白鵬翔 06年NEWS17

 Zakzak 5月 13日目
<抜粋>  白鵬、涙のリクエスト…優勝争いうれし泣き今度こそ
力士は、支度部屋で泣くたびに強くなる。
2年前の秋場所12日目、雅山は12連敗中だった朝青龍を押し出して勝ち、花道を引き上げてくると、「オヤジ、見ていてくれたかな。オレの最高の白星を目の奥にしっかり焼き付けてもらいたいんだ」と、大粒の涙をこぼした。3年前、雅山は大関から陥落、大のファンだった父親の哲士さんをがっくりさせた。哲士さんはこのとき、肝臓がんが悪化して意識も途切れ途切れの状態で、千秋楽を待つように息を引き取っている。この勝ち星は雅山が父親にささげるおわびだった。2場所前の千秋楽、栃東が朝青龍を破って優勝を決めると、星1つ差で激しく追いかけていた白鵬は、「横綱が勝って優勝決定戦になると信じていた。逆転できる自信はあったんです」と言うとタオルで顔を覆い、肩を震わせた。それは優勝の難しさや1勝の重みをかみ締める悔し涙だった。今場所4日目、把瑠都は土俵際で34歳の北桜の寄りを懸命に残し、左に打っちゃったが、無情にも軍配は北桜にあがった。右足のかかとがわずかに俵を割っていたのだ。把瑠都は支度部屋に戻ってくると、「オレが勝っている。足は残っている。せめて物言いぐらいはつけてほしかった」と涙目で訴えた。それは把瑠都が初めて見せた悔し泣きだった。いよいよ優勝争いは大詰め。圏内にいるのはこの3人に絞られた。果たして千秋楽に、今度はうれし泣きするのは誰だろうか。  



 日刊スポーツ 5月 14日目
<抜粋>  白鵬が父親の目の前で勝つ
この日は千代大海の出足も鋭く、立ち合いで得意の左前まわしが取れない。だが、慌てずに冷静に距離を取りつつ、余裕を持ってはたいた。観戦した父でモンゴル相撲の大横綱ムンフバトさん(64)から「途中で嫌な距離だったが、最後はタイミング良かったな」と祝福され、白鵬も笑顔を見せる快勝だった。把瑠都に勝てば最低でも優勝決定戦に進む権利を持つ。14勝1敗の初優勝なら、名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)は綱とり場所になる可能性が高い。北の湖理事長(元横綱)は「明日、終わってからだ」と言った。横綱を目指す白鵬にとって、把瑠都戦は大切な一番になる。  



 サンスポ 5月 14日目
<抜粋>  雅山「頑張るしかない」、「緊張感がある」と白鵬
互いに譲らず1敗を守った。新大関の白鵬と元大関の雅山がともに初優勝を懸けて、千秋楽の土俵に上がる。雅山は2敗で追う把瑠都との大一番。突っ張り合いから引かせて、一気に押し倒した。割れんばかりの拍手の中、どうだと胸を張った。「体が自然に動いた。負けてもおかしくない相手。1敗でいけて良かった」と一言一言をかみしめた。1976年秋場所の魁傑以来、史上2人目となる大関転落後の優勝に向け「泣いても笑っても明日だけ。頑張るしかない」白鵬は千代大海の突っ張りを柔らかな動きでかわして、出てきたところをはたき込み。ただ、前に出られなかったとあって「当たったつもりだけど、いつもの自分じゃなかった」と首をひねる。取組後には来日した元モンゴル相撲の大横綱の父ムンフバト氏とがっちり握手。千秋楽の把瑠都戦に向け「(対戦を)予想していなかった。頑張ります」と短く言った。この日の朝5時まで寝付けなかった雅山。「ここまで眠れなかったのは初めて」と苦笑する。先場所と同じく相星で千秋楽を迎える白鵬も「春場所の相手は横綱。今回は自分が(番付が)上なんで、違った緊張感があるね」とこぼす。両者とも硬い表情のままだった。雅山の相手は4大関を倒した朝赤龍。白黒が分かれれば優勝が決まるが、それ以外は決定戦になる。初めて賜杯を抱くのはどちらか。  

白鵬が千秋楽に把瑠都戦-優勝争い優先の取組編成
大相撲夏場所千秋楽(21日)で新入幕把瑠都-新大関白鵬の対戦が組まれた。新入幕が千秋楽の恒例の三役そろい踏みを行い、大関に挑戦するのは1973年秋場所の大錦以来33年ぶりで、昭和以降2人目となる。白鵬-魁皇は組まれず、皆勤した大関同士の対戦がないのは2004年春場所の千代大海と武双山以来となった。千秋楽の取組発表後、把瑠都は雅山に敗れて新入幕優勝がなくなったが、審判部の放駒部長(元大関魁傑)は「ファンにとって一番興味があるのは優勝争い。反対はなかった」と説明した。



 毎日新聞 5月 14日目
<抜粋>  白鵬、雅山そろって1敗を堅持 琴欧州は五分に
○…初優勝へ望みをつないだ白鵬。千代大海の動きを見て、慎重に退けたように見えたが、必勝の左前みつは取れないまま。取組後もいつもと違って冗談も出ず、「いつもの自分じゃないみたい」と、緊張した取組を振り返った。この日は、白鵬が出入りする西の砂かぶりで父・ムンフバトさんが観戦。花道で視線を交わした後、支度部屋で握手。父から「最後はタイミングが良かった」と声を掛けられて、ようやくほおが緩んだ。3場所連続の13勝。過去2回は優勝を逃した。その話になると「前回までは番付で上の人と争ったが、今回は自分が上。違った緊張感もある」。加えて、千秋楽は「予想していなかった」という把瑠都との対戦。決して万全とは言えない心持ちの中、悲願を成就できるか。  



