勿忘草~戯曲集~

勿忘草~戯曲集~

Ver.00-07




  暗闇の中、幾つかの声が時に混じり合い響き渡る
  暗闇の中にうっすらと人影が見える
  人影はやがて3つに分れる


謎の声  私は廊下を歩いている。長くて細い廊下を、足を忍ばせゆっくり歩いている。右にも左にも幾つものドアが並び、全てのドアはこちらからは開かない。
     私は廊下を歩いている。後ろをついてくる足音も聞こえるが、それは相も変わらずいつものコト。私の歩幅に合わせて、私の歩調に合わせて。
     私は廊下を歩いている。ただゆっくりと、足を忍ばせ、ただゆっくりと。
     「あなたはそこにいますか?」
     「私はここにいます」
     「私はそこにいますか?」
     「あなたはここにいます」

     私は廊下を歩いている。天井の蛍光灯は遙か前に切れたモノともうすぐ切れるモノだけ。かすかに点滅を続ける、その光にいらつきを感じながら、ゆっくりとただゆっくりと。
     「ドアは決して開けてはいけない」
     「ドアを開けなければ決して先には進めない」
     「でもドアはこちらからは開かない」
     「大丈夫、私が開けるから」
     「大丈夫、ドアはあなたが開けるから」

     私は廊下を歩いている。誰にも気付かれないように。でも立ち止まれない。足を止めて休憩しようと思った瞬間、私の左足は私の右足を越えて行く。
     「あなたはドアの先に何があるのか知っているのか?」
     「私はドアの先に何があるのか知らない」
     「あなたはドアの先に何もないと分かっても歩き続けるの?」
     「ドアの先に何かなんてあるはずないじゃない」
     「ドアの先には何もない?」
     「ドアの先には何もない?」
     「ドアの先には何もない」

     私は廊下を歩いている。開かないドアを開けたいと願い、開かないドアを開けようと挑み、開かないドアを開かないと思い、ノブに手をかける
     「開いたドアにただ入ればいいんだ」
     「ドアは開くの?」
     「ドアは開いたと同時に閉まるよ」
     「ドアは閉まるの」
     「閉まったドアは、多分もう開かないよ」
     「ドアは待っていても開かない」
     「ドアは願っていても開かない」
     「ドアは信じていても開かない」

     私は廊下を歩いている。後ろをついてくる足音が、時にとぎれても私には興味の無いこと。
     「付いてきてるのは誰?」
     「振り向いてはいけない」
     「私の後ろを付いてきているのは誰?」
     「決して振り向いてはいけない」
     「後ろに付いてきているのは・・・・・」
     「私」
     「私の手を掴むのは・・・」
     「私の足を掴むのは・・・」
     「・・・私の首を絞めるのは・・・」
     「・・・・・私。」


  人影の先のドアが開き、強い光が包み込む
  人影が再び、1つに戻る


  ver.01 


  テーブルに2人が座っている
  正面に 葉子
  向かって左 宇野

  2人黙ったまま、正座で固まっている 微動だにしない

  そこへ入ってくる人物 佐野

  佐野 2人を見て


佐野  お前等、何してるの?


  2人黙ったまま答えない


佐野  ・・・無視?無視ですか?確かに遅れましたよ、遅刻しました。約束は4時だから今は・・・


  佐野 腕時計を見ようとするが、時計がない


佐野  時間は・・・


  佐野 部屋を見渡すが時計がない


佐野  ・・・4時・・・過ぎだ。
宇野  6時だよ。
佐野  6時?そんなバカな。
宇野  じゃあ見てみろよ、6時だろ!


  宇野 腕時計を佐野に見せる


佐野  確かに。確かに君の時計は6時を指そうとしているな。でもしかし、バーット!その時間が正しい証拠がない。


  宇野 リモコンでTVを点ける
  TVから6時のニュースが流れる


佐野  リモコンの調子は良いみたいだな。


  佐野 笑う


宇野  ニュースは面白いか?
佐野  あ?ああ・・・何か家が燃えてるみたい。
宇野  お前の家?
佐野  いや、チロの家だな、ありゃ。


  宇野 うんざりしたように


宇野  分かったから、もう座れ!
佐野  そうだな。


  佐野 宇野の向かい側に座る


佐野  で?どうだったんだ?
宇野  何が?
佐野  結果だよ、結果!
宇野  遅れてきた奴に知る権利は無い!!
佐野  なんだよ、ちょっと寝坊しただけだろ?
宇野  ちょっとが2時間か?おまえのちょっとは2時間もあるのか?
佐野  しょうがないじゃんかよ・・・悪かったよ。で?


  宇野 葉子の方を見るが黙っている


宇野  じゃあ、俺が読む。


  宇野 葉子の前に置いてある封筒を取り、読み出す


宇野  え~先日は第18回お笑いバトルオーディションにご参加頂きありがとうございました。厳正なる審査の結果、今回のご参加は遠慮していただく・・・
佐野  駄目だったか・・・
宇野  まあ、当然だな。
佐野  何だよ、その言い方!
宇野  おまえが、台詞を覚えないからだろ?
佐野  直前に台本書き換えるからだろ!?
宇野  お前が覚えてないって言うから、減らしてやったんじゃないか!?


