ジュネーブ0.01%以下の快楽

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2006年01月31日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
東京に5年ぶりの大雪が降った1月21日、午前3時。


普段、寝るときには切っている携帯電話。
どうやら、ボリュームを切り損ねたらしい。


暗闇で左手を伸ばし、携帯電話のありかを探る。
寝ぼけ眼ながらも、「ついにこの日が来た」と直感した。


「ごめんね。起こした?」
携帯電話の向こうから、妹モカバニラちゃんの声がする。


もか:「大丈夫だよ。」


        ばーちゃんね、一人で逝っちゃったんだって。
        ばーちゃん、一人で死んじゃったんだよ。」


涙でふやけていくモカバニラちゃんの声が、
覚悟はできていたものの、もかの心臓を見事にぶち抜いた。



昨年4月、母方ばーちゃんが亡くなり、
昨年11月、父方もかGが亡くなった。

そして、年が明けて1月。
父方もかばあ昇天。

11月にもかGが亡くなった時は、もかばあはまだ元気で、
自分で食事だってしてたし、お風呂だってしてた。
もかGの死も、しかと受け止め、90歳の身体から奮い立たせた声を張り上げて唄い、

90歳超えた人間とは思えないほど、耳が達者で、ぜんぜん衰え知らず。
隣の隣の部屋からでも会話が出来るほどの超人だった。
ありえん・・・(゚◇゚)~


この9ヶ月のうちに、3人の祖父母は、この世での使命を全うし終えた。
一つ屋根の下で住んでいた祖父母。



90歳になるまで、風邪一つ引いたことのないもかばあ。
病院なんてまったく無縁で、鋼鉄の身体をもつ無敵のばーちゃんだった。
気が強くて、意地も強くて、身体も頑丈で、男性よりも男勝りのもかばあ。
それがゆえに、たくさんの人に好かれたし、嫌われもした。

そんなもかばあが人生初めて病院ってもんを体験したがの、昨年の12月。
理由は脳梗塞。
もかGが亡くなって2週間後のことだった。
最初で最後の病院体験は、長年住んだ家も島も離れての入院。
そして、そのまま自宅へ帰ることなく息を引き取った。



もかの地元には病院が無い。
病院へ行くには、飛行機で隣の島へ渡るしかない。


もかばあが亡くなる前夜、医師から連絡がはいった。

「入院した当初は、2,3日は持たないだろうとお伝えしました。
 しかし、入院してすでに1ヵ月半が過ぎました。
 正直言って我々も驚いております。」

さすがは、鋼鉄もかばあ。
根性で生き抜いた。

「でも、もうそろそろ限度です。」


もかGには延命装置はつけない選択をした。
もちろん、もかばあにも、延命装置はつけない。


自然でいい。
生きたいと思う本人の力で生きれないのなら、延命装置は酷なだけだ。




そんな電話を受けて、もか母ともか父は、その翌朝、飛行機で病院へ向かう予定を組んだ。


しかし、もかばあは、中途半端な時間に逝ってしまった。
大好きな我が家にも戻れず、真っ暗で無機質な病室で、一人で逝ってしまった。



もかの電話で起こされたラテは、事情を察知していた。

モカバニラちゃんからの電話に応対しつつ、片手でインターネットを立ち上げるモカ。
飛行機の座席確認、チケットの手配と火葬、告別式、納骨式等の日程を調整。
帰省の準備を進める。


部屋の外は真っ白な雪が積もっていた。
真夜中なのに、街灯が雪に反射して、あたりが明るい。


雪の光を頼りに、ラテは洗濯を始めた。
帰省したらいつ戻ってこれるのかわからないから。
もかばあのいない淋しさを味わうよりも現実を整えることのほうが先になる。



夜が明けるのを待って、ラテの上司に忌引き休暇のお願いをした。
こころよく承諾していただいた。
実はこの前日、すなわち、数時間前まで、
ラテの上司のお誘いを受けて、パーティに参加しており、
つい顔見知りになったばかりだったのも幸運だったのかもしれない。