 サンスポ 5月 14日目
<抜粋>
白鵬、初Vへ1敗死守!
悲願の初優勝へと突き進む白鵬が、大関千代大海をはたき込んで1敗を守った。だが、前に出られず、「当たったつもりだけど、いつもの自分じゃなかった」と首をひねった。取組後にはこの日来日し、観戦したモンゴル相撲の大横綱だった父・ムンフバトさん(64)とがっちり握手。先場所と同じく相星で迎える千秋楽。把瑠都戦に向け、「(対戦を)予想していなかった。でも、春場所の相手は横綱。今回は自分が(番付が)上なんで、違った緊張感がある。頑張ります」とキッパリ。  



 日刊スポーツ 5月 14日目
<抜粋>  白鵬も1敗、千秋楽は把瑠都戦
白鵬(21)は先輩大関千代大海にはたき込みで勝ち、1敗を守った。得意の左前まわしこそ取れなかったが、慌てず距離をとって、余裕のはたき込みだった。観戦した父でモンゴル相撲の大横綱ムンフバトさん(64)から「途中で嫌な距離だったが、最後はタイミング良かったな」と言われ、白鵬も笑みを返した。初場所、春場所と13勝を挙げながら優勝は逃した。千秋楽の本割に勝ち、雅山が負ければ初優勝が決まる。その本割は把瑠都と組まれた。本来なら魁皇との対戦だったが「予想してなかった」と、正直な胸の内を明かした。約1年半前の05年初場所前、把瑠都が宮城野部屋に出げいこし、2人は申し合いで汗を流した。当時、新小結の白鵬はまだ三段目の把瑠都相手に、もろ差しになりながら、両まわしを引かれて振り回された。白鵬を育てた熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)は「脅威に感じていたと思う」と、当時の白鵬の気持ちを代弁した。把瑠都に勝てば最低でも優勝決定戦に進む権利を得る。14勝1敗の初優勝なら、名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)は綱とり場所になる可能性が高い。北の湖理事長(元横綱)は「明日、終わってからだ」と言った。綱への階段に、新大関の白鵬はまさに足をかけようとしている。【井上真】  



 スポニチ 5月 14日目
<抜粋>  白鵬3度目の正直へ「頑張ります」
完勝に見えたが、白鵬の表情は険しかった。雅山が1敗を守った後に臨んだ千代大海との一番。相手の強烈な突きにも後退せず、回り込むと落ち着いてはたき込んだ。しかし「いつもの自分じゃなかった。当たったつもりなんだけど」と首をひねった。初場所、春場所と千秋楽まで優勝争いに絡みながら逃した。三たび訪れたチャンス。知らず知らずのうちに重圧を受けていた。それでも白星をもぎとったのが成長の証だ。この日、来日して観戦していたモンゴル相撲の元横綱の父・ムンフバトさんからも「最後はタイミングがよかったね」と祝福を受けた。「まあ、頑張ります」と白鵬。新大関場所で13勝したのは03年初場所の栃東以来の快挙。14勝すれば史上初となる。千秋楽は初優勝と新記録も狙う。もちろん、それが達成されれば綱獲りの足掛かりとなる。  



  5月 14日目
<抜粋>
大相撲夏場所14日目(20日・両国国技館)、新世代の旗手がいよいよ時代を切り開く。白鵬は千代大海の突っ張りをしのぐと機を見て鮮やかにはたき込んだ。前日の琴欧州に続く大関撃破。支度部屋で、この日来日した父ムンフバトさん(64)に「立ち合いよくなかったけど、最後はタイミングよかったね」と褒められると、底抜けの笑顔を見せた。初優勝へあと1日。Vへの最終関門は“怪物”把瑠都に決まった。平幕時代の昨年、幕下だった把瑠都が宮城野部屋に出げいこに来た際、豪快に投げられた思い出も今は昔。「今日の把瑠都は緊張していたね」と相手を気遣う余裕を見せた。大関としての自覚も口にした。「先場所は横綱(朝青龍)との優勝争い。今場所は自分が上の立場なので緊張感が違う」。把瑠都を退けても、元大関雅山との決定戦にもつれ込む可能性があるが「頑張ります」。気迫を映した目は前だけを見ている。  



  5月 千秋楽
<抜粋>
  



 毎日新聞 5月 千秋楽
<抜粋>  新大関白鵬が雅山との優勝決定戦に勝って初優勝
大相撲夏場所千秋楽は21日、東京・両国国技館で行われ、モンゴル出身の新大関白鵬(21)=本名・ムンフバト・ダバジャルガル、宮城野部屋=が、関脇雅山との優勝決定戦に勝って14勝1敗で初優勝を果たした。7月の名古屋場所で横綱昇進をかける。21歳2カ月での初優勝は史上4番目の若さ。新大関での優勝は02年初場所の栃東以来、昭和以降では6人目となる。また宮城野部屋からの優勝は1915年春場所の大関・鳳以来91年ぶり。初優勝力士が出たのは、02年九州場所での大関朝青龍(現横綱)以来となる。白鵬はこの日、新入幕の把瑠都を降して1敗を守り、朝赤龍を倒してやはり1敗の雅山との優勝決定戦を寄り切りで制した。【飯山太郎】  



