バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

≪リヒテンシュタイン~オーストリア≫



   Basel駅20:02に発車。
 Zurich駅21:16。
 スイスとオーストリアに挟まれた小さな国、Liechtenstein(リヒテンシュタイン)は、アッと言う間に通過してしまったらしい。
 列車の中で真夜中、パスポートの提示を二三回要求されたが、通過はその時だったのかもしれない。

   リヒテンシュタインを通り過ぎると、列車はオーストリアに入った。
 St.Anton駅そして、Innsbruck駅へと列車は走る。
 いつの頃からか、オーストリア人・スイス人に替わって、ギリシャ人が四人ばかり、我がコンパートメントに乗り込んできた。
 オーストリアに入って、雪はますます深くなっている様だ。
 少し、眠ってしまっていた。

   外は雪。
 外気は冷たそうだが、列車の中は暖房が効いていて暖かい。
 Innsbruckを列車がいつ通過したのかもわからない。
 列車の沿線に沿って、家々が建ち並び、外灯が白い雪を照らし出しているのが、列車の窓から見えてくる。
 ドイツとの国境沿いを、列車は走っているはずだ。

   Innsbruckのすぐ北に、ドイツのミュンヘンがあるはずだ。
 モーツアルトで有名な、ドイツとの国境の街、Salzburg(ザルツブルグ)の駅に到着したのが、午前05:45。
 目が覚めた。
 まだ外は明けきらず、夜の帳が街を押し包んでいるようだ。
 駅だけは列車の到着で、動き出している。
 駅で働く人達や列車を利用する人達で賑わい始めていた。

   スキー板を持った子供達が数人集まっている。
 列車は、WelsからLinzへ。
 Linz駅へ午前7:00、少し遅れて到着。
 この時間になると、ほんの少しではあるが、外の景色が薄っすらと姿を現し始めていた。
 幻想的な雪の世界が目の前にある。

   列車はオーストリアを縦断する形で東の端、チェコスロバキアとの国境近くの街、Wien(ウイーン)駅に到着。
 雪は依然と降り続いている。
 スイスのバーゼルを発って、13時間で二カ国を縦断してしまっていた。
 ヨーロッパの国は、日本で言えば隣の県に移動するように、隣の国に行く事が出来る。

                           *

   ウイーン駅に降り立ち、両替を済ませる。
 12スイスフランとUS10$を両替して、242シリングを得る。
 1シリング≒18~19円。
 スイスよりオーストリアが少し物価が安いと聞いていたのだが、期待は完全に裏切られたようだ。

   Informationで地図を買うと、20シリング(≒360円)。
 コーヒーは、14シリング(≒260円)。
 コインロッカーを使用すると、20シリング。
 両替したお金は、見る見る無くなって行く。

       俺 「安いホテルありませんか?」
       受付「何人ですか?」
       俺 「一人です。」
       受付「一人一泊、朝食つきで140シリング(≒2,600円)になります。」
       俺 「ええっ!!140ですか。」

   何とも高い。
 インフォメーションで情報を集めていると、一人の日本人に逢った。
 ボーイッシュな姿は、最初男性かなと思ったが、よく見ると女性だった。

       俺 「こんにちは!日本の方ですか?」
       女性「ハイ!」
       俺 「失礼ですけど、ウイーンに住んでいるんですか?」
       女性「いいえ、まだこの駅を出てませんの。」
       俺 「じゃあ、一緒の列車でしたか。」
       女性「そうみたいですね。」
       俺 「これから・・どうされる予定ですか。」
       女性「ホテルを探そうと思ってここに来たんですけど。」
       俺 「そうですか。今聞いたら、140シリングだそうですよ。」
       女性「そのくらいかな?」
       俺 「高くないですか!」

       女性「今、1シリング19円くらいでしょ。そうすると、朝食つきで2600円。こんなもんじゃないですか。」
       俺 「一泊、1000円くらいの宿を探しているんですけど、ダメですかね。」
       女性「何処を、旅されて来たんですか?」
       俺 「インド・中近東を通ってヨーロッパに入ったんです。」
       女性「え~~~!そんなところを旅されて来たんですか?すごいですね!」
       俺 「だから、ヨーロッパでは宿代が高くて、今や列車の中が宿みたいな生活を強いられています。でもたまには、足を地に付けて眠りたいもんで・・・・。」
       女性「・・・・・。」
       俺 「また明るいうちに、街でも見て、夜には列車の中を宿にします。」
       女性「それも良いですね。」

                     *

   彼女と別れて、荷物をロッカーに入れ、コーヒーを啜り、身軽になって町を歩いていると、又インフォメーションで逢った彼女を見つけた。

       俺 「やー!どうしました?」
       彼女「140に決めました。これからホテルに行ってみようと思って・・・。」
       俺 「そうですか!それじゃあ、気をつけて!」
       彼女「あなたも良い旅を!」
       俺 「有難う。」

   雪は止みそうにも無い。
 意を決して、雪の中を歩く事にした。
 傘を取り出して、駅前通を真っ直ぐ、ドナウ川へ向かう。
 途中、二軒ほど郵便局を覗くが、どちらも閉館中。

       俺 ”土曜日は、休みなのかな。まだ、昼前なのに・・・・。”

   雪が解けて、ビチャビチャになった歩道を、注意しながら歩く。
 街には、”Tramway”・バス・地下鉄が走っているらしいのだが・・・・歩く。
 湿った雪のせいか、傘が重たくなってくる。
 道行く地元の人達は、結構な毛皮を見につけている。
 毛皮の帽子に、コートに靴。
 なかなかにおしゃれだ。

   傘を持って歩く人、コートのままで歩いている人、歩道は道行く人達で溢れている。
 雪が降っているために、周りの建物が霞んで見える。
 途中、二軒ほどペンションを訪ねてみるが、誰も顔を見せない。
 ドアには、”Close”と書かれてある。

   途中、Self・サービスのカフェで昼食をとる事にした。
 ポテトチップスに魚のフライ、コーヒーで、60シリング(1140円)もした。
 高い!!!!
 靴の中まで、雪が染込んで来る。
 ウイーンの街もすっかり雪で覆われてしまっている。
 冷たさが身にしみる。
 物価の高い北欧の街を、昼間観光して、夜は列車をホテル代わりにして、一晩で違う国に移動すると言う、素晴らしいアイデアで旅をしてきたけど、いささか疲れが溜まっている。
 しかし、こんなに物価が高くては、泣き言を言っている場合ではない。
 まだまだ、こんな旅が続く。

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