Leica M7(a la carte)




Leica M7 a la carte


        Leica M7(a la carte)+color skopar28mmF3.5

勝手にインプレッション

えー、これはM7である。が、ライカのシンボルである、真っ赤なエンブレムがない。おまけに、グッタペルカもM7とは質感が違う。しかし、ライカから過去このような限定バージョンが発売されたことはない。ライカフリークならすぐにピンと来たであろうが、要するにこれは 「ライカ・ア・ラ・カルト」 で作られたワンオフ物である。

いつなくなるサービスか分ったものではないので簡単に説明しておくと、これはライカ社が2004年から始めたユニークな試みで、ユーザーの好み通りの外観にライカを仕上げることが出来るという、究極のオーダーメイドシステムである。
具体的には、最初にベースボディとしてMPかM7を選び、その後、パーツ(現代風かクラシカルか)・軍艦部エングレーブの有無・ボディーカラー(ブラックペイント/ブラッククローム/シルバーから選択)・グッタペルカ(非常にバリエーション豊富)・ファインダー倍率・出現ファインダー枠の種類などを細かく選択することが出来る。

名目上は「無限とも思えるバリエーションが存在する」事になっているが、アラカルト取扱店に聞いてみると、あまり突飛な組み合わせをしている人は少ないようである。そりゃそうだ、決して安くない金額を払ってオーダーするのであるから、普段使いが憚られるような突飛なモデルに仕立てるのは勇気がいる。

M4の後塗り で、念願のつや消し黒ボディを手にしたエンゾーだったが、 感度分の16 を声高に叫んでみても、辿り着いたのは「 疲れるものは疲れる 」という現実だった。そう、人間露出計は神経を使うのである。撮影時の充実感こそ高いものの、そのあとドッと疲労感が襲ってくる。光を読むのに集中した反動が、思っていたよりも大きいのであった(所詮はその程度の経験と腕だということの表れなのだが)。どこまで行っても、エンゾーはAE世代ということか。

折りしも、仕事と結婚の準備でテンパっていたその頃、もろもろのストレスでついに頭がイカレてしまい、物欲が暴走を始めた。たまたま少なくない臨時収入が転がり込んできたことに背中を押され、「だったらいっそ、使える黒ボディを作ってしまえ!」と思い立ち、半ば勢いだけでアラカルトを注文してしまったのである。

エンゾーが注文した内容は、およそ次の通り。

 1.M7ベース。
 2.塗装はブラッククローム。
 3.各種パーツはクラシカル(MP風)なもので。
 4.軍艦部のエングレーヴはM4風に。
 5.ライカの赤丸は無し。
 6.グッタペルカはMP6などと同様の「バルカナイト」。
 7.ファインダー倍率は0.72倍。
 8.出現フレームはノーマルのまま。

ベースボディをM7とMPのどちらにするかは、本気で悩んだ。基本的に見た目重視のエンゾーにとって、ノッポになったM7のシルエットは許容範囲ギリギリで、大出血を伴うアラカルトを頼むのに、本当にそれで後悔しないか不安だったのだ。
しかし今回のコンセプトは、ガシガシ使えるライカを手に入れることであるから、AE機であるM7の実用性の高さは捨てがたかった。しかもすでに、理想の外観を備えた M4 と、理想のマニュアル機である MP が一台ずつ手元にあり、ここで黒のMPなどをもう一台買ったら、どちらも意味を成さなくなる恐れがあった(その2台を手放すという選択肢は頭にない)。
こうして、およそ2ヶ月間にも渡る煩悶の末、ベースはM7に決まった。


さて、アラカルトは発注から受け取りまでに通常2~3ヶ月掛かるという説明であったが、どうしても1ヶ月半後に迫った新婚旅行に持って行きたい旨を販売店に説明したところ、親切な店長がライカジャパンと交渉してくれ、なんとギリギリ出発日の前日に間に合った。

実は、これがあとあと大変助かることになる。というのも、イタリアでメインの機材として使っていた EOS7 が雨に濡れて一時的に使えなくなり、ライカは急遽ピンチヒッターとして大活躍したのだ。M7のファインダーはノーマルの0.72倍を選択していたので、持って行ったGR28mmを装着した際もきちんとフレームが出て、大助かりであった。これもアラカルト注文の際、出現フレームが35mm・50mm・90mmの3つだけのものにしようかどうか激しく迷ったところだったのだが、「今所有しているレンズにフルに対応できること」を目標にしたことが、こんなところで生きた。

さて、初めて使うAEライカは、想像以上に便利だった。 一段目で測光開始、二段目でAEロック、三段目でレリーズ という「三段押し」は、昨今のカメラとしては珍しい機構で、最初のうち少し戸惑った。が、スポット性の高いライカの露出計の癖を把握した上で、フレームの中のハイライトとシャドーで露出を測り、出目を微妙に調節してAEロックできるこの3段押しは、ファインダーから一度も目を離すことなく、しかもダイヤルやボタン類に一切手を触れずに露出を調整できるので、慣れればすこぶる快適である。(逆に、感度設定ダイヤルを回して行うM7本来の露出補正は、はっきり言ってかなりやりにくい)

また、AE機ゆえシャッタースピードに気を使う必要がないので、使用しているレンズの「 一番美味しい絞り値 」にセットしておき、あとはピントとフレーミングだけに神経を集中できるM7の撮影スタイルは、特にスナップで精神的に気楽である。

箱出し状態での各部の感触は、特に可もなく不可もなくといった感じ。ライカのご多聞に漏れず、巻き上げの感触などはデフォルトだとややゴリゴリ感があるものの、調整で改善可能と思われる。レリーズの感触は独特で、「チャッ」というメカニカルライカの音と違い、AEロックのための引っ掛かりを感じた後「ぽこっ」と落ちる。

電池がなくとも撮影できることこそがライカのライカたるゆえんであると思っているユーザーにとっては、露出計を内蔵したM5以降のモデルは邪道で、まして電子シャッターのM7に至っては受け入れ難い異母兄弟のような存在かもしれない。しかし実際のところ、「電池がなくてもシャッターが切れる」などという理屈ははっきり言ってオマジナイのようなもので、ライカの電池の持ちは非常に良いし、ましてスペアの電池を携行しないことなどありえないので、故障でもしない限り、シャッターが切れなくなることはまずない。純粋に「作品を撮る」という行為において、M7ほど軽快なライカも、また無いのである。



長所

○何はなくともAE。好みの絞り値でパッと撮れるのは、楽チンです。
○スポット性の強い露出計と2段式AEロックは、操作上の相性が良い。
○シャッター精度の安心感は、ライカ随一にして唯一。音も静か。
○DXコードを読み取ってくれるようになったので、フィルム感度設定忘れのポカが減った(笑)。

短所

●たかが2.5mm、されど2.5mm。歴代ライカと比較して背が高くなったシルエットは△。
●初期型は、ファインダーのハレーション対策が未対応。中古は注意。買うなら新品。
●露出補正ボタンの使い勝手が激しく悪い。むしろマニュアルで対応した方が早い。
●電池が切れると、ただの文鎮になる。

超個人的オススメ度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆

偏愛度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆

Yahooオークション出現率 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 
*ライカ史上最強の「使うライカ」。むしろセカンドライカとしてオススメ。






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