 毎日新聞 5月 千秋楽
<抜粋>  名古屋場所で白鵬
日本相撲協会の北の湖理事長は21日、新大関で初優勝した白鵬の綱取りについて「14勝1敗は全勝に次ぐもので非常に高い成績。若いだけに、来場所も今場所のような成績なら(横綱昇進の)話題に出るでしょう」と述べ、名古屋場所では14勝が目安になるとの見解を示した。  



 サンスポ 5月 千秋楽
<抜粋>
◆白鵬の話 
「うれしい。顔が腫れて足も悪くなったけど大事な場所なので頑張った。雅山関は(本割で)負けているので落ち着いて攻めた。この優勝を自信にして(綱とりの懸かる)名古屋場所で頑張る」

安定感増した白鵬
悲願の初優勝を果たした白鵬は、安定感がさらに増した。今場所は右四つからの寄りだけではなく、千代大海、若の里戦のように相手をよく見てさばく相撲も見られた。大関相撲を飛び越えて、早くも横綱相撲とも言えよう。新大関の重圧は全く感じられなかった。初の綱とりに挑む来場所に向け、鍵となるのは立ち合いだ。張り差しは避け、左前まわしつかむことに徹するべきだ。初優勝を逃した雅山だったが、堂々の14勝。完全復活を印象づけた。往年の重い突き、押し相撲がよみがえり、新入幕の把瑠都戦で見せた出足と意地は出色だった。大関復帰の可能性も十分だ。白鵬以外の4大関はふがいなかった。綱とりの栃東はまさかの途中休場。千代大海は終盤に息切れし、魁皇も胸の痛みがあったとはいえ終盤の4連敗にはがっかりだ。琴欧州は千秋楽での勝ち越しがやっとで、白鵬との差はさらに広がった。新入幕の把瑠都は前評判にたがわぬ大活躍だった。まだ相撲は粗削りだが、まわしを引いての力強さは底知れない強さを見せた。来場所の上位陣との対戦が待ち遠しい。若手の台頭も収穫だった。4大関を破って10勝の朝赤龍、攻撃相撲の稀勢の里はそろって来場所の新三役の座を確実とした。彼らのきっぷのいい相撲ぶりは、3日目から途中休場した横綱朝青龍の穴を埋めてくれた。

▽幕内優勝(14勝1敗)
白鵬 翔(はくほう・しょう=本名ムンフバト・ダバジャルガル)西大関。モンゴル・ウランバートル出身、宮城野部屋。メキシコ五輪のレスリング銀メダリストでモンゴル相撲の元横綱ジジド・ムンフバト氏を父に持ち、01年春場所初土俵。04年夏場所に新入幕し、今場所が新大関。優勝1回、殊勲賞3回、敢闘賞1回、技能賞2回。得意は右四つ、寄り、上手投げ。192センチ、153キロ。21歳。  

▽年少初優勝 21歳2カ月は、北の湖の20歳8カ月に次いで史上4位の若さ。同1位は貴花田の19歳5カ月。
▽スピード優勝 初土俵から32場所目は若花田に次ぎ6位。新入幕から13場所目は北の湖と並んで10位。(いずれも年6場所制となった1958年以降初土俵。幕下付け出しを除く)
▽新大関優勝 2002年初場所の栃東以来で8人目。
▽外国出身力士の優勝 高見山、小錦、曙、武蔵丸、朝青龍に次いで6人目。モンゴル出身力士では朝青龍に次いで2人目。
▽宮城野部屋所属力士の優勝 大正時代の1915年春場所の鳳以来、91年ぶり2人目。



 読売 5月 千秋楽
<抜粋>  白鵬、大一番で見せた会心の相撲
大相撲夏場所千秋楽(21日・両国国技館)――淡々と白星を重ねていたように映った白鵬が「全身全霊」を込めた今場所一番の相撲で、15日間を締めくくった。乱れた呼吸、額を流れる汗、にじむ涙。念願の賜杯を抱いた新大関は「親方やお父さん、お母さん、ファンの皆さんに、ありがとうと言いたい」。雅山との優勝決定戦。相手の生命線である突きに応戦しながら巧みにかいくぐって右四つ、左上手を引く万全の形となった。ここからが慎重。5日目には出し投げを打った後、まわしを放して逆転負けした相手だが、今度は両まわしをしっかり引きつけて、ジワジワ寄る。力強さも感じさせる攻めで借りを返した。横綱不在の場所を抜群の安定感で引っ張る一方、春場所に比べると、左上手を引きつけた厳しい攻めが少ないなど、やや物足りなさがあった。だが、本割で把瑠都を軽々と投げ捨てた後は、“スイッチ”が、明らかに切り替わったような印象だ。優勝決定戦を待つ東の支度部屋では激しく体を動かし、目つきも鋭さを増した。初の賜杯にかける意気込み、気迫があった。九重審判長(元横綱千代の富士)は「本当の大関の力をつけてきた力士。使命感がある立派な優勝」とたたえた。3場所連続で優勝争いに絡むなど、力は既に横綱級。「この自信を名古屋に持って行く」という白鵬が、また一歩、頂点に近づいた。(向井太)  



