MINOLTA VECTIS S-1
MINOLTA VECTIS S-1 + V22-80mmF4-5.6
勝手にインプレッション
エンゾーが所有するたくさんのカメラの中でもたった一台しかない「譲って頂いたカメラ」、それがベクティスだ。
そもそものきっかけは、エンゾーが立ち上げたお気楽極楽な非営利団体「今更APS推進委員会」に端を発する。このお馬鹿な会の趣旨にご賛同いただき、会員ナンバー006番という最初期のメンバーになってくださった kazurinさん
が、実はエンゾーも顔負けのAPSフリークで、非常に多くのAPSカメラをお持ちなのだが、中でも圧巻なのがベクティスのコレクション。レンズを買い揃えるために中古品を方々探し回り、なかなかレンズ単体で売られている物がないため、 「でもまあ、安いし」
と言う理由で ボディごと何台も買ってしまった
というツワモノなのである。
当時エンゾーは、コンテンツでキヤノンのIXEをヨイショする記事ばかりを書いていた。そんなある日、パソコンにkazurinさんから一通のメールが届く。
「会長に、ぜひともミノルタの良さも知って頂きたく、余っているボディとレンズをお譲りします。ご迷惑でなければ、早速お送り致しますのでお役立て下さい」
突然の申し出にパニックを起こしつつも、せっかくのご厚情を無下にする理由など一つもなく、エンゾーは喜んで譲って頂いた。
さて、手元に届いたベクティスは、一目見た瞬間にあるカメラを連想させた。そう、往年の銘機オリンパス・ペンFである。片やハーフサイズ、片やAPS。時代こそ違えども、35mm判よりも小さなフォーマットを使うボディを考えた時に、同じようなペンタプリズムのない形状に辿り着いた事は興味深い帰結である。
その後、さらに高性能なVレンズの22-80mmF4-5.6と50mmマクロまでもを譲り受け、エンゾーはベクティスを本格的に実戦投入する事になった。
まず使ってみて驚いたのは、ファインダーのピントの山の見易さである。ミノルタのファインダースクリーンといえば、高精度なピント合わせが可能なスフェリカルアキュートマットが有名だが、ベクティスの高倍率なスクリーンは、IXEはもちろん、下手な一眼レフでは太刀打ちできないくらいピントが合わせ易かった。これは特に、マクロレンズを使うと一目瞭然だった。
また、このカメラがリリースされた当時としては珍しく、ボディやレンズが防塵防滴構造になっている。電池室やマウント部をはじめとする開口部には、すべてゴム製のOリングがはめ込まれていて、少々の雨ならヘッチャラだったりする。
AFははっきり言ってかなり遅いが、迷うだけで精度は正確である。実は驚く事なかれ、後にミノルタがリリースするデジタル一眼レフやハイエンドコンパクトデジカメのAFは、すべてベクティスで培った技術をもとに開発されている。それくらい高精度なAFなのである。(素子の大きさをAPS-Cサイズと言うくらいであるから、当然と言えば当然であるが)
その後、ヤフオクでベクティス関連の出品物をチェックするようになってから、エンゾーはようやく、このカメラに対するミノルタの 本気度
が分かって来た。何せ、 広角は単焦点17mmから望遠は レフレックス400mm
(レフレックスですよ、レフレックス!)までラインナップする気合の入れよう
。さらにバッテリーグリップや水中ハウジング、果てはカメラガードといった小物まで充実していて、立派に一つのシステムを構築できるようになっていた。
そう、 ミノルタは読み間違えたのだ。
これからAPSの時代が来る、と。
Vレンズの描写は素晴らしいし、マニュアルでピントが追い込めるAPS一眼レフなんて、後にも先にもベクティスだけである。にも関わらず、これほど完全に、これほど早く過去の遺物になってしまった銘機も、他に類を見ない。まさに、「今更APS推進委員会」で大事に語り継いでいくに相応しい、バブルを語る時代の生き証人である。
これからも、末永くベクティスを使っていきたい。大切な事を忘れない為に。
長所
○軽量小型なボディ。AF一眼レフで、これ以上コンパクトなシステムは存在しない。
○時代を先取りしていた防塵防滴ボディ。それも結構本格的で、信頼に値する。
○充実したレンズラインナップ。廉価版ではない高級バージョンの方は、描写も良い。
○特筆に価するファインダー性能。倍率の大きさ、ピントの山の掴みやすさ共に良好で、ミノルタ開発陣の
意地が垣間見える。
短所
●プラスティックの外装は華奢で安っぽく、高級感は皆無。塗装も剥げやすい。
●AFが激しく遅いので、動体撮影はまったく無理。精度的には問題ないのだが・・・。
●MFに切り替えた時に、ピントリングの感触がかなり悪い。ザラザラして、最初は壊したかと思った。
●さすがに古いボディなので、耐久性とメンテナンスの面に不安がある。
超個人的オススメ度
(10点満点)
☆☆☆☆☆
偏愛度
(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆
Yahooオークション出現率
(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
*ついに正当な評価を得られなかった、悲運の銘機。見つけたら即買いである。