ワインバーにタバコを吹かしながら髭面(ひげづら)の男が入ってきた。
カウンターによっかかって男は言った「おい、クソねえちゃん、お前んとこのクソ高いワインを飲ませろや」。
カウンターにいたソムリエールはうろたえて言い返した「お客様、まず、こちらは禁煙でございます。それから、失礼ですが、私どもは高級ワインの専門バーでございます」。
男は、タバコを床に捨て、足で踏みつけながら「こーら、クソばばあ!お前のクソ耳は飾りで付いてんのか。クソ高いクソワインをとっとと出せって言ってんだよ」
店の騒動を聞きつけ、マネージャーが奥から出てきた。
「クソワインを出せ」と言い続ける男にマネージャーは前で手を結び合わせ胸を張り、落ち着いた態度で言った。「お客様、当店のマネージャーでございます。大変申し訳ありませんが、お静かにお願いします。ところで本日は何かご不満な点でもございましたのでしょうか?」
「なーんだ、クソバーのクソマネージャーか!そのクソ耳、かっぽじって良ーく聞け!!このクソねえちゃんに、クソ高いワインを出せって言ってんだ!あるだけ出せ!店中の他のいかれたクソ共にも振る舞ってやるわ!」
「お客様、しかし、お客様はご存じないかも知れませんが、当店のワインの中には百万円を超えるモノもザラにございまして…」
男はポケットからタバコを取り出し、さらに一本付けながら言った「クソ野郎!俺はクソ宝くじで五億円当たったんだよ!だから、このクソバーのクソ高いクソワインをここにいるクソ共といっしょに片っ端から飲んでやろうってんだ!」
マネージャはソムリエールを指差しながら男に言った。
「はい、かしこまりました、お客様。先ほどは、このクソぶたがクソ失礼をいたしました」