 朝日 5月 千秋楽
<抜粋>  白鵬と雅山、来場所W昇進の可能性も 北の湖理事長
新大関白鵬にとって次の名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)がいきなり「綱とり場所」となることになった。 北の湖理事長(元横綱)は21日、「白鵬は今年に入って13勝、13勝、14勝と立派な成績で安定している。次の場所の成績次第で横綱昇進の話題が出るだろう」と語った。また、優勝同点だった関脇雅山についても「今場所の14勝は立派。来場所、11勝前後を挙げれば大関昇進の話題が出る」と話した。 横綱昇進は横綱審議委員会の内規で「大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」が必要とされている。大関昇進は番付編成の慣例で、小結、関脇で昇進直前3場所の白星が33勝あることが目安。雅山は2場所で24勝となっている。   



 中日スポーツ 5月 千秋楽
<抜粋>  白鵬初V 名古屋で綱獲り
新大関の白鵬(21)=モンゴル出身、宮城野部屋=が名古屋場所(7月9日初日・愛知県体育館=中日新聞社共催)で綱とりに挑む。14勝1敗で並んだ雅山との優勝決定戦を制して初優勝。北の湖理事長ら協会関係者は名古屋が横綱昇進をかけた場所になることを認めた。夏の名古屋は白鵬の綱とり、準優勝の雅山の大関カムバックという“ダブル昇進”の話題でさらにヒートアップする。優勝決定戦の末につかんだ初優勝。東の支度部屋でのお立ち台。白鵬はインタビューで思わず涙ぐんだ。だがぐっとこらえ、「うれしいです。うれしい」。正直に胸の内を吐露した。決定戦の相手は5日目に唯一の黒星を喫している雅山。投げで早めにまわしを離し、雅山に逆転を許した。「場所中に負けたんで」。ずっと心によどんでいた借りを返すにはちょうどいい機会。神様がチャンスを与えてくれたと考えた。白鵬は「投げを打たないように自分で言い聞かせた」。大事なところでリベンジを果たしたのだ。東の花道から支度部屋に戻ってきたとき、入門からずっと育ててくれた熊ケ谷親方(元幕内竹葉山)が待っていた。がっちり握手した瞬間、親方の目から涙がこぼれた。5年前、入門志願してやってきた白鵬は68キロしかなかった。「あの時、あんなに小さかった。3カ月食っちゃ寝の毎日。それに耐えて頑張った。僕らが想像する以上に頑張ってくれた」と、そっと白鵬の肩を抱いた。前日来日した白鵬の父、モンゴル相撲の大横綱・ムンフバトさんは桟敷席で息子の勇姿を見つめた。支度部屋では、テレビの前で息子に祝福のキス。息子は言った。「きのうの夜は、食事をした後、お父さんと一緒に寝た。本当に久しぶり。懐かしい話をした」。心の安らぎがこの日の原動力になったかもしれない。場所前、白鵬は決して調子は良くなかった。モンゴルへいって昇進祝賀会や大関としての公式行事に忙殺された。「いろいろ忙しかったので不安があった」。それだけではない。右耳からばい菌が入り、顔が子どものおたふく風邪みたいに腫れた。古傷の右足首も痛みがぶり返し、不安は増幅された。でも大関昇進の口上のように「全身全霊」を相撲に打ち込んだのだ。春場所が13勝の優勝同点、今場所が優勝で14勝。周囲では名古屋場所で綱とりを期待する声が高まる。「いや、まあ」と口を濁した白鵬が、綱を目指して名古屋に乗り込んでくるのは6月25日だ。 (近藤昭和)  



 スポニチ 5月 千秋楽
<抜粋>  白鵬 新大関V!次は綱獲り挑戦
大相撲夏場所は21日、東京・両国国技館で千秋楽を行い、新大関・白鵬が悲願の初優勝を果たした。本割で新入幕の把瑠都を下した後、1敗で並んだ関脇・雅山との決定戦を制して14勝1敗で史上8人目の新大関Vを飾った。21歳2カ月で歴代4位の年少優勝。先場所、先々場所と千秋楽で逃した賜杯を勝ち取り、名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)では早くも綱獲り。強さを増す“白き大鳥”は双葉山、照国に並ぶ史上最速の大関2場所通過に挑む。 【千秋楽取組結果】 すべての力を注いだ決定戦を制し、白鵬は何度も大きく息を吐く。引き揚げる花道で少し目が潤んだ。「15日間すべて自分の全身全霊をかけてやりました」。昇進伝達式で述べた「全身全霊をかけて努力します」という口上を新大関の場所で結実させた。本割で旋風を巻き起こす把瑠都と対戦。立ち合いすぐに左上手投げを打ち、2場所続けての決定戦へ。同じく初優勝に燃える雅山のまわしを取るのに苦労したが、得意の右四つで組み止めた。土俵際で逆転された5日目を思い出し、慎重すぎるほど慎重に。土俵中央で様子をうかがい、機を見てこん身の力で寄り切った。場所前は大関昇進の祝賀行事で多忙を極めた。協会の看板力士となり、ビールのCM出演オファーも届いた。しかし、以前から痛めている左足首の不安が消えない。もし満足な成績を残せないのに、テレビでビールを飲み干す姿が映ったら…。「全身全霊をかけてと言った口上を裏切ることになる」という部屋関係者のアドバイスもあり、話し合った上で今回はオファーを断った。場所中も頸(けい)部リンパ節炎で顔が腫れ、左足首がうずいた。順風満帆ではなかった。そんなときに思い浮かべたのが「体禅一如(たいぜんいちにょ)」の4文字。少林寺拳法の指導者である知人から「心と体と両方調和して鍛えなさい」と贈られた言葉。相撲の心技体にも通じるその言葉を場所入りする車にも張りつけて、冷静に自分を見つめ直した。「顔が腫れて足も痛くなったけど、大事な場所なんで頑張りました」。前夜はモンゴル相撲の大横綱である父ムンフバトさん(64)と夜を過ごし、昔話をして心を落ち着けた。支度部屋で父から受けたキスの嵐ですべてが報われた。双葉山の相撲を理想とする21歳。双葉山と同じ新大関Vを果たし、双葉山に並ぶ大関2場所通過へ。目指すは連続優勝での横綱昇進。「これを大きな自信にして、また来場所頑張ります」。全身全霊で勝ち取った初優勝を携え、「大鳥」がさらに高く空を舞う。
≪理事長「来場所は話題出る」≫北の湖理事長(元横綱)は白鵬の充実ぶりに目を見張った。「今年に入ってから13、13、14勝と安定ぶりはずば抜けている。14勝1敗は高い成績。来場所には(綱獲りの)話題が出るでしょう」と話した。放駒審判部長(元大関・魁傑)も「(来場所は)期待していい」と見通しを語った。   