  佐野 決まり悪そうに笑う


佐野  まあ、そういうコトもあるね。


  宇野 うんざりしたように頭を振る


佐野  そんな言うけどなあ、俺だって面白い本ならサクサク覚えられるんだよ!
宇野  なんだ、じゃあ面白くないって言うのか?
佐野  知らなかったのか?
宇野  誰も言わなかったじゃないか!
佐野  俺が何か言う前にネタは決まってたじゃないか!
宇野  その時もお前が遅刻したんだろ!
佐野  今回だけじゃないぞ、その前もその前の前も、いつもだ!
宇野  それは、いつもおまえがミーティングの時に来ないからだろ?
佐野  呼ばれてた?
宇野  ああ。
佐野  ミーティングに?
宇野  ああ。
佐野  ああそう・・・だったら俺にだけ2時間前の時間を教えておいてくれれば良いじゃないか!?
宇野  やったよ。
佐野  え?
宇野  やった。2時間前の時間を教えた。そしたら4時間遅刻したんじゃないか!?
佐野  流石、俺。エスパーだな。
宇野  とにかく、後になってから色々言われたってどうしようもないの!
佐野  でも、葉子は・・・・いつも通りか。


  佐野 葉子の様子を伺う
  宇野 頷いて


宇野  ああ、いつも通り。
佐野  だんまりか。
宇野  ああ。
佐野  なんか最近さあ、葉子の台本以外の言葉を聞いてない気がするんだけど・・・。


  2人 葉子を見る
  葉子 ノートに何かを書いている


宇野  一段と無口に拍車がかかってきてるな・・・。
佐野  まあ、人見知りだかあがり症だかを直したいって始めた訳だからね。
宇野  じゃあ、しょうがないな。


  2人 うなづく


宇野  さて、じゃあどうしよっか・・・。
佐野  ま、とりあえずネタだな。
宇野  なんかあるのか?
佐野  あるといえば・・・ある。おまえは?
宇野  ・・・あるといえば・・・ある。


  葉子 顔を上げる
  2人 それに気づき葉子を見、葉子が書いていたモノを見る


宇野  それも・・・
佐野  だろうな。
宇野  ・・・誰のにする?順番からすると・・・葉子なんだけど・・・。
佐野  それは・・・問題だな。
宇野  うん、最悪だ。面白くない。


  葉子 うなだれる


宇野  あー嘘嘘嘘。面白い・・・・
佐野  そうそう・・・・独創的で・
宇野  そう、それ独創的!


  2人 苦笑い


佐野  1つ提案があるんだけど・・・。
宇野  何?
佐野  リーダーを決めないか?
宇野  リーダー?
佐野  ああ。いつも何するのにも時間がかかりすぎると想わないか?俺達って。
宇野  でも、それは・・・
佐野  お前の言いたいことは分かるよ。分かるけど・・・。
宇野  だったらさあ・・・。
佐野  でも、ネタ決めるのに2週間だぞ?20日後のオーディションのネタを決めるのに2週間、ネタ合わせじゃなくて、決めるのに2週間!
宇野  確かにな、それはそうだと思う。
佐野  ・・・だから、俺も段取りを覚えられないんだよ。
宇野  それは、別だと想うけど。
佐野  まあ、とにかくリーダーがしっかりしていれば、こんな事態にはならないと想うんだな、俺は。
宇野  うん、それに関しては異論はない。で?どうやってリーダーを決めるんだ?
佐野  やっぱり、リーダーって言うからには一番面白いネタを思いつく奴が良いと想うけど?
宇野  そうすれば・・・はずれは少なくなるな。
佐野  だろ?
宇野  ああ。
佐野  で、リーダーの言うことには絶対服従。
宇野  おお・・・そんな特権を与えてしまっていいのか?
佐野  でも、そのくらいしないと、今と大きく変わるのは難しくないか?
宇野  そうだな。じゃあ、葉子もそれでいいか?


  葉子 黙っている


宇野  どっちだ?
佐野  いいんじゃないか?
宇野  そうなのか?
佐野  知らせがないのは良い知らせって・・・。
宇野  なるほどね、じゃあ決まりだな。


ver.02


  食料品売り場にて

  佐野 お総菜を買おうと手を伸ばす
  宇野 飛び込んでくる


宇野  ちょっと待ったーっ!!


  佐野 驚いて後ずさりする


佐野  何?
宇野  お、おまえ、今何をしようとした!
佐野  え?ただ、このポテトサラダを・・・
宇野  知ってるよ。ポテトサラダに手を伸ばしながら鶏の唐揚げを買うことは不可能だ。
佐野  あ、ああ・・・。


  佐野 訳が分からないという顔をしている


宇野  お前、今俺のこと頭おかしいと思ったろ!
佐野  いや、そんなコトは・・・
宇野  ちょっともか?
佐野  え?
宇野  ちょっとも、少しも、ミクロもマクロも思わなかったって言うのか!?
佐野  あ、ああ・・・ちょっとは・・。
宇野  やっぱり、思ったんじゃないか!?俺は頭がおかしいんじゃなーい!!
佐野  で、ですよね、すいません・・。
宇野  謝るな。・・お前は正しい・・・。
佐野  え・・・


  宇野 うなだれる


宇野  すまなかった・・・。はじめまして、午後19時半の男です。


  宇野 佐野に握手を求める
  佐野 それに応じない


佐野  午後19時半?


  宇野 決まり悪そうに手を引っ込める


宇野  ああ!
佐野  そもそも19時は午後だと思うんですが・・・。
宇野  うるさいうるさいうるさーい!!そういう細かいコト言ってるから、19時25分45秒という絶妙なる時間にポテトサラダを買うなんて愚行に出る羽目になるんだ!!
佐野  君も十分細かいと・・・
宇野  あ~そういうコト言うんだ・・・じゃあ、いいぞ。買えば?ポテトサラダ。
佐野  え?
宇野  いいぞ、買って。というか買え!今すぐに!
佐野  いや・・・。
宇野  買えって!
佐野  いいです。
宇野  買いたかったんだろ!?
佐野  結構です。
宇野  買えよ!


