雫の水音

雫の水音

8章~はこびる暗雲~


木々一つ見当たらない、青い草々が風に逆らわず
波を作っている平原の向こうに流されていく・・・
そして、空中に浮く3つの逆さにしたドームが
重なり合いながら、平原のほぼ中央にある
町を回っている・・・

「風が気持ち良いな」
ふいに、言葉が出るほど
風が気持ちいい・・・

「だろ?首都『リベリア』は風の国と雷の国の同盟したときに作られたんだ・・・
風の国の持つ、秘魔法である浮力魔法を
雷の国の高い魔力で、3つの町を浮かせたんだ
まぁ、1つは大会に使う闘技場だけどな・・・
あと、リベリアは自由な国で、
泥棒なんかも多いから気を付けろ」
ハリーが笑顔で言った

「いくらなんでも自由すぎじゃ・・・」
翔は苦笑いし首をかしげた

「まぁまぁ、大会も開かれるぐらいの大都市だから
小さいイザコザを一々裁くのも大変だからな・・・
自己責任なんだよ。
実際町に入ったら、分かるさ・・・」



「わぁ、人がイッパイでしゅね」
ナナムーは既に引いていた
なぜなら、余りの人の多さで身動きが出来ないからだ
色々な声が行きかう
色々な臭いや香りが漂う

「逸れない様に、町内で使える瞬間移動石(テレポートストーン)
を渡しておくから、其れを使え!」
危うく聞き逃すところだった。
ナナムーはもう転送されていた
そして、俺はヘンリーから渡された石を使った

辺りが、糸のように狭まり
狭まった周りから新しい風景が侵食していく

「まず、親の所に行かないと・・・
なんせ、大会の締め切りは切れてるからな」
ヘンリーがキビキビ口調で答えた

「お、おいヘンリー・・・そんなキャラだったか?」

「親の近くだと性格が変わるんだよ!リベリアに居る時だけは
ずっとこうだよ」
ハリーが行った

そして、目の前には、城とは言えないが
かなりの立派な豪邸が
あるのにようやく気が付いた

「も、もしかして?お前等の家?」

「あれ、言わなかったか?俺達リベリアの王子だぞ・・・」

「兄々王子様だったんでしゅね」

「静かにしろ、入るぞ」
ヘンリーがキビキビ口調で言った

広い庭を横切り
長い廊下を進んでいくと
これまた長いテーブルが2人を出迎えた
「すごいだろ」
ハリーが言った

その時、翔は一瞬身震いした
これから起きることを予感していたかのように

「あら~、ヘンリー、ハリー帰ってたの?
1年間も家を留守にして、待ちくたびれたわ。
留守にしてる間に、お父さんも出かけるでしょ?
困ったわ~。あら、お友達?
ステキな青年ね。こっちはかわいい坊や。
私、息子達の母親です。ヨロシク。」
一方的に喋ってきたのは
2人の母らしい
ウェーブが掛かった金髪でドレスローブで身を包んでいる

「久しぶりです。お母様」
「ただいま。お袋~」
何か性格が逆転している感じがする

「初めまして、翔です」
「ナナムーでしゅ。」
ナナムーは、
カワイイと言われたのが初めてなのか
顔を少し赤めて答えていた

翔は、2人の母の気配が一瞬おかしくなったのに気付いた

「翔君に、ナナムーちゃんね?おばさんはスティアラよ。
こう見えても456歳、魔族と人間のハーフだから
長生きなの。」

「そうだ、お袋。推薦状書いてくれよな。
大会の締め切りに間に合わなかったもんで、
この4人で出場するぞ。」

「ナナムーちゃんも?まぁ心配なさそうだけど?
何せおばさんの息子が付いてるんですもの
しかも・・・何でもないわ。
さぁ、長旅で疲れているでしょう?
部屋も空いてるし
食事もすぐ出来るわ
できたら、皆で話しましょ」

スティアラは1人で留守だったのが寂しかったようだ。

食事は、とても豪華で、
色々な話で盛り上がった。


翌日

翔たちは、推薦での参加のため
予選をしなくてよいが
どんな人たちが居るのかを見るために
会場へと足を運んだ。

「人がイッパイでしゅね」
周りの音に負けないようにナナムーが喋った。

「おい翔!あっちで前回の優勝者の一人の
レイチェルが戦うみたいだぜ。いってみようぜ」

人ごみで迷わないように
人を掻き分けながら良く見える場所まで移動した


「前年度優勝者のレイチェルさんと
ネタリアさんとの戦いです!!
それでは始めて下さい!」

「あんたなんか、一瞬で倒してやるわよ~!」
双刀を持った鰭の生えている女性が言った。
そして対戦相手であるネタリアは
浮遊して、レイチェルの言葉にも
観衆のざわめきすら聞こえていない様子だ。