 中日新聞 5月 千秋楽
<抜粋>  新大関・白鵬が初優勝
大相撲夏場所は21日、東京・両国国技館で千秋楽を行い、西大関白鵬(21)=本名ムンフバト・ダバジャルガル、モンゴル出身、宮城野部屋=が関脇雅山との優勝決定戦を制し、14勝1敗で初優勝した。7月の名古屋場所で綱とりを懸ける。21歳2カ月での初優勝は史上4番目に若く、新大関優勝は2002年初場所の栃東以来で史上8人目。宮城野部屋からは1915年春場所の鳳以来、91年ぶりの優勝力士誕生となった。横綱朝青龍、綱とりが懸かった大関栃東がともに途中休場した今場所、白鵬は5日目に関脇雅山に敗れた以外は順調に星を伸ばした。
■白鵬、風格漂う
ついに白鵬が賜杯を抱いた。2場所続けて千秋楽に逃した賜杯。「大関昇進よりきょうの方がうれしい」。21歳の未完の大器に歓喜の涙がにじんだ。雅山との優勝決定戦。もろ手突きの元大関に体を密着させ、今場所、次々と難敵を沈めた突きを不発に終わらせた。右四つに組み止め、がっちりまわしをつかんだ。土俵中央で動きが止まる。「場所中に負けたから」。5日目、不用意に上手を離し、土俵際の突き落としで唯一の黒星を喫した相手。失敗は繰り返さない。慎重に、こん身の力で引き付けて、182キロの巨体を寄り切った。新弟子時代から指導してきた熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)は言った。「お互いが本割で勝ち、優勝決定戦で優勝できたことが大きい。5日目の負けが消され全勝優勝と同じになり、来場所へのステップになる」。左足首の調子は決して良くなかった。右耳の炎症からほおを張らし、まともにぶつかれず、突き放しや張り差しでしのいだ日もあった。「優勝決定戦が今場所一番いい形になった。負けない相撲で安定感は抜群。来場所は(綱とりが)当然、話題になる」と北の湖理事長。絶好調でないなか、ここぞの大一番で“横綱相撲”を取った白鵬をほめた。年6場所となって以降、大関を最短の2場所で通過した力士はいない。「優勝を大きな自信にして、また来場所頑張ります」。初の快挙を手土産に大横綱への階段を上り続ける。 (高橋広史)
◇白鵬 翔(はくほう・しょう=本名ムンフバト・ダバジャルガル)西大関、モンゴル・ウランバートル出身、宮城野部屋。01年春場所初土俵。04年夏場所に新入幕し、今場所が新大関。優勝1回、殊勲賞3回、敢闘賞1回、技能賞2回。得意は右四つ、寄り、上手投げ。192センチ、153キロ。21歳



 スポーツ報知 5月 千秋楽
<抜粋>  白鵬初V、歴代4位21歳2か月…夏場所千秋楽
大相撲夏場所千秋楽(21日、両国国技館) モンゴル出身の新大関・白鵬(21)=宮城野=が念願の初優勝!! 名古屋場所(7月9日初日・愛知県体育館)で綱取りに挑戦する。本割では大物新入幕の西11枚目・把瑠都(三保ケ関)を一蹴し、14勝1敗。優勝決定戦では西関脇・雅山(28)=武蔵川=を寄り切り、歴代4位の年少記録となる21歳2か月での優勝を決めた。宮城野部屋からの幕内優勝は1915年(大正4年)春の鳳以来91年ぶり。殊勲、技能賞を受賞した雅山は名古屋場所で大関復帰を狙う。うれし泣きは、草原の国で暮らした少年の日々には経験しただろうか。マイクを向けられ、白鵬の声がわずかに上擦る。「自分の全身全霊をかけてやりました」大関昇進の口上の具現となった優勝賜杯。朝青龍の横で長らく眺め続けた重さ29キロの銀杯は、予想以上の重さだった。そしてモンゴル相撲の大横綱の父・ムンフバトさん(64)からは祝福のキス。「大関昇進の時より、きょうの方がうれしいね」間違いない。人生最良の日だ。本割で欧州の怪物・把瑠都を難なく退け、新大関では過去最高の14勝をマーク。優勝決定戦では雅山の突っ張りに下がらず、右四つで胸が合い、左上手を引く。十分になってもなお慎重に、間をおいてから正面土俵下へ転げ落とした。実は、モンゴル力士の先駆者・旭鷲山が「5日目の教訓」を助言していた。〈1〉まわしから手を離すな〈2〉逆転の突き落としを警戒しろ〈3〉はたきにも注意せよ―。思えば歯がゆい5日目の失地を回復。恩師、熊ケ谷親方(元幕内・竹葉山)も「帳消しなら全勝優勝だな。言葉にならない。もう真っ白だよ」と話した。恵まれた肉体にも15日間には左足首の痛みや、顔が腫れ上がるヘルペスが襲いかかった。後援者で曹洞宗・興禅寺の住職、市川智彬さんの勧めに従い、毎日座禅を組んで集中力を養った。前夜は父と枕を並べて寝た。「お父さんがどんな相撲を取ってきたか。昔話を聞いた」泰然自若に見える大物も精神面のケアは重要だった。名古屋場所では綱取りがかかる。年6場所制では史上最速となる2場所大関通過を狙うのだ。朝青龍、栃東が復帰しての賜杯レースはさらにし烈を極めるはずだが「自分の相撲を信じて頑張るだけ」。初優勝までは控えていたテレビCMの出演も解禁。世界中で名を知られる電子機器メーカーから出演話が届いている。希代の大物は世界に羽ばたくイメージを発信し、角界の頂点を目指す