  葉子がでてくる


宇野  うわっ!来ちゃった!!
佐野  何が?
宇野  くそっ!


  佐野 宇野を凝視している
  宇野 視線に気付いて


宇野  あー分かった。教えてやるよ。彼女はココ惣菜売り場の責任者だ。
佐野  それが?
宇野  ここの、惣菜の値段は全て彼女が決めている。その彼女がココにこの時間出てきたってことは?
佐野  まさか!?
宇野  そう、そのまさかだ。
佐野  巷で有名な値下げタイム!?
宇野  ああ、そうだ。だがしかし、それだけではなーい!
佐野  え?
宇野  このスーパーマーケットでは、他の店と値下げの仕方がちょっと違う。
佐野  というと?
宇野  普通の店では通常・・・


  宇野 シールを取り出す


宇野  このような10%OFF、30%OFF、50%OFFそして、100円引き、200円引き、半額等のシールが貼られる。
佐野  ですね。ってかいつもシールを持ち歩いてるんですか?
宇野  おまえは、本当に話の腰を折るのがうまいな。腰折り男、またはご老公と呼んでやる!
佐野  何故、ご老公?
宇野  うるさい!腰が曲がってるイメージだ!そんなコトより、この売り場ではなあ・・・


  宇野  別のシールを取り出す


宇野  もう少しがんばりましょう、よくできました、たいへんよくできました!
佐野  え?
宇野  これによって割引率が変わるのだ!!
佐野  つまり?
宇野  まあ、ちょっと見てろ。


  宇野  そういうとポテトサラダを持って、葉子に走り寄りモノマネを始める


宇野  コンバンワ。モリシンイチデス!


  葉子 何も言わずにシールをポテトサラダに貼る
  宇野 それを見て


宇野  もう少しがんばりましょう・・・。


  宇野 落ち込む
  佐野 それを見て


佐野  ちなみにそれだと・・・?
宇野  定価のまま。もうすこしがんばりましょうで、定価通り。よくできましたで、50%OFF。たいへんよくできましたで無料、100%OFF!!
佐野  はあ・・・
宇野  さあ、お前も挑戦しろ!
佐野  いや、俺は・・・
宇野  なんでだ!こんな楽しい企画なのに!
佐野  別に楽しく・・・


  宇野 何かに気付いたように


宇野  は、はーん・・・。さてはモノマネができないんだな?
佐野  そ、そんなコト・・・。
宇野  じゃあ、見せてやれ!あの、審査員に!
佐野  惣菜売り場の責任者でしょ?
宇野  彼女をただの惣菜売り場の責任者とあなどっては、いかーん!!
佐野  え?
宇野  彼女は数多のモノマネタレントを輩出し、売り場の売り上げを前年比560%まで持ち上げた強者だ!
佐野  このスーパーはプロダクションと同時経営!?
宇野  行け!お前の自慢のモノマネを見せて奴に一泡吹かせてやれ!
佐野  じゃあ・・・


  佐野 ポテトサラダを持って、葉子に近寄りモノマネを始める


佐野  恋なんて~いわばエゴとエゴの・・・


  葉子 黙って振り返り立ち去る


宇野  き、厳しい・・・。ってどうすんだよ!お前のせいで値下げタイムが打ち切りになっちゃったじゃないか!
佐野  俺がいようがいまいが、定価だったろ?君は!
宇野  さて。


  宇野 くるっと振り返り立ち去る


佐野  おーい!!


Ver.03


宇野  はい、OK!


  佐野 宇野ににじりよる


佐野  モノマネなんて聞いてない。
宇野  言ってないモン。
佐野  モノマネなんて聞いてない!
宇野  悪かったよ、そんなに怒るなよ。やってみたらオチが弱いなっと思っただけなんだから。
佐野  だからって、アドリブで足さないでもらえるかな!
宇野  だから悪かったって!
佐野  それにさあ、1人台詞無いし。


  佐野 そう言って葉子を見る


宇野  基本、葉子はマイム担当なんだから、良いんだよ。
佐野  それにしたって、ちょっとくらい喋らせないと、マネキンだと思われるぞ。なあ?葉子だって台詞欲しいだろ?
葉子  ・・・
佐野  ほら。
宇野  何も言って無いじゃないか。
佐野  言わなくたって分かるだろ?
宇野  だって、台詞入れたってコイツ喋らないじゃないか!
佐野  喋る、喋らないじゃないだろ?
宇野  どういうコト?
佐野  結果、喋らなかったってのと、元々無かったってのには大きな違いがあるだろ?
宇野  そうか?
佐野  決まってるじゃないか!
宇野  でもさあ、台詞として組み込んでおいて、結果喋らなかったら、フォローするのは俺達だぞ?
佐野  それが・・・友情ってモンだろ?
宇野  分かった・・・じゃあ、次はそうするよ。
佐野  次?
宇野  ああ。
佐野  次はもうないだろ。
宇野  なんで?
佐野  これからネタを作るのは俺の仕事になるから。
宇野  なんでそうなるんだよ!
佐野  面白くなかったろ?今の。
宇野  面白くなかったのは、俺のネタじゃなくて、お前のモノマネじゃないか!


  佐野 一瞬言葉を飲み込んで


佐野  俺、モノマネ出来るなんて言ったか?
宇野  いや。
佐野  俺のモノマネ面白いなんて一言でも言ったか?
宇野  いや。
佐野  そんな不出来なモノマネをネタに組み込んだのは誰だ?
宇野  なんで、そんな自信のないモノマネやったんだよ!
佐野  だから!
宇野  俺は、誰のモノマネをしろと指定してないぞ!誰でも良かったのに、ミスチルをセレクトしたのは自分じゃないか!?
佐野  分かった。じゃあここはどっちが正しいのか葉子に決めてもらおう。


  宇野 悩んで


宇野  えー・・・分かった。
佐野  よし、葉子!どっちの言い分が正しい?


