科学はイタズラだっちゃ! 受験も科学!      科学実験教室&家庭教師  宮城県大崎市

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読字障害の実例


               神山 忠@岐阜市立岐阜養護学校
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 始めに、「分かってもらえる先生がいたら」と言うことを書きま
した。私は、文字を読むのが苦手であったこともあり、勉強ができ
ませんでした。そのことを隠すため、また、勉強ができなくても注
目をされるためにいつの日か騒ぐ子になっていました。小学校のと
きから対教師暴力事件を頻繁に起こしていました。いろいろやらか
して、高校卒業後、即、陸上自衛隊に入隊しました。幸いしたのは、
自衛隊の教育は、秘密保持、情報漏洩防止のために、文章がほとん
どありませんでした。すべて口頭による伝達が、中心でしたので困
ることはありませんでした。そして、「勉強すれば自分もかなりい
ける」と自信を持てました。「分かってもらえる先生がいたら」か
ら「勉強ができない子の気持ちが分かる先生になろう」と気持ちが
変わりました。
 上官に頼んで、夜間の短大に通わせてもらい免許を取りました。
大学では、講義を録音しました。ナショナルのサイレント・カット
機能付きのマイクロカセットで録音し90分の授業でも60分程度
に録音でき、駐屯地から大学までの電車の中で聞き返し勉強しまし
た。また、黒板はカメラで撮影して記録していました。コニカのハ
ーフカメラで24枚撮りなら50枚は撮れました。その写真を見て、
区切りながら理解していました。
 13年前に、パソコンで文字を読み上げるソフトが出たので、そ
れから文章はテキストに起こし読み上げさせて理解するようになり
ました。またデジタルカメラの登場で、板書なども手軽に撮影して
理解できるようになりました。

 この研修で、多くの方に支えてもらえました。資料を拡大して頂
けました。データもフロッピーベースでいただくことができ、即、
読み上げソフトで理解できました。また、掲示板の前で眉間にしわ
を入れて解読していると、自然体で教えてくれる方々がいて助かり
ました。
 私なりに、文章理解のためのバイパスづくりを工夫してやって来
ましたが、人のちょっとした「こころづかい」に勝る物はないと感
じています。
 よく言われますが、いろいろな障害に関して、様々な機器が開発
されバリアフリーになってきています。しかし、最高のバリアフリ
ーは、機器の開発よりも、やはり人の支えではないでしょうか。
 逆に、いくら機器が発達しても、人の理解が得られないならば、
それは最大のバリアになるのかも知れません。
 人それぞれ得意、不得意があります。それを認め合い、支え合え
たら良いのではないでしょうか。

 小学校2年生の時の読書の時間のこと、授業の終わりが近くなっ
た頃、先生が机間指導で私の所に来ました。そして一言「神山くん、
まだそんな所?」。確かに40分近くかけて1ページ目を読んでい
たら言いたくなるかも知れません。でも、必死になって意味を考え
ながら読んでいた私にとっては、きつい一言でした。
 「神山くん、ここまでだったけど、主人公の気持ちをかみしめな
がら一文字一文字大切に読んだんだね!」
と言ってもらえてたら、また違った人生があったかも知れません。
 中学校1年生の時、みんなの前で本読みがつまりつまりでしか読
めなかった私を教室の前に呼んで
「なんでもっと練習してこないんや!こんなん小学生でも読める文
やぞ!10回読んでダメなら、100回読めよ!100回でダメな
ら1000回読めよ!努力が足りん!努力が!」
と怒鳴り付け、角刈りの頭にチョークで頭に×と書かれたこともあ
りました。前日、自分なりにかなり練習したのにやりきれない思い
になりました。
 そうでなく、前日に
「明日、本読みあるで、ここからここを当てるで、こんだけでいい
で、練習頑張ってこいよ!」
と、こっそり言ってもらえてたら、また違った人生になっていたか
も知れません。

 努力では何ともならないこと、誰にでもありませんか?
 でも、自分にしかできないことってありますよね。
 これで良いのではないでしょうか?
 もし、人の理想が完全自立であるなら、
 人が全員誰にも頼らずに生きていけたなら、
 人は人でなくなるのかも知れません。
 「お互い尊敬し合う」そんなこともなくなりますよね。
 そんな社会よりも、「もちつもたれつ」の社会。
 この方が人間らしい生き方だと思います。

【独立行政法人国立特殊教育総合研究所 http://www.nise.go.jp/
平成15年度第1期短期研修(知的障害教育コース)レポートより】

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