 日刊スポーツ 5月 千秋楽
<抜粋>  白鵬初優勝!2場所一発綱とりだ
全身全霊で攻めた。今度こそ、チャンスを逃さない。同じ21歳の把瑠都をわずか1秒3で料理して迎えた優勝決定戦。雅山の突っ張りをかいくぐり、右四つ左上手。万全の形で、万全を期した。「場所中負けてたから」。焦らずに機を待つと、歯を食いしばって一気に前へ。寄り切った勢いで転げ落ちた土俵下から起き上がると「フオーッ」と大きく息を吐いた。涙がこぼれないよう、まぶたに力を込め、何度も唇をかみしめた。これが初優勝の味だ。「親方をはじめ、お父さん、お母さんや部屋のみなさんにありがとうと言いたいです。全身全霊をかけて…やりました」。優勝インタビューでは、万感の思いが込み上げた。入門した00年10月には175センチ、62キロしかなかった少年が、ついに頂点に立った。父ムンフバトさんはマス席で、入門時から指導する熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)は花道上通路で、それぞれ目を真っ赤にしながら“息子”の晴れ姿を見つめていた。悲願の初優勝だった。初場所では支度部屋で人目もはばからず涙にくれた。春場所でも朝青龍との優勝決定戦に敗れたが、白鵬はこの時、表彰式直前の花道奥に置いてあった賜杯にこっそり近づいた。銀のカップに唇を寄せ、そっと口づけした。「次はオレだ、っていう意味でね」。それから2カ月後、ついに賜杯は自分の胸へとやってきた。「思ったより重い。大関昇進より今日の方がうれしい」と、あどけない笑みを浮かべた。朝青龍と栃東が休場した場所で、見事に主役を務めた。場所前に古傷の左足首を痛め、場所中にはリンパ節炎で右ほおを腫らし、決して楽ではなかった。それでも安定感は上位で1番だった。九重審判長(元横綱千代の富士)は「フロックじゃない。横綱がいたとしても優勝していたんじゃないか」と最大級の賛辞を贈った。残る目標は1つだ。14勝の優勝で、来場所は文句なしの綱とりに挑む。横綱挑戦の話題には「いやあ…」とけむに巻いたが、腹は決まっている。大関昇進を決めたばかりの春場所後、進退を迷っていた恩人旭鷲山に言った。「僕が横綱になるまで、現役でいてください」。新大関で14勝は歴代最多。双葉山と照国以来の大関2場所通過も、決して夢ではない。さあ、白鵬時代の始まりだ。【太田尚樹】  



 サンケイ 5月22日
<抜粋>  初優勝の白鵬が会見 「次は(横綱を)狙うしかない」
大相撲夏場所で14勝1敗で初優勝した新大関の白鵬が、千秋楽から一夜明けた22日、東京都墨田区内の宮城野部屋で会見し、「やろうと思っても、なかなかできないこと。うれしい」と喜びを語った。体調が万全でないまま迎えた今場所は「苦しかった。部屋のみんなが支えだった」という。前夜は部屋の祝賀会やテレビ出演、来日している元モンゴル相撲の大横綱で父親のジジド・ムンフバトさんと語り合ったこともあり、睡眠時間は約3時間。「今でも優勝したのかなと思う。夢見ている感じ」と眠そうに笑った。場所後はモンゴルには帰国せず、来週から早くも、けいこを再開する予定。名古屋場所は横綱昇進に挑む。白鵬は「(初優勝を)達成したので、次は(優勝を)狙うしかない。硬くならず、思い通りの相撲を取ることが大事。自信はある」と力強かった。  