  葉子 うなだれる


宇野  ん?どっちだ?これ。
佐野  ん~・・・これは多分自分の演技力を反省してる時のアクションだな。
宇野  あ、ああ、そうだったな・・・。


  宇野 佐野に向き直り


宇野  ま、しょうがないだろ?おまえも何かひとつくらいモノマネ出来ると思ってたんだから。
佐野  俺だって、モノマネが出来るくらいの芸達者でいたかったよ。
宇野  悲しいかな、このネタを完了させるだけの人材がウチにはいなかったってコトだな。
佐野  そこを加味した上で、ネタってのは考えなきゃいけないんじゃないか?
宇野  頭の中ではすっごく面白いんだぞ!
佐野  どんなに面白くたって実現できなければ、意味無いだろ?
宇野  だから、キャスティングが不足してるんだ。
佐野  さっきから聞いてると、俺がネタを面白くしてないみたいに言ってるけど・・・。
宇野  実際そうだろ?
佐野  おまえは何のモノマネした?


  宇野 ちょっと考えて


宇野  俺、何やった?
佐野  モリシンイチ。
宇野  何か問題が?
佐野  今更?今更、なんでモリシンイチ?今更モリシンイチなんて全然面白くない。
宇野  ・・・佐野君さあ・・・。
佐野  何?
宇野  君は何も分かってない。
佐野  何が?
宇野  あくまでも、俺のモノマネはネタふりであって、オチじゃない。オチを際だたせる為の・・・モリ~シンイチ~です。
佐野  成程・・・・・・ん?
宇野  何だ?
佐野  急遽、オチを変えたって言わなかったか?さっき。
宇野  嫌なコトだけは良く覚えてるよな。


  佐野 うなづいて


佐野  ああ、台詞覚えは悪いがな。
宇野  俺が指摘する前に、自分で言いやがった。ズルっ!
佐野  ちなみに、オチで使うとしたらどんなモノマネやるの?
宇野  イツキ~ヒロシ~です。
佐野  ・・・メンバー総入れ替えだな。


  Ver.04 


  3人が並んで中央に立つ
  右から 佐野・葉子・宇野
  佐野と宇野が挨拶を始める


2人   どうも~。
佐野  佐野で~す。
宇野  宇野で~す。
葉子  ・・・


  佐野 葉子を見る
  宇野 肘で葉子をつつく


宇野  おい!名乗れ!
佐野  ワタシヨウコ!
宇野  3人合わせて、添い寝3丁目で~す!!


  佐野 小声で


佐野  何?


  宇野 小声で


宇野  何が?
佐野  今、何て言った?


  宇野 ちょっと考えて


宇野  添い寝3丁目?
佐野  何それ?
宇野  俺達のトリオ名。
佐野  いつ決めた?
宇野  昨日。
佐野  昨日!?俺、聞いてないぞ!
宇野  でも、多数決で決めたぞ。
佐野  だから、俺はその多数決に参加してない!
宇野  いいか?俺達は3人だ。
佐野  そうだな。
宇野  じゃあ過半数は?
佐野  2人?
宇野  だろ?だから決定。
佐野  何で?
宇野  だって・・・俺だろ?それで・・・


  宇野 葉子に指を指す
  葉子 うなづく


宇野  ほら。


  佐野 納得したようにうなづく


佐野  OK!成程。


  声の大きさが戻る


佐野  で?なんだっけ?
宇野  だから、添い寝3丁目。
佐野  納得できない!
宇野  だから多数決だって!
佐野  少数意見は無視か?俺は案すら出させてもらえてないってのに・・・。それに名前の意味も聞いてない!
宇野  意味?
佐野  そう。
宇野  それは、ほら、この前ネタ合わせしてたら3人で寝ちゃったの覚えてる?
佐野  ああ・・・あった?そんなコト。
宇野  あったろ?ネタが決まらなくて・・・ついビールに伸びて・・・ついつい焼酎に手が伸びて・・・つい、ワインに手が伸びて・・・結局、葉子の家にあったアルコールというアルコールを全部飲み干しちゃったコトが!
佐野  あーあの時か。料理酒からみりんからな。
宇野  みりんはおまえだけだ。で、3人とも潰れて寝ちゃったんだけど・・・・その時の描写が・・・。
佐野  あーそういうコト・・・で、3丁目は?
宇野  3人だから。
佐野  わぉ!誰が考えたんだっけ?
宇野  俺。
佐野  ・・・あのさ、考え直さないか?
宇野  ・・・あ、やっぱり?
佐野  そうしよう!


  3人 冒頭の配置に戻る


宇野  ちなみに、お前のネタ披露は今ので終了だからな。
佐野  なんで?
宇野  なんでって今、やったじゃん!
佐野  途中まで・・・って言うかネタに入らせてもらえてないぞ!!
宇野  だから、それも含めてだよ。これがオーディションだったらどうだよ、終わりだろ?
佐野  これはオーディションじゃないし、更に言えば、俺に黙ってトリオ名を決めたお前達・・・いや、お前に原因がある!
宇野  なんで、俺1人なんだよ。言ったろ?多数決で決めたって!
佐野  あーその多数決だけどな・・・。


  佐野 そう言って葉子を見る


佐野  じゃあ、俺達のトリオ名は「サンバルカン」が良いと思う人!


