ヤミ、闇、病み

ヤミ、闇、病み

第5話



夏鈴と別れ少し歩くと後ろから聞きなれた声がした。

「よう、みやび」

振り返るとカバンを横に抱えているみやびがいた。

「今から帰り?」

「それ以外に何かあるとでも?」

まぁ今の時間から遊びに行くこともなくはないので聞くのは間違っていない。

しかし今日は久々に部活に出たせいか疲れたので家に帰って休みたかった。

「一緒に帰っていい?」

といいながら俺の横に並んで俺と同じペースで歩き出すみやび。

聞くだけで返事は聞かないのな・・・。

「そうだな、女の子が一人だと危ないしな」

まぁ俺も断る気なんてさらさらないんだが・・・。

「よかった、断られなくて・・・」

心の底からほっとしたように溜息をつくみやび。

「どうせ帰り道はいっしょになるだろ?」

俺とみやびの家は向かい合わせなのだから。

どうせ家まで一緒に帰ることになる。

断る理由なんてないはずだ。

「でも、最近一緒に帰ることなかったから・・・」

みやびは少し恥ずかしそうに、顔を赤らめてそう言った。

「そうだっけ?」

ととぼけつつも自分でもよくわかっていた。

みやびと一緒に帰ったのはいつが最後だっただろうか?

「そうだよ、小学校の頃はよく一緒に帰ったのにね」

みやびにそう言われて、少し昔のことを思い出す。

みやびは少し体が弱くてあまり外に出なくて白かったから男子によくいじめられてた。

今から思えば、好きな子に意地悪してしまう小学生特有の衝動かもしれないが、

あの頃の俺は真剣にどうすればいいか悩んでいた。

結局俺はいつもみやびのそばにいてみやびの遊び相手になっていたような気がする。

「孝介くん?」

少し心配そうな顔をしているみやびに顔をのぞかれる。

「ん?どうかしたか?」

「ううん、なんかぼうっとしてるみたいだったから」

どうやら俺は思い出に浸るのに夢中で周りが見えていなかったらしい。

幸い人や物にぶつかるようなことはなかったが・・・。

「ちょっと昔を思い出しててな」

なぜだか少し恥ずかしくなって顔を背ける。

「そっか・・・昔は毎日のように一緒にいたよね?天音さんと3人で・・・」

昔を懐かしむようにゆっくりとみやびがしゃべりだす。

俺はそれを相槌を打ち、たまに口を出しながら聞いていた。









「それじゃ、また明日ね」

「おう、また明日な」

家の前で別れを告げ俺はドアを開けてカバンを玄関に放り投げる。

「ただいま」

「おかえり~」

おそらくキッチンで晩飯を作っている天音から返事が返ってくる。

俺は靴を脱いで綺麗にそろえてから放り投げたカバンを回収してリビングへと向かった。

「今日は遅かったね?」

予想通りキッチンで晩飯の準備をしていた天音に部屋に入った瞬間話しかけられる。

もちろん天音は調理を続けたまま・・・つまり俺に背を向けてだ。

別に足音を消してるわけじゃないがよくわかったなと心の中で感心する。

「久々に部活に出てたんだ」

そう言いながら冷蔵庫からお茶を取り出した。

「はい」

図ったかのように天音にコップを差し出される。

「ありがとな」

俺はそれを受け取りお茶を注いで一気飲みした。

空になったコップにもう一度お茶を注ぎお茶は冷蔵庫に戻して椅子に座る。

「そっか、夏鈴ちゃんは元気にしてる?」

一応OGとして学校に来ていた時に顔を合わせているので知ってる中ではある。

天音もなんだかんだで夏鈴のことが気に入ったようで妹のように可愛がっている。

「ああ、元気すぎて少し困ってるところだ」

まじめすぎて部活サボりにくいとは言えないので少しお茶を濁して言う。

別に今飲んでるお茶は濁ってないし濁らせてるわけじゃない。

「まぁさぼりにくいとは言えないよねぇ~」

「ごふっ!!げほっげほっ・・・」

今ちょうど思ってたことを言われて焦ってお茶をふきそうになる。

姉弟って相手の思ってること分かるんだっけ?

少なくとも俺は天音の考えてることは分からない。

もしかしたら姉だけが持てる特殊能力なのかもしれない。

「図星だった?」

くすくすと笑いながら味見をしている天音。

「図星だよ・・・」

ばれているのに隠していても仕方ないので正直に打ち明ける。

「凄いでしょ?褒めて褒めて~」

後ろ姿でよくわからないがたぶん今の天音は自信に満ち溢れた顔をしているんだろう。

それが様になってかつ嫌味にならないのが我が姉の恐ろしいところ。

この人には一生頭が上がらないかもしれない。

「もう少しかかるから着替えてくれば?」

「そうするよ・・・」

なんだかここにいると心が見透かされそうで俺は逃げるように自分の部屋に戻った。











「ふう・・・」

制服から部屋着に着替えてベットに横たわる。

天音には敵わないなと思いながら寝返りを打つ。

みやびとの会話で刺激されたせいか無意識に昔のことを思い出していた。

3人がまだ小学校に入る前のこと。

お互いの両親が仲が良く向こうの家によくお邪魔していたから大人たちが話をしているうちに

子供3人で遊んでいた。

その時はまだ男女の差なんてほとんどなくて、むしろ俺の方が成長が遅くて

気にせず飽きずにずっと遊んでいた。

小学校に入って、低学年のうちは変わらず遊んでいた。

だけど高学年になるうちに何というか恥じらいみたいなのが生まれて

あまり遊ぶことはなくなった。

中学校に入ってほとんど関わることがなくなって遊ぶことなんてなくなった。

たまに会話しても授業のことだったり勉強のことだったり・・・。

高校生になって2年で同じクラスになってようやくまた話し始めた。

そんなところだろうか?

何となく考えがまとまってもう一度寝返りを打つ。

「確かに久々、だなぁ・・・」

みやびと一緒に帰ったこと。

みやびとあんなに話したこと。

懐かしいような・・・それで少し恥ずかしいような・・・。

そんな奇妙な気持ちになる。

「何意識してるんだか・・・」

顔が火照った気がして、俺は枕に顔を埋める。

確かにみやびは可愛くなった。

でも幼馴染だ、これ以上どう発展する?

答えはない。

永久にそのままか、それ以下になるだけだ。

「ふわぁ・・・」

ずっと横になっていたせいか少し眠くなってきた。

体を起さなくては・・・そう思った時には既に遅く、俺は眠ってしまっていた。


















後書き

ということで第5話いかがだったでしょうか?

やっとのことで天音さん登場

いやぁ・・・長かった

こっから天音さんのターン

・・・にするつもりです

まぁまだ判りませんが・・・

そろそろ病んでいく過程に入りたいところ

さてどうしていくかまだ決めていませんが

どうしましょうかね?

お楽しみに

6話も読んでいただければ幸いです

では6話あとがきでお会いしましょう

第6話

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