「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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『動物たちの生きる知恵』2
<『動物たちの生きる知恵』2>
図書館で『動物たちの生きる知恵』という本を手にしたのです。
動物たちと先端技術との関係を物理学、工学のセンスで説いているのです。
これが大使のツボを突くわけで・・・・ええでぇ♪
【動物たちの生きる知恵】
ヘルムート トリフッチ著、工作舎、1995年刊
<「BOOK」データベース>より
ダム作りの名人ビーバー、空調システムつきの砦を築くシロアリ、ロータリーエンジンの考案者バクテリアなど、進化の過程を経てエコロジカルな生態を育んできた動物たちと先端技術との関係を明快に解く。
<大使寸評>
動物たちと先端技術との関係を物理学、工学のセンスで説いているのです。
これが大使のツボを突くわけで・・・・ええでぇ♪
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動物たちの生きる知恵
この本は読みどころが多いので、(その2)として読み進めています。
p122~123
<すばらしい翼と羽>
鳥たちの翼と羽は、力学や流体力学の目で見てもたいへん洗練されています。とくに、爬虫類のうろこから進化した羽(羽毛)が、これ以上はありえない軽量化をなしとげました。かたくて、すぐれた弾性と柔軟性をもつ羽と、体のみごとな流線形が組み合わさって、鳥のすばらしい飛翔能力が生まれたのです。
鳥の羽は形も大きさもいろいろですが、共通しているのは、先細りのかたい羽軸があって、その両側に平らな羽弁がついているところ。羽弁は、羽枝と呼ばれる細かい枝がびっしり平行にならんだもので、羽枝の一本一本には、さらに細かい小羽枝が生えています。隣り合う羽枝に生えた小羽枝は、かぎとひだを突き合わせ、羽枝どうしをファスナーのようにまとめています。
このファスナー方式のおかげで、乱れた羽弁も、嘴で2,3度しごけばもとどおり。ケラチンというタンパク質でできた羽軸は、私たちにはまねのできない高度な設計でつくられています。根元あたりは中空ですが、そこ以外にはスポンジのような物質がつまっていて、前にご紹介したサンドイッチ構造です。根元を中空にしたのは、もちろん曲げに強くするため。
じつはもうひとくふうがあります。壁の厚みは均一ではないし、よく見ると1ヶ所にへこみがある。外からかかった力は、このへこみを大きくするだけでやんわり受けとめる。気流が羽弁を直撃したときはよくたわむのに、横からの気流だとたわまないのはこのためです。
鳥の翼は、もとは爬虫類の前足でした。骨の多くは合体や退化でなくなりましたが、三本の骨だけは残って、飛ぶのに大事な役割をしています。そのうち二本(翼腕骨と翼手骨)が、翼の保持と舵とり用に大型化しました。あまり活発には動かない三本めの骨には、少しだけ羽が生え、前翼というものになっています。翼腕と翼手と羽、この三つがバランスよく連動して、時々刻々と変わる気流にも翼の形を合わせるのです。
鳥は水平飛行だとかなりのスピードを出します。最高速度にして、ハヤブサが新幹線なみの200キロ、アマツバメが150キロ、ふつうのツバメ、グンカンドリ、ムナグロなども100キロくらいは朝飯前です。
鳥が飛んでいるとき、翼まわりのレイノルズ数は10万をぐんと超すこともあります。飛行機の翼に比べても、桁ちがいに小さいわけではありません。鳥の翼は、飛行機の翼と同じく、気流がなるべくきれいな層流になるよう設計されています。揚力を強め、抵抗を減らすにはそれが絶対ですから。単純な「可変翼」さえなんだかぎこちない飛行機にひきかえ、鳥の翼は、自在に形を変えられるところが、ずっと進んでいるといえましょう。
地衣類の耐寒性が述べられています。動物でいえば、さながらクマムシかな。
南極昭和基地周辺の地衣類
より
p196~198
<寒さにいちばん強い生物>
寒さにもっとも耐える生物は何でしょう? 雪嵐の中でも涼しい顔をしているペンギンでしょうか、流氷の上で暮らすホッキョクグマでしょうか、それとも氷に閉ざされた暗い海中で獲物をあさるアザラシでしょうか?じつは、もっとすごい生き物がいます。藻類と菌類が共生する地衣類という生き物です。
動物たちに比べると目立たないのですが、むきだしの岩肌に、灰色の、ときには色とりどりのペンキを散らしたような姿でへばりついているのが地衣類です。ヒマラヤの標高7000メートルあたりにも見つかっていますし、南極では、1年のうちほんの短期間だけ雪と氷が消える岩場に、350種類もの地衣類が棲んでいます。
雪が積もりにくく、嵐のときでも氷結しにくい切り立った崖とか、夏だけ雪が解けて露出するような場所を占め、南極点から400キロの地点でも見つかっている。今まで地衣類の研究がいちばん行われたのは南極大陸沿岸のビクトリアランドですが、そこの気温は年平均で零下15.5℃、最低気温がなんと零下48℃。1年じゅう、霜の降りない日は1日もありません。共同生活している片方の藻類は、ふつうの植物とまったく同じように光合成をする生物で、吸収した太陽光のエネルギーをつかって水を分解し、空気中から取りこんだ二酸化炭素を有機分子に変えて体をつくります。
太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する光合成は、おびただしい数の化学反応が順序よく起こってやっと進むものだとわかっています。化学反応の一部は生体膜の上で進み、一部は生体膜をとりかこむ水溶液の中で進みます。
いろいろな分子たちが、しかるべき場所に集まり、複雑な共同作業をしながら化学反応を進めるわけですから、分子が動くための運動エネルギーが、つまりは適度な温度が必用なはず。光合成だけでなくどんな化学反応も、ある温度よりも低くなるとしだいに遅くなり、ついには完全に止まってしまう。それに、温度がうんと下がって細胞の中の水が凍りでもすれば、体積が増えるのでデリケートな生体組織が破壊されかねません。
そういう目で地衣類を眺めると、まったく驚くばかりです。零下10℃でもやすやす光合成することが確かめられていますし、さらに温度が下がって零下20℃になっても、速度は少し落ちますがとにかく光合成は進みます。
あまりにも常識はずれのことですから、多くの研究者が地衣類の光合成をくわしく調べてきました。たとえばランゲが、放射性炭素をつかった実験で、低温でも二酸化炭素からたしかに有機物ができることを証明しました。また、零下40℃、零下70℃、零下196℃(液体窒素の温度)というとんでもない低温に地衣類をさらしても、細胞内の水はいったん凍ってしまうのですが、そのあと育成地の気温に戻すとまた活発に光合成を始めるし、細胞の水分をかなり除いても光合成の機能は残ります。
こういうタフな光合成工場をもっているから、地衣類はきびしい氷の環境でも生き延びられるのでしょう。極地の長い長い冬が終わったとたん、あるいは何年も体を包んでいた雪が消えたとたん、つまり生命活動を押さえつけていた重石がはずれた瞬間に、地衣類はすかさず光合成活動を再開して太陽のエレルギーを体にとりこみ、やがて来る闇と極寒の世界に備えるのです。
『動物たちの生きる知恵』1
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