  葉子 手をあげる


佐野  「3匹の子豚!」


  葉子 手をあげる


佐野  「とっととトリオ!」「サンバイザー!」「家政婦は見た3!」


  葉子 その度手をあげる


佐野  彼女は今、思考回路を遮断し肯定することしか出来ない!!
宇野  ちっ、バレたか・・・。
佐野  俺を騙し通せるとでも思ったか!
宇野  途中までは上手く行ったと思ったのに・・・。
佐野  という訳で、今のネタ見せはノーカウントだ!
宇野  俺、漫才って苦手なんだよねえ・・・。
佐野  今更、そんなコト言うなよ。
宇野  でも、葉子はもともとあんまり喋らないだろ?そうすると必然的に俺の台詞増えるしさあ。
佐野  それは、お前のコントにしたって同じだろ?
宇野  いや、コントならさ、動きで笑わせたりできるけど、漫才は喋りが出来ないと成立しないじゃん。
佐野  それが面白いんじゃないか。
宇野  そうだけどさあ・・・。


  宇野 納得できないように口を尖らせる
  佐野 うんざりしたように


佐野  あーもう、分かったよ!俺がコント書けば良いんだろ?
宇野  お!そうしてもらえる?
佐野  嫌なら、しょうがないだろ?
宇野  すまん、頼んだ!
佐野  分かった、分かった。でも、今から作るから先に葉子のネタからやろうぜ。
宇野  OK!でも葉子は出来てるのか?


  葉子 ノートを開く
  2人 ノートを覗き込み顔を見合わせる


宇野  これ、面白いか?
佐野  さあ・・・。
宇野  どうする?
佐野  うーん・・・。


  2人 考え込む


佐野  とりあえずさ、やってみない?
宇野  やる?
佐野  やらずに色々言っても、本人が納得しないだろ。


  葉子 ストレッチをしている


佐野  やる気まんまんみたいだし・・・。
宇野  ・・・そうだな。やってみるか。


ver.05

  宇野と佐野が入ってくる


宇野  この辺でいいか?
佐野  あーいいんじゃない?・・・ところでさあ、これって字幕だっけ?
宇野  いや、吹き替え。
佐野  なら大丈夫だ。


  佐野 座席に座る
  宇野 それに合わせて座席に座る


宇野  字幕だと駄目なのか?
佐野  字幕だと目が悪くて見えないんだ。
宇野  眼鏡すればいいじゃん。
佐野  俺、眼鏡似合わない。
宇野  じゃあ、コンタクトにすればいいじゃん。
佐野  目に異物が入るのが許せない。
宇野  不便な奴だな。じゃあ、必要な時だけかけて、普段は外してれば良いじゃないか。
佐野  そうも思ったんだけど・・・
宇野  何?
佐野  きっとなくしちゃうと思うんだよね。
宇野  眼鏡?
佐野  ああ。俺なくすの得意だから。
宇野  いいなぁ、おまえは履歴書の特技の欄に書くことがあって・・・。いつも悩むんだよね、俺。特技って特別な技だろ?普通はなかなか出来ないけど、自分だけは出来る!みたいな。俺みたいに普通を絵に描いたような人間には特技って言われても・・・いつも空欄だよ。


  佐野 不思議そうな顔をしている


佐野  何?俺の特技って?
宇野  自分で言ったろ?なくすのが得意って。
佐野  なくすのは特技にならないだろ。
宇野  なんで?
佐野  だって、注意力散漫ってコトだぞ。
宇野  それは考え方だろ。実直というか一途というか・・・そういう言い方に変えれば・・・ほら、特技だ。
佐野  おぉ・・・。


  佐野 感動している


佐野  俺にも特技があったんだ。
宇野  ま、俺なら書かないけどな。


  佐野 宇野をにらむ
  佐野 視線に気付く


佐野  そういえば、この映画って面白いの?
宇野  さあ?
佐野  さあ?ってなんだよ。
宇野  だって観てないモン知らないよ。
佐野  誘っておいて、それは無責任じゃないか?
宇野  普通だろ。
佐野  もし、面白くなかったら恨むからな!
宇野  おかしいだろ、それ。同じ映画、2度も3度も観に行ったりするか?
佐野  普通はしないよ。でも、俺を誘うんだぞ!この無駄の大嫌いな俺を!
宇野  若干、認識の違いがあるようなので確認したいんですが・・・。
佐野  なんだ?
宇野  俺、お前のこと誘ったか?
佐野  誘ったろ?
宇野  記憶にない・・・。
佐野  誘ったじゃないかよ!


  葉子 入ってきて宇野の隣に立っている


宇野  誘ったか?だって俺、昨日おすぎが、この映画面白くない!ってテレビで言ってたから・・・


  佐野 葉子に気付いて、宇野に目で合図する
  宇野 合図に気付く


宇野  あぁ、すいません。


  宇野 椅子に深く座って通路を空ける
  葉子 通ろうとする


宇野  だから、おすぎが面白くないって言ってたから・・・


  宇野 葉子が通りづらそうにしているコトに気付き椅子の上で体育座りをする


宇野  それでさ、おすぎの感性と俺の感性は一致しているかどうかを確認しようと思ってたトコロに・・・


  葉子 間で挟まって動けなくなっている


宇野  痛いっ!イタタタタ。
佐野  どうした?
宇野  びっちり挟まった。
佐野  大丈夫か?
宇野  ちょちょっと、一回後ろに下がって。


  葉子 横歩きをしていたので、後ろと言われてのけぞる


宇野  いや、そういう後ろじゃなくて、来た道を戻って欲しいんだ。


  葉子 それを聞いて戻ろうとするがなかなか動けない


宇野  痛い!


