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『林業がつくる日本の森林』4

<『林業がつくる日本の森林』4>
図書館に予約していた『林業がつくる日本の森林』という本を待つこと約2ヶ月でゲットしたのです。
ドイツやオーストリアでできている森林経営が、なぜ日本では成り立たないのか?…そのあたりを知りたいのです。


【林業がつくる日本の森林】
林業

藤森隆郎著、築地書館、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
半世紀にわたって森林生態系と造林の研究に携わってきた著者が、生産林として持続可能で、生物多様性に満ちた美しい日本の森林の姿を描く。日本列島各地で、さまざまな条件のもと取り組まれている森づくりの目指すべき道を示した。

<読む前の大使寸評>
ドイツやオーストリアでできている森林経営が、なぜ日本では成り立たないのか?…そのあたりを知りたいのです。

<図書館予約:(1/08予約、3/11受取)>

rakuten 林業がつくる日本の森林


日本の森林の文化あたりを、見てみましょう。
p189~192
<日本の森林と社会への決意>
 我々が真に後世に残すべきもの、残せるものは何だろうか。それは、それぞれの地域の本来の自然をできるだけ活用しながら、そのポテンシャルを次世代以降に残していく我々の生き様ではなかろうか。自然のほとんどが森林である我が国においては、その森林生態系の多面的サービスを持続的に享受できるように森林と付き合っていくことが大事であり、それは構造の豊かな美しい森林を目指していくことである。

 繰り返し述べてきたように、構造の豊かな森林は、生物多様性の保全、土壌の保全、木材の供給、気象緩和、保健文化などの森林生態系のサービスをバランス良く発揮してくれる。すなわち、構造の豊かな森林は、環境、経済、文化などのあらゆる面において国土と社会の基盤的なバックグラウンドとして不可欠なものである。人々の知恵によって維持される豊かな構造の森林は、美しい田園、美しい街並みを生み出す根源である。

 世界の4大文明といわれる地帯が滅亡していった原因の共通項は、繰り返された森林破壊による不毛地化にある。それに対して森林と共存してきた日本の縄文文化は1万年以上続き、その後に入ってきた稲作文化と見事に融合して、現代に至るまで優れた文化と文明の土台となってきた。

 日本人の祖先である縄文人は、森林・草地での狩猟・採集と川や海での漁労の生活をしながら自然崇拝の文化を築いてきた。またすでに森林の中でクリの植栽をしていたともいわれている。3世紀頃に稲作技術を携えて侵入してきた先進的な弥生人が、縄文人を駆逐しなかったのは、日本の圧倒的な森林の力に対応するために、縄文人の力と文化を必用としたからだと考えられている。

水稲栽培に必用な安定的な水の供給には、縄文人の森林活用の知恵が必要だったのだ。6世紀に仏教が伝来し、それが縄文文化に由来する神道と共存できたのは、仏教が日本の森林と同じ性質を持つアジアの照葉樹林帯を経て日本にきたからだろうといわれている。すなわち神道も仏教も森の文化であり、それが日本の文化の深層なのだ。

 経済が発展してきた室町時代から商業的なスギなどの人工林の育成が始まり、江戸時代からそれが盛んになり現在に至っている。そのスタイルは農業模倣的で、同一の種を植えて、単純一斉林を育てて、途中で間伐収穫しながら最後は主伐で一斉に収穫するというものである。

 それは弥生人の農耕文化の色合いの強いものであるが、長年の実績から優れた施業法として評価され、今後も森林施業の一翼を担うだろう。しかし1960年代後半以降の生態学的な様々な科学的知見に基いて考えると、生産と環境の調和した真に持続的な森林管理には、弥生的な森林との付き合い方に、縄文的な森林との付き合い方も付加した管理・施業法のあり方も加える必用があるように思われる。

 吉野の多間伐の200年にも及ぶ長伐期施業は、長く森林生態系を維持しながら持続的に材を生産していくことにおいて、日本の誇るべき施業体系だといえる。その良さを活かしながら、さらに未来に向けて自然度の高さを加味した、例えば針広混交複層林のような生産と環境のより調和した施業体系をも目指していくことは、人類史的に見て素晴らしいことではないだろうか。

 18世紀にイギリスで産業革命が起き、それ以降大量の化石エネルギーを使った大量生産の資本主義が世界を席巻し、幕末以来日本もその流れの中に取り込まれてきた。その中で日本は特に第二次大戦後に工業力を発揮して、世界有数の経済的、物質的に豊かな国になってきた。この豊かな時代を送れたことに我々は感謝しなければならないだろう。しかし世界の先進国のすべては、近年この経済至上主義の社会に行き詰まりを来たして苦労しており、日本も同じ状態に置かれている。グローバルな資本主義の中で起きている大きな問題は、所得格差の広がりであり、孤独な人の増加であり、それが多くの国では民族間の紛争にまで連なっていることである。
(中略)

 グローバルな資本主義の中で、自然制約を強く受ける林業が、都市的、工業的な経済原理に伍して経済的に自立するために、どのような施業技術の改善と木材市場の改革を行ったのか。そのような先進事例を日本に摂り入れるだけでも、がらりと日本の林業を取り巻く経済的条件は変わってくるであろう。それは、それぞれの地域の自然を活かした循環型社会の構築に連なり、地球環境問題をはじめとする持続可能な社会の構築に不可欠なことである。


ウン 縄文文化に対するこれだけ深い著者の認識が素晴らしいではないか♪

『林業がつくる日本の森林』1
『林業がつくる日本の森林』2
『林業がつくる日本の森林』3




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