと。そんな言い方でOKするわけ無いじゃない!」

「紹介状は誰からだ?」

「あっ。私のお姉ちゃんのヘレナからの紹介状です」

兵士は眉を上下に動かしていた

「ヘレナ・・・?誰だ・・・?
さては、魔族の使いか?」

その時、兵士の上空から女の人が降りてきた。

「なんですか?騒がしい。」

その女の人は、メガネを掛けていて
茶髪の髪を後頭部でお団子のように束ね。
手には、キレイな杖を持っていた。

「女王様!!このものが女王様に
お会いしたいと」

女王は、鋭い瞳で、俺たちの心の奥を探るように
見た。

「用件は何?」
最初の言い方と違い
優しい喋り方になった。

アーニーはヘレナからの紹介状を渡した。



「・・・そう。初めまして。
もう分かってると思うけれど、私はメルディア。
貴方達は、アーニー、翔君ね」

「初めまして、メルディア様」
アーニーはお辞儀をした

俺はアーニーの真似をしながらお辞儀をした

「初めまして」

お辞儀を終えた瞬間。
メルディアは手に持っている杖を一振りした。

そして、一瞬にして風景が変わった。
大きな部屋で、床には『ペンタクル』(五ボウ星)
が描かれており、部屋の隅には大きな本棚があった。

「ビックリしたかしら?此処は強力な魔法や
魔法の効力を高めるために使う部屋よ。
まぁまぁ、2人とも緊張してるのね。
スグに、転送の魔法を始めましょうか。」

意地悪そうに、だけど上品に微笑んでいた。

「転送?双子に送られてきた人は帰れないと聴いたことがありますが・・・」


「それは迷信ね。いつでも帰せるわよ。
準備が出来たらペンタクルの中心に立ってね」

「アーニーありがとよ!
少ない時間だったけど楽しかった!」

「折角だから、もっと居ても良いじゃない!」

「俺を心配してくれる人もいるんだ!」

「アーニー。仕方ないのよ。元々この世界と違う時を
過ごしてるのだから。
では、始めるわね。
『次元の狭間を照らす光よ。
汝を帰す門を開け・・・異界への門(イビルゲート)』

その瞬間、床が虹色に光だし
俺の体は虹色に包まれた・・・

「おかしいわっ!」

シュワン!その音とともに
虹色の光が消え、何も起きなかった。

「どうなってるんだ?」

「メルディア様どうかしたんですか?」

シュン!風が空を切るような音と共に
青い光が部屋の中に降りてきた。

光の中から、年老いた老人が現れた
「メルディア様!魔物の軍団がこちらに向かってきております。
このままですと、1時間後には敵が到着を・・・」

「何ですって・・・!?
今すぐ、兵を!」

「分かりました」
老人は青い光に包まれどこかに行った。

「敵が来た・・・アーニーも翔君も急いで地下に!」

シュン!また青い光が部屋に降りてきた。

「どうしたんですか?随分はやっ!?」

「ど・う・し・たのぉ~?」

そこには、黒い服装をして
目も唇も紫色で
髪は金に近い茶髪で
お河童ぽい髪形をした女がいた。

「貴方だったの?ロイノス!!」

アーニーは首をかしげた

「誰なんですか?この人・・・」

ロイノスは口元に手を当てて笑った。

「ウフフ・・・大きくなったわね。
っても、2日前に会ったばかりだ・け・ど・ねぇ~」

「どういうことだ?」

「ウフフ・・・そ・れ・はぁ~」

4章~真実と偽りの双子~




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