  葉子 更に力を込めると抜けるように外れる


宇野  外れた~。じゃあ・・・


  宇野 立ち上がり椅子をたたみ、通路を空ける


宇野  どうぞ。


  葉子 宇野の前を通過、そのまま佐野の前も通過


宇野  なんで、お前のトコロは普通に通れるんだ?
佐野  日頃の行いの差だろ。で?なんだっけ?


  宇野 座りながら


宇野  ああ、だから・・・そしたらお前から電話があって、明日暇か?って言うから、映画行くって言ったら、じゃあ俺も行くって言われた気がするんだけど・・・。


ver.06


  3人 定位置へと移動する


佐野  はい、反省会を始めます。それじゃあ、宇野君。
宇野  はい。これはコントというよりショートショートのコメディだと思いました。
佐野  じゃあ、佐野君。・・・はい。えー笑うポイントが弱かったように感じました。それじゃあ、葉子。
葉子  ・・・


  葉子 黙ったままうなだれる


佐野  これは・・・
宇野  多分、予想していたモノとは違ってたってことじゃないのか?


  葉子 立ち上がり、横歩きを始める


宇野  ん?
佐野  あー自分の演技力が想定外だったんだな、きっと。もっと笑いが来る予定だったんだろ。
宇野  やっぱりさあ、葉子にも喋らせた方が良いと思うんだよねえ、今更だけど。
佐野  まあ、なあ・・・。でも喋ったから、どうなるって訳でもない気もするんだけど・・・。どう?


  佐野 葉子に尋ねる


葉子  出来るかなあ・・・。
佐野  それは、やってみないと分からないけど。
葉子  駄目だと思う。
宇野  何で?
葉子  私、あがり症だし、赤面症だし、対人恐怖症だし・・・。
宇野  でも、お笑いやりたいって思ったんだろ?
佐野  そうだよ、俺達巻き込んどいて、今更そんなこと言うなよ。
宇野  そうそう、練習すれば出来るようになるよ。


  葉子 少し考えて


葉子  やる。
2人  え?
葉子  私、やってみる!


  2人 驚いて顔を見合わせる


佐野  言ってはみたモノの、こういう結論が出るとは思っていなかった。
宇野  ああ、意外だな。よーし、そうと決まれば葉子の台詞有りのネタを考えるぞ!


  宇野 自分に言い聞かせる


佐野  いや、みんなで作るんだろ?
宇野  何でだよ!今のネタ披露で俺がネタ作り担当でリーダーってコトになったろ!
佐野  なってねえよ!とりあえず葉子のやるって言っただけじゃないかよ!
宇野  ちっ、覚えてたか・・・。


  宇野 舌打ちする


佐野  油断も隙もあったもんじゃない。
宇野  分かった、じゃあ暫定リーダーってことで。
佐野  何がなんでもリーダーやりたいんだな・・・。


  宇野 うなづく


宇野  当たり前だろ!今までなんだかんだと仕切らされてるのに、全く決定権を持たない・・・こんな事態を許してはならーん!!
佐野  なんか、影のリーダーみたいで格好良いじゃないか?
宇野  影のリーダーなんて言ったって、結局最後は多数決。葉子が首を縦に振らない限り、何にも決められないんだぞ!
佐野  お前に俺を納得させるっていう選択肢は無いのか?
宇野  おまえが俺の意見を納得するコトなんてあるのか?


  佐野 少し考えて


佐野  イヤ。
宇野  だろ?
佐野  ・・・分かったよ、じゃあ暫定な。
宇野  やった!そしたら、とりあえず設定だけ決めるから、アドリブで繋いで大枠を作ろう。
佐野  よし、分かった。
宇野  じゃあ、君たちは最近引っ越してきたばかりの住人。俺はゴミ回収業者。俺は葉子のゴミは持って行くけど、なんでか佐野のゴミは持って行こうとしない。お前はそれを何とか持って行ってもらおうと頑張ってくれ。あとは俺が繋ぐから。
佐野  ん~分かった。
宇野  葉子は?


  葉子 うなづく


宇野  じゃあ、いくぞ。よーいスタート!!


ver.07-01

  宇野 ゴミ回収車にゴミを投げ入れている
  葉子 そこへゴミを持って走ってくる


葉子  あ、あの、すいませーん!!


  宇野 声に気付いて顔を上げる


宇野  お?危なかったね。ギリギリセーフ!!
葉子  良かったぁ。
宇野  いつもはもうちょっと早いからね、気をつけて。
葉子  はい、ありがとうございます。私、引っ越してきたばかりで・・・


  佐野 ゴミを持って走ってくる


佐野  ちょっと待って!!


  宇野 佐野をちらっと見て


宇野  じゃっ!おーい、行ってくれ!


  宇野 回収車のドライバーに声をかけ立ち去ろうとする


佐野  待ってって!!これも持っていって!!


  宇野 面倒くさそうに振り返る


宇野  何?
佐野  これも、持って行ってください!
宇野  時間過ぎてるよ。
佐野  過ぎてるって、まだ8時ですよ。
宇野  だから、8時までに出すのがルールだろ?1秒でも過ぎたら駄目。
佐野  ちょっと位いいじゃないですか。そこの彼女のは持って行ってくれるんでしょ?
宇野  彼女は8時ジャストだ。
佐野  お願いしますよ・・・。引っ越してきたばかりで、ルールが分かってなかったので、次からはちゃんと8時までに持ってきますから・・・。
宇野  じゃあ、来週だしてくれ。1人例外を作ると、みんな認めなくちゃならなくなるだろ?
佐野  そうかもしれませんけど・・・。これ、生ゴミなんですよ・・・。来週まで置いておいたら虫が湧いちゃいますよ・・・。
宇野  それはお前の都合だ。


  葉子 気付いたように


葉子  あ、私、生ゴミ忘れてた。


  葉子 そういうと一旦離れ、再びゴミ袋を持って出てくる


葉子  すいません。これもお願いします!