その瞬間、レイチェルが辛うじて移動しているのが見えるような速さで
ネタリアを斬りつけた。

「感触が無い・・・」
レイチェルの顔に汗が流れた

「能力者か?なら私の能力を受けてみなさい!!」
水が噴出し波となり
バトルエリア内を呑み込んだ


水の中から浮き出てきたネタリアは
レイチェルに手を翳した。

其れと同時に、レイチェルは深い眠りへと付いた

「こ、これはレイチェル選手の負けとなります・・・
よって、ネタリア選手の勝ちです!!」



「すごいでしゅ!あのお姉さん勝ったでしゅ!」

「あぁ、すごいな!」


そして次の日、なんとネタリア選手と初っ端からぶつかってしまった
翔。

「頑張ってくるでしゅ」
ナナムーが苦笑い

「翔君!頑張って!おばさん応援してるから」
スティアラも苦笑い

『頑張って来い』
とヘンリー、ハリーも苦笑いして言った。



「謎の女性ネタリア選手と
スティアラ王妃の推薦での参加者
翔選手です!!
それでは、試合開始!!」
大観衆の中戦いが始まった。

翔は、剣を使い今まで覚えた魔法を使ってみたが
手ごたえが無かった。

「貴方も違うのね・・・」
ネタリアが喋った

「何が違う・・・」

「教えられないわ」
と言い放ち背を向けた・・・

その時、翔の体に物凄い衝撃が突き抜けた。

「グッ」

翔は、血を吐いた

「耐えられるの?凄いわ」
ネタリアが言った瞬間。

翔は上空に白龍を呼び出していた

「ヤッホー!翔・・・ってそんな雰囲気じゃねえな・・・」

「貴方は、白の者・・・」
ネタリアが言った瞬間

会場の何処かでバクハツがおき

上空には大群の魔物が現れた。

そして

「あら~、あそこに見覚えのある人が居るじゃな~い。
見に行きましょ」

「そんな事はいいわ。早く私達の任務を遂行する方が
先よ。」
水色の髪を後ろで一つの束ねた女性がロイノスに静かに言い放った

「僕も、早く仕事を終わらせたいんだけど」
凍てついた瞳の少年が呟いた。

「蓮も姉さんも面白くないわね・・・」


会場は、強者達が集まっている大会だけあって
あちらこちらで魔物と戦闘が行われている。


「貴方は、まだ力に目覚めていない
そうしないと間に合わない。」
ネタリアは翔に言った

「何にだ?」

「スイフィードよ。私に力を貸して・・・」
とネタリアは呟くと
蒼き龍が目の前に現れた。

「ご主人様・・・今日は何をすれば?」

「スイフィードじゃん!!」

「なんだセティロムか・・・ご主人様、今日はこの龍を始末するのですね・・・」

「うっ!」
セティロムが一瞬何かを思い出して言い返せなくなった様子だ。

「からかうのはやめて・・・感じてるでしょ?闇の力を・・・」

「3人・・・もか・・・」

と言って。上空へと飛び立った。


「俺も行くぜ!」
とセティロムも飛び立った。



「あら~?龍が2体?聞いてないわよ。」
ロイノスが驚いた

「白と青・・・手を組んだのかしら・・・
まぁ、関係ないわ」
氷のように冷たく鋭く言った。

「興味ないけど、早く人間殺りたいんですけど~」
蓮が言った

「2人ともテンション下がるわ。強いのは認めるけど・・・」

といい。ロイノスは三叉の槍を持ち竜に突っ込んでいった。


「魔族のものよ!打ち倒してくれる」

「よく言うわね~」

ロイノスは2匹の龍を相手にし始めた。

「任務が先なのにロイノスはダメだね!姉さんは任務を遂行して!」

「えぇ。わかったわ。」


「蓮!コレは私の獲物よ!」

「いいじゃん!ロイノスって欲張りだよね。っと!!」
龍の爪が連を掠めた

「そんなに早く逝きたいのか・・・
僕の好きな技で、紅い蓮になりな!!『紅蓮』」

白龍と青龍は一瞬で凍り
砕けて散った
「龍は魂の具現化した姿だから紅い血の蓮は咲かないみたいだね・・・」

「私の獲物を~!!一瞬で」

「大丈夫だよ!龍は死んでいないから」


「今、龍の気配が消えた・・・」

「大丈夫、魂を具現化しただけだから死んではいない・・・」


そして、バトルフィールドでは

「お話中失礼・・・ネタリアさんと言ったのかしら。
ご同行お願いしたいわ。ただ、貴方に選択の余地は無いですけれども・・・」

「お前は誰だ!」

「私は魔族、それ以上は教えられないわ。」

ネタリアは水色の髪の女性に手を翳していた

「無駄・・・私にそんな能力は効かない・・・」
と言って。いくら攻撃しても布すら触れなかった
ネタリアを茨で拘束した。

「?!」
ネタリアは驚いた顔をした

そして、2人の姿は視界から消えた・・・

9章~崩壊~


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