バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

バックパッカーの旅Ⅱ(欧州~北アフリカ~欧州~日本)

≪東西ドイツ≫



  いろいろ検討してみて、東ドイツのベルリンに行ってみる事に決定。
 22:48発・・・モスクワ行きの列車に乗るんです。
 東ドイツの中の離れ小島のような、ベルリンへ。
 ベルリンは、町が東と西に分かれていて、西ベルリンは西ドイツの町なの だ。
 東ドイツの領内を列車で通過。
 いざ行くとなると、ビザが必要なのか、気になってしまいます。

  ケルン駅のカフェに入る。
 駅でボサッと突っ立っている訳にも行かず、食事もしなくちゃいけない  と、カフェに入ったのだ。
 ケルンの街を散策しようにも、冷たい雨が降っている。
 街は、朝早い日曜日のせいか、雨のせいか人通りは少ない。
 あまり気になるような、そんな雨ではないのだが。

  駅前から、少し離れたカフェに入る。
 朝からビールを飲むことにした。
 本場ドイツで飲むビール(Stern Kolsch)は、本当に腹に染み渡り美味し  い。
 日本のビールとは、味が違って新鮮だ。
 雨で寒いのに、ビールを飲む。
 この国にとっては、ビールとは、日本で言うコーヒーのようなものだろ  う。

                    *

  駅の中で飲むコーヒーは、一杯3.40DR(425円)もする。
 高いよな。
 日本並みだ。
 その高いコーヒーを、三回も飲まされた。
 列車を待つ間の時間つぶしの為だ。
 それなら、街中へ繰り出して、散策すれば良いじゃないとおっしゃいます が、今は冬のヨーロッパ、とにかく寒いのです。

  でも、歩くことにした。
 雨の中、ネオン輝くケルンの銀座通り。
 途中、「MICHIKO」と書かれた看板を見つける。
 どうやら、日本料理店ではないようだ。
 ヨーロッパでは、この「MICHIKO」と言う名前、良く見る名前だ。

  本屋を覗いてまた、無駄使いをしてしまった。
 ドイツの書籍を購入してしまったのだ。
 それでなくても、バック・パックが重いというのにだ。
 建築に関する本を見てしまったからだ。
 どう時間をつぶそうかと考えて歩いていたら、飛び込んでいたのだ。

  設計プラン集(7.8DR≒975円)、ドイツ家屋の紹介(3.60DR≒450円)の二冊 を購入。
 建築雑誌にしては安いと思ったからだ。
 発車時間の一時間前に、プラットホームに上がり、列車を待つ。
 今日は、暇つぶしに、随分とお金を使ってしまった。
 たいした物も食べていないのに、ホテルに宿泊している訳でもないのに、 ドイツ・マルクが消えていく。
 ひょっとして、ドイツ・マルクには、羽が生えているのかも知れないとい う・・・・冗談にも笑えない。

                  *

  22:45・・・定刻より少し遅れて発車。
 ファースト・クラスは半両しかない。
 しかし、21名定員の座席でも、余裕のコンパートメントだ。
 東ドイツとの国境の町「Helmstedt」駅で、一度パスポートのチェックがあ る。
 これから、東ドイツ領内だ。
 ノー・ビザと分かっていても、なんとなく緊張しているのが分かる。
 初めての共産圏の国に入国するのだ。
 生きて出られるのか。

  どうも落ち着かない。
 寝過ごしてしまったら・・・・要らぬ心配までしてしまう。
 そんな心配をよそに、列車は静かに東ドイツ領内へと進んでいく。
 ただ今、午前3:45。
 なんという駅だろうか。
 窓の外を見ると、高い鉄柵が設けられている。

  線路内には、大きな犬を連れた、大男が数人列車の周りを歩き回ってい るのが見える。
 西ドイツとは、明らかに違っている制服を着込んでいる。
 軍服だろう。
 外に居る軍服と同じ軍服を着た、係官が何人も列車に乗り込んできた。
 ひょっとして・・・・乗客よりも多い?少なくとも、ファースト・クラス ではと思えるほどの係官だ。

  そうこうしている内に、このコンパートメントに入ってきた。

       係官「ハロー!パスポート、プリーズ!」

  大きな鞄を首からぶら下げている。
 素直に、緊張した顔で、パスポートを取り出して手渡す。
 首からぶら下げている鞄を台にして、なにやら書き込み始めた。
 書き込みながら、早口の英語で質問してくるから、油断できない。
 あまりにも早口だからか、俺のヒヤリングがダメなのか、良く聞き取れな い。

  分からないときは、自分からいろいろ喋って見ろとばかり、話しかけ  る。

       俺 「これからベルリンに行って、すぐハンブルグに戻るつ         もりだ。」

  係官は、俺のしゃべっている英語が通じたのか、頷いたではないか。
 続いて、相手が質問してくる前に、こちらから話しかける。

       俺 「この列車は、何時にベルリンに到着しますか?」

  知っていたのだが、聞いてみた。

       係官「ジャストモーメント!」

  走らせていたペンを置くと、胸のポケットから時刻表を取り出した。

       係官「午前7:28ですね。」

  紙にも書いて見せてくれた。
 なかなか親切ではないか。
 どうやら、英語があまり話せない東洋人と見たのかも知れない。
 なにやら書き終わると、一枚の紙切れをパスポートに挟み込んで返され  た。
 パスポートを開く。
 入国スタンプが押されている。
 そして、「Tramsit visum」とも書かれていた。
 トランジット・ビザと言う意味だ。

       係官「グッバイ!」

 笑いながら車両から離れていった。

  次に入ってきたのが車掌だ。
 切符を見せろと言う。
 偽ユーレイル・パスを見せる。

       車掌「これはダメだ。」
       俺 「どうして?」
       車掌「これは使えない。」
       俺 「ええッ!」

  怪訝な顔をしてみせる。

       車掌「一等だと、34.6DR(4325円)、二等だと23.6DR(2950円)          だ。」

  又も、紙に書いて説明をし始めた。
 もちろん二等を購入(手数料が1.0DR)して、隣の車両に移らされる羽目にな ってしまった。
 引越しだ。
 後、ベルリンまで三時間くらいしかない。

   深い眠りに入っては起こされると言う繰り返しで、眠りたくてもなか なか眠れない。
 これで眠ってしまったら、ワルシャワ・・・・悪くすると、モスクワまで 行ってしまうぞ・・・と言って聞かす。
 ジッとベルリンまで起きているぞ!と思いつつも、単調な景色に睡眠不足 も手伝って、・・・・とうとういつの間にか・・・眠ってしまっていたよ うだ。

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