  葉子 袋を宇野に渡す


宇野  しょうがないなあ・・・気をつけてよ!この時期、生ゴミなんて部屋に置いておいたら虫が湧いちゃうよ。


  宇野 笑って袋を受け取る


佐野  すいません。


  佐野 便乗してゴミ袋を渡そうとするが、宇野に相手にされない
  佐野 宇野と無言でしばし袋のやりとりをするが、宇野受け取らない


佐野  なんで、俺のは持って行ってくれないんですか!
宇野  だから、ルールだって言ってんだろ!分からない奴だな!!
佐野  彼女のは、今、受け取ったじゃないですか!
宇野  おまえ、生ゴミだぞ!この時期生ゴミを何日も部屋に置いておいたら、大変なコトになるだろ!
佐野  だから、俺のも、生ゴミだって!!
宇野  お気の毒に。
佐野  なんで、俺のは駄目なんだよ!
宇野  8時過ぎてるから。
佐野  彼女のだって、後から持って来たのは8時過ぎてたじゃないですか!
宇野  彼女は8時に「ちょっと待って!」って言われたの。だから一括り。お前は8時過ぎにちょっと待ってって言ったから駄目なの。
佐野  何だよ、それ・・・。分かったよ、おじさんさあ、次は何処のゴミを回収するの?
宇野  次?次ってなんだよ。
佐野  この後、何処に行くのかって聞いてるの。
宇野  え?えっと・・・ココが最後。
佐野  そんな訳、ないだろ。まだ8時だぞ。
宇野  ウチはこのマンションのゴミ集積所専任なの。
佐野  そんなバカな・・・。


  葉子 横でやりとりをずっと聞いていたが、声をかける


葉子  おじさん、持って行ってあげたら?
宇野  え?駄目なんだな。ルールだから。
葉子  えっと、私もう一個持って行ってもらいたいゴミがあるんだけど・・・。


  葉子 佐野のゴミを手に取り宇野に渡そうとする


佐野  あ・・・。
宇野  それは無理だな・・・。
葉子  でも、コレも私のゴミですよ。
宇野  いや、これはあんたのゴミじゃない。だから駄目だ。


  佐野 我慢しきれずに


佐野  もう、あんたじゃ話にならない!


  佐野 そういうと、携帯を取り出す


佐野  その、車の横に書いてあるのは会社の番号か?
宇野  ああ、そうだけど・・・。


  佐野 携帯をかける


佐野  くそ、出ねえなぁ・・・。


  宇野の携帯が鳴る


宇野  はい。宇野産業デス。
佐野  あのさあ、お宅の社員がさあ、ゴミもってってくれねえんだよ!
宇野  ゴミを持っていかない・・・?
佐野  そうなんだよ!
宇野  もしかして、時間過ぎて出した?
佐野  ああ・・・でも1分も過ぎてないぞ。
宇野  そりゃ駄目だな。1分も1時間も同じだからねぇ・・・・。
佐野  なんでだよ!


  佐野 横目で宇野を見る


佐野  何で、お前がっ!?
宇野  そりゃ、会社の電話はココに転送されるから。
佐野  どういうコトだよ!
宇野  俺、社長。
佐野  何で、社長がゴミ回収してるんだよ!
宇野  それがウチの仕事だから。
佐野  そういうコトじゃねぇよ。社員にやらせろよ。
宇野  ウチは社員が事務仕事して、俺が回収をやってるの。悪いか!
佐野  いや、悪くはないけど・・・。
宇野  じゃあ、いいじゃないか!忙しいんだ、俺は行くぞ!
佐野  ちょっと待ってよ。忙しいって、この集積場の専任なんだろ?じゃあこのあと何処行くって言うんだよ!
宇野  え?・・・・・朝食?
佐野  散々、間をとった挙句に、そんな答えかよ!
宇野  何だ!朝飯食っちゃいけないのか?
佐野  あのさあ、論点はそこじゃなくて忙しいのは何で?ってことだろ!朝飯で忙しいって、どういう理屈だよ!
宇野  おまえは何も分かってない。
佐野  何が?
宇野  今から会社に戻って8時半だろ?そこから朝飯食べて、12時。
佐野  は?
宇野  で、昼食食べて19時。
佐野  はぁ?
宇野  で、夕食食べて22時、就寝。超過密スケジュール。トイレに行く暇も無い!!
佐野  食ってばっかじゃん!もういいよ、こんな問答してる暇があったら持って行ってくれればいいじゃないか!
宇野  忙しいは忙しいけど、持って行かないのはルール違反だから!!もういいか?


