みゆの徒然日記♪

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命の重さ2


そしてNICUに入って2ヶ月目に亡くなった子がいた。
その子は染色体異常で予後が悪かった。
挿管していたりと私が直接担当することは無かったが、
なるべく家族がケアに介入出来るよう、ちょっとしたお手伝いをさせてもらった。
なのでとてもショックだった。
それからもNICUの特色柄命の狭間という非日常的な状態に遭遇してきた。
そこで家族、特に母親と子供の絆について考えるようになった。
どんなに具合が悪くて状態が不安定でも、子供は親が来ると分かるみたい。
触ったり声をかけてもらうと心拍数が落ち着いたりすることが一度や二度ではなかった。


◇H君◇
ある日半日で来たらH君が居た。
出生後呼吸障害で搬送、肺出血を起こして全身蒼白、SpO2も30台、血圧も30台。
今まで見た中で一番重症だった。
せめてお母さんが来るまではと頑張って蘇生している様な状況だった。
DIC・MOF。駄目かもしれないと思った。
お父さんが来てHと呼んだ時、H君はぴくっと反応した。
お母さんが到着して泣きながら触ってくれた。

H君のおうちは上に三人流産されていた。
やっと出産まで至ってそれまでの心配も計り知れないであろうご家族に
この状態はあまりに酷だった。

予断の許されない状態から徐々に状態が回復し、オープンクベースから閉鎖式クベースへ
そして抜管、酸素カット、経口開始、コット移床、おっぱい、お風呂。

あれだけ重症だったH君は何の障害も残さずそして1ヵ月後無事退院。
たまたま8ヵ月後健診で来てくれた時に会えた。
大きくなったH君は経過も順調で歯も生えてきて離乳食も始まった。
抱っこさせてもらったら人見知りして可愛い顔で泣いていた。
本当に良かったと思う。
受け持たせてもらえて良かった。

私は今でも家族の絆ってすごいと感じた。
H君の上の3人の兄弟が体を呈してH君を助けてくれたのだと信じている。




◇M君◇
H君の状態が落ち着いた頃に来た子。この子も受け持ちでした。
H君以上に重症でした。
お母さんはもしかしたら障害が…という声を受け入れて産んだ方。
命があったこと、無事に会えた事にとても喜んでいらっしゃった。
そういういきさつを知らないスタッフはお母さんとの関わりにおいて
戸惑いを感じたこともあった。
予後が分からなかったけど、M君がこの世に生を受けた事をたくさん残してあげたくて
家族三人の写真を撮ったり、交換日記を始めたりした。
そこで妊娠中の経過を知る事になった。
切迫流産の時のお母さんの気持ち、痛いくらいに分かった。
あの痛み、精神的な苦痛、この子を助けてあげたいという想い。
何があっても産んであげたいと言う思い。
私が出来なかった事を見事にやり遂げ出産されたお母さん。
私は本当に羨ましかった。

M君には生まれつきの個性がいくつかあったので
きっとそのことについての葛藤はずっとあったとおもう。
でも常に前向きで子供に対して愛情を持って接していたお母さん。
ちゅっちゅがすぐに落ちてしまうので固定の仕方を考えてくれました。
お洋服を縫ってあげたり、お鼻や管のテープに絵を書いてくれたり
毎日一緒に体をきれいにしてあげました。
お鼻の管をのどに変えてからは抱っこもたくさん出来ました。
おっぱいを吸わせてみたりも出来ました。
そんなお母さんとM君をやさしく見守っていたお父さん。
「二人が幸せなら僕はそれでいいんです」と言って笑ったお父さんに
父の愛の深さと大きさを教えていただきました。

M君がおうちに帰った後お葬式にはいけませんでした。
病院のしきたりだからと言う理由で。
そして月日が経ち何度か会いに来てくれていたご両親は他県に引越しされました。
M君が産まれた秋のある日に受け持ちで相談して
手紙を送りました。
お誕生日おめでとうということ、会えてよかったということ、ずっと忘れないよという
メッセージに
M君がいつも一緒に持っていたぷーさんとティガーの絵を添えて。

亡くなった(退院された)後はご家族と連絡を取ってはいけないと言われてますが、
M君と同じ時期にNICUにいたRちゃんのママが仲介になってくれました。
そしてカードがとても嬉しかったと言うお返事を頂く事が出来ました。

個人的にはM君が亡くなった日に毎月のお祝いカード用に撮っていた画像を
お送りしました。
M君のものはM君のところにあるべきだと思ったんです。
これもとても喜んでくださいました。
もともとずっと入院中だったM君。
直接面識の会った人はほとんど居ません。
でもお母さんは周りの人にM君のことを話していて、お葬式にはたくさん来てくださったそう。
それでも月日が経つとM君のこと記憶から抜けてしまう人が多いみたいです。
そこが誕生死の大人の死との違いなのかなぁっておもいました。


でも私はずっと忘れないよ。

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