 朝日新聞 5月22日
<抜粋>  組んでも慎重、雅に雪辱 決戦、白鵬制す
優勝決定戦を終えた白鵬は東支度部屋の一番奥、優勝者の指定席に座り込み、視線を宙に浮かせた。話しかけられても言葉は切れ切れ。人ごみをかき分けた父ムンフバトさんからほおにキスされ、ようやく笑顔になった。「うれしいです」。やっとはっきり、言葉が出た。把瑠都を1秒3で片づけて臨んだ決定戦。雅山に突き放されかけても慌てない。突っ張りをかいくぐり、土俵中央、がっぷり右四つ。しばらく止まった後、両腕をぐっと引きつける。一歩二歩ゆっくり足を運んで寄り立てた。 「投げないようにじっくり攻めたのか」と問われ、「はい」と答えた白鵬。勝負をあせって出し投げを打ち、土俵際で逆転された5日目の雅山戦の反省が生きた。 体調は万全ではなかった。中日ごろからは右耳下のリンパ節炎が悪化した。「顔が腫れたり、足が悪くなったり。苦しかったのは15日間すべて」。一時は左上手をすぱっと奪う自分の形を見失いかけた。 だが、気持ちの余裕は忘れなかった。13日目朝、部屋の新弟子に付きっきりで基本を指導した。「前は自分のことしか考えていなかったのに……」。入門から指導する熊ケ谷親方(元幕内竹葉山)は感心する。 「全身全霊をかけた。親方、お父さん、お母さん、部屋のみんなに感謝したい」。大関昇進の口上に入れた「全身全霊」の15日間。朝青龍、栃東が休場した場所の主役を演じきった。  



 Zakzak 5月22日
<抜粋>  試される白鵬、綱取り前の大関門とは…
これでまた、師匠や関係者は頭痛のタネが1つ増えそうだ。48年前の昭和33年春、横綱吉葉山が高島部屋から分家独立して以来、初めての優勝力士誕生。育ての親の熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)は、まな弟子の白鵬が雅山を得意の右四つ、左上手を引き付けて寄り切り、昭和以降では6人目の新大関優勝を決めた相撲を東の花道の上から見つめていた。「言葉になりませんよ。まさに感無量。途中で(リンパ節炎で)顔が大きく腫れたときはどうなることかと心配しましたけど、よう頑張ってくれました。今まで味わったことのない喜びが、こみあげてきました」ヒーローの白鵬の目も真っ赤。「5日目に1度、土俵際で逆転負けした相手ですから、優勝決定戦は慎重にいきました。この優勝は、大きな自信になる。来場所も自分の相撲を信じて頑張ります」と、早くも名古屋場所の史上最短の綱取りに闘志を燃やしていたが、周囲は喜んでばかりはいられない。というのも、宮城野部屋は6月18日に都内のホテルで白鵬の大関昇進披露パーティーを予定。師匠や後援会の力量を試される一大行事で、2年前、出羽一門から異例の婿入りをしてきた宮城野親方(元十両金親)は、石にかじりついても成功させなければいけない。だが、後援会も小さい小部屋で、1000人近く集めるのは大変。「琴欧州の1300人まではいかなくても、せめて900人ぐらいは集めないと。でも、出席の返事をくれた人はまだ300人ぐらいしかいない」と、部屋関係者は場所中、ため息をついていた。大関昇進で苦戦しているのに、横綱昇進が早まれば日を置かずにさらにもう1度、もっと盛大な披露パーティーを開かなければいけない。さあ、大変だ。  



 朝日 5月22日
<抜粋>  白鵬が一夜明け、「夢みたいな気持ちです」
 大相撲夏場所、新大関で初優勝した白鵬(21)=モンゴル出身=が22日、東京都墨田区の宮城野部屋で一夜明け会見を開いた。昨夜は3時間しか眠れなかったという白鵬は、「夢みたいな気持ちです」と笑顔で喜びを語った。名古屋場所は、綱とりがかかる。「大関になって目標だった初優勝を達成した。次は横綱を狙うしかないですね」と意欲的だった。 



 日刊スポーツ 5月22日
<抜粋>
夏場所で初優勝を果たした大関白鵬(21=宮城野)が千秋楽から一夜明けた22日、都内の宮城野部屋で会見した。前夜は父ムンフバトさんらと飲み明かし「3時間しか寝てない。(優勝は)夢みたい」と眠い目をこすりながら笑った。15日間を振り返り「(中盤で)顔が腫れたり体調が十分ではなくて苦しかった。でも硬くならずに自分なりに考えて相撲を取れた」と胸を張った。名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)では早くも綱とりに挑む。横綱昇進を果たせば、双葉山と照国以来64年ぶりの大関2場所通過となる。「次は(横綱を)狙うしかない。モンゴルでは王者を倒して王者になる。名古屋場所になれば、そういう気持ちになると思う」と打倒朝青龍にも意欲を燃やしていた。  



 中日スポーツ 5月22日
<抜粋>  横綱を狙うしかない
大相撲夏場所で14勝1敗で初優勝した新大関の白鵬が、千秋楽から一夜明けた22日朝、東京都墨田区の宮城野部屋で記者会見し「今でも本当に優勝したのかなと思う。夢みたいですね」と柔らかな笑顔で喜びを語った。来日している元モンゴル相撲の大横綱で父親のジジド・ムンフバトさんと一晩中語り合ったという白鵬。あまり寝てないというが、疲れたそぶりは見せなかった。「お父さんの前でいいところを見せられた。家に電話したら母も泣き声だった」と話した。名古屋場所で横綱昇進を懸ける。「(初優勝を)達成したので、次は(横綱を)狙うしかない」と意気込みを口にした。  