  葉子 思い切って口を出す


葉子  持っていって下さい!
宇野  だから駄目だって。
葉子  いえ、これはお願いじゃありません。
宇野  は?
葉子  命令です。
宇野  命令?
葉子  私はゴミ回収業者を監視するゴミGメンです!
宇野  ええ!??ゴミGメン?
葉子  ええ。


  宇野 大きく手を振り


宇野  ストップ、ストップ!!
佐野  何だよ、なんで止めるんだよ。こっから面白くなりそうだったのに。
宇野  何だよ、ゴミGメンって!!勝手に作るなよ!
葉子  ・・・ごめん・・・。
佐野  いいじゃないかよ。面白そうだったし。あ!自分が考えてたのより面白そうだからくやしいんだろ!
宇野  そんなコトねえよ!
佐野  じゃあ、続けさせろよ。エチュードだろ?別に勝手にキャラ作ったって良いじゃないか。つじつまが合わなくなってる訳でもないんだから。
宇野  分かったよ、でも葉子がGメンだと不安だから、佐野とチェンジ!
佐野  よっしゃ!なんか虐げられ続けて疲れた。


  葉子  残念そうにうつむく
  宇野  それに気づき


宇野  なんだよ、不満なのかよ。
葉子  ・・・別に・・・。
宇野  じゃあ、始めるぞ。ゴミGメンだって明らかになったトコロから。よーい、スタート!!
佐野  ちょっと待って。
宇野  何?
佐野  さっきのキャラのまま、Gメンって設定だけもらうのか?それとも役自体交換?
宇野  じゃあ・・・設定だけもらって。
佐野  分かった。
宇野  じゃあ、スタート!!


  先程のシーンの配置に戻って


佐野  俺はゴミGメンだ。
宇野  ゴミGメン!?
佐野  そうだ。横柄な態度でゴミを持って行ったり持って行かなかったりするってクレームが何件も寄せられてるんだよ!
宇野  そんなバカな・・・。
佐野  信じられないなら、コレを見ろ!


  佐野  懐からハガキを取り出し葉子に渡す


葉子  それでは続いてのお葉書です。東京都にお住まいのペンネーム「ショウジョウバエのタマゴさん」からのお便りです。私は今のトコロに2週間前に引っ越してきたばかりなのですが、ウチのマンションのゴミ回収業者に参っています。それというのも、朝8時に1秒でも遅れてゴミを持って行っただけでも持って行ってくれないのです。おかげで、いまだ1度もゴミを持って行ってもらえてません。ゴミ屋敷に片足を突っ込みだしています・・・。


  佐野 そこで葉子からハガキを受け取る


佐野  そんな「ショウジョウバエのタマゴ」さんからのリクエストで「ひからびたニンジン」・・・・


  佐野 宇野を見る


宇野  何だ?
佐野  という訳だ。
宇野  歌は?
佐野  は?
宇野  リクエスト曲は?


  佐野 葉子を見る
  葉子 無言で無理と言うように首を振る


佐野  只今制作中。
宇野  あっそ。じゃあ、行くわ。
佐野  お前、聞いてるのか!?
宇野  だって曲無いんだろ?じゃあ行くわ。
佐野  だから制作中って言ったろ!?出来たか!?


  佐野 葉子を見る
  葉子 再び無理を言うように首を振る


佐野  まだだ!!
宇野  じゃ!


  宇野 立ち去る


佐野  クソっ!!


  佐野 崩れ落ちる
  葉子 崩れ落ちる


宇野  はいOK!それでは反省会を始めます。


  3人 定位置に戻る


宇野  それではまず、佐野君。
佐野  はい、悔しいです、すっげー悔しいです。ゴミGメンという新キャラを活かしきれませんでした。もし次があるならゴミGメンに逮捕権を与えて、対応できればと思います。
宇野  はい、それじゃあ、葉子。
佐野  私も悔しいです。折角、振ってくれた「ひからびたニンジン」を歌うことができませんでした。まだまだです。
宇野  じゃあ、宇野君。はい、結構やりきった感があります。ゴミGメンのあともう1歩踏み込んでもらって、追い込まれた感じが出せたらと思いました。反省会終了!おつかれ!!
佐野  これで良いのか?
宇野  まあ、これを基礎に作ればいいんじゃないか?
佐野  よし、ヨロシク頼んだ!でも、ゴミGメンは良かったな。ちょっと葉子のコト見直した。


  葉子 照れたようにうつむく


宇野  そうか?ゴミGメンのせいでエンディングまでちょっと間延びした気もするけど・
佐野  そんなコトないだろ。意外な展開!みたいな。
宇野  まあ、確かに。でも一気に現実感は失せたろ。
佐野  何?もしかして、ゴミGメン無しでネタ作るのか?
宇野  そのつもりだけど。
佐野  えー入れようよ。葉子も入れたいだろ?


  葉子 うつむいたまま動かない


宇野  ほら、過半数に達しなかったので、リーダーの意見を採用します。
佐野  あーくそっ!こういうコトになるのか・・・。
宇野  葉子を頷かせることが、どれだけ大変なことか・・・思い知るが良い!!
佐野  葉子!自分の意見が採用されそうなのに、なんで黙ってるんだよ!
葉子  ・・・・思いつきだし・・・。
佐野  みんな、そういうモンだよ。そこから練って使えるモノにしていくんだろ?だから良いんだよ。
葉子  でも・・・。
宇野  はいはい。だから無駄だって。
佐野  なんだよ・・ひからびたニンジン作りたかったのに・・・。
宇野  ま、それはその内ってことで。
佐野  その内なんてあるのかよ・・・。
宇野  大体、そんなに作りたいなら、葉子に振らずに自分で歌えば良かったじゃないか。
佐野  俺は、そういうの苦手なの。
宇野  そういうのってなんだよ。
佐野  思いつきっていうか、アドリブみたいなの。
宇野  逃げだよ逃げ。やってみたら出来るかもしれないじゃないか。
佐野  無理だよ。
宇野  まあ、そう言わずにやってみろって。それでは「ひからびたニンジン」どうぞ~。
佐野  ♪ひからびて~シワシワ~♪食べたら~ふにゃふにゃ~♪風呂あがりの~小指みたい~♪
宇野  ・・・
葉子  ・・・
佐野  なんとか言ってくれよ!

つづく

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