ヤミ、闇、病み

ヤミ、闇、病み

エンゲージリング第8話



やっと、やっとこの日が来た。

来てくれないと思っていた孝介くんも来てくれる。

これ以上に嬉しい事なんてない。

昨日まで風邪をひいてたの嘘に思えるくらい、体は軽かった。

1分1秒が惜しいと感じ、私は下へと降りて行った。



「おはようございます、そのご様子だと風邪はすっかりよくなったようですね」

「うん、ありがとう。彩華」

ここまで良くなったのは彩華のおかげ。

お礼を言わずにはいられなかった。

「私は何も・・・。お嬢様が熱を出した理由が孝介さんなら、お嬢様の熱を下げられるのも孝介さんだけです。」

「・・・?」

言葉の真意が分からず、私はぽかんとした。

「お気になさらずに・・・。お客様は午後からいらっしゃるのでしたね?それまでに準備をしなくては・・・」

そう言って彩華は出て行ってしまった。

私も何かするべきかもしれない・・・。

でも何も思いつかなかった。

聞いてみれば何かあるかもしれないと思い、彩華を追いかけた。




私は自分の部屋のドアを閉め、ベットに横になった。
彩華に、

「主役が働いてどうするんですか。私の方で一通りやっておきますので、それまでお部屋でお寛ぎ下さい。」

と言われ何も言い返せないで部屋に来てしまった。

確かに彩華の言う通りかもしれない。

でもなんだかそれでは申し訳ない気がしてくる。

誰に、何でなんてわからない。

でもそんな気がした。

「服・・・何着ようかな?」

何もすることが無くて、私はクローゼットを開ける。

ウォークインクローゼットだけれどほとんど使う機会のないドレスばかり。

1度親と一緒にパーティーに行く時に着てそれっきり。

そればかりか買っただけで一度も着てないのもたくさんある・・・。

両親は気前良く買ってくれるけど、正直私は必要ないと思ってる。

そんなにパーティーにいく訳でもないのにドレスだけが増えていく・・・。

私はそのなかから自分の服を探す。

端っこの方にかためて置いておいたからすぐに見つかった。

「やっぱり、これかな・・・」

そう思い取り出したのはお気に入りの白のワンピース。

流石にこれは孝介くんがプレゼントしてくれたものじゃないけれど、

孝介くんがこれを着た私を見て「可愛い」と言ってくれた。

それ以来これは私のお気に入りになった。

勝負服、っていうのかな?

でも最近着てなかったせいか少し埃をかぶっていた。

叩いてみる・・。

綺麗にはなったけどまだ少し埃っぽい。

それに白だからちょっとの汚れでも目立つ。

こんなことならもっと前から用意しておけばよかった・・・。

今更悔やんでも仕方ないのは分かってる。

でもそうするしか出来なかった。

「ここにいらっしゃったのですか?探したのですよ」

声がした方に振り返ると彩華がいた。

「今日はそれをお召しに?」

私はこくんとうなずく。

「このままでは使えませんね。なんとかしましょう」

「出来るの?」

不安が口から出た私に彩華は微笑んで

「出来るか?なんて関係ありません。やれる事をやるだけです」

そう言って彩華は出て行った。

今は彩華を信じる他ない。

彩華ならなんとかしてくれる。

そんな気がしていた。




私は時計を見た。約束の時間まで30分もない。

鼓動が速くなっているのが自分でもわかる。

私の準備はもう終わった。

どうやったかは分からないけど彩華は白のワンピースを綺麗にして持ってきてくれた。

それを着て私はただみんなが来るのを待っていた。


ピンポーン


チャイムが鳴り、彩華の出迎えに行く足音がした。

しばらくすると足音が増えて帰ってきた。

きっとみんな一緒に来たんだと思う。

孝介くんは本当に来てくれるかな?

そう思った瞬間、ドアが開く。

そこには・・・。

孝介くんがいた。

竜也くんや阿左美達もちゃんと来ていた。

大丈夫、夢なんかじゃない・・・

「おおーみやびちゃん、めっちゃ可愛い」と竜也くん

「馬鹿、先にいうことがあるだろうが」

孝介くんはそう言って竜也くんの頭をたたいた。

まるで漫才みたい。

「みやび、誕生日おめでとう」

「「「おめでとー」」」

「うん、ありがとう。みんな・・・」

「さてと・・・それじゃプレゼント公開と行きますか」

「何でお前が仕切ってるんだよ・・・」

孝介くんの突っ込みは騒ぐ三人の声に消された。



「まずは俺からな」

そう言って竜也くんは紙袋を取り出した。

「無難にマフラーにしてみました。みやびちゃんの趣味は分からないけどそんな悪いものじゃないから」

「うん、大事に使うね」

確かに竜也くんのファッションセンスはいい方だから、大丈夫だと思う。

「私たちからは手袋ね」

「工藤くんと同じようなもので悪いんだけどね・・・」

「ううん、ありがとう」

そう言いながら私は気が気じゃなかった。

孝介くんは何をくれるんだろう?それだけが頭の中をめぐっていた。

「次は孝介の番だぞ」

「わぁってるよ」

そう言うと孝介くんはポケットから小さい包みを取り出した。

「気にいるかわからないけど・・・さ」

自信が無いのか目をそらしながら渡してきた。

それとも照れてるのかな?

私はそっと包みを開けてみる・・すると中には一個のリングが入っていた。

私はそれを取り出して良く見てみる。

「安物で悪いんだけどさ・・・受け取ってくれよ」

「なぁ孝介、エンゲージリングって知ってるか?」

唐突に、竜也くんがしゃべり始めた。

「知ってるよ、馬鹿にしすぎだろ」

「じゃあ意味いってみろよ」

「そりゃ・・・婚約ゆび・・・わ」

「ふ~ん、やっぱお前らってそういう関係だったんだな」

それを聞いて私は顔が熱くなる。

間違いなく赤くなっているのが分かる。

孝介くんの方を見ると同じような感じだった。

「いや、そんな意味は無くてだな・・・」

「いいっていいって、非公式が公式になるだけだろ?たいして変わんないって」

「そうだよ、認めちゃいなよ」

阿左美まで乗ってきて、孝介くんは更に顔を真っ赤にさせている。

可愛いなぁ・・・。

「これは天音がだな・・・」

「そうか、天音さんも二人の中を認めてるってことだな」

三人から冷やかされ、孝介くんは何も言い返せないでいた。

小さい声で「天音の奴、やりやがったな・・・」って言っているのが聞こえたけど後悔してるような顔には見えなかった。

「ありがとうね、孝介くん。絶対大事にするから」

「お、おう・・・」

その後も3人から散々からかわれて、孝介くんは彩華の作ったケーキをやけ食いしていた。

あまりの勢いに私は心配の言葉もかけられなかった。



自分の部屋に入り、ベットに横になった。

帰り際に阿左美たちに「良かったね」って言われたけど、やっぱり私が孝介くんが好きな事気がついてたのかな?

きっとそうなんだと思う。

私は起き上がって机を前にした。

そして引き出しから日記を取り出して、新しいページを開いた。


11月27日

やった、孝介くんから指輪貰っちゃったよ。

竜也くんがエンゲージリングって言ってたけど、そういうことなのかな?

いつか、本物のエンゲージリングをくれるよね?

孝介くん。

私ずっと待ってるからね?

二人で幸せになろう。孝介くん。



私は日記を引きだしに戻して窓の外を見る。

孝介くんの部屋の電気はついていなかった。

天音さんに問い詰めてる所なのかな?

「私と孝介くんは結ばれる運命だったんだよね?だから・・・」

だからそのためには、邪魔なものは消していかないと・・・。

孝介くんはモテるから大変だと思うけど、私になら出来る

だって・・・

「私と孝介くんは結ばれなきゃいけないから・・・」

いつか二人だけの世界を作ろうね?

孝介くん


end

















後書き

どうも孝介です

第8話いかがだったでしょうか?というよりはエンゲージを読んでみて

どうだったでしょうか?

元々はヤミ、闇、病みのサイドストーリー

みやび嬢が病んだ理由を描きたくて作ったのですが

本家より先に終わるっていうねww 

これはやってしまった感丸出しですがまあいいか

この話はこれで終わり

続編はありませんし作る気もありません

っていうよりこっから先つなげ方分からないし・・・

次回作にご期待ください

自分で言うのもなんですが・・・ね

最後になりましたがご愛読ありがとうございました

次回作もよろしくお願いします


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