森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.08.19
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それではさらに次の気分変調性障害で苦しんでいる人の例です。
主婦のDさんは、しばしば二重うつ病を繰返しています。
娘の学校のPTAの役員を毎年やらされるので、負担が重いのです。
そして、DさんのことをPTAのベテランだと思っている人たちは、本来Dさんの仕事でもないものまでDさんに頼ってやらせようとするのだそうです。
ほかの役員はどうなのかと聞くと、ほとんどが、一年だけやって交代するそうです。
なぜDさんが毎年役を引き受けているのかというと、はっきりと「やりたくない」という意思表示をしていなかったのです。

例えばこんな感じです。
他の親 今年もDさん、お願いできますか。
Dさん あの、私は毎年本当にできが悪いので、今年はもっとおできになる方に代わっていただいた方がよいと思います。

Dさん 困ります。今年こそ大失敗をしてみなさんにご迷惑をおかけしてしまうと思います。
他の親 そんなことはないから大丈夫ですよ。是非引き受けてください。

Dさんは、本当は断りたくて仕方がないのです。
でもDさんの態度が優柔不断なために、他の親には真意が伝わっていないのです。
他の親たちの気持ちは、「Dさんは、本当は名誉職としてのPTA役員を引き受けたいのだ。一旦は奥ゆかしく断っているのだろう。だから、もう少し強く依頼すれば引き受けてくれるはずだ。それは結果的にDさんが望んでいることなのだ。」それぐらいの軽い気持ちでいるのです。

Dさんは気分変調性障害ですから、「今年は役を代わってもらいたい」ということは難しいのです。
自分の気持ちを表現することで、相手を怒らせたり、拒絶されたりすることが恐ろしいのです。
また自分の意見を言うことは「わがまま」であると思っている。
自分が周りの人に配慮できない人間みられることにかなり抵抗があるのです。
かなり困った状況にあっても、「他の人も忙しいから」「自分が抜けるとみんなが困るから」と思ってしまう。また子分のように扱われたり、虐待されていても、「相手も余裕のない時だから」「相手は私以外に頼れる人もないのだから」等と自分に言い聞かせる傾向にあります。これでは永遠に断ることはできません。

そこでどう断ったらよいのか水島医師と考えてみました。最終的には次のようになりました。

今年は勘弁していただけませんか。」自分の気持ちをしっかりと盛り込みました。
「もしもこんなことを言われたら」ということも考えて用意しました。
「そう言っていただけるのは光栄ですが、ごめんなさい、今年はどうしてもできません」
ここまで言えれば自分の気持ちがしっかりと相手に伝わります。
本番ではなんとかいうことができたそうです。慰留はなく、長年の献身的な活動に感謝されたそうです。


相手の不機嫌な反応を予測してその感情に耐えられないのです。
森田でいう予期不安です。そのことが自分を苦しめているのです。

そういう時は身近で相談に乗ってくれる人に相談することです。
私たちの場合は、集談会に集まる仲間です。
具体的な問題を話し、どう対応すればよいのか意見を聞いてみることです。
それも何人もの人に聞いてみるのです。
それを整理して、事前に用意して、練習してみることです。
行き当たりばったりでは、自分の気持ちは相手に伝えることはできないでしょう。
なんでもないことのようですが、対人関係療法というのは具体的に少しずつ進めていかなくてはなりません。
まさに行きつ戻りつの繰り返しです。
(対人関係療法でなおす気分変調性障害 水島広子 創元社参照)





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Last updated  2015.08.19 06:54:57
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