 毎日新聞 5月22日
<抜粋>  白鵬、来場所「綱狙う」--優勝から一夜明け
大相撲夏場所で史上4番目の若さで初優勝した大関・白鵬(21)=宮城野部屋=が千秋楽から一夜明けた22日、東京都墨田区の宮城野部屋で記者会見した。祝賀会やテレビ出演、支援者へのあいさつ回りなどで「3時間ぐらいしか寝ていない」という。新大関の場所で果たした優勝については「今でも(優勝)したのかなという感じ」と実感はまだわかない様子ながらも、終始笑顔だった。来日中の父ムンフバトさん(64)とは寝る前に言葉を交わし、「父には(優勝決定戦で)雅山関の足が出た瞬間が、スローモーションに見えたそうです」とうれしそうに振り返った。モンゴルにいる母タミルさんとは電話で話し「涙声で『行けるなら今すぐ行きたい』と言われ、本当にうれしかった」と話した。綱取り場所となる名古屋場所(7月9日初日)に向けては「大関となっても目標はまずは優勝だった。それを達成した今は、次(横綱)を狙うしかない。(連続優勝の)自信はある。暑さの中で体調管理が難しいが、しっかりけいこして自分の相撲を取りたい」と力強い。年6場所制が定着した1958年以降では初の大関2場所での横綱昇進に意欲を見せていた。【飯山太郎】  



 毎日新聞 5月22日
<抜粋>  白鵬優勝 次回の名古屋、「2人の父」へ恩返し場所
◇前夜、食事に誘ったモンゴルの父/日本の父「喜びすぎて…」
21日千秋楽の大相撲夏場所で初優勝したモンゴル出身の新大関・白鵬(21)。育て上げたモンゴルと日本の「2人の父」は固く抱き合って喜んだ。決定戦を桟敷の片隅で見守ったのは「日本の父」、宮城野部屋付きの熊ケ谷(くまがたに)親方(48)=元前頭・竹葉山(ちくばやま)。雅山の足が俵を割った瞬間、「喜びが強すぎて、頭が真っ白になった」。一気に階段を駆け下りて支度部屋へ。応援に来日したモンゴル相撲の元横綱で、68年メキシコ五輪のレスリング銀メダリストでもある白鵬の父・ムンフバトさん(64)と抱き合うと、互いの口元が震えた。熊ケ谷親方は、15歳で来日した白鵬を鍛え上げた。自らは幕内在位わずか2場所。小兵ながらけいこ量と気合で補い、十両時代に小錦を押し出して土俵を沸かせた。当時小柄だった白鵬には、その経験を説き聞かせた。ライバル琴欧州が昨年九州場所で先に大関昇進を決め、焦る弟子に「自分の相撲を取ることだ」と地道なけいこを繰り返させ、座禅も勧めた。「頭ごなしにしかっても『おれのこと分かってない』と思うだけ」。助言を求めてきた時だけ寄り添った。それでも、実の父にしかできないこともある。白鵬は3場所続けての優勝争い。過去2回は逃してきただけに、千秋楽前夜は緊張がピークに達していた。ムンフバトさんはそんな白鵬を食事に誘い、布団を並べたという。「あれで気持ちが落ち着いた」と白鵬。歓声に沸く土俵下でのインタビューで、白鵬の口からまず出たのは、両親や親方への感謝の言葉。そして「この自信を名古屋に持っていく」と綱取りに挑む覚悟を語った。本当の恩返しはこれから始まる。【藤野智成】  



 読売新聞 5月22日
<抜粋>  「次は狙うしかない」初優勝の白鵬、「綱」へ意欲
大相撲夏場所で、初優勝した大関白鵬(21)(宮城野部屋)が22日、東京都墨田区の同部屋で会見、「夢見てるみたい。初優勝を達成したので、次は、(横綱を)狙うしかない」と、抱負を語った。安定した強さを見せた15日間を「苦しかった」と振り返った大関。今回は来日出来なかった母タミルさんにも電話で報告し、「お母さんは泣き声だった。行けるんだったら、今からでも飛んでいきたい」と、母親思いの一面も見せた。横綱昇進がかかる名古屋場所については「また優勝したい。チャンピオン(横綱)を倒してチャンピオンになりたい」と自信たっぷり。大関を2場所で通過すれば双葉山、照国に次ぐ快挙となるが、「できたらすごいと思う」と意欲的だ。モンゴルには帰国せず、来週にもけいこを再開する。  



 読売新聞 5月22日
<抜粋>
〈鵬(ほう)〉――古代中国の想像上の巨鳥。とてつもなくでかい。北の海にいる〈鯤(こん)〉という巨大な魚が化して鳥になったと古典「荘子・逍遙遊編」にある◆鵬の背は何千里あるかわからない。北海の果てから南海の果てへ飛ぶ。海水に羽ばたくこと3000里、つむじ風に乗って上ること90000里、6か月も飛び続けて、やっと羽を休めるという◆これが大横綱・大鵬のしこ名の出典。この夏場所、新大関で初優勝した白鵬も同じだが、しこ名が似ているだけでなく、強さもバランスのとれた柔軟性も大鵬の若き日を思わせる◆宮城野部屋力士の優勝は1915年1月の大関・鳳(おおとり)(後に横綱)以来で91年ぶり2人目。〈鳳(ほう)〉も中国の想像上の鳥。こちらは聖人や徳の高い天子が生まれたときなどに出現する瑞鳥(ずいちょう)◆〈鳳〉から〈鵬〉へ白鵬は宮城野部屋に輝きを取り戻した。横綱不在の夏場所を支えた。次の名古屋場所では早くも綱を狙う。横綱・朝青龍も戻ってくる。大関復帰を目指す雅山、前頭上位になる怪物・把瑠都も場所を盛り上げる◆〈龍鵬時代〉の到来を予感する。 
















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