ヤミ、闇、病み

ヤミ、闇、病み

第4話



部室のドアを開けるとすでに夏鈴がいてさっきのお茶会の片づけやら

チェス台を出したりしていた。

「ホントにって・・・俺は来るって言ったろ?」

信用がないんだなぁと少し落ち込みながらそこら辺にあったパイプいすに腰をかける。

これからはもう少し部活に来る頻度を上げよう。

一応部長なわけだし・・・。

例え実力などではなく半強制的になった部長だとしても・・・。

「先輩のことだから期待させるだけで来ないんじゃないかと・・・」

少し言いにくそうに夏鈴はそう言った。

まるで俺はナンパな男みたいだな・・・。

そんなことを思わずにはいられないセリフだった。

「俺は約束は守るぜ?」

なんか嘘っぽい気がしてきたがこうでも言っておかないと部長として・・・

いや男としてのメンツが・・・

「はい・・・」

妙に大人しいというか、しゅんとしている夏鈴。

「どうかしたか?」

少し心配になって聞いてみることにする。

おせっかいかな?と思わないわけでもなかったがもし本当に何かあることを考えると

違った時に下がる俺の評価なんて安いものだった。

「え?何がです?」

夏鈴も俺が何か気付いたことが分かったのか明らかにさっきより明るく

振舞おうとしている。

「いや、なんかいつもより暗いなぁと・・・」

「電気ですか?ああ、もう換えないとですね」

そう言って奥の方に行って箱から蛍光灯を取り出す。

「いや、夏鈴自身がな・・・」

完全におせっかいだとわかっていたが言わずにはいられなかった。

「そうですかぁ?そんなことないですよ?」

といいつつ笑顔が少し引きつって見えるのはきっと俺の気のせいではない。

けど・・・。

ここまでして隠そうとしているのであれば俺の出る幕ではないのだろう。

「そっか、ならいいんだけどな・・・」

気付かないふりをするしかなかった。

「じゃあ、はい」

そう言って俺に長細い箱を渡す。

「何これ?」

こんな細長いもの蛍光灯以外ないと思うが一応聞いてみる。

「まさか先輩、女の子に電気換えさせる気なんですか?」

「そうだな、こういうのは男の俺の仕事だな」

「分かればいいんです」

少し嬉しそうににっこりと笑ってから椅子に座る夏鈴。

俺はやれやれと溜息をつきながらパイプいすの上に立ち、蛍光灯に手を伸ばす。

「あっちぃ!!」

当然のことながら電気を消すのを忘れていたため蛍光灯は結構な熱をもっていた。

熱い時に指を耳たぶに持っていく余裕なんてないよな・・・なんてことをふと思ったが

どうでもいいことだと気付き頭から振り払う。

「大丈夫ですか?」

心配そうに見上げてくる夏鈴。

こう・・・なんというか夏鈴もこういうふうに見ると可愛く見えるような気がする。

「悪いけど電気消してくれるか?」

「え?そんな昼間から・・・」

夏鈴は急に顔を赤くしてもじもじとしている。

何を想像しているか分からないが明らかに間違った取り方をしているのだろう。

「お~い、夏鈴?」

「でも、先輩がどうしてもって言うなら・・・」

だめだ、こっちの世界にいない。

しょうがないから自分で消そう・・・。

俺は一度椅子の上から下りて電気を消し、もう一度椅子の上に乗る。

その間も夏鈴は自分の世界から帰ってきていないようでブツブツと何かつぶやいていた。

「そろそろいいか?」

電気を消したといってもしばらくは熱を持ったままなので少し待ってから蛍光灯に触る。

まだ少し温かかったが特に気にするレベルではないので取り外して

新しいのに換える。

「終わったぞ?夏鈴」

と肩をたたくと

「え?あれ?」

どうやらようやくこっちの世界に帰ってきたようだった。

「それじゃ、始めるか」

そう言って俺は椅子に座ると

「はい!!」

とテーブルをはさんで向こう側に夏鈴が座った。

「先攻どうぞ?」

レディーファーストとでも言うべきか、俺は夏鈴に先攻を譲る。

まぁ夏鈴が弱いからハンデという意味もあるが・・・。

それを言うと怒る・・・というかいじけてしまうので言わないことにする。

「今日こそは私が勝ちますからね?」

そう言っていた夏鈴だったが・・・。


















「少しくらい手抜いてくださいよ~」

5戦全敗していじけていた。

「今日こそは勝つんじゃなかったのか?」

昼休みのお茶会の残りのポテチをつまみながら勝者の余裕を見せる。

「今日こそは勝てると思ったんです~」

よっぽど自信があったらしい。

今日はもう機嫌は直らないかな?

確かにだいぶ強くはなったがまだ俺に勝てるレベルではない。

まぁこの調子でいけば俺が卒業するころにはそれなりのレベルにはなっているだろう。

「ちゃんと詰めチェスはやってるのか?」

「やってますよ?これ」

といってカバンの中から取り出した少しよれよれになっている本に俺は見覚えがあった。

「先輩が貸してくれた本、来る日も来る日もやりこんで・・・」

どうやら本当に努力しているらしい。

俺が貸したときは少なくともあそこまでよれよれにはなっていなかった。

というかほぼ新品のまま貸したので間違いなく頑張ったのだろう。

「まぁ頑張ったみたいだな、次はオープニングから展開していって

中盤くらいを練習してみろ」

たぶん夏鈴が苦手なのはここだろう。

「どうやればいいですか?」

「こればっかりは何度もやるしかないな。その局によって形は変わるし」

一応何個かオープニングは覚えているが何十個とあるし相手がどれを使ってくるか

わからないのだから何度もやっておいて損はない。

と俺も天音に教わった。

「でも唯一の対戦相手の先輩が・・・」

と失望するような、でもどこか期待しているような目で俺を見てくる。

「分かったよ、これからはなるべく出るようにするから・・・」

「ホントですか?」

俺がそう言った途端に嬉しそうな顔をした夏鈴。

そんな顔をされるともっと顔を出してやろうかなという気にもならなくもない。

「まぁ今日は遅いしこれくらいにしようか」

と俺はチェス台を素早く片付ける。

「明日は来てくれますか?」

お茶会の残骸をゴミ箱に捨てながら夏鈴は聞いてきた。

「そうだな・・・考えておくよ」

まだ明日の予定を立ててないので曖昧に返事しておく。

「待ってますからね?」

「はいよ」

まぁ・・・明日もきてやろうかな?と思わなくもなかった。


















「じゃあここでだな」

校門の前で少し立ち止まり夏鈴を見る。

家が正反対なのでここでいつも別れることになる。

「はい、今日はありがとうございました」

夏鈴はペコっと頭を下げた。

「いいって、また明日な」

「はい、また明日」

手を振りながら反対方向へと進んでいく夏鈴を少し見送ってから

俺は家に帰るべく歩き始めた。

















後書き

どうも孝介です

第4話いかがだったでしょうか?

主人公がチェス部部長はこの話を考えた時(ほぼ一年前)にちょっとチェスをかじって

ハマってた時の名残ですww

まぁ全くうまくはなりませんでしたけどね・・・

先を考えず今を生きる方が性にあうみたいです

次こそは天音さんの登場シーンを・・・

ここまで読んでくださってありがとうございました

5話後書きでまたお会いしましょう

第5話

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