それから、大まかな荷物をまとめあげ、もかは先に家を出発した。
この日、午前10時から、不動産屋さんで新居の契約手続きの約束があったから。


ラテに自宅での細かい作業を託した。
部屋に残ったラテは、家事を済ませて、バッグに詰め込みを完了させて、
羽田空港への道すがら、恵比寿の不動産に立ち寄った。
新居の大家と不動産には、あらかじめ事情を説明し、
ラテが到着すると同時に、二人で新居の契約書に署名をして、すぐに急ぎ足で羽田空港へ向かった。


山手線に乗り込む。
出発手続きの時刻が迫る。


この日大雪の東京は、電車のダイヤが乱れていた。
空港までの最後の乗り継ぎ駅まで来ないことには、正確なダイヤ情報が読めない。


品川駅で羽田空港行きの京急線改札を通り抜けてホームへ出ると、電車のスケジュールが目に止まった。
ようやくほっと一息をついた。
次の電車に乗れば出発時間の40分前には到着できる。
搭乗手続きに十分間に合う。


思い返せば、9ヶ月前、スイスから成田空港へ降り立ったその足で、
母方ばーちゃんのお葬式のために向かった羽田空港。
9ヶ月前の日記→ 「スイスから沖縄へ」

2ヶ月前、父方もかGのお葬式のために向かった羽田空港。
2ヶ月前の日記→ 「人生の締めくくり」



羽田空港行きの電車を待つ品川駅のホームは、まるで、デジャブ。


品川駅のホームで、一息ついたモカの頭に、大粒の雪が降り注いだ。
左手の手のひらをひろげ、舞い落ちる雪が一粒ずつ載るのを見ていた。
雪の粒があまりにも大きいので、3つ目が載ると、もかの小さな手のひらは雪でいっぱいになった。


雪は止む気配はまったくない。



「デジャブじゃないじゃん」


4月にも11月にも、品川駅で雪なんて見なかった。


「デジャブじゃないじゃん」

これが、実際に目の前に起きている、現実なんだ。



人ってホントに死ぬんだ。

頑固で、強気で、気性が荒くて、、、人ってホントに死ぬんだ。
あんな鋼のウルトラばーちゃんでも、ホントに死ぬんだ。



・・・死ぬんだな。
なんだか可笑しくなった。




死ぬ気配は無くても90歳を越えた人。
いつまでも長くないであろうもかGともかばあと遊ぶために、
モカとラテ、昨年9月、二人で強行帰省をした。

家族で、BBQをし、婚約なんてことになってしまったあの旅。



あの時は、もかGも、もかばあも、モカとラテと一緒に笑っておしゃべりしてた。

あの日、常夏の沖縄で、もかばあと何気なく話題にした『雪』。

駅のホームに降り注ぐ雪を見ていたら、あの日のモカばあの笑い声がこだました。


「もかちゃん、らてちゃん。
 ばーちゃんはね、90歳になるけど、まだ一度も雪を見たことがないんだよね。
 一度くらいは、雪を見たいね。見に行こうかな。ははははは♪」



もかばあ、今日は大雪だよ。
これからこの雪、沖縄にもって帰ろっか。
この雪持って、隣の島に迎えに行くから、一緒にふるさとの島に帰ろう。
お家に帰ろうね。



消えることは分かってたけど、
左手に積もる大粒の雪をポケットにいれてみた。



なんだかんだ言って、
もかばあって、もかGのこと大好きなんだね。
あんなに強気に生きてきたもかばあなのに、すぐに後を追って逝っちゃった。

かわいい。






・・・さて、9ヶ月の間に3人の祖父母が相次いで去っていった。


毎度のことですが、今回はいつも以上に腰を抜かしそうになったお葬式にまつわる怖い話をひとつ。



ラテとモカ、モカの地元までの往復運賃は、25万円。。。

当日の予約には、ほぼ割引なしの航空運賃。
お願いだから、お葬式割引をどうにかしてくれ。
(_πдπ) シクシク

そっちのほうが泣けるわい。





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最終更新日  2006年01月31日 